闘破蒼穹（とうはそうきゅう）

0800

第0893話 撃殺

驚愕と激昂の叫び声と共に、灼熱の光が突然消えた。

その瞬間、蕭炎は白い指輪に注目した。

表面に滲む血色の輝きは、天火尊者の存在を暗示していた。

「十日以内に私の魂を呼び覚ませ」と尊者が囁く声は、衰弱の影を落としていた。

蕭炎は焦りながらも、単なる霊魂の蘇生なら可能だと判断した。

指輪から消えていく微かな気配を感じながら、彼は約束を胸に刻んだ。

「てんかそんしゃ様、ご安心ください」尊者の声が途絶えると同時に、指輪の光も急速に暗転していく。



拳頭を握りしめたまま、蕭炎はため息をついた。

手のひらに載せた指輪を袖の中に隠すと、ゆっくりと顔を上げて狂気じみた表情の宣護法を見やった。

天火尊者のこの一撃は彼にとって死を覚悟させるほどの打撃だった。

凶魂が収束され、さらに精神も大いに傷ついたのだ。

今度こそ生き延びても、以前の実力は斗皇クラスまで落ち込むだろう…宣護法にとっては死よりも辛い結果だ。

虚ろな影が震えながら空を這うように立っている。

宣護法は怨毒の目で蕭炎を見据え、鼻息荒く低く唸りながらも、精神に響く痛みに顔を歪めていた。

この損失は彼を狂気へと駆り立てようとしている。

「凶魂は返せ！私は霊魂の名のもとに宣誓する。

今すぐ引き返すか、あるいは貴方にお手伝いするがよ。

韓楓を殺してくれればなおさらだ」

宣護法は額に手を当てながら低く叫んだ。

その言葉を聞いた韓楓は顔色を変えた。

宣護法の意外な冷酷さに驚きを隠せない。

「宣護法、今さらそんな話をしても無駄です。

蕭炎の性格なら決して凶魂を渡すことはありません。

だからこそここで完全に戦うしかないでしょう。

その場合、まだ生き延びる可能性は残っています」

韓楓は冷ややかに言った。

宣護法が怒りで顔を歪めた。

「黙れ！」

宣護法は韓楓に向かって叫んだ。

彼の視界には韓楓の誘いがあったからこそここに来てしまったという後悔と、得体の知れない恐怖が渦巻いていた。

このままでは命も危うく、さらに韓楓への憎悪が増す。

宣護法の喝破に韓楓は冷笑を浮かべた。

反論せず静かに立ち尽くすが、胸中で殺意が募っていた。

おそらく今日ここで死なないとしても、いずれ暗躍するつもりだろう。

鼻息荒く震える宣護法の血色の目が蕭炎に向いた。

精神からの激痛が彼を狂気へと近づけている。

険しい声で問いかける。

「返すか？返さないか？」

韓楓を見やった蕭炎は笑みを浮かべた。

皮肉な表情で言った。

「貴方が韓楓を殺してくれれば、考えるかもしれない…」

宣護法の言葉に反応したのか、彼が急いで叫んだ。

「凶魂を返せば私が手を出す！」

その時、宣護法は背後の冷たい視線を感じた。

しかし気付かぬまま、韓楓の殺意はますます強まっていた。

おそらく今日ここで死なないとしても、いずれ暗躍するつもりだろう。

宣護法を見詰める蕭炎の目には嘲讽が滲んでいた。

彼は笑みを浮かべて見つめているだけだった。



似は蕭炎の挑発的な視線を感じ取ったのか、宣護法もようやく自分が騙されていたことに気付いた。

息遣いが次第に荒くなり、目の中の怨みの色はますます濃くなっていった。

間もなく、狂気じみた叫び声がその喉から迸り出た。

「十魂使、彼を殺せ！」

宣護法の叫びに応えるように、山壁に並ぶ十の黒影が一斉に暴走し始めた。

すると、ざらざらという音と共に十本の巨大な漆黒の鎖が毒蛇のように空気を裂き、蕭炎の全身の要害へと襲い掛かった。

淡々とした表情でその鎖を見つめる蕭炎は、口を開けて緑色の炎を吐き出し、手印を結ぶとその炎が蠕動しながら十本の炎の大手に変化した。

そして、正確無比に全ての鎖を掴み、その鎖を通じて灼熱の緑色の火線を十名の黒影へと押し出した。

「チリッ！」

炎が鎖を這い上がると、たちまちチリチリという音が響き始めた。

十の黒影に包まれる霧は次第に薄くなり、その中から驚愕の表情が覗き出す。

陰気な霧が黒影から次々と溢れ出し、火線の進行を阻もうとしたが、魂使たちの実力は宣護法とは比べ物にならなかった。

慌てふためいて何とか鎖を放棄したところで、蕭炎は冷ややかに笑み、「バキッ！」

と手を握ると十本の炎の大手は烈火となって鎖を包み込み、漆黒の鎖は一瞬で直線状の炎の鎖へと変化した。

萧炎の操縦下で炎の鎖は指先で弾かれたように光速で跳ね返り、十名の魂使たちの前に現れた。

その速度は彼らの想像を遥かに超え、体が動き出す直前から炎の鎖は彼らの胸元へと突き刺さった。

炎の鎖が貫いた瞬間、十の影は硬直し、鎖は次第に軟化して空中でバラバラになり、緑色の炎は見る間に蕭炎の中に戻り始めた。

この光景を見た人々は驚愕の声を上げる。

十名の魂使たちがわずか数回の攻防で全滅したのだ。

宣護法の前に瞬時に現れた蕭炎は、冷徹な視線を向け、「来たなら去らぬように…魂殿の連中もろとも！」



炎の顔に歪んだ笑みが浮かび、掌から噴き出す緑色の炎は火山のように爆発した。

その猛攻を受けて軒護法の顔色が一変し、急いで後退するも重傷状態のため実力は以前とは比べ物にならず、いくら素早く避けたとはいえ炎の追跡に苦しみ、灼熱の痛みで慟哭した。

全身を包む黒い霧が炎の猛攻で急速に減少し、軒護法が百メートル後退したところでようやく炎は収まった。

その姿は狼狽極まりなく息も絶え間なく立ち止まると、炎を見る目は悪意を遥かに超えた憎悪で溢れ、激怒の直前、隣に現れた人物を見やると「韓楓、俺と組んでこの野郎を…」と叫びかけた。

しかしその言葉は途端に中断された。

軒護法が苦しみながらゆっくりと顔を下げると、胸元から出てきたのは斗気で包まれた手だった。

「今や貴様が生き残っても無駄だ。

あの魂使も蕭炎に始末されたし、魂殿への報告もないだろう。

貴様の魂は俺に捧げよ。

その仇は俺が討つ」

韓楓はゆっくりと拳を引き抜き、軒護法の消えゆく生命を見やりながら残忍な笑みを浮かべた。