花間の高手

0200

第0227話 天地に誓って

犯人は学校にいないため、警察が空しく帰る。

その様子を見た吴启正は不満げに「和尚は逃げても寺は残るさ。

いずれ捕まえるだろう」とつぶやいた。

李伟は内心で「この野郎を労働教養所に入れてやりゃあいいんだよ、天罰が下ったってことだわ。

ようやく晴れやかになったぞ」と喜びながら、「吴哥、彼の罪状は何か？」

と尋ねた。

普通なら厳しく遮断するはずの情報を、李伟には特別扱いだった。

吴启正は「これは秘密事項だが、小偉君は家族だから教えよう。

秋羽という奴は第一高校の校長と保安隊の正副長を凄まじい力で傷つけたらしい。

重大な暴行罪だ」

生徒たちが息を呑む。

「秋羽って凄いヤローだぜ、保安隊の正副長や校長までやっちまったんだよ？ それこそ学生とは思えない」

夏蘭は声を上げそうになりながら口を手で覆った。

心配そうに「大変なことになったわね。

あの子めちゃくちゃやっちゃったのよ、刑務所行き確定だわ」

四大金刚たちは互いを見合った。

「羽哥は大規模プレイしたぜ。

今警察が全力で捜索中だから、どうにもならんかも」

李偉はさらに興奮しながら眉をひそめた。

「そんなことできるわけないじゃないか。

まったく無法地帯だよ」彼の口調には父親である市長の影響が色濃く、まるで上官のように振る舞った。

吴启正は鼻で笑いながら「この野郎は危険人物だ。

貴方たちが見かけたらすぐに警察に連絡してくれ」

李偉は快諾した。

「心配しなよ、見つけたらすぐ通報するさ」

吴启正が頷き手を振った。

「解散だ」

警察たちは空しく去り、秋羽が校長と保安隊の正副長を凄まじい力で傷つけたという噂は学校中に広がった。

最初に聞いた人々は目を見開いた。

「あの子めちゃくちゃやっちゃったんだぜ、校長まで殴り付けたなんて」

瞬く間に秋羽は有名人になった。

第一高校だけでなく他校でも話題になり、教師と生徒が熱心に議論した。

下校後、夏蘭は静かな場所でスマホを取り出して秋羽に電話をかけた。

彼の隣には美女教師・葉惜萍が眠っていた。

疲労から深い眠りに入っているようだ。

和旋音楽が秋羽を起こすと、彼はぼんやりとした目を開けた。

隣の葉惜萍を見ながら「ホテルで寝てます」と嘘をついた。

夏蘭が怒鳴った。

「何よ？ まだ寝てるなんて！ 自分が犯した事件も知らないのか？ 悪ガキめ」

秋羽は冗談めかして返す。

「どうせ天が崩れるわけ？」

「ほぼその通りさ。

今警察が銃を携帯して学校に乗り込んでたんだよ。

暴行罪で逮捕されるかもしれないって……あんたも凄いわね、校長までやっちまったなんて！ ずうずうしいわね」

夏蘭の口調から不満が伝わってくる。

秋羽は相手が自分を心配していることに感動したが、この男の心理的耐性は尋常ではない。

天が崩れても必死に抗いながら冗談を飛ばす始末だ。

「当然独身よ、まだ妻がいないんだから」

「お前……くそやつ！殺してやりたいわ」夏蘭が声を荒げた瞬間、秋羽の鼓膜が震えた。

慌ててスマホを離し笑いながら訊ねる。

「どうしたの？」

隣で葉惜平も目覚めたらしい。

しなやかな体を起こし大きな目を開けて向かいの男を見つめる。

何も言わず黙っている。

夏蘭は我慢できず怒りを爆発させた。

「本当に知らないのか、それとも馬鹿なのか？今警察がお前を探してるんだよ。

この件は簡単に済ませられないわ。

私の意見ではまず自首して。

それで雪姫と善後処理するわ。

楊校長や他の二人には金を渡し関係者に頼んで釈放させる」

夏蘭の全てが秋羽を想っていることに気づき、彼はほっとした。

「大丈夫だよ。

自分で解決できるから。

お前たちと雪姫は動かないで」

「本当に大丈夫？」

夏蘭もその男には才能があることを知っている。

「ほぼそうよ。

もし駄目なら蘭姐や雪姫に頼むわ」

葉惜平の悲鳴が響く。

「どうしてこんなことになるの！」

秋羽は電話を切った。

葉惜平が震える手で彼を見つめる。

涙と哀愁が滲んだ瞳。

「夏蘭から連絡があったのよ、警察がお前を探してるって……」秋羽が穏やかに説明する

「わあ！」

葉惜平は嗚咽をこらえられず抱きついた。

彼は驚いて訊ねる。

「姐さんどうしたの？泣かないで」

答えは涙だけだった。

「うぅ……私のせいでお前が警察に捕まるなんて……」

秋羽は葉惜平の背中を撫でた。

「姐さん、目を見て」彼女は涙だらけの顔を上げる「私は君の家族よ。

どんなことがあっても君を守るわ。

命をかけてでも」

「小羽……」

葉惜平が秋羽を抱きしめる。

この男がどれだけ自分の中にあるのか、計り知れない重さを感じた。