闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0527話 仇敵再会

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面前の黒衣老人の問いかけに、蕭炎は胸中で身を凍りつかせる思いが走った。

眼を見開いて周囲を見回すと、急ぎ足で思考を巡らせる。

「もし『見た』と答えたら、この老いた男は秘密を守るため人を殺すようなことをするだろうか?」

陨落心炎の内院への重要性を考えれば、その疑念が自然に湧く。

半空気中には緊張と沈黙が渦巻いていた。

蕭炎の手のひらは汗でベトつく。

目の前の老人からは雲山(うんざん)を連想させる圧迫感が漂い、薬老(やくろう)の助けなしでは、その一撃で自分が粉砕されてしまうと直感した。

しばらく考えた末、蕭炎は決断を固めた。

「見なかった」と言い張るつもりだった。

しかし次の瞬間、老人は再び穏やかに口を開いた。

「君こそが蕭炎だろう?異火同士には非常に曖昧な引き寄せがあるものだ。

塔内の異変を感じ取れたのは、貴方の体中の異火のせいだろう」

その言葉に蕭炎は驚きを隠せなかったが、すぐに安堵した。

「確かに少し感じたことはあるが、この天罰煉気塔には特殊な封印があるため、外に出ればその感覚は薄れてしまう」と慎重に答えた。

老人の目元に笑みが浮かぶ。

「緊張する必要はない。

私は咎めるつもりだとは限らない」。

蕭炎の心配を察したように、彼は優しく手を振った。

「ただ一つ忠告しておこう。

塔中の出来事は他人には口外しないように」

「その通りにします」と即座に約束し、老人を見つめた。

内院の長老たちは大抵斗王級だが、この人物の実力は雲山を遥かに超えていた。

蕭炎は暗に驚きを隠せなかった。

「貴方こそが……」

「我が名は蘇干(そかん)、長老筆頭だ。

彼らは私を『大老老』と呼ぶ」

「やはり……」彼は内心でつぶやいた。

予想通りとはいえ、その言葉にわずかに動揺の色が浮かんだ。



「炎小友、貴方も塔の中の変化を感じ取れるかもしれない。

正直に言っておくと、ここには確かに重大な問題がある。

今はまだ我らが抑え込んでいるが、これは一時的な効果だ。

だから老夫は、貴方が将来的に内院の一助を貸してくれることを願っている」

突然、蘇千の顔が真剣になった。

炎に向かって重々しく告げた。

「この場の長老達の実力でも鎮圧できない状況だ。

貴方のまだ幼い斗霊の力量でどうなされるというのか? 蘇干の言葉に驚きを隠せない炎が、途端に困惑した表情を見せた。

「ふん、異火を持つ貴方は、単なる実力だけで測れる存在ではない」

蘇千は笑みを浮かべて続けた。

「心配するな。

貴方が本当に手助けできるかどうかはまだ決まっていない。

ただ最悪の事態に備えて、別の選択肢を探るだけだ。

もし貴方も無力なら、強制することはない」

ここまで言われると炎も頷くしかない。

苦しげに笑みを浮かべて答えた。

「分かりました。

その時は全力で協力します」

「よし、それなら安心した」蘇千は炎の苦々しい表情を見て、さらに付け足すように言った。

「もし貴方が鎮圧できるなら内院も損しない。

必要なものがあれば何でも提供する。

功法や斗技、薬方など、全てを手に入れられる」

内心で「陨落心炎が欲しい」とつぶやきながら、炎は表面的には喜びを装って頷いた。

「塔の中の騒動もとりあえず収まったので、今日はこれで失礼する」蘇千は笑みを浮かべて続けた。

「あと四日後に『強榜』大会が行われる。

貴方も力を入れて頑張ってくれ」

「十位には斗霊の頂点級が揃っています。

まだ新参者の私など、どうして入れられるでしょう?」

炎は皮肉な笑みを浮かべた。

「狡猾な子だね。

私の目はそれくらいは見ている。

柳擎や林修崖、厳浩といった屈指の強者以外なら、貴方と互角に戦える者はいないだろう。

ただ二ヶ月前に斗霊に昇級したばかりで、それが三段まで到達したのは驚異的な速度だ」

炎は照れ笑いを浮かべつつも、内心では「この老人は私の実力をほとんど見抜いている」と暗然と感じていた。

閉鎖中に起こった出来事が二日前のことでありながら、蘇千が正確にその段階を見極めていることに驚いていた。

「若い友人よ、謙虚さは良いことだが、時には本音を隠すのも必要だ。

私は内院で何十年も過ごした老害だからね。

天才や奇才など、この目で見てきたものは山ほどいる」

炎の恥ずかしげな表情を見ながら蘇千は笑い、手を振って去った。

「では失礼します。

必ず『強榜』十位に入るように。

そして……私たちの約束も忘れないようにね」

蒼老の顔が蕭炎に向かって笑みを浮かべた。

蘇千が半空中に浮かぶ身体は不気味にも徐々に透明になっていく。

瞬く間に幽霊のように完全に消えたその姿は、蕭炎の肌を凍りつかせるほど異様だった。

蘇千が消えてから少し経った頃、ようやく萧炎は肩の力を抜いて息を吐いた。

手心を開けばそこには湿った汗が光っている。

この老人と単に会話しただけなのに、まるで敵対するように緊張していた自分に呆れ返る。

この二つの間の差は雲泥の如きものだ。

その人物の実力は想像を絶する強さだった。

あの気魄を見る限り、連山も比ぶべくもないだろう。

内院大長老と呼ばれるだけのことはある。

ため息と共にxyが心の中でつぶやいた。

「大長老はこんなに強いのに、その神龍見首見え尾の内院総監督の実力はどれほどなのか? ガナン学院は本当に龍虎を隠す場所だ」

そう考えながらxyは木の枝から降り立ち、暗くなり始めた夜色の中を磐門へと駆け出した。

強榜大戦は内院で最も激しく、最も注目を集める最高級の大会である。

参加資格が極めて厳しいため、ほぼ間違いなく内院最上級の才能を持つ者しか出場できない。

この大会で優勝した者は必ずと言っていいほど人間離れした逸材であり、歴代強榜大戦のトップテンは大陸で名を馳せた人物ばかりだ。

最低でも斗王クラスで一帯を支配する実力がある。

確かに参加資格が厳しいことは事実だが、それでは他学院からの熱狂的な支持を得られないはずがない。

普段見ることもできない強者たちが集まり、ステージ上で激しく戦う様子は、数年間飢えた男が全身裸の美女を目の前にしたような衝動を起こすほどだ。

そして強榜大戦開催まであと四日となった頃、内院全体に熱気が高まっていった。

各所で話題になるのはその大会のことばかり。

時間迫る中、強榜の下位30名は順位が頻繁に入れ替わっている。

普段表に出さない者たちもこの時ばかりは爆発的に力を解放し、内院学院から重宝される強榜に挑戦する。

しかし内院がどれほど沸騰しようとも、前回の試合後には誰一人xyへの挑戦状を送らなくなった。

そのため最後の数日間、彼は久しぶりに貴重な休息時間を得た。

これは忙しい日々の中で少し息抜きできるというよりは、逆に時間が刻々と迫る焦りを感じさせるものだった。

四日目の朝、初陽が空を染める頃、xyは既に準備を整えていた。

その日のために特別に用意した服装を着込み、髪型も整えた。

鏡の前で一度深呼吸をしてから、静かに部屋を出た。

玄関の鍵を閉めながら「今日はやっと本番だ」と心の中で呟いた。



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