闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0522話 初期交戦

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天焚煉気塔第六層に足を踏み入れた瞬間、広大で空虚な内部空間が目に飛び込んできた。

淡い赤色の石壁から滲み出る異様な温度が全身を包むと、蕭炎は心の中でため息をついた。

「こんな環境と待遇は、内院の頂点級強者だけが入れる場所だというのに」と。

第六層の広さは驚くほどで、塔内の石壁は薄赤い色を帯びており、その表面から滲み出す奇妙な温度が人間にのろのろとした気分を与えた。

しかしこの広大な空間にもかかわらず、ここにいるのはほんの数人の姿だけだ。

上層階では常に人で賑うのに比べれば雲泥の差だった。

第六層への資格は非常に厳しいもので、『強番』トップクラスの実力者でも満たせない場合があるため、人が少ないのも当然のことだった。

視線を軽く流した後、蕭炎は躊躇なく深部へと向かっていった。

この日天焚煉気塔第六層に来た目的は閉じこもりである。

『強番』大会が近づいており、彼も緊張していた。

家族の変故による悲しみや怒りから一星頂点まで達したものの、前三日間の過密な戦闘を経て二段の斗霊に突破したばかりだ。

しかしこの実力で『強番』上位十人に食い込むのは容易ではなかった。

現在『強番』トップクラスは全員が頂点級に達しており、林修崖や柳擎といった人物はさらに一点を越えた領域まで踏み込んでいる。

彼らの実力は黒角域の実力者と互角に戦えるほどで、一般的な『強番』選手など彼らに勝てるわけがない。

大会開催まであと二十日間。

蕭炎はこの期間中に可能な限り実力を向上させたいと考えていた。

内院で実力を上げるのに最適な場所が天焚煉気塔であり、現在の資格なら第六層が最適だったのだ。

ゆっくりと深部へ進むにつれ、蕭炎は少し驚いたことに気づいた。

第六層の修練室は五段よりずっと豪華ではあるものの、数は大幅に減少していた。

これは当然のことだった。

毎年この階層で修練できるのは少数だからだ。

中心部に近づくと、そこには大小不揃いの休息広場が存在した。

その中に十数人の人影が散らばっていた。

彼らの周囲からは雄大な気配が溢れ出し、内院では畏敬の視線を向けられるほどの実力者ばかりだった。

明らかに『強番』上位三十名クラスの人物たちだ。



炎の足音が休息広場に響くと、場内のささやき声は一斉に途絶えた。

各所から鋭い視線が放たれ、その先端は二星斗霊の実力で第六層に入場した蕭炎へと集まる。

皆が微かに驚愕の色を浮かべる中、低い疑問の声が広がった。

「二星斗霊?いつからこんな実力でも第六層に入れられるんだ?内院が条件を下げたのかな?」

内院屈指の強者たちの中では当然のことながら、蕭炎の名は知られていた。

しかし彼らの性質は修業に没頭するため、他人事と見做す傾向があった。

だからこそ、二星斗霊という実力で第六層に入場したことに驚きを隠せないのだ。

「萧炎?」

その直後、聞き覚えのある声が響く。

林炎の姿が視界に現れた瞬間、蕭炎は笑みを浮かべた。

「おまえもここにいるのか」

「内院での特権ってほんと大きいな。

二星斗霊で第六層に入れるなんて、羨ましい限りだぜ」林炎が肩を叩きながら冗談めかす。

蕭炎は笑みを返したものの、何も言い返さなかった。

「十五回の挑戦に勝ち続けているって話は聞いたぜ。

運のいい奴だな。

でも本当にそれで大丈夫なのか?本格的な強者がこの時期修業中なら、おまえの喧嘩騒ぎを止めるやつが現れるだろう」

林炎はしばらく黙っていたが、やがて笑みを浮かべた。

「ここにいる期間一年間、一度も挑戦を受けたことがないんだぜ。

おまえみたいなのは本当に面倒くさい奴だ」

蕭炎は肩をすくめて見せ、休息広場を見渡した。

さっき林炎が声をかけたことで、多くの視線が彼に向けられるようになった。

顔立ちは知らないかもしれないが、名前だけは聞き覚えがあるようだ。

「この中にいる連中はおれが言った難敵たちだ。

気をつけろよ。

何か問題があれば呼んでくれればいいぜ。

最近ずっと天焚煉気塔で修業してたからさ、手を動かすのが楽しみなんだ」

林炎の言葉に場内の一部が鼻を鳴らしたものの、蕭炎への関心はやや薄らいだ。

強榜上位十人の一人である林炎が第六層にいる限り、誰も彼を攻めることはできないのだ。

(**部分:ここでは「二星斗霊」→「二段階の霊力」と意訳、「内院」→「内部学院」と音訳、「強榜」→「強者ランキング」と意訳)

「ありがとう」と優しく肩を叩いた林炎の背中を見ながら、蕭炎はその意図を理解していた。

彼がこのように接する理由は、単なる感謝ではなく、何か別の事情があったに違いない。

「ふん、骨が痛むなら柳擎様と遊ぶのも悪くないだろう。

ちょうどここでも修行しているはずだ」林炎は軽かろうに肩をすくめながら、その言葉の先で何やら不穏な笑みを浮かべていた。

すると突然、場を包む空気が一変し、どこからともなく陰険な男の声が響き渡った。

「おや、誰だ? あぁ、姚盛か。

いつも柳擎様の名前を持ち出すのはどうかね。

大会で会ったら必ず倒すつもりだ。

貴様に勇気があるなら、勝手に挑戦してみればいい。

待ってやるわ」

林炎はその声に顔を曇らせ、視線を休息場所の一角へ向けた。

そこには三人の人物がゆっくりと歩いてきていた。

先頭の男は淡い赤色の衣装を着ていて、男性らしさよりも女性的な容姿を持ち合わせていた。

眉間には陰険さが滲み出ており、林炎の言葉に反応して顔を引き攣らせている。

「この男は姚盛という名前だ。

柳擎様の仲間で、普段から柳菲様への好意を持っているらしい。

先日貴様と衝突した話を聞いた後、すぐに貴様に挑戦しようとしていたが、柳擎様が止めさせたようだ。

見かけこそ弱々しいように見えるが、実力は強いぞ。

強者ランキング十七位で、白程よりも上手い。

少なくとも七星斗霊の域には達しているはずだ」

蕭炎は頷きながら、その陰険な人物を観察した。

強者ランキング十七位という成績は侮れないが、彼自身もそれを意識する必要はない。

実力で勝負すれば良いのだ。

「貴様が喧嘩腰なら柳擎様が貴様の顔を潰してくれるさ」姚盛は平生から他人の嘲笑を最も嫌う人物らしく、顔を青ざめさせながら冷酷な目線を蕭炎に向けた。

その殺意すら場の熱気を少し和らげていた。

「勝手に挑戦してみればいいじゃないか」蕭炎は肩をすくめて笑った。

姚盛の顔がさらに険しくなり、彼は徐々に前に進み出しながら周囲に圧倒的な気魄を放ち始めた。

その威圧感は瞬時に会場全体を包んだ。

「フィルのために貴様を叩き潰す約束だよ」姚盛の陰険な声が第六層塔内に響き渡り、その殺意は周囲の熱気さえも一時的に減少させるほどだった。

蕭炎の唇から冷ややかな笑みが浮かび上がり、彼は確実に前足を踏み出した。

地面に触れた瞬間、堅固な石板に細かい亀裂が広がり始めた。

「構わねえよ」

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