乙女ゲームの世界でサポートキャラに恋をしたので、イケメン全員落としてみせます。

あみえ

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25 何を考えているのかわからない

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「由羅の浄化の力だけれど、どうしてそんなことができたのかさっぱり分からないね」
「え、何か予期することがあったから私を瘴気に触れさせたんじゃないんですか?」
「ないね。“どうなるのかな”と興味があっただけだからね。」
「…もし私が浄化できていなかったら私もただ瘴気に侵されるだけになってたんですよね」
「そうだね」
「……。」


 早いものでこの世界に来てひと月ほどが経っていた
 仕事の書類の受け渡しにきた時成さんの元で、今までなかなか聞く機会がもてなかった浄化についての説明を聞いた私は、無意識に座布団を握りしめた。
 相も変わらずこの人は…何度勝手に人を見切り発車の実験に巻き込めば気が済むのか…


「でもこれで由羅も貿易だけではなく自警団の仕事もできそうだね」
「はい?無理ですけど。私が戦えると思いますか?」
「・・・。」


 何を言ってるんだこの人。と顔に出しながら時成さんを見れば、その顔はにっこりと胡散臭い笑みを浮かべ
 そのまま座椅子から立ち上がり、こちらに近付いてきた時成さんは私の頭をコンコンとノックする


「『歪みを消す道具である光が、由羅の中にあるから、君が歪みを解決しなければいけない』と、前に私が言った事は、このつるつるとした脳みそに刻まれているかな?」

「……時成さんはどうしてそう気に障る言い方しかできないんですか?」

「つまりね。この世界の歪みである異形達の源。そのボスは、由羅が倒さなければいけないんだよ」

「・・・エっ!?」


 私を華麗に無視して話を進めた時成さんの言葉に驚愕する。
 何それ聞いてませんが!?と面食らっていれば時成さんはまたつらつらと説明を始めた


「まぁ戦闘自体は由羅にできるとは思えないし、皆に任せてもいいと思うけれど。異形のボスへのとどめの一撃は、必ず由羅の手で仕留める必要があるからね」

「そもそもそれ以前に皆のハートを増やして共鳴しておかなければならないけれど、どのみち当面の由羅の問題は気力を鍛えることだね。その為にも自警団の仕事は鍛錬にも良さそうだし。団員が瘴気を浴びてしまったときに浄化したりと由羅でも多少は役に立つだろうからちょうどいいのではないかな」


 相変わらずの物言いだけどいちいち反応していたらこの人との会話は無理だ。と私は落ち着かせるように呼吸をひとつすると疑問を口にした



「気力を鍛えるとは?」

「うん。この前ナズナの浄化で寝込んだだろう?それは浄化によって体力と気力がうばわれたからだね」

「へー…」

「浄化する瘴気が大きいほど負担は大きくなるからね。異形にとどめを刺す時も浄化は必要となると、今の由羅の力ではまったく足りていないね。」


 そもそも私がとどめをさすってこともいまいち飲み込めてないんですが…それを口にすればまたくどくど棘のある物言いをされるだけなので私は黙る

 時成さんは座椅子に座り直すとキセルの白煙をふかした

(猫魔の瘴気か…)

 爪でやられたというナズナさんの瘴気を浄化しただけで丸3日寝てたのだから
 確かにまだまだ鍛錬がいるのは理解できるのだけど…。
 はたして自警団の仕事が私にできるのだろうか…というかどんなことをしているのかもわからないし…そもそも浄化の扱い方すらいまいちわからない。とそこまで考えて私はハッととても大事な事を思い出した


「今の私の力で、ナズナさんのお姉さんの浄化ってできますか?」

「あぁ…アネモネのことかな?」


 アネモネさんという名前なのか、とナズナさんのお姉さんの名前を知らされるままに把握する。
 キセルの煙をふーっとはきながら「そうだね…」と考えている時成さんの顔はすでにうっすらと笑っていて少し不穏だ。


「今の由羅がアネモネの瘴気に触れたならば…その瞬間から、由羅はアネモネと同様に二度と目を覚まさなくなるだろうね。」

「…。え、っと…それは」

「アネモネの瘴気はね…意識の根底、簡単に言えば『魂』にまで侵食している。それを浄化するなんて今の由羅ではとても無理だからね」

「鍛錬あるのみということですか」

「うん」


 社畜で培ったものがあるから体力も気力も結構自信あったものの、やはりというかなんというか、無理なのか。と肩を落とす
 自分の力不足に心の中でナズナさんに謝っていると、「さて」と時成さんが立ち上がり、屋根裏への梯子を下ろした


「由羅のハートの進捗でも見てみようか」


 一緒に屋根裏へと上がれば時成さんはいそいそとモニターを出してそこに好感度メーターなるものを映し出す


「おや、凄いねゲンナイとナズナに続いてサダネもハートが二つになっているね」
「…え、サダネさんもですか?」
「うん。近頃顔色もよくなっていたし由羅のおかげであの子も柔らかくなったからね」
「……。…ま、まぁ日々仕事を手伝ったりしてますからね!」


 むしろそれくらいしか心当たりなし!
 ゲンナイさんの時もそうだけどいまいちどうやって好感度上がるのか謎!人間って難しい!


「まぁ何がその人の救いになるのかなんてわからないからね」


 そう言って小さく笑った時成さんの表情がとても珍しくて、私はまじまじとその顔を見た。
 いつもの胡散臭いあの笑い方ではなく、まるでわが子を見るかのようにモニターに映るトキノワの皆を見ている。時成さんのこんな顔、初めてみた…


「時成さん、嬉しそうですね」
「そう見える?」
「はい」
「…そうならきっと由羅のおかげだね」
「え、なんでですか?」
「知らなくていいよ」
「じゃあ言わないでくださいよ」


 このやろう…中途半端が一番気になるんですよ。とジトリと見れば、時成さんはもうなにごともなかったような無表情でモニターを触っていた


「時に由羅。共鳴の必要のある子たちとまだ全員会っていないようだけど」
「え?」


 そういえば正確な人数聞いていなかったけどまだ会ってない人なんていたのか。
 てっきりもう出会った7人だけなのかと…


「あと何人くらいいるんですか?」


 まぁいってもあと一人か二人くらいだろうと聞いてみれば、時成さんはモニターをスクロールするとハートがゼロの人物たちを映し出す


「由羅が出会っていない子たちがあと4人。合わせると全部で11人だね」
「え………。」

 ガーンと頭の上にたらいが落ちてきたような錯覚を覚えながらも、そんなにいるのか。と軽く絶望する


「・・・ち、ちなみにその全員とハートいくつになれば共鳴とやらができるんですか?」
「そうだね、少なくとも全員とハート三つ以上はほしいね」
「それどんな無理ゲーですか」


 「由羅ならできるよ」と無責任発言をする時成さんを久しぶりに殴りたくなった。
 この人は一体なにをもってそんな事を言えるのか甚だ疑問だ


「それに私も協力はするからね」
「その協力って具体的になにしてくれるんですか?」
「皆の好物や好きな装いなどを教えてあげる」
「それ本人に聞けば済む話では?」
「でも由羅の世界の恋愛ゲームでサポートキャラがすることといえばだいたいこうだろう?」
「時成さん…半分遊ぶのやめてもらえますか?」


 そもそも恋愛ゲームを参考にしてるとこから間違えているんですよ。ナス子さんとか女性もいるのに…。まだ出会ってない人の中にも女性の名前が…

 あれ?とモニターの中につい先ほど聞いた名前を発見し、私は(まさかね…)と小さく笑って時成さんに視線を向ける


「“アネモネ”って名前がモニターにあるんですけど、この人ってナズナさんのお姉さん…じゃないですよね?」
「ナズナの姉、アネモネも対象人物だね」
「・・・昏睡状態なんですよね?」
「うん」
「ハート増やすの無理じゃないですか?」
「鍛錬をがんばりなさい」


 「早く起こしてあげたいからね」と胡散臭い笑みを浮かべる時成さんに私は半ば投げやりに「わかりましたよ!」とため息をはいた。

 この人になにを問答しても意味がない、といい加減私も学習しよう。
 「もう戻ります。」と呆れと不安で少し頭痛のする頭を押さえながら屋根裏から出ようとする私を「由羅」と時成さんが呼び止めた

 なんですか。と視線だけで尋ねれば真顔の時成さんが私を見る


「気は急いても焦らぬように、時間は有限だけどこの屋根裏だけは無限の中にあるからね。何かあればここにきなさい」


 由羅ならいつでも入室できるようにしておくよ。と最後に手を振って時成さんは私の背を押して屋根裏から追い出すとその戸をバタンと閉めた


 時成という男は相変わらず、何を考えているのかわからない…
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