闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0555話 黒湮軍副統領・翎泉

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静寂に包まれた密室で、薰はそっと一隅に座り込んでいた。

白い手のひらが頬を支え、袖口から覗く雪白の腕。

宝石のように輝く瞳孔は優しい光を宿し、瞑目したまま膝を組んだ蕭炎を見つめている。

強戦大會から約5日が経過した後で、依然として彼が修練から覚醒する気配はない。

そのことに昊や他の者たちが心配し、何度か無理に起こそうとしたが、薰はそれを阻んだ。

彼女の目には、蕭炎の体内で日に日に膨張していく斗気を確かに見て取っていた。

今や、彼が目覚めたら以前よりも遥かに強くなることは明らかだ。

その機会を奪うのは非情というものだろう。

「今日はやはり……」密室の中で長く待った末、依然として動かない蕭炎を見つめながら、薰はため息をつき、ささやき声でそう呟いた。

立ち上がろうとしたその瞬間、異様なエネルギーの波動が密室に広がり、彼女の表情が喜びに輝いた。

その波動が伝わった直後、蕭炎の体内から強大な気配が突然溢れ出した。

それは瞬く間に以前のピークを越え、さらに上昇し続ける。

薰はその急激な変化を感じ取り、前日から彼が途絶えることなく吸収した膨大なエネルギーが、段階的な障壁を粉砕していることに確信した。

約5分間続くこの気配の高揚はやっと緩み、その後突然、エネルギーの波紋が蕭炎から放散し、頑丈な壁に衝突して密室全体を震わせた。

その波紋が消えた後、蕭炎の頬の異様な赤みも褪色し、彼はゆっくりと目を開けた。

目の開いた瞬間、清澄な炎が一瞬だけ飛び出し、またすぐに収まった。

蕭炎は深く息を吐き、その黒い気を天井に吹き付けた。

細かな音と共に小さな穴が生まれるのを見て、薰は眉根を寄せた。

吐き出した後の蕭炎の顔には微かな光輝が浮かび、体内で以前とは比べものにならないほど膨大な斗気が流れていることを実感した彼は、喜びの表情を見せた。

「炎くんおめでとう。

この重傷はむしろ幸いだったみたいね。

今や五段斗霊くらいになったんじゃない?」

薰が嬉しげにそう言いながら、蕭炎の驚き顔を見つめていた。



「五星斗霊程度の実力でしょう」

二段階にわたる実力向上は驚異的ではあるが、彼にはそれほど意外なことではなかった。

周囲の人々がその急激な進化を信じられない様子を見ればこそ、自身だけがその理由を知っているからだ。

この戦いの結果によるものもあろうが、より大きな要因はこの身体がこれまでに摂取した各種丹薬と天地奇宝の影響にある。

例えば先日服用した地心淬体乳の残余効果が、衰弱した彼の体内で潜伏していた薬力として発動し、回復と同時に実力を大幅に向上させたのである。

「炎哥哥の体内には問題があるわね?」

薰(くん)は軽やかな足取りで炎の隣に近づき、真剣な目線を向けた。

「先ほど見たあの黒い気流のことでしょう。

炎哥哥はかつてナラン・ケツの解毒のためにある薬草を手に入れた際、その毒が逆に自身の体内に入ったそうですね。

異火の護体のおかげで大きな害はないものの、毒素は潜伏しているだけです。

昇級時にようやく排出される程度のものよ」

「炎哥哥の調合術なら解決できるはずでしょう?」

薰(くん)は驚きを隠せない様子で尋ねた。

「この毒には特殊な性質があるんです。

当時ナラン・ケツが斗王級でも危うくしたほどのものですから、完全に除去するのは簡単ではありません」

炎は肩をすくめながら答えた。

「異火が体の中にある限り、この毒は無力化されるでしょう。

それに……」

「大丈夫よ。

とにかく前十に入れたわね。

最後の順位は炎哥哥が第十で柳(りゅう)さんが並列十位」

薰(くん)は笑みを浮かべながら告げた。

「炎哥哥の顔を見れば、ほっとしたのが伝わるわ」

「えっ? それで勝負あったのか?」

炎は驚きの表情を見せた。

「大長老が引き分けと判断して、二人並列十位にしたそうよ」

炎は肩をすくめると、「どうでもいいさ。

とにかく天焚煉気塔に入ればいいんだから」と言いながらベッドから起き上がった。

数日間横になってきた身体を動かすと、骨が軋むような音が密室中に響き渡る。

「そうだな……強榜大戦の結果はどうだった? 十位以内には入ったかな?」

炎は急に思い出し、尋ねた。

「ええ、十位に入りました。

ただし最後の順位ですわ」

薰(くん)は笑いながら答えた。

「柳(りゅう)さんも十位に入っています」

炎が驚きを隠せない様子を見ると、「まあいいや」と前置きしてベッドから立ち上がり、密室の外へと向かっていった。

その背中に「この部屋にずっといると骨が錆び付いてしまうわよ」という言葉が聞こえた。

薰(くん)は笑顔で頷きながら炎の後に続くのであった。



蕭炎と薫が盤門に現れたとき、たちまち大きな騒動が巻き起こった。

最近外界では「蕭炎が重傷で回復不能」という噂が流れていたためだ。

その間にも幾度か冀などから否定の声があったものの、数日間も姿を見せなかったことで、盤門の者たちも不安を抱いていた。

しかし今や無事でかつ以前よりも元気な様子を見せる蕭炎を見て、皆は安堵と喜びに胸が躍った。

盤門内を歩くと、蕭炎は少し驚きを感じた。

メンバーの数が増えていることに加え、全体的に活気に満ちていたからだ。

通りすがりの人々からの視線には尊敬と畏怖が溢れていた。

「おや、萧炎め、ようやく回復したか?」

突然林炎の声が響き、次の瞬間彼は蕭炎の隣に現れた。

喜びを浮かべた顔で肩を叩いてくる。

炎に向かって笑みを返すと、蕭炎はその胸元に目をやった。

そこには見覚えのある徽章が整然と取り付けられていた。

すると彼の表情が驚きに引きつり上がった。

「お前も盤門の徽章を着けてるのか?」

「林炎兄貴は今や我々盤門の一員だよ、問題ないさ」と薫が笑いながら答えた。

「屈辱的なことか?」

と蕭炎が目を見開く。

「強榜上位十人のうちの一人が、わざわざこの盤門に?」

「屈辱なんて屁理屈だ。

内院の中でも狼牙柳擎などは遅れを追っているんだ。

彼らは確かに強者だが、盤門はそれよりも数多い。

蛮力王が毎日ここにいるのもあってさ、お前も柳擎と互角に戦えるし、薫さえいれば……あいつは林修崖を十数分で倒したんだぜ」

「董子はいつか林修崖を負かしたのか?」

蕭炎が驚きの目で薫を見つめる。

「強榜大会終了後の試合だよ。

あの時は会場が呆然と見ていたさ」

林炎の話を聞きながら、蕭炎の心はさらに驚愕に駆られる。

薫が普段隠している実力とは聞いていたものの、まさか林修崖を十数分で倒すほどの強さとは……柳擎との戦いでは互角だったのに、この子は斗王級まで達したのか?

その可能性を考えると、蕭炎は息を呑んだ。

十七八歳の斗王など、内院の長老たちも恥ずかしくて隠れてしまうような実績だ。

しかし薫の背後に控える古くからの勢力を考えれば、彼女は特別な存在なのかもしれない。

その様子を見ていた薫が微笑みながら蕭炎の手を握り、従順に寄り添う。

先ほどの冷淡さとは打って変わって優しい表情だ。

林炎は舌打ちをして、この光景に心酔しつつも、戦士としてのプライドで頬を膨らませた。

こんな幸運は内院でも稀だろうと。



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