花間の高手

きりしま つかさ

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第0259話 毒攻め

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群殴事件で327号室の新番頭・秋羽が犯人たちにその実力を示した後、彼女を軽視する者は誰もいなくなった。

秋羽という名前は瞬く間に刑務所中に広まり、知らない者などいない存在となった。

山猪が壁際で身動き一つできないほど痛めつけられながら呻き声を上げる様子は、かつての横暴さとは無縁なものだった。

彼の周囲には傷跡と苦しみに満ちた仲間たちが集まり、以前のような威厳は影も形もなく消えていた。

放風場では泥鳅たちが328号室を破壊したことで得た勝利感で胸を張り、鼻高々の表情を見せていた。

彼らの痛みは管教からの罰則によるものだが、その苦痛さえも無視できるほどだった。

樹陰に集まった三人の女看守たちが話題を振る。

「男は犬だよ」と小曾(26歳)が憤りを込めて言うと、宋敏友は皮肉めかして「現代社会では誰が誰を玩物にするか分からないわ。

あなたも彼と寝たときには快感を得ていたでしょう?」

と返す。

「お互いの欲求を満たすだけさ」と小曹が笑いながら補足する。

宋敏友は同意し、「ずっと我慢していると体に悪いからね」と付け加えた。

話題は再び犯人暴動に戻り、小曾が「昨日入所した秋羽という子が新番頭になったのよ。

山猪たちを叩き潰したのは彼女だったわ」と報告すると、小曹は興味津々に「秋羽…その名前は?」

「私が先日紹介しようとしたあの子よ」と宋敏友が答えると、「あいつなら…」と小曹が鼻を鳴らす。

「私のような職業では無理よ。

この顔じゃあ」

突然、赤い法拉利の走行音が響き渡る。

金色の日差しを受けて輝くように、車体は眩しい光彩を放ち、全員の視線を集めてしまう。

「百五十万くらいだろう?」

と誰かが驚いて言うと、「最新モデルの限定版だから五百万以上だよ」と別の声が返り、「金持ちだわ…」

看守たちも興味津々に見つめる中、小曹は羨ましさを隠せない。

「私の大好きな車よ。

でも給料で一生働いても買えないわ」

車が近づくにつれ、小曾が「運転席には若い女性が…二十代前半くらいかな」と観察する。

法ラリーは柵直前まで加速し、急ブレーキをかけた瞬間、車体が横滑りして止まった。

その技術に全員が感心しつつも、誰も声を出せなかった。



彼時、一連の監視官と囚人がぼんやりと見ていたのは、運転席に女性がいることだった。

その女性は一体どんな人物なのか? 美しいのか醜いのか?

ドアが開くと最初に現れたのは水钻を散りばめた高級サンダルの足先だ。

日光でキラリと輝き、明らかに価値のある品だった。

しかし男性の心を鷲掴みにするのは、その白く美しい脚だった。

爪にはピンク色のネイルが施され、上質な瑪瑙のように艶やかに映えていた。

次に現れたのは驚異的な美少女だ。

紫色の髪は風になびき、整った顔立ちと青いコンタクトレンズが目を引き、純白の改良式旗袍でその細身の体を包んでいた。

見つめる人々は呆然と固まっていた。

この状況を作り出したのは二つの理由があった。

一つは彼女が生まれ持った美しさ、もう一つは監視官以外に女性が一人もいないことだ。

囚人たちは真の美女を見たことがなかったため、その光景に圧倒されていた。

監視官たちも驚きを隠せない様子だった。

特に小袁という名前の男は「本気で凄い、超綺麗だぜ!」

と叫んだ。

最も若い監視官・小曹は全員から美少女と評判だったが、その比に及ぶものはなく、彼女自身も劣等感を感じていた。

この女性こそ秋羽の恋人楚雲萱だった。

昨日から連絡が取れず、第一高校で捜索したものの見つからなかった。

ようやく北旺刑務所にいることを知り、救出を試みるためやってきたのだ。

秋羽が強姦罪で逮捕されていると聞き、楚雲萱は激怒した。

それでも彼女は恋人を見届けたいと決意し、表叔の刑務所副長・郝祥江に頼んで訪ねてきた。

到着時には所長が不在だったため、郝祥江は門番を動かしてフェラーリを中に入れた。

楚雲萱は柵のそばまで車を進めると「秋羽!出てこい!」

と叫んだ。

その名前が出た瞬間、全員が驚きを声に出した。

この天女の如き女性が囚人を探すとは!

監視官小曹は「まさか……彼女は秋羽のことを知っているのか?」

と疑問を投げかけた。

男性監視官たちも嫉妬で胸が焼け付く思いだった。

こんな美女が犯人のために来ているなど理屈になかった。

千人以上の囚人が一斉に振り返り、秋羽を見つけると「おっさん!美女が来たぞ!」

と歓声を上げた。

漆黒の瞳で近くの女性を見る秋羽はため息をつく。

やはり彼女は来ていたのだ……

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