闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0860話 地魔老鬼

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雷鳴のような喝声が内院に轟き渡り、その余韻は仏教の聖歌のように響き回り、人々の心を震撼させた。

その蒼老な喝声が伝わった直後、内院各所で人影が次々と飛び交い、たちまち蕭炎たちがいるこの地域の上空に集結した。

先頭にはソウセン大長老がいた。

彼は喝声の方向を見つめながら拳を握りしめ、低い声で「地魔老鬼……」とつぶやいた。

ソウセンはゆっくりと顔を下げ、下方の蕭炎たちと目線を合わせた。

眉間には皺が寄り、彼はこう思った。

「やはりこの大変な騒動は自ら乗り込んで来たようだ」

遠くからその蒼老な喝声が届いた直後、天の涯に風切り音が響き始め、瞬く間に黒い点々が視界に現れた。

数呼吸の間でそれらは凶気を放つ人影に変化し、内院上空に降り立った。

蕭炎の視線が約二十人の群れをゆっくりと掃うと、中央にいる二人の人物に焦点が移った。

そのうち一人は韓フウという男以外にはないほど見覚えがあった。

もう一人は黄袍をまとった血髪の老者で、彼の顔は痩せこけになり皮膚が骨に張り付いていた。

初めから見るや、まるで骸骨のような外見だった。

険しい目ヂカラと幽々とした光を放つ瞳は鬼火のように不気味さを漂わせていた。

血髪の老者は虚空中に無数の影を生み出し、その視線が下方の内院を見据える。

彼の袖が風で揺れると同時に、周囲の空間から微細な波動が発生した。

その弱々しい振動は蕭炎にも感知され、彼は目を見開いた。

「こんなに深い斗気を初めて見たわ……この人物こそ魔炎谷の創始者、地魔老鬼だろうか?」

その凶気を放つ群れが現れた瞬間、天から圧迫感が内院全体を包み込んだ。

実力不足の生徒たちは顔色を変え、互いに目配りし合いながら驚愕の表情を見せた。

内院の沈黙を感じ取ったソウセンは眉根を寄せ、血髪老者を見上げてゆっくりと言葉を紡いだ。

「長年会わなかったが、貴方の実力もまた向上したようだな」

「お前はソウセンか」地魔老鬼はソウセンに淡々と視線を向けた。

「予想通りだが、貴方が今や斗宗級にまで昇りつめたとは驚きだ。

かつて私が見た時、まだただの斗皇級の長老だった頃よりはるかに成長したようだ。

今回は来訪の目的もお分かりだろう。

あの名を呼ばれる蕭炎という男を引き渡せ。

彼が我ら魔炎谷の三大長老を殺害したのは事実だ。

この借りは返さねば、黒角域での地位を維持できまい」

ソウセンの顔に陰りが浮かび、険しい声で反論した。

「地魔老鬼よ。

蕭炎が方言ら三人を斃れたのは理由がある。

武器による衝突は避けられないものだ。

それに方言らが彼を殺す手筈を組んでいたのなら、黙って見過ごすわけにはいかないだろう」



「これらの老人は知らぬが、老夫は魔炎谷の三位長老を殺した男だ」地魔老鬼が袖をふると冷笑道った。

「冗談は止めて、邙天尺と直接交渉しよう」

蘇千の顔に冷笑が浮かぶ。

「地魔老鬼よ、その言葉も笑い事か。

内院長がここなら、お前のような大騒動など起こさないだろう」

地魔老鬼の目が凶光を宿す。

「蘇千、本当にそうだと笑われるぞ。

確かに邙天尺に怯えているかもしれないが、お前がそのような態度でいる資格はない!今日ここで宣言しておく。

あの男を出せないなら、この内院はもう潰れる」

内院长老たちの顔色が変わる。

「この死んだもんめ、あまりにも無理やりだ」

「ふっ、そんな強者に名前を覚えてもらえるなんて意外だったわ」碧緑の火翼で空高く舞い上がる蕭炎が笑った。

彼の背後から小月と紫研が現れ、警戒しながら地魔老鬼たちを見つめる。

「お前こそが蕭炎か?」

冷たい視線を向けた地魔老鬼が唇を歪めた。

「地魔長老様、この男は確かに萧炎。

方言三人は彼の手に死んだし、菩提化体涎も彼が持っている」

「自分で言いなさい」地魔老鬼が平然と言い放った。

「あなたは自発的に来てくれるか、それとも私が四肢を断ち切って連れ出すか?」

「地魔老鬼よ、ここは内院だ。

魔炎谷の領域ではない。

今日は私も同じく宣言しておく。

この内院で手を出せば、老夫は死に物狂いで抗戦する!我が学院は土台から崩れてもなお、泥ではあるまい」

その言葉が空気を引き締めた。

「ふん、内院大長老の威厳か?だが本当に邙天尺だと思っているのか?お前こそ人間離れしたことを言い張るな。

魔炎谷三位長老を殺したのはこの男だ。

今日ここに立ち向かった者には、いずれ魔炎谷が敵討ちする」

「ああ、目的は菩提化体涎か。

その口実も立派だが、生き長らえた分だけ厚顔無恥になったものだな」蕭炎が淡々と笑った。



「舌先手後!」

地魔老鬼の目が瞬時に寒さを帯び、五指がわずかに動くと同時に五つの鋭い殺気を帯びた光の矢が掌から噴き出し、凶暴な風と共に蕭炎の頭頂へ直撃する。

距蕭炎丈許(約3メートル)の距離で突然白影が現れ、火山のように膨張した圧力が灰色の腥味を帯びた闘気を放出。

その光速の衝突で五つの光矢は消散し、白影は一歩後退しながら低く唸った。

小医仙が震えた瞬間、蕭炎の顔色が引き締まった。

「大丈夫か?」

「大丈夫よ。

気をつけて。

この老人は凄い実力で、闘気に寒さが含まれているから、今の君の実力では当てられたら相当なダメージを受けるわ」小医仙が首を横に振り、厳粛な表情で注意を促す。

「えっ?」

地魔老鬼の目が精芒をちらめき、蕭炎の前に現れた白影を見つめる。

「こんな年齢で既に斗宗級か。

本当に驚くべきことだ。

もしかして現代では斗宗への昇進が容易になったのか?」

「お前は自分が何者か知らないのか?皆がそうじゃないんだよ!この老人のように長年の修練をしても進歩しないやつばかりじゃないのよ」蕭炎が冷笑道で言い放ち、その老者のプライドに直接切り込んだ。

地魔老鬼の目尻がわずかに跳ねた。

彼の天賦は決して劣らなかったが、同じ世代の他の強者たちと比べれば最下位だった。

例えば現在斗尊級となった邙天尺やかつて黒角域を去った同輩達とは比較にならない。

その屈辱が今や蕭炎の言葉でさらに切り傷を深くした。

「地魔様はこの子には構わなくていいよ。

彼は昔から頑固者だし、ここで無駄話しても意味ない。

そのまま手をかけて、彼の歯を一本ずつ抜いて舌を切り落とせば、もう誰にも言い訳できないだろう」韓枫が陰気な笑みを浮かべて付け足す。

「では蘇千は私が担当する。

蕭炎とその白服の斗宗女は地魔様に任せるよ。

貴方の腕前なら問題ないはずだ」韓枫の目元に一瞬だけ狡猾さが現れた。

蕭炎の次から次へと出てくる奇策や謎めいた小医仙への警戒心を、全て地魔老鬼に押し付けたのだ。

地魔老鬼は頷き、険しい瞳孔に殺意が滲んだ。

その陰気な殺意を感じ取った内院の長老達が同時に身構える。

体内の雄々しい闘気が流れ込み、いつでも戦いを始められる状態に備えた。

空気は緊張でギリギリと引き締まった。

一方、内院の生徒たちは驚嘆の声を上げる。

「あの伝説級の人物が斗宗級の強者に対してこんなにも無礼な態度を取っているなんて…本当にこの学院にいるのか?」

その間も彼らは心配だった。

来訪したのは、あの謎めいた院長と並ぶ時代を超えた妖怪のような存在なのだ…

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