闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0569話 援軍

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空を震わせるような轟音が突然響き渡った。

蕭炎は全身を震わせながら慌てて振り返ると、視界に急速に拡大する血色の影が飛び込んできた。

「くそっ、この老人は一体どうやって気づいたんだ?」

範老の怒吼も聞き逃さない。

その瞬間、背中の双翼を激しく振動させながら、蕭炎は光速で姿勢を変えた。

しかし範老の追跡は容赦なく続く。

「シュ!」

体勢が変わった直後、鋭い気流が襲いかかる。

蕭炎は冷や汗をかきながらも強制的に身体を捻り、その血色の気流を僅かに回避した。

倒れ込むように後退しながら、彼は憤然と叫んだ。

「野犬め、お前は本当に手が出しすぎだ」

範老の顔は怨毒と怒りで歪んでいた。

赤い双翼を羽ばたかせながら、血色のエネルギーが急速に凝縮される様子を見つめる蕭炎の目には焦りが浮かぶ。

飛行術の助けを得ているとはいえ、範老の速度は圧倒的だった。

瞬きする間に範老は蕭炎の上空まで迫り、手のひらから放たれた血色エネルギーは空間を激しく震わせながら降り注ぐ。

「我が子の命を取り戻せ!」

狂った笑みと共に範老が叫ぶ。

彼は蕭炎の実力を見透みていた。

ただの斗霊程度では、殺すのは容易なことだ。

「チィ!」

血色の光が四方八方に広がる中、突然鈍い雷鳴のような音が響く。

その瞬間、空を静かに立っていた蕭炎の身体が僅かに震えた。

次の瞬間、彼は完全に虚幻化した。

「バーン!」

血色の光が確実に当たったはずなのに、蕭炎の姿は消えていた。

残されたのは一瞬の残像だった。

「お前の息子の命を返せ!」

息を荒げながら現れた蕭炎が範老に向かって冷笑道した。

「殺すのも簡単じゃないぞ、野犬め!」

掌で血色の光を払い去り、範老は陰険な笑みを浮かべる。

「三千雷動か。

やはり我が子を殺したのはお前だ」

蕭炎は範老を見据えながらも、彼との実力差に不安を感じていた。

もし範老が予期せぬ瞬間に『上十雷動』を使わなかったら、今頃は既に死んでいたかもしれない。

体内の斗晶から次々と流れ出す強烈な気流が経脈を駆け回る。

その充実感が少しの自信を取り戻させる。

「よし! いいぞ!」

範老が血色の双翼を羽ばたかせながら笑った。

その笑い声は凍えるほど冷たい。

「お前を捕まえたら、私はお前に最新鮮な血液を与えてやる。

それが我が子への償いだ」

「野犬、お前もやってみろか?」

黒い瞳孔の底に陰冷な気配が渦巻く。

蕭炎はゆっくりと口を開いた。

範老の身分を偽装している今、蕭炎から「野犬」と呼ばれるだけで、彼は激昂に沸き立つ。

この男を地獄へ送り込むことを決意した。

鋭利な掌がわずかに回転し、血色の闘気は赤い液体のように細かく滲み出てきた。

その全てが範老の周囲を包み込み、疾風のような音を立てながら渦巻き始めた。

蕭炎は範老から発せられる恐怖に満ちた気配を感じ取ると、顔を引き締めた。

この階級の強者と戦うなら、少しでも油断すると死体も残さない。

空で混乱した戦場の中で、蕭炎と範老の対峙は遠くにいる内院生の注意を集めることになった。

彼らは状況を正確には把握できていないが、今の様子からすれば、蕭炎が強敵を引き受けているように見える。

そのため、多くの者が彼に対して敬意を抱き始めた。

ここでの修業年数も少なくないだけに、この危機に立ち向かう姿勢は胸を打つ。

しかし実力や他の理由で彼らは無力に見守るしかない。

そして蕭炎が立ちはだかったことで、彼らの間には一種の希望が芽生えた。

遠くから響き渡る熱狂的な応援声が次々と飛び交う。

この瞬間、彼の名声は林修崖や柳擎を凌駕するものとなった。

突然その轟音に驚いた蕭炎は目を逸らし、声源となる方向を見やった。

内院生たちの狂熱と崇敬の表情を見て、無言で舌打ちした。

範老が気付いていなければ逃げ出していたところだ。

誰もがこの危険な戦闘に身を投じることなど望まないだろう。

「お前は彼らの信頼を失わせるんだ。

小さな斗霊が天を衝こうとするのか?」

範老は冷ややかに笑み、掌を猛然と振った。

周囲を包む血色のエネルギー糸が一斉に四方八方に広がり、鋭い破風音を立てながら蕭炎を襲いかかった。

範老は「三千雷動」を修得した相手の俊敏さを知っているため、最初からその速度を封じる形で攻撃を開始した。

蕭炎は血色のエネルギー糸を見つめながら深呼吸し、突然低く叫び声を上げた。

青い炎が爆発的に噴き出し、彼の身体を包み込んだ。

この青い炎の出現に範老の顔が引き攣った。

その底知れぬ性質は彼もまた一目置いていたが、既に攻撃を開始した以上は止められない。

さらに言えば、異火を持つことと実際にその力を発揮できるかどうかは別の話だ。

そのため、青い炎の出現こそ驚きではあるものの、パニックには至らなかった。



血の糸が四方八方に広がり、瞬時に蕭炎の前に現れた。

しかし、その血の糸が蕭炎から三メートル離れたところで、突然灼熱の温度を爆発させた。

性質が陰冷だった血の糸はたちまち虚無に溶けた。

青色の炎が血の糸に対して多少の抑制力を示したものの、その血の糸は途絶えることなく四方八方に広がり続けたため、蕭炎の炎は次第に縮小し始めた。

冷ややかな笑みを浮かべながら、炎が縮小していく蕭炎を見つめる範壇(はんだん)が手を振ると、血の糸が奇妙な動きを見せ、最終的に一つの血の網を形成した。

その網の中に、抵抗しつづける蕭炎が閉じ込められた。

「異火があってどうか? あなたの実力では、その力を発揮できないだろう」範壇は冷ややかに笑いながら、血色エネルギーを集約させた。

瞬く間にそれは寒光を放つ血の槍となった。

「小坊主め、死ね!」

怨毒が口角をゆらすと、範壇は陰々とした笑みを浮かべて腕を振った。

その拍子に血の槍は空間を切り裂き、鋭い風を引き連れて血の網の中の蕭炎に向かって突進した。

「おやじさん、斗皇と斗霊が戦うなんて恥ずかしいんじゃない?」

血の槍が血の網に近づく直前、突然空から子供の声が響いた。

次の瞬間、紫研(しじん)という小さな影が血の網の外側に現れた。

彼女は淡紫色の馬尾を振り、拳を強く握りしめた。

その動きで周囲の空気は無形の砲弾となり、血の槍と衝突した。

「ドン!」

低く響く爆発音と共に、気浪が空間を震わせた。

紫研の様子を見つめる範壇の顔が険しくなり、「死ねるか?」

と叫んだ。

紫研は鼻を膨らませて拳を振り回し、低い音爆を生み出した。

「おじいちゃん、あなたが蕭炎さんを殺したら、薬を作ってくれるわよ」と挑発するように言った。

範壇の顔がさらに暗くなり、「屁理屈はやめろ!」

と叫びながら、血色エネルギーを凶猛地集約させた。

紫研の可愛らしい小顔も険しくなり、拳を握りしめた。

「チラリ」

範壇が手を動かす直前、突然二つの破風音が響き、林修崖(りんしゅうがい)と柳擎(りゅうけい)の二人が紫研のそばに現れた。

彼らは虚ろな羽根のような翼を持ち、血の網を見つめた。

「第三百二章」

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