闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
566 / 1,458
0500

第0590話 侵食、錬成、融合!

しおりを挟む
蕭炎の体からゆっくりと滲み出す殺意に、滅落炎は激しく反応したようだ。

その幽々とした緑色の光がさらに強烈になったように見える。

「どうしたのか、これだけ燃やし続けたのに満足しないのか?」

蕭炎は体を伸ばしながら、そんな光を見上げて笑った。

その緑色の光はますます熾烈になり、激しい鳴き声と共に、滅落炎の表面に玉のような輝きが浮かび上がった。

その輝きはまるで生命のように動き回り、やがて壁面から無数の熱い炎が突然噴出する。

四方八方に広がる炎は蕭炎を包み込むように迫ってきた。

同時に、滅落炎は蕭炎の心に猛々しい炎を呼び起こした。

その動きは明らかに内外から同時に攻撃し、頑固な彼を完全に破壊しようとしているようだ。

「また同じ手の平で……」

そんな無数の炎を見つめながら、蕭炎は笑いながら首を横に振った。

指先で軽く弾かれた青色の炎が体から爆発的に噴き出し、全ての炎を外側に押し返す。

一方、心火に対してはまだ斗気で囲もうとした矢先、突然体内から奇妙な光が広がった。

その光の中にあった恐怖の高温の炎はまるで敵のように急速に縮小し、瞬く間に消えていった。

「あれは……?」

蕭炎は驚きながら体の中を見つめた。

この不気味な光はどこから出てきたのか?滅落炎の心火を怯ませるほどなのか?

長い眠りから覚めると、蕭炎は体内で起こったことを知らなかった。

清蓮と無数の薬材丹薬が融合した奇妙な液体が、心火との対立の中で彼の破壊された体を修復し強化するだけでなく、時間と共に抗性を高めていった。

最終的には、一進一退だった体内の戦いは一方に傾き、心火が弱まるにつれ、その奇妙な液体は全身隅々まで浸透していく。

そして以前見た光は、かつての敵と出会った時の反応だったのだ。

この光が滅落炎の心火に対する抗性を培ってきたのは長い時間をかけて磨かれたものだ。

つまり、蕭炎の体内にその光があれば、滅落炎の効果は大幅に低下する。

これが彼が滅落炎に対して反撃する最大の武器なのだ。

周囲で猛々しく燃える炎の中、清潔な身体を包む光の中で、若者は穏やかな笑みを浮かべていた。

その姿からは想像できないほど、目覚め前の彼はその炎に苦しめられていたのだ。



体内に宿る奇妙な光の照らす下で、徐々に消えていく心炎を感知しながら、蕭炎はようやく胸中の大石を下ろした。

彼が眠っている間に何が起こったのか正確には分からないものの、今は一つだけ確信していた——滅落炎(めつらくえん)という存在はもう彼にとって恐怖の対象ではなくなっていた。

「三十年河東、三十年河西、次は入れ替わりだ」

蕭炎は顔を上げ、二つの幽々と輝く光を見やった。

白い歯が覗く笑みの中で、その目には殺伐とした光が宿っている。

「キィ!」

怒りに駆られた叫び声と共に、二つの緑色の微光が猛然と膨張した。

次の瞬間、不意に乳白色を帯びた無形の炎が現れた。

その出現と共に赤い岩場は沸騰し、泡立つ気泡が爆発して火毒(かどく)と熱さを放ち始めた。

「頑固なやつ」

滅落炎の激しい抵抗を見届けた蕭炎は冷笑した。

手印を結ぶと、体表に纏っていた青色の炎が急激に体内へ引き込まれる。

その隙間を狙うように、外側の無形の炎が狼のごとく襲い掛かる。

しかし彼の体内から徐々に発せられる奇妙な光(きみ)は、それらの炎を怯ませた。

無形の炎がその奇妙な光に触れた瞬間、雪のように消えそうな反応を見せた。

乳白色の炎の表面にも激しい波紋が走り、明らかにその光を忌避していた。

長い対峙の中で、この奇妙な光は滅落炎の真の弱点となりつつあった。

蕭炎が目を瞬かせると、目の奥からも同じような光が滲み始めた。

それらの光が彼の視界を支配するにつれ、周囲の世界は変わった——依然として赤い地獄のような景色ではあるものの、滅落炎は透明になっていく。

その透明な空間に、掌サイズで乳白色を帯びた炎の蛇(じゃ)が蠢いていた。

その蛇の瞳孔には無形の炎が宿り、動きも機敏だった。

明らかに知性を持った存在であることが窺えた。

蕭炎がその炎の蛇を見つめるや、相手方も気付いたようだ。

蛇の目から凶暴な光が溢れ出し、体からは恐ろしい無形の炎が立ち上る。

「これが滅落炎の本質か」

ゆっくりと瞬きながら、蕭炎は笑みを浮かべた。

周囲に広がる一大塊の炎は全て滅落炎であるが、それを打ち破るには核心を見つける必要がある。

この炎の蛇こそがその核心だ。

それを捕らえれば、滅落炎は完全に掌握できる——

長い手を伸ばし、彼は炎の蛇が隠れる方向へと笑みを浮かべた。

掌からは熾烈な青火(しょうか)が包み込み、その上には奇妙な光が覆い被さった。

爪型に曲げられた指先で、蕭炎は炎の蛇を見詰めた。



灼熱の蛇が炎を操る瞬間──

蕭炎(しょうえん)の笑みを見た途端、肉眼では捉えられないほどの細い火の蛇は危機を感じた。

尾を一振りすると、その小さな体は電光のごとく四方八方に飛び回り、彼の視線から逃れようとする。

しかしいくら動き回っても、常に炎の輪郭内に閉じ込められていた。

完全な脱出には周囲の炎を連れて移動する必要があり、その場合、蕭炎の体内異火を摂取する目的は泡影となる──これは絶対に許されない。

「落雷心炎(らくらいしんえん)」は霊智を持つが、人間のように広い胸襟を持ち得るようになるには、さらに長い進化が必要だった。

「逃げるつもりか?」

布目のような光で照らされた視界の中では、火の蛇の一挙一動が極めて鮮明に映り出す。

蕭炎は笑みを浮かべながら首を横に振った。

体は静かに保たれていたが、足元からは薄い銀色の光がじわりと広がり、弱々かな雷鳴(らいめい)の音を立てていた。

「チィ」

数秒の沈黙の後、突然──

蕭炎の体が僅かに震えた。

その瞬間、彼の残像は原地に立ち止まり、本体は風のように炎壁の前に現れた。

青火と光で包まれた手が勢いよく突き入れると、次の瞬間には既に引き抜いていた。

「キィ!」

蕭炎の動きは驚異的だった。

僅か一呼吸の間に、彼は元の場所に戻り、消えかけた残像と完全に一体化した。

しかし右手の光の中に、激しく暴れる火の蛇が存在していた。

その鋭い鳴き声は連続して響き渡る。

炎壁は薄くなりつつも崩壊する様子はなかった。

蕭炎の目には熱狂(かくぼう)が宿り、掌に収めた白銀色の火の蛇を見つめ続けた。

彼の顔には喜びの表情が溢れ出す──この必死の戦いが命を奪うことなく、むしろ斗王への進級をもたらしただけでなく、今や落雷心炎を手に入れたのだ!

「危機に臨んで富を得る」という言葉は、まさに真実だった。

青火と光による二重の隔離はあるものの、その異火から放たれる熱さは掌に僅かな灼熱感を与えた。

もし青蓮地心火(せいれんちしんか)や光が一つでも欠けていたら、彼は落雷心炎に対抗できなかっただろう──数千年の歳月を経て成長した異火はあまりにも恐ろしかった。

しかし捕獲に成功すれば、次なる課題である融合(ほうごう)と鎮圧(ちんやく)が待っている。

彼は深呼吸をして、次の動きに備えた。

「さて……今度こそは……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ
ファンタジー
“美少女だね” “可愛いね” “天使みたい” 知ってる。そう言われ続けてきたから。 だけど… “なんだコレは。 こんなモノを私は妻にしなければならないのか” 召喚(誘拐)された世界では平凡だった。 私は言われた言葉を忘れたりはしない。 * さらっとファンタジー系程度 * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

処理中です...