闘破蒼穹（とうはそうきゅう）

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第0565話 連合封印！

内院の連綿とした山脈の外側に、名を「紅葉城」と称する街が存在した。

この街は規模こそ小さいものの、黒角域では重要な地位を占めている。

その理由は単純明快——薬王韓楓が此処に居住しているからだ。

六品錬金術師としての実力で、既に領域最強の称号を得た韓楓は、多くの勢力や強者から高い評価を受けていた。

ましてや六品錬金術師という存在は大陸全体でも非常に希少であり、通常の斗皇級乃至斗宗級の人物が会う際には敬意を込めて接する必要がある。

なぜなら、その呼び物となるようなカリスマを持ち得るからだ。

この街の名前は韓楓に由来し、混乱と殺戮が支配する黒角域では数限りない特権であることを示していた。

韓楓こそがその稀少な存在の一人だった。

街の中心部には、外側の賑やかな市場とは対照的に静寂を保つ竹林があった。

この竹林は厳重な警備で守られており、一般人が近づくことさえ許されない。

毎年その理由で護衛に殺害される人々も少なくなく、ここは喧騒から隔離された禁地として多くの人々の心に刻まれていた。

深い森の奥には、翡翠色の光を放つ竹楼が存在した。

その建物自体が一種の香りを発散させ、訪れる者を迎え入れるようだった。

竹楼の中の一室で、男は窓際に座り込んでいた。

錬金術師の袍服に身を包み、背中に「楓」という紋様が繊細に刻まれていた。

彼は手元にある薬方を見つめ、物欲ない様子だった。

突然、低く垂れた頭を上げて男は北東方向の空を見やった。

その先には奇妙でかつどこか懐かしいエネルギー波動を感じ取っていた。

眉根がわずかに寄せられ、彼は薄い唇を引き締めながら思考を巡らせた。

その表情からは冷厳さと異質な魅力が同居していた。

「この感覚……」とつぶやきながら、男は額に薬方を軽く叩いていた。

脳裏には無数の情報が流れ込んでくる。

しばらく経った後、薬方は突然硬直し、男の目は再びエネルギー源を見据えた。

驚愕と困惑が混ざり合う声で彼は言った。

「これは異火の反応か？」

平静だった心が波打ちはじめた。

男は目を細め、僅かに瞼を開けると、指先から清らかな湖水のような深い青色の炎が発せられた。

その炎は彼を包み込むように広がり、同時にその存在感は周囲に浸透していく。

この異様な炎は確かに液体のように流動していたが、実際には純粋な火属性エネルギーだった。

そしてその炎が立ち上るにつれ、男の霊力は急激に増幅し始めた。

先ほどまで曖昧だった感覚が、今や身近なものとして鮮明に認識されるようになった……

「やはり異火か！」

深青色の炎を身に纏った男が突然体勢を正し、遠くの山並みを見据える。

間もなく何かを悟ったように眉根を寄せ、「エネルギー波動が伝わる方向は、その学院の内院あたりだな……彼らのものか？」

黒角域での圧倒的な権威にも関わらず、その学院もまた巨きなる存在。

酒さえも敬遠するほどだが、異火の誘惑なら例外もあり得る。

「韓兄！」

急に振り返った男が厳然と命じた。

声を聞いた瞬間、竹屋から不気味な影が飛び出し、膝まずいてはくしゃりと叫ぶ。

「主上様のご指示は？」

「これらの令牌を持って地炎宗、八扇門、血宗へ。

二時間以内に来させよ。

紅葉城で待つわ。

それとこれらも……」男が奇妙な形の数枚の令牌を投げつけた。

受け取った影は瞬時に納戒に収め、さらに金銀の二枚を返す。

「主上様までお呼びだそうですが……一般人とは見向きもしない彼らを呼ぶなら、何か特別なものが必要でしょう」

「言われる通りやれ。

目的が叶えられれば、彼らが欲しがるものなどどうにでもなるわ」男は淡々と手を振った。

「はい」影は躊躇なく応じ、闇の中へ消えていった。

その背中を見送りながら男は大きく息を吐き、窓際に向かう。

視線の先には深青色の炎が浮かんでいた。

「異火……！探し続けてきたのに、まさかその深い山中に隠れていたとは……二つ目を得て融合させれば……」冷ややかな顔に熱狂が湧き上がり、拳を握りしめた瞬間、眉根が険しくなり胸を押さえて咳き出す。

息も荒くなった。

「くそったれの老人め！焚決を教えてくれればこんなことにならなかったんだ……心性不正などと馬鹿な言い訳は……私の丹術天賦はお前よりずっと上だぞ！」

最後は低くつぶやき、握り締めた拳を見つめる。

「バチッ！」

無形の火龍が斑点模様のエネルギー網に激突し、雷鳴を轟かせる。

その網は緩急自在で、火龍の脱出を許さない。



無形の炎竜が次々とエネルギー網に衝突するにつれ、その光沢は明らかに衰え始め、いくつかの長老の顔色も次第に蒼白くなり、息苦しさを表す。

彼らがこの炎竜の衝撃を抑えるために費やした消耗は決して小さくない。

「ドン！」

無形の炎竜はその巨大な体躯と膨大なエネルギーでエネルギー網に猛攻撃を繰り返し、その衝撃力は極めて恐ろしい。

この近似狂的な衝突が約一時間続いた頃合い、ついに一名の長老が耐え切れなくなった。

「プチ！」

ある凶暴な衝突の際に、その長老の体内の斗気は枯渇し、我慢できずに血を噴き出させた。

その後僅かに残ったエネルギーで翼を振ってゆっくりと降りていった。

一名の長老が離脱したことで他の長老たちの負担はさらに増大し、炎竜もその機会を見逃さず衝撃速度を上げた。

約十数分後には二名目の長老が血を吐いて退場し、二十分ほど経った頃には三名目も敗北した。

次々と蒼白になって降りていく長老たちを見て、蘇千の顔はますます険しくなってきた。

彼はこれまでずっと落雷心炎と関わってきたが、その本質的な恐怖を真に理解したのは今回初めてだった。

この天地の物質は確かに恐ろしい。

短い三時間で十八名の長老から十名が離脱し、残ったのは蘇千を含む八名のみとなった。

内院側の損失は甚大だが、炎竜も連続した衝撃とエネルギー消費で体表の炎が薄らいでおり、その威圧力も徐々に低下していた。

長老たちが苦しみながら耐えている中、炎竜の弱まりつつある衝突を目にすることで僅かな希望を見出すことができた。

地面の炎の中に隠れていた蕭炎は、空高く次々と血を吐いて退場する長老たちを見て冷汗を拭った。

これほど多くの長老が協力しても落雷心炎にやられてしまうとは、想像もできなかった。

「この状況では内院側の長老たちは持ちそうにないな、老師。

我々はいつ出動しますか？」

蕭炎は内心で焦りながら尋ねた。

落雷心炎が防御を突破すれば瞬時に消滅するだろうから、見つけるのは至難の業だ。

「落ち着け」薬老の声がすぐに返ってきた。

「東の方に大量の気配が近づいてきているようだ。

外院の強者たちだろう。

彼らと落雷心炎を消耗戦させればいい」

その言葉に驚いた蕭炎は視線を東の空へ向けた。

確かに黒点が広がり、間もなく大勢の人影が現れた。

「ハハ、蘇長老、人員調整には時間がかかったが、遅れてきたのはこちらこそ恐縮だ」

その朗らかな笑い声は外院副院長琥珀のものだった。

彼の登場で蘇千も安堵したようだ。

外院の援軍が内院に到着する頃、遠くの山脈の向こう側にある楓城では、黒角域を支配する強者たちが集結していた。

彼らは背中に楓葉を刺繍した男の笑い声と共に空へと飛び立ち、内院方面へ急進していった。

本当の大規模戦闘が始まった。