闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
597 / 1,458
0600

第0623話 威圧

しおりを挟む
「ドン!」

空の大地に巨大な緑色エネルギーの手形が突然現れ、凄まじい破風音を立てながら山壁の地に砕けた。

その衝撃で山頂全体が激しく震え、腕ほどの幅の亀裂が蜘蛛の巣のように広がり、短時間で山壁全体を覆った。

半空に浮かぶ蕭炎は蒼白な顔色でエネルギー手形の下で崩壊寸前の山頂を見つめながら、黒い瞳孔に隠せない喜びの表情を見せていた。

無数回の練習を経てようやく掴んだリズム感によって、ついに「開山印」を完全に発動させたのだ。

まだ未熟ではあるが、蕭炎は時間をかければ完璧なまでになることを確信していた。

その時こそ、この「開山印」の真価が発揮されるだろう。

激しく息を吸いながら、碧緑の火翼を振るって崩れた山頂に降り立つと、一ヶ月以上の修練でようやく「開山印」が小成に達したことを確信した。

大成への鍵は時間と実戦だった。

「地階上位の武技とは言え、初動だけで『焰分噬浪尺』と同等の威力だ。

今後は新たな底力となるぞ」と碧緑の翼が消えると共に笑みを浮かべた。

その瞬間、空に鳥の鳴き声が響く。

蕭炎は首を傾げながら視線を上げると、掌から吸い込むように伝信鳥を引き寄せた。

足元の筒状の竹を取り出し、折り畳まれた紙片を手早く取り出すと一瞥した。

「これでは……」その瞬間、紙片は灰燼となって散った。

蕭炎が四面八方を見渡すと、突然「彩鳞!」

と叫んだ。

しかし返事はないため再び「メドゥーサ!問題発生だ、行こう」と声を上げた。

すると数呼吸後、七色の光が森の中から爆走してくる。

冷淡な表情で現れたメドゥーサ女王に構わず、「黒角域へ行く必要がある。

さあ行きましょう」と勝手に話し始めた。

「無料の代打はやめてくれよ」メドゥーサが眉をひそめると、蕭炎は笑みを浮かべて「私が死んだら『復魂丹』を作れないぞ」と返した。

背中に翼が広がり、狂風の中で姿勢を変えながら黒角域へと駆け出した。



信中から彼は蕭烈が些か問題を抱えていることを知っていたが、内院に手を借りるなどとは考えていなかった。

現在の実力ならば黒角域で誰も止められないし、さらにその傍らには協定を結んだメドゥーサという本物の斗宗強者がいる。

彼女は蘇千よりも強い可能性さえある。

蕭炎とメドゥティの実力なら黒角域全体を横断しても十分だろう。

金銀二老が連合して蘇千を止められるとしても、相手がメドゥサとなると運が良かろうはずがない。

彼女は凡庸な斗宗とは違う。

蕭炎の遠ざかる姿を見つめるメドゥアは指先を握りしめ、少しばかり腹を立てて銀歯を嚙み締めたように一瞬迷った後、足首で虚空間を蹴ると身を光の如く変えて前の暗闇に向かって駆け出した。

フウジョウ城。

現在のフウジョウ城はほぼ全員が中央にある壮麗な荘園に注目していた。

そこでは今日この街の支配者を選ぶことが決まっているはずだ。

誰がその支配者になるかという点について、正直多くの人々は関心を示さない。

彼らもまた常に下層部で生きているからこそ、むしろ勢力同士が血みどろの戦いを繰り広げる様子を見るのは楽しいものだ。

黒角域では不幸に遭った者への嘲弄や落とし前をつける行為は至る所にある。

約三十分ほど前に三つの強大な勢力がフウジョウ城に入り込み、かつて薬皇韓楓が住んでいたその荘園へ向かっていた。

現在そこは「蕭門」と呼ばれるこの街の支配者となっている。

その三つの強大な勢力についてフウジョウ城の大多数は聞いたことがある。

一流勢力としての名前は黒角域全体に広がっているからだ。

ほぼ全員が耳馴じみだったはずだ。

天陰宗、羅刹門、狂獣団。

この三つの大名は黒角域でも屈指の強横な勢力である。

その三人の首領は「黒榜」トップテンに載っている強者たちで、彼らの中の誰か一人もが蕭炎が倒した範老を下す実力を持っている。

この三つの勢力は黒角域で横暴に振る舞い続けているが、かつて韓楓が黒盟を結成する際に彼らを誘おうとした際には無視していた。

その行為は韓楓の怒りを買ったものの、彼らの実力を恐れていたからこそ諦めたのだ。

あの頃の黒盟はどれほど栄華だったか。

この三つの勢力がそのような状況で加入を拒んだことからも、彼らにも一定の実力があることが窺える。

三人の首領たちはバカではないため、韓楓にだけは触れないようにしていたのだ。

現在この三つが「フウジョウ」へと進撃している限り、多くの人々はその「蕭門」を憐れむようだ。

彼らの見解では、その「蕭門」が準一流勢力として名を連ねているのは事実としても、三大老古董に比べれば小巫男大巫である。

もし首領が現実を見れば、素早く城の支配権を譲る方が賢明だろうと。



広大なエステートの広間では、沈黙と緊張が支配していた。

その空気には火薬が一触即発のように漂っている。

最奥にいるのは現在フウレン城を掌握する「パンメン」で、外側には天陰宗、羅刹門、狂獣団の三派が控えていた。

「貴方こそ『ショーメン』の首領ですか?冗談は止めて。

一時間以内に明確な返答がないなら、ここを血染めにする」

裸の胸の部位に仰天吼える巨獅子の紋様を持つ中年男が、斜め上目線でミョウレイを見据えた。

その顔には嗜虐的な笑みが浮かんでいる。

「ユーコー、常主さんの直球は好きだわ。

でもこの提案は賛成よ」

隣にいた肌の露出度が高い美婦人が口元を押さえながら笑った。

耳たぶ近くには黒い妖艶な薔薇が刺青で描かれている。

その美しさは致命的な毒性を持つ。

さらに奥の方では、顔色が暗く頬骨が目立つ老人が枯葉のような手でテーブルを叩きながら笑った。

「久しぶりに手を染めるのも悪くないわね。

昔のあの残酷さが戻ってくるかどうか楽しみだ」

三派の背後には約百人の集団が密集している。

彼らは血みちたっぷりの体臭を放ち、野獣のような鋭い眼光で周囲を見回していた。

ミョウレイはその三人組に冷ややかな視線を向けながらも、背後に控える百名の黒服集団が同じくらい血みちたっぷりであることに気付かせようとしていた。

彼らは戦闘経験豊富で手荒い連中だ。

相手が即座に攻撃しなかったのは、こちらの勢いを恐れたからだろう。

「三位よ。

このフウレン城は力で決まる場所です。

貴方たちの方が強いなら奪っても構わないわ。

でも城は一つだけ。

誰に渡すかは私が決めます」

テーブル上の茶碗を弄りながら、ミョウレイが淡々と述べた。

その言葉に会場の空気が微妙に変化した。

間もなく火暴い格好の美婦人が笑った。

「心理戦は上手ね。

でも離間工作は当たらずも遠からじよ。

最終的に城を誰が支配するかは貴方には関係ないわ。

ただ出て行って」

茶碗を持つ手がぎゅっと握りしめられた。

ミョウレイは内心でため息をついた。

「やはりベテランだわ。

この手の罠に引っかかるのは無理ね」

「フウレン城から撤退するのも構わないわ。

でも私は『ショーメン』の首領ではないのよ。

貴方たちが出て行ってほしいなら、当主様が帰ってきたらどうか」

眉を寄せて冷厳な顔つきになったミョウレイは、背後の黒服集団に気合いを入れさせながら言った。

「何だって?今ここで交渉するんじゃないわ!貴方たちが出て行くならそれでいいんだよ!」

裸の胸の部位の男が目を剥き、テーブルを叩き割りながら叫んだ。

その瞬間、ミョウレイの背後の黒服集団は刀剣を鞘から抜き放ち、会場に殺気が充満した。

「ユーコー!待った!」

突然の声が響いた。

その声源は最奥の暗闇から現れた一人の男だった。

彼は黒いマントを羽織り、顎に白髪を垂らしていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

処理中です...