闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0695話 苦痛

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鴨護法の獰悪な笑い声が天を裂くと、膨大化した虚像の人間の顔に苦痛が刻まれ、その表情は突然凍りついた。

七孔から異常に濃厚な黒光線が噴き出し、次の瞬間、驚愕の視線を集めながら爆発!轟!雷鳴のような巨響が天地を揺らし、極度恐ろしい黒い波紋が山崩れのように押し寄せてきた。

一瞬で広がり、最後は全てを包み込む闇となった。

この暗闇は完全に覆った。

空の燦然と輝く太陽も突然消えたかのように、世界は突如として闇だけで満たされた。

闇が大地を支配し、人々は驚きの声を上げる。

暫くすると各色の斗気光線が飛び交い始めたが、この異常な闇の中では数歩先までしか見えない。

「一体どうしたんだ?」

「何が起こってるんだ?」

突然訪れた闇に広場は騒然となった。

人々は驚きの声を上げ、混乱が拡大していく。

木の葉の上で蕭炎らもその突然の闇に一瞬驚いたが、すぐに冷静を取り戻した。

優れた霊感力を持つ彼は知っていた──この異常な闇は鴨護法のエネルギー拡散によるものだ。

そのエネルギーが消えれば自然と闇は解けるだろう。

「老師と彩藕様はどうなっているのか……」

眉をひそめながら暗闇を見上げる蕭炎の拳が握りしめられる。

先程鴨護法の行動から、雲山の魂を抜き取り自爆させたようだ。

斗宗級の強者の魂による自爆はその破壊力が尋常ではない。

その考えだけで彼の身体は小さく震えた。

「ここまで大規模な騒動を作りながら、ただ闇を作るだけなのか?」

白い光を纏った海波東が周囲を見回す。

低く重い声で疑問を投げかける。

その言葉に加刑天らも頷いた。

彼らは特に強大なエネルギーの発動を感じていなかった──この異常な闇以外には。

「あの男は雲山の魂を自爆させたんだ。

その爆発の魂波動が彼の制御下で、メデューサと老師に集中しているからこそ我々は感じないんだ」

法犸が眉をひそめながら言った。

薬師として無形の魂波動には敏感だった。

暗闇の中某所で異様なエネルギーが膨らみ始めていることを彼は察知していた。

その言葉に海波東らの顔色が変わった。

体内の斗気を活性化させ、突然の魂波動発動に備える。

話している最中、突如低く重い音が空を震わせた。

その音は通常人間には聞き取れないほどの微弱なものだが、蕭炎にとっては雷鳴のように響いた。



**感覚に刻まれた恐怖の霊魂波動を察知した瞬間、蕭炎は顔色を変えながら猛然と頭を上げ、闇の向こうにある空を見つめた。

しかし暗黒の幕が遮るように、その先には何物も映し出されなかった。

「くっ!」

周囲に何も見当たさないことを確認すると、蕭炎は眉根を寄せながら不敵な笑みを浮かべる。

やがて一筋の碧緑色の炎が経絡を這い上がり、双眸に宿り、その漆黒の瞳孔を燃えるような輝きで染め上げた。

碧緑の炎が視界を支配するや否や、闇はゆっくりと溶けていく。

蕭炎の眼前には、僅かに青緑色を帯びた世界が浮かび上がり、その先端には薬老とメデューサの姿があった。

「……」

彼の視線が注がれたのは、二人の向こう側にある空だった。

そこでは、メデューサはまだ元気そうだが、薬老の身体は透明に近いほど虚幻になっていた。

その対岸にはウド護法が浮遊しており、枯れ果てた手のひらの上に巨大な黒色光球が乗っている。

その中に凝縮されたのは、先程雲山が霊魂自爆させた際に発生した恐るべき霊魂エネルギーだ。

そして今や、ウド護法はそれを完全に操り始めていた。

視界が開けたことで周囲の音も伝わってくるはずだが、この暗黒の幕は遠方の声まで遮断していた。

そのため蕭炎は三人の会話を聞き取れず、ただ彼らが数秒間対峙した後、ウド護法が醜悪な表情を浮かべながら巨大な光球を掲げ、掌で勢いよく押し出した様子だけを見ていた。

その光球は黒色の隕石のように空を駆け抜け、メデューサと薬老に向かって直撃する。

その途上からも蕭炎は強烈な霊魂圧迫を感じ取ったが、周囲の海波東や法犸たちも同様にその圧力を感じていたようだ。

「どうしたんだ? 上で戦ってるのか?」

「この恐ろしい霊魂威圧……」

法犸は顔を蒼白にして言った。

彼は自分の霊感が体の中に閉じ込められ、外に出せないことに気づいていた。

全員が驚愕に包まれる中、光球は薬老とメデューサの前に迫り、容赦なく彼らに襲いかかった。

その衝撃で空間自体が震え出すほどだったが、二人も既に最大限の力を発揮していたはずだ。

しかし雲山の霊魂自爆によるこのエネルギーは、それらを軽く凌駕するものだった。



七彩のエネルギーと森白い炎が爆発して飛び出したが、狂暴な霊力の侵食を必死に防いでいた。

しかし瞬きの間もなく黒い霊力が急激に増大し、二人から溢れ出る膨大なエネルギーを押し返した。

「プチッ!」

七彩の光はたちまち消え、メデューサの顔色が白くなり、すぐに頬を赤く染めながら我慢できずに血を吐き出し、その体は急激に後退した。

彼女が全身を保つことができたのは、薬老がすでに非常に衰弱していたからだ。

自爆する霊力の傷害は、**(ここに固有名詞を入れる)**のような防御がない魂にとっては特に甚大だったため、骨霊冷火による防壁が消えた瞬間、不気味な黒い光が潮のように彼の体を包み込んだ。

その重撃を受けた薬老の身体は透明な水跡のように溶け、明らかにこの一撃で薬老は重大な傷害を負った。

そして蕭炎も、薬老の気力が急速に衰えていることを感じ取ることができた。

「ハハッ、薬塵よ、本護法は言ったはずだ。

今日お前は私の手から逃れられないんだ」

透明になった薬老を見つめるように、ウド護法の陰惨な笑い声が広大な闇の中に響き渡り、彼の姿が瞬時に薬老の近くに現れた。

その動きを目撃した美杜莎は顔色を変えて身を翻し、彼女自身も光速でウド護法に向かって突進した。

「フン!」

美杜莎が動いた直後、ウド護法は鼻を鳴らして手印を変えた。

すると周囲の闇が不気味に蠢き、美杜莎の突進する姿を阻んだ。

闇の助けを得て美杜莎を阻止したウド護法は枯れた掌で黒い光を浮かび上がらせ、薬老の透明になった魂に向かって鬼のような爪のように掴みかかった。

その陰険な波動を感じ取った薬老の透明な体がわずかに震え、皐色の厳しい表情を見せた。

ウド護法の一撃を直視しながら、薬老は目を見開いていた。

現在の重傷状態ではウド護法の攻撃から逃げ切ることは不可能だと悟り、今日捕縛されるのは確実だと諦めたのだ。

瞬時にたくさんの思考が頭の中を駆け巡った後、薬老は視線を下方に移し、暗闇を見透かすように樹の上に白い顔をしている黒衣の青年を見つめた。

穏やかな笑みと共に眉心から突然白熱した炎の矢が飛び出し、瞬時に蕭炎の額に突き刺さった。

「小坊主よ、師匠はもう君のそばにずっと付き続けることはできないかもしれない。

これからは全て自分で頑張らなければならないんだね。

ハハッ、長年の月日が経ち、もう昔のように師匠が必要としない子供ではないだろう。

いずれかの時、君は師匠の予想を超えて進むことになる…また会えることを願っている」

炎の矢が蕭炎の額に到達した瞬間、優しい老人の声が彼の頭の中を突き抜けた。

その言葉を聞いた途端、蕭炎の体が激しく震えだし、唇を噛み締めながら血を滲ませる。

最も避けたい光景がついに現実となったのだ。



「安心して、先生は簡単に死なないよ。

この絹火芒は骨霊冷炎の根源だ。

それを額に残しておく。

慣れたら君も使えるようになるが、私が既に吸収したから焚決で保持し続けることはできない。

もし私が不幸にも…その時、額の炎印は消え、骨霊冷炎は無主のものとなる。

それこそが先生からの最後の贈り物だ。

それを吞み込んでくれ」

「ふふ、それにね、魂を隠す指輪は『骨炎戒』と名付けた。

森硇解(もりょうかい)で二哥の『生喰丹』を解毒する方法と私の遺言が入っている。

あと、風尊者に会ったらこの戒を見せれば信用してもらえるし、協力してくれるだろう」

「魂殿に捕まったけど、彼らは私の霊魂を吸収するのは簡単じゃない。

いずれまた会えるかもしれないが、実力を得るまでは無闇に動くなよ。

父と先生を救うなら、一ミスも許されないんだから」

「ふふ、小坊主。

君は先生の誇りだ。

ずっと満足しているわ」

脳裡の中で優しい笑い声がゆっくりと消えていく。

蕭炎の額に白い炎の印が浮かび上がった。

その瞬間、護法の手爪が薬老の体を貫き、黒い霧の中に彼を吸収した。

陰惨な笑みと共に。



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