闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0482話 地心淬体乳

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山頂に座る黒衣の青年は手印を結び、呼吸を緩やかに繰り返していた。

その吐息ごとに周囲空間が微細な波紋を生み出し、薄白いエネルギーが彼の体内へと流れ込んでいく。

約二時間の静かな修練後、無風にもかかわらず膨らんだ衣袍がゆっくりと収縮し、閉じたまぶたが震えながら開いた。

首を動かして体中の斗気を感じると、蕭炎は春水のように流れるエネルギーに満足げな笑みを浮かべた。

「二ヶ月の深山修練もそれなりに成果があったようだ」彼は軽く声を出すように呟いた。

『三千雷動』の第一段階『雷閃』を突破し、この山中での生活が体中の斗気を凝縮させていた。

彼の推測では現在の実力は八星大斗師の頂点に達しているはずだが、二ヶ月でここまで進んだのは天焚煉気塔での修練とは比べ物にならない速さだった。

それでも目標である『雷閃』を突破できたことに満足し、さらに体中のエネルギーが向上したことは予想外の喜びだった。

青石から立ち上がると、硝煙は手に剣を構えながら遠くの林海を見やった。

風が吹き付けた瞬間、巨大な樹波が連続して押し寄せてきた。

その迫力は大海原の波と見まごうほどで、自然の威力に驚嘆せずにいられなかった。

山頂から眺める樹波をじっと見つめていると、何か違和感を感じた硝煙は鋭敏な直感でその異変を探り当てた。

紫雲翼が背中に広がると同時に彼は軽く羽ばたくだけで林海の中に降り立った。

翼を閉じて一人で立つと、緑の絨毯に浮かぶ黒い点として周囲を見渡す。

両腕を開けば樹波が勢いよく迫ってきて、雷鳴のような音と共に彼を通り過ぎた。

足元の木々は嵐のように揺れ動きながらも、彼の軽やかな動きは葉の如く風に翻る。

百丈規模の樹波が十数分間続き、ようやく遠ざかっていく。

その余韻で顔色を失いつつも目には喜びが溢れる青年が振り返ると、巨大な樹波の残滓を見送りながら胸中で何かが強く揺さぶられた。



右腕をゆっくりと引き締めると、巨大な漆黒の巨剣が瞬時に現れた。

蕭炎はその巨剣を握りしめながら囁くように言った。

「もし攻撃も波のように連続し続けるならば、それは素晴らしい戦闘スタイルではないか?」

玄重剣を手にしたまま首を傾げると、漆黒の瞳孔に茫漠とした思考と苦悩が満ちていた。

その状態はまるで凝固したように見えたが、鋭い目を持つ人なら彼の右腕が極微細な弧を描きながら震えていることに気付くだろう。

蕭炎の静止状態は約一時間も続いた。

彼自身はそれに気づかず、意識の奥深くで先ほど木波が過ぎた際に突然浮かんだ閃光を繰り返し再生させ続けた。

その異様な状態では時間が止まったように感じられ、蕭炎は疲労を感じることもなく、その閃光と木波に秘められた奇妙な痕跡を次々と体感していた。

木波が過ぎ去り、再び押し寄せてくる。

この繰り返しは永遠のように続く。

外界の時間は流れ続けたが、まだ一時間も経過していない。

その間、その異様な状態を利用して蕭炎は無数回にわたって木波が通り過ぎる瞬間の奇妙な感覚を体験した。

その無数の感覚の中で、蕭炎の漆黒の瞳孔にはいつしか微かな悟りの光が浮かび始めた。

「えっ?」

その異様な状態に隠れて薬老の驚愕の声が漏れた。

その声は非常に小さかったが、困惑と驚きを含んでいた。

この状態は薬老の予想外だったようだ。

しかし、蕭炎の奇妙な状態は崩れなかった。

経験豊富な薬老は知っていた。

このような異様な状態は修練者にとってどれほど貴重な機会か。

外界の要因で崩されれば生涯の後悔となるかもしれない。

静寂に包まれた空間から、蕭炎の指先にある古びた黒い戒環から強大な霊力が周囲数十メートルを覆った。

その霊力の働きかけで遠方から聞こえていた獣の低鳴は完全に消え、この地域は薬老の力を借りて絶対的な平和に入り、蕭炎をその異様な状態から引き戻すような外乱が起こらなくなった。

時間はゆっくりと流れ続けた。

蕭炎が静止状態に入ったからでは約三時間が経過していた。

その間彼の身体は石像のように動かなかったが、もし黒い巨剣を握る腕の震えの弧度が少し大きくなっていることに気付いたなら、それは確かに生きた石像だと言えたかもしれない。

静寂に包まれた林海の中で、全身硬直した黒衣の青年が突然小さく震えた。

その震えと共に彼の漆黒の瞳孔から茫漠とした思考と苦悩は消え、悟りの光はさらに拡大していった。



右手に重い槍の柄を握り、蕭炎は槍のように直立した体勢で、鋭利な気配を自然と放ち始めた。

顔が引き締まりながらも、黒い槍をゆっくりと前に持ち上げ、身を乗り出して軽く斬り下ろし、払い、振り回し、払う……といった動きを繰り返す。

重い槍の基本攻撃法は、この瞬間蕭炎が完全に発揮した。

手首の震えと共に槍の速度が急速に増していく中で、最終的には彼の全身が黒い球体の中に包まれるように見えた。

その精妙な槍捌きは、かつての蕭炎には存在しなかったものだった。

林海の上を吹き抜ける烈風の中で、巨大な黒い球体が急速に転がり回る。

その経路を通った木葉は全て粉々になり、たまに球体の中に落ち込むとたちまち灰塵となる。

槍の振り方がますます速くなり、頂点に近づいた瞬間、突然速度が緩んだ。

その唐突な変化は人々の胸を詰まらせるほど不快だった。

黒い球体の中から低く苦しみの声が漏れ、その人影の青年の顔色が急激に蒼白になったのが見えた。

しかし顔色が変わったとしても蕭炎はすぐには止めなかった。

意識の奥深くで樹海の波動時に突然浮かんだ閃きを思い出し、槍捌きの主導権をその曖昧な光に任せた。

鋭い槍風が次第に緩やかになり、代わりに槍身がゆっくりと動き始めた。

外見的には破綻だらけで、どこからでも一撃で相手を負傷させられそうな不完全な槍捌きだった。

槍の動きと共に漆黒の目は奇妙な迷いを浮かべたが、蕭炎の硬直した振り方の動きは突然スムーズになった。

その変化に伴い、先ほどまで破綻だらけだった槍法は急転し、槍の軌道が前後の動作を接続し、槍身同士が密着するように舞うようになった。

まるで無敵の球体のように見えた。

この槍捌きは、以前の蕭炎が強さと速度に頼る乱暴な攻撃とは雲泥の差だった。

玄重尺を得て以来、蕭炎は成套の槍法を修練したことがなかった。

戦闘時は単純に自身の力で相手を圧倒するだけだったが、その強さが一定水準を超える必要があった。

しかし同等の力をもつ敵と対峙した場合、招式の巧妙さが勝負を分けることになるだろう。

招式の巧妙さでは白山の槍法よりも未熟だが、力と速度においては蕭炎の方が優れていた。

この弱点を克服するためには、今回の突然の悟りが必要だったのだ。

「チィ!」



重い剣の振りかざし、突然動きが止まった。

鋭い風が剣先から爆発的に吹き出し、眼前十余メートル先の大木たちの頂上を次々と切り落とした。

剣を下ろしたままの姿勢で、蕭炎は目を見開いていたが、瞬間、清明さを取り戻し、手にした重い剣を見つめる。

先ほどの剣の動きや弧度が脳裏から消えず、まるで焼き付けられたように残っていた。

「……」

口を開けたまま、蕭炎は言葉を失った。

数時間の混乱後、彼は一種奇妙な剣技の攻撃法を掌握していたことに気づいた。

まだ未完成ではあるが、その威力は氷山の一角に過ぎない。

今や磨けば、蕭炎にとって大きな助力となるだろう。

「驚くことではない。

修練の道は偶然ではなく機縁だ。

出会ったものを掴むのは運だが、それを掴めるのは才能と努力によるものだ」と、藥老の声が彼の心に響く。

「多くの人が見逃す機会を掴んだのは、貴方の幸運だからこそ」

この剣技には連続する波のような意図があり、先日の木浪との関係があるのだろう。

今は弱いが諦めないでほしい。

これは始まりに過ぎない。

磨けばきっと、貴方が創り出す独自の剣術となるだろう」と藥老は笑みを浮かべた。

「初めの一歩さえ踏んだなら、成功まであとどれだけ時間かは分からないが、この奇跡を繰り返す小僧には期待している」

頷きながら、蕭炎は剣を背中に差し込み、回復丹を口にした。

体の中から湧き上がる暖かい気分を感じつつ、休息場所を探す前に、遠く山々から響く轟音が雷鳴のように迫ってきた。

「凄まじい声だ。

少なくとも斗王級の魔獣だろう」蕭炎は突然の吼えに驚いて顔を上げ、遠方の山を見つめた。

「まさか」

「そうだ。

その周囲にも同程度の気配があるようだ。

彼らが戦っているのかもしれない」と藥老は淡々と答えた。

「斗王級魔獣に手を出すなんて……」蕭炎の顔に驚きが浮かんだ。

「見に行く?」

「構わんよ」と藥老は無関心だった。

話を聞いた蕭炎は笑みを浮かべ、紫雲翼を背中に広げて飛び上がった。

翼を羽ばたかせると、轟音の方向へ疾走した。



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