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第0019話 編入生
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秋羽はたまに自分が厚かましいと感じることがある。
校長を邪魔しないように静かに待機し、ドアの隙間から中で起こる音色を想像しながら春の情景が浮かんでくるのだ。
二十数分も待つと下校ベルが鳴り室内の男が低く唸った。
「三十分近くやっと出てきた……早く紙を持ってこい」女子は甘えた声で言った。
「大白梨、上手になってるね」
「あーあ、お前の奥さんと比べたらどっちが上手?」
「そりゃお前だよ。
もう動きも色っぽいし、うちの黄婆は木っ端みたいなもんだから興味ないさ」
「切、男ってみんな新鮮なのが好きなんだよ」
「早く服を着ろ今下校だから人が来るぞ」
「うん……」
室内で男女が冗談を言い合いながら衣服を纏う音が聞こえた。
秋羽は首を振った。
「このバカ校長め、他の教師も授業中なのにオフィスで女と遊んでるんだから五師叔の言葉通りだよ。
官僚なら金と女が手に入る」
三分後オフィスのドアが開き三十代半ばの女性が現れた。
肩に垂れ下がったウェーブヘア、中上級の容姿で白い肌色、豊かな体躯に紫のワンピースを着ていて徐娘ながら風情があった。
彼女は顔を赤くして外に人影を見つけて驚いたが十七八歳の地味な少年だと気づき眉根を寄せた。
「お前は誰?ここにいるのはなぜ?」
秋羽は笑みを浮かべて言った。
「新入生です。
楊校長様にお目にかかりたいのです」
室内の男が尋ねた。
「白さん、誰ですか?」
女性は答えた。
「知らないと言っている。
新入生だと言う」
「中に入れろよ」男性が指示した。
女性は部屋を出て「楊校長様に来てください」と言いながらヒップをくねらせながら去っていった。
高級靴の音が廊下でカランと響き、彼女の臀部はまるで磨かれた石のように揺れ動いていた。
なんて乱暴な主任だよ……秋羽は視線を引き戻しオフィス内を見回した。
広い空間に高級フローリングが光り輝き黒革のソファと豪華なテーブル、クローゼットにはセット本が並び水槽には五十センチ近い銀色の魚が泳いでいた。
奥には三メートルのデスクがあり後ろに快適そうな椅子に五十代の男が座っていた。
彼は黒いアマニスーツを着て光沢のある大きな頭髪で神々しい風貌だった。
秋羽がこの男とその女性の行為を目撃したことを知らないなら校長としての威厳があるように見えた。
**(ここに適切な表現を入れる)**
楊徳山の顔には疲れが滲んでいた。
五十年代後半の男は体力も衰え、激しい運動を終えた直後の疲労感が否めない。
彼は険しい表情で訊ねた。
「何か用か?」
秋羽は笑みを浮かべて答える。
「楊校長さんですか。
私は秋羽と申します。
林雪珊さんが私を呼んでおられるようです」
楊徳山の脳裏に前日、成祥グループ社長・林成棟の娘が訪ねてきた情景が蘇った。
彼女は転入生の手続きで十万円分の金券を渡し、その金券で大白梨(おおしらり)に一万数千円の白金ネックレスを購入した。
大白梨は感激して翌夜、初めて後門を開けてくれたのだ。
恩恵を受けた楊徳山の態度が軟化する。
「わかった。
君は林社長の遠縁だそうだ。
転入生としてこちらに来てくれ」
秋羽が頷く。
「はい」
「貴方を高三五組に入れてやる。
待ってろ、担任教師を呼んで……」
電話一本で呼び出した三十代半ばの小太りの男教師・魏漢峰(ぎえんぽう)が部屋に現れた。
「楊校長さんですか? 何でしょうか?」
「前々日に話したやつだ。
君のクラスに転入生がいるはずだが、今日は秋羽君だ。
連れて行ってくれ」
「ああ、わかりました。
秋羽君、行きましょう」
魏漢峰は秋羽を自室へ案内した。
四人用の共同事務室は校長室の四分の一にも満たず、机や鉄製の引き出し以外に水筒だけが置かれていた。
室内には三名の教師がいた。
いずれも四十半ばから五十代前半で、紅茶を飲みながら雑談していたが秋羽は無視した。
そのうちの太った女教師が訊ねた。
「魏さん、生徒ですか?」
「ええ、新入生です」
もう一人の短髪の女教師が冗談めかして返す。
「魏さんの授業は評判ですからね。
新入生もみんな貴方のクラスに来たいんですよ。
前にも来たばかりの可愛い女の子がいましたよ。
高級車で来ていたみたいで、ポルシェとかいうブランドだったかな? 一千万円くらいするやつでした」
窓際の五十代半ばの白髪教師は感嘆した。
「今の金持ちって本当に多いねえ。
子供をどう育ててるんだろうか。
高校生にして車を持たせるなんて……私の場合は、二十数年分の教職生涯分ですよ!」
新入生がポルシェで通うというのは夏蘭(なつら)という娘だと秋羽は直感した。
「まあ、ご縁ですね。
家が裕福なんでしょう」
太った女教師が皮肉を込めて言う。
「裕福でもあんなに派手になるのはどうか……学生なら勉強が第一ですよ。
例えばこの子は控えめな服装でいいじゃないですか」
秋羽は笑って返す。
「うちの家庭は貧乏ですからね」
その時、魏漢峰が引き出しを開けた。
そこから一冊の教科書と双肩バッグ、校服を取出して机に並べた。
「秋羽君、これらは学校からの配布物です。
バッグや制服は統一デザインです。
平日は着なくてもいいですが月曜日は必須ですよ。
なぜなら昇旗式があるからです。
まとめて持って行ってください」
校長を邪魔しないように静かに待機し、ドアの隙間から中で起こる音色を想像しながら春の情景が浮かんでくるのだ。
二十数分も待つと下校ベルが鳴り室内の男が低く唸った。
「三十分近くやっと出てきた……早く紙を持ってこい」女子は甘えた声で言った。
「大白梨、上手になってるね」
「あーあ、お前の奥さんと比べたらどっちが上手?」
「そりゃお前だよ。
もう動きも色っぽいし、うちの黄婆は木っ端みたいなもんだから興味ないさ」
「切、男ってみんな新鮮なのが好きなんだよ」
「早く服を着ろ今下校だから人が来るぞ」
「うん……」
室内で男女が冗談を言い合いながら衣服を纏う音が聞こえた。
秋羽は首を振った。
「このバカ校長め、他の教師も授業中なのにオフィスで女と遊んでるんだから五師叔の言葉通りだよ。
官僚なら金と女が手に入る」
三分後オフィスのドアが開き三十代半ばの女性が現れた。
肩に垂れ下がったウェーブヘア、中上級の容姿で白い肌色、豊かな体躯に紫のワンピースを着ていて徐娘ながら風情があった。
彼女は顔を赤くして外に人影を見つけて驚いたが十七八歳の地味な少年だと気づき眉根を寄せた。
「お前は誰?ここにいるのはなぜ?」
秋羽は笑みを浮かべて言った。
「新入生です。
楊校長様にお目にかかりたいのです」
室内の男が尋ねた。
「白さん、誰ですか?」
女性は答えた。
「知らないと言っている。
新入生だと言う」
「中に入れろよ」男性が指示した。
女性は部屋を出て「楊校長様に来てください」と言いながらヒップをくねらせながら去っていった。
高級靴の音が廊下でカランと響き、彼女の臀部はまるで磨かれた石のように揺れ動いていた。
なんて乱暴な主任だよ……秋羽は視線を引き戻しオフィス内を見回した。
広い空間に高級フローリングが光り輝き黒革のソファと豪華なテーブル、クローゼットにはセット本が並び水槽には五十センチ近い銀色の魚が泳いでいた。
奥には三メートルのデスクがあり後ろに快適そうな椅子に五十代の男が座っていた。
彼は黒いアマニスーツを着て光沢のある大きな頭髪で神々しい風貌だった。
秋羽がこの男とその女性の行為を目撃したことを知らないなら校長としての威厳があるように見えた。
**(ここに適切な表現を入れる)**
楊徳山の顔には疲れが滲んでいた。
五十年代後半の男は体力も衰え、激しい運動を終えた直後の疲労感が否めない。
彼は険しい表情で訊ねた。
「何か用か?」
秋羽は笑みを浮かべて答える。
「楊校長さんですか。
私は秋羽と申します。
林雪珊さんが私を呼んでおられるようです」
楊徳山の脳裏に前日、成祥グループ社長・林成棟の娘が訪ねてきた情景が蘇った。
彼女は転入生の手続きで十万円分の金券を渡し、その金券で大白梨(おおしらり)に一万数千円の白金ネックレスを購入した。
大白梨は感激して翌夜、初めて後門を開けてくれたのだ。
恩恵を受けた楊徳山の態度が軟化する。
「わかった。
君は林社長の遠縁だそうだ。
転入生としてこちらに来てくれ」
秋羽が頷く。
「はい」
「貴方を高三五組に入れてやる。
待ってろ、担任教師を呼んで……」
電話一本で呼び出した三十代半ばの小太りの男教師・魏漢峰(ぎえんぽう)が部屋に現れた。
「楊校長さんですか? 何でしょうか?」
「前々日に話したやつだ。
君のクラスに転入生がいるはずだが、今日は秋羽君だ。
連れて行ってくれ」
「ああ、わかりました。
秋羽君、行きましょう」
魏漢峰は秋羽を自室へ案内した。
四人用の共同事務室は校長室の四分の一にも満たず、机や鉄製の引き出し以外に水筒だけが置かれていた。
室内には三名の教師がいた。
いずれも四十半ばから五十代前半で、紅茶を飲みながら雑談していたが秋羽は無視した。
そのうちの太った女教師が訊ねた。
「魏さん、生徒ですか?」
「ええ、新入生です」
もう一人の短髪の女教師が冗談めかして返す。
「魏さんの授業は評判ですからね。
新入生もみんな貴方のクラスに来たいんですよ。
前にも来たばかりの可愛い女の子がいましたよ。
高級車で来ていたみたいで、ポルシェとかいうブランドだったかな? 一千万円くらいするやつでした」
窓際の五十代半ばの白髪教師は感嘆した。
「今の金持ちって本当に多いねえ。
子供をどう育ててるんだろうか。
高校生にして車を持たせるなんて……私の場合は、二十数年分の教職生涯分ですよ!」
新入生がポルシェで通うというのは夏蘭(なつら)という娘だと秋羽は直感した。
「まあ、ご縁ですね。
家が裕福なんでしょう」
太った女教師が皮肉を込めて言う。
「裕福でもあんなに派手になるのはどうか……学生なら勉強が第一ですよ。
例えばこの子は控えめな服装でいいじゃないですか」
秋羽は笑って返す。
「うちの家庭は貧乏ですからね」
その時、魏漢峰が引き出しを開けた。
そこから一冊の教科書と双肩バッグ、校服を取出して机に並べた。
「秋羽君、これらは学校からの配布物です。
バッグや制服は統一デザインです。
平日は着なくてもいいですが月曜日は必須ですよ。
なぜなら昇旗式があるからです。
まとめて持って行ってください」
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