乙女ゲームの世界でサポートキャラに恋をしたので、イケメン全員落としてみせます。

あみえ

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91 キトワとナズナ

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「時はきたれり!ついにきたのだね由羅嬢!何故かはわからないが僕は!この時をずっと待ち望んでいた気がするよ!」

「いきなり何わけわかんねーこと叫んでんだてめぇは!目の前の戦いに集中、って何泣いてんだ!!」


 ふざけんなっ!と叫ぶナズナの声が聞こえるけれど、そんなの気にしている余裕は今の僕にはない。だってそうだろう?この時をどれほど待ちわびた事か

 それも途方もない時を、と考える思考に目を細める。


 はてさてこれは、一体誰の感情だろうね…。
 すくなくとも、今の僕のものではないことは確かだ。


 だけど不思議といやな心地ではない


(いいとも。)


 普段なら代弁など、ごめんこうむるところだけれど。僕の中に感じる光がとても暖かく、今の僕はすこぶる気分がいい。

 どこのだれかわからないけれど、僕の体を使うことを
 今だけは許してあげるよ。


「ナズナ!どうやら君は随分と前にこの感覚を知っているようだね」
「あぁ?」
「お互いあとは目の前の異形を倒すだけだよ!では幸運を祈る!助けがいるようなら言ってくれ!」


 通報のあったフダツの村内を、異形を誘導するように駆け抜けていく、人の気配のない平地につくと、スタンと地に足を下ろし、その場に留まり
 自分の頬に流れる涙が止まるのを静かに待った。

 己の中で、激しく渦巻いていた誰かの感情も、涙と共にしだいに落ち着きを取り戻していくのが分かる…。

 涙が完全に止まり、そっと目を開けたとき
 目の前には、おそろしくも長い体を持った異形が僕を見下ろしていた。

 ガバリと口が開き、そこからは禍々しいほどの瘴気があふれ出てくる…。


「…あいにく。今の僕には、そんなものききはしないね!」


 それに恐れをなしていたころは終わったのだよ!
 “不殺の鎖”はいま、解き放たれた!!

 タンっと飛び上がり、ジャラララ!と持ちうる全ての暗器を、その長く大きな体すべてになげうっていく。遠慮のいらぬ攻撃というのはいっそすがすがしいものだね。


「ギシャァア!」


 あぁ、なんとも…甘美な悲鳴に聞こえるね。その声をずっと聴きたかった気がするよ…。


「君と僕のえにしもこれでおわりだね、蛇狂。」


 さようなら。





ーーー





(なんなんだよ一体…)

 キトワが突然泣きながら、わけのわからないことを叫んだかと思えば、あっという間に異形を倒してしまった。

 さっぱりわけがわからねぇ。と盛大に顔をしかめた時


「うおっ!」


 一瞬の油断をつかれ、長耳の異形の攻撃に対する反応が遅れた俺の脇腹を、その爪が掠めた。

 う、ちくしょー…。また傷できちまった…。 
 しかもしっかり瘴気も含まれてやがる・・・。

 由羅にまた浄化なんてものをさせるわけにはいかねぇのに、と考える傍から瘴気の毒にぐらつきだした視界に(あ、やべ。)と焦る。


「おやおやおや。何をやっているんだいナズナ!せっかくと解放されし時に油断し手傷を負うなんてまったくもってダメダメだね!由羅嬢の意にまったく応える気がないのは一体どういうことなんだい!それとも単純にナズナにはそれに見合うほどの実力がないということなのかな!僕のように華麗に始末をできるだろうと思っていたのにこれにはプリンセス由羅もがっかりする事請け合いだn--」

「だぁぁああぁあ!!うるっせぇぇええ!!」


 ちったぁ黙りやがれ!
 もとはといえば、お前がいきなり泣き出してわけわかんねーこと言ったからだろうが!


「わからなくはないだろう?ナズナはとうにその境地を見ているのだから。君も感じたのだろう。由羅嬢が心に触れ、それを解放してくれた。と」


 くそが、分かってんだよ!あの時のことだろ。よくわかんねぇ異物とやらを由羅が取り除いてくれたときだ。


「不殺の鎖は解き放たれたのだよナズナ。そのよく聞こえる耳を傾けてみたまえ。君の中にある由羅嬢の暖かな光に」


 『もう大丈夫』だと。言っているだろう?


「いちいち…」


 人の感情を読んでんじゃねぇぇ!


 勝手に人の感情を読み、無理やり会話を成立させてくるキトワへの怒りに身を任せるようにムチを握りしめる。
 大振りに振りかぶったそれが、襲い掛かってくるその異形に放たれ
 異形の両手両足を縛り上げ、締め付ければ、断末魔のような甲高い悲鳴が聞こえた


(クソが…!)


 …気付いてんだよ。お前なんかに言われなくても…。とうの昔にずっと…


 この俺様の能力はなんだと思ってやがる…
 この俺様を誰だと思ってやがる…!


 シュウシュウとチリへと化していく異形を前に、血の流れる脇腹を押さえ、ガクリと地面に膝をつくと、パチパチと拍手をしながらキトワが「おみごと」とにっこり笑っていた。


「うっ」


 キトワによって無遠慮にブスリと脇腹に刺された注射から薬が注入され、瘴気の苦しみが多少和らいでいく…。


「由羅嬢の血を媒体にした新薬だよ。今までのものよりは即効性がある」
「礼は、言わねぇぞ」
「別にいいさっ!今の僕はすこぶるご機嫌だからね!」
「…ハン!そうかよ」


 由羅の血が体内にあるせいか、それとも宿敵の異形をこの手で倒せたせいか…。
 自分の頬に一滴だけ涙が流れた…。

 同時に、頭の中に浮かぶ、あの笑顔に
 どうしようもない恋しさがあふれてきた…。


 あぁちくしょう…由羅に会いたい……。



「まったくもって同感だねナズナ!では急いで帰ろうか!」

「だから、いちいち…」


 人の感情を勝手に読むんじゃねぇ!



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