乙女ゲームの世界でサポートキャラに恋をしたので、イケメン全員落としてみせます。

あみえ

文字の大きさ
36 / 112

36 射的で遊びましょう

しおりを挟む
 ミツドナの町は早朝だというのに活気あふれ賑わっていた。城下町だからかマナカノの町より華やかさがあるように感じる。行きかう人達の明るく幸せそうな顔を眺めながら歩いていると、前からイクマ君の悲しげな声が聞こえてきた。


「え~!もう帰るんすか?矢場行きましょうよ~!」


 聞きなれない言葉に「矢場?」と首を傾げると、トビさんがため息交じりに答えてくれた


「遊戯場のことだぜぃ。縁日とかである射的の豪華版だな」


 なるほど。と納得していれば「子供の遊びだ。」とまったく行く気がない様子のトビさんにイクマ君が食い下がっていた


「とか言って~?トビさん負けるのが怖いんじゃないっすかぁ~?接近戦専門だから飛び道具苦手っすもんねぇ?」
「アッハッハ!違うよイクマ!トビはね、プリンセス由羅の前で負けてカッコ悪いとこを見せたくなーー」
「上等だ!ボロクソにしてやるぜぃ!!」


 キトワさんの言葉を遮ったトビさんは「ついてきな!」とそのままズンズン歩き出した。その様子にイクマ君はガッツポーズをして、キトワさんはやれやれと肩をすくめる
 
 あ、結局行くのね。と苦笑いしながら私も三人のあとについていくのだった。


(トビさん意外と煽られ耐性低いんだなぁ…)





ーーー





「わぁ~!結構色んな景品があるんですね」


 矢場という名の遊戯場に入ってすぐ、壁一面に並ぶ様々な景品たちに目移りする。 子供向けのおもちゃのようなものから大人向けの装身具やちょっとした日用品まであり、トビさんは子供の遊びだと言っていたけど、このラインナップを見ると客の年齢層も様々なのだろうことが伺える。

 的を撃つのは弓矢かコルク銃のどちらかを選べるらしく、イクマ君とトビさんは弓矢。キトワさんは銃を選んでいた。


「で?どうやって勝ち負け決めるんでぃ」
「あ、考えてなかったっす!」
「そこは君達決まっているだろう!『由羅嬢が欲しいと思う景品を先に射止めた者』に勝利の女神である由羅嬢はほほ笑むのだよ!」


 おっと。思わぬ形で巻き込まれてしまった。キトワさんのせいで私に集中する視線に苦笑いをこぼす。


「由羅なにが欲しい?」
「なんでもいいっすよ~」

「じゃ、じゃあアレで…」

 
 遠慮しない方がいいのだろうな、と。一番気になっていた景品を指差した。
 金色と黒の塗装がされた表紙に、見たことのない文字が刻まれたひとつの本。なんの本かも、何が書かれているのかもわからないけど何故か気になる…。


「あの本だな!」
「負けませんよ~!」


 狙いを定めた二人がパシュッと勢いよく放ったその矢は
 綺麗な放物線を描き、目当ての景品のーー。遥か上へと、ポスっと情けない音をたて突き刺さった・・・。


「「「……」」」

「ダメダメだね!!まったくもってダメンズだね!」


 肩を落とすイクマ君と悔しそうに歯ぎしりするトビさんの間に立ち、キトワさんは優雅に銃を構えると躊躇なくパァンと撃ち放つ
 一直線にまっすぐ伸びたそれは『コンッ』と見事に本へと当たり、ポトリとコルク弾が床に落ちた。

 店主のおじさんが「おめでとうございます!一発大当たり!」とカランカランとハンドベルを鳴らしながら渡してきた景品を受け取ると、キトワさんは私へと体を向ける


「どうぞ。プリンセス由羅、お目当ての品だよ」


 スッとまるで王子様のように片膝をつき、キラキラとしたオーラを纏いながらほほ笑むキトワさんに、私は少し照れながらも「ありがとうございます」と笑顔で受け取った


「気をつけてくれ由羅嬢!僕の華麗なる美技に惚れてしまうのは仕方ないことだが僕を手に入れるのは一筋縄ではいかないからね!」


 紳士的な仕草は早々にいつもの調子に戻り高らかに笑いだしたキトワさんに小さくため息を吐く。大丈夫ですキトワさん。惚れないので


「…ふふ、でも本当かっこよかったですよ」


 遠く離れた景品にたった一発で当ててしまうその技術も度胸も並はずれているのは確かだろうから。と受け取った本をぎゅっと抱きしめながら改めて御礼を言えば、キトワさんは少し驚いた顔をしたあとに「どういたしまして」と私の手を取ると、その甲にキスを落とした…。


「…へ…!?」


 「またほしいものがあればいつでもこのキトワに言ってくれて構わないよ」とウインクとともに言われ私の頬がじわりと赤くなる。…手の甲にキスされるなんて漫画や映画の中だけだと思っていた…。まさか体験してしまうとは…
 呆然としていれば私の肩をガシリと掴んだトビさんが「ええい離れろぃ!」と私をキトワさんから追いやる


「次は俺も銃でやる!由羅どれがいいんでぃ」
「あ、じゃ僕も銃でやろ~!まだ勝負はついてないっすよキトワさん!」
「やれやれ。君達ではこの世界に寵愛されているこの僕に敵うことなど永遠に不可能なのだといい加減気付きたまえ。だがいいとも!受けてたとう!売られたからには買わねばね!」


 その後、ものすごく白熱した射的合戦は小一時間ほど行われ、お店の景品をほぼ獲ってしまった三人は涙を流す店主に半分ほど返納していた。

 それでも籠いっぱいに詰め込まれた景品の数々を持って、私達はやっとマナカノの町への帰路についた。





ーーーーー





「ただいま戻りました~!」


 トキノワに帰ってきた頃には日は完全に沈んでしまっていた。キトワさんとトビさんが今回の報告をしに時成さんの元へ行き、イクマ君は別の用事があるらしく「お疲れ様でした!」と元気よく叫ぶと去って行っていった。

 イクマ君を見送ったあと、大量の景品をどさりと玄関へ置けば「おかえりなさい」と出迎えてくれたサダネさんが目を丸くしていた


「なんですかこれは…」
「由羅ちゃんおかえり。って…随分楽しんだようだな」


 後から来たゲンナイさんも景品の山に苦笑いを零していたので「私が遊んだわけではないですからね!」と一応弁明しておく。
 景品を獲るだけ取って遊び尽くして、全て私に押し付けたのはあの三人です!


「まぁなんとなく分かった。それは由羅ちゃんがもらっときな」
「部屋に運ぶの手伝いますよ」


 まぁでもなんだかんだ日用品や衣服はありがたい。
 初めて自分の物だといえるものが部屋に並び、少しうれしく思いながらも、数日ぶりのトキノワの自室にどこか安心している自分に驚いた…


 あ、私…。ここをーー
 トキノワを、帰ってくる場所だと思ってしまっている…。


「…。」


 いいことなのか悪いことなのか…。
 それすらわからないけど、少しずつ変化していく自分の心境に私は小さく笑みを浮かべた。


 ここに居れることが『嬉しい』と私の心が告げている。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...