闘破蒼穹（とうはそうきゅう）

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第0733話 慕蘭三老迎撃

空を支配する三人の老人は、いずれも青色の袍を纏い、その上には獅子虎熊の紋様が浮かんでいた。

これらは普通の刺繍ではなく、一種の不思議なエネルギー結晶のように輝き、見る者の視線を集める度に血色の巨眼を鋭く睨みつける。

心身が弱い者ならばその殺意溢れる灼熱の視線だけで膝が震えるだろう。

この三人の青衣老人は気配から見れば斗皇の頂点に達しているようだが、メデューサの表情には隠せない緊張が浮かんでいた。

彼らが修得した「三獣蛮荒決」は奇妙な力を持つもので、連携すれば驚異的な戦闘力を誇る。

彼女自身もその強敵を真剣に警戒していた。

要塞外の黒い大軍団はムラン谷三大老の登場と共に雷鳴のような歓声を上げたが、要塞上の蕭鼎らは重苦しい表情を浮かべていた。

「くっ、あの辺りで名を馳せる強者たちがこんなに多数で押し寄せてくるとは、明らかに不正義だ」海波東が空を見つめながら憤然と罵声を上げた。

加刑天も険しい表情で頷き、しばらく黙考した後、歯噛みしながら言った。

「我々ふたりが出陣してメデューサ女王に時間を稼ぐのはどうか？」

「我慢してくれ。

もし貴方たちが動けば三宗の他の強者も袖を捲るだろう。

そうなると戦いは早々に勃発し、貴方たちの目的は達成できない」蕭鼎が深刻な表情で首を横に振った。

「ではどうする？ 彼女を囲まれて見過ごすのか？」

海波東が眉根を寄せた。

「嘆かわしいことだ。

今はメデューサ女王の力に頼るしかない。

この劣勢な状況では計略も効果がない」蕭鼎がため息と共に笑みを浮かべた。

確かに全てが不利で、相手側の斗宗級強者もこちらと同数、斗皇・斗王クラスはより多く有利に立っているのだ。

「もし炎がここにいれば……彼の力なら落雁天と三老を阻むことは可能だ。

メデューサに時間を与えれば一人討ち取るのも夢ではない」一言も発しなかった法犸がため息と共に語った。

その言葉に蕭鼎らは共に嘆息した。

彼の閉門修業がいつまで続くか分からないからだ。

「ふん、メデューサ女王には風雅な態度を示すが、貴方も弱者ではない。

もし単独戦闘なら誰も勝てないだろう」落雁天は金色に輝く雁翼を振らせて、緊張した表情のメデューサに向かって笑みを浮かべた。



「協力するならそれでいいが、そんな堂々とした言い訳はやめなさいよ。

金雁宗の宗主としての身分を辱めるようなことだわ」

美デュスラが冷笑いを浮かべながら皮肉った。

落雁天は笑みを浮かべたままその嘲讽に反応せず、掌を握ると金色の光が掌の上で輝き、最終的に一振りの金色古銘長剣へと変化した。

剣身には雁羽のような鋭い棘が並び、非常に鋭利な印象を与えた。

「ふーん、雁宗主よ。

美デュスラ女王は尋常の人間ではないわ。

我々三人で彼女を攻めるなど、全く脅威にならないでしょう」

黒熊の紋様が入った袍服を着た慕蘭谷の長老が細密な目を開き、嗜血的な赤い光を浮かべながら鋭く笑った。

落雁天は笑みを保ちつつ後方の巨大な黒山要塞に視線を向け、突然言った。

「女王陛下。

我々が狙うのはガマ帝国だけです。

貴族の蛇人族とは関係ありません。

もし貴方が蛇人族をこの地域から去らせてくれれば、三大帝国はここでの繁殖を認めますわ。

なぜあの方々と死に物狂いになる必要があるのですか？」

その言葉に美デュスラは淡々と目を向け、「あなたは本当に三歳児だと思ってるの？こんな話をするなんて、あまりにも子供っぽいわよ」と返した。

顔の笑みが一瞬で凍りつき、落雁天は手にした雁羽剣を軽く震わせながら淡々と続けた。

「ならば蛇人族はこの北西地域から完全に消滅させましょう」

「あなた一人では？」

美デュスラの眉が僅かに上げられ、妖艶な顔にさらに冷めた笑みが浮かんだ。

「あなたと慕蘭谷の三位長老で」

落雁天は笑いながら三人の長老の方を振り返り、「三位長老。

攻撃開始です」

「了解！」

その言葉に三名の青袍老人は頷き、同時に後方に一歩下がると、互いに攻守両方に対応できる奇妙な陣形を構成した。

そしてその陣形が完成すると同時に、三人から雄々しい斗気が爆発的に放出された。

その斗気が外側には拡散せず、代わりに陣形を縦横無尽に駆け回り、最終的には三つの斗気が完璧な循環を作り出す。

それは三人の精気神と結びつき、一つの強大なエネルギー体となった。

そしてその循環が完成した瞬間、三位長老の衣装から猛々しい獣吼が爆発的に響き、彼らの身体を包み込むように広がった。

三頭の獅虎熊が血色のエネルギーとなって現れ、三人の体を完全に覆い尽くす。

その血色エネルギーが溢れるにつれて、三位長老のそれぞれ個別の戦闘的な気配は次第に消え、代わりに雁落天と同等の恐ろしい存在感へと変化した。

「ふっ。

慕蘭谷の『三獣蛮荒決』は遠古から伝わる地階中級の功法とは名高いわね。

この合体効果は本当に驚異的だわ」

雁落天が隣に広がるその血色エネルギーを感じ取ると、大笑いしながらも目元に深い貪欲を浮かべた。

「些細な技で済むことよ。

金雁宗の『雁天行』の身法術は格段に優れているわ」

血色エネルギーが三位青袍長老の頭部にまで達し、それぞれ虎頭のような形態となった彼らは、まるで半獣人化したように見えた。

その中から虎頭の老人の口から先ほどの声が響いた。



虎啸の音を帯びた老者の声は人々の心臓を鷲掴みにした。

メデューサが慕蘭谷の三位長老を見据え、ため息を吐く。

「今日もまた戦いは避けられないか」

七彩のエネルギーが彼女の体内で潮のように湧き上がり、虹色の幕となって降り注ぐ。

その中心に立つ姿はまさに神々しい。

雁落天の瞳孔が僅かに縮まった。

毒宗の異端児と渡り合える存在とはこの光景か。

彼は自らも劣らない斗気を解放する準備を整えたが、今日は一人ではない。

四位長老が暗号で目配せし、同時に爆発的な動きを見せた。

驚異的な速度で地上の観客を震撼させる。

雁落天の鋭い動きにメデューサは動じない。

七彩の蛇形剣が突然現れ、その不自然な曲線から鋭利な一撃を放つ。

「ふん」

雁翼が広がり毒矢のような雁翎が襲いかかる。

メデューサの剣が鳴き、無数の残像が周囲を包み込む。

鈍い音と共に残像は消え去った。

次の瞬間、雁落天の金色光線が迫る。

七彩の影が迎撃する直前、背後から低く唸る獣吼声が響き、鋭い拳風が加わる。

メデューサが反撃したその時、雷鳴のようなエネルギー爆発が天を揺らし彼女は苦しげに退いた。

雁落天と慕蘭三老は僅か二歩後退するだけだった。

城壁の上で海波東たちが憤りを露わにする。

「卑劣！二人で一撃か」

「ははは、メデューサよ毒宗の主との戦いでも傷だらけだろう。

今さらどうなすか」

彼女の体内で洪水のような斗気が流れ、周囲の天地エネルギーが激しく渦を巻く。

炎盟の主の笑い声が響き渡った。

「この大戦に我が炎盟の主は決して欠かせぬぞ」