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第0989話 0001星闘宗
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黒く暗い大殿の中、光の球内の薬老が眉をひそめた紫衣の老人を見やると、軽く笑みを浮かべた。
「秦天、不安を感じているのか?」
その言葉に反応した紫衣の老人は顔色を冷たくし、「薬塵、貴様は自分の身を守れ。
もしこの大殿の主が貴様の錬薬術を見込んでいなかったら、今頃は死んでいたはずだ」と低い声で言い放った。
鎖に繋がれた薬老の首がわずかに動くと、鎖の音を立てながら目を開き、「おれは貴様のような臆病者とは違うぞ」と冷ややかな笑みを浮かべた。
「時流に順じれば賢者だ。
抵抗するなど愚かな真似だ。
貴様の錬薬術なら、この大陸で匹敵できるのは丹塔の数名の老耄のみだろう。
魂殿に入れば貴様より高位になるはずだ。
なぜこんな苦しみを味わっているのか?」
薬老は鼻先を歪めて笑ったが、返答する気はさらさらない。
「魂殿の実力は貴様も最もよく知っているはずだ。
貴様のような驕り高ぶる人物がここまで隠れていたのもそのためだろう。
この大殿はただ一箇所の分院に過ぎないが、貴様の弟子がここまで来られるなどと本気で思っているのか?」
紫衣の老人が嗤った瞬間、薬老の目元に笑みが浮かんだ。
「今さら言葉遊びをするのは無駄だ。
いずれ結果が出るさ」と穏やかな声で言い放ち、その瞳孔は今までより一層鋭く輝きを増した。
紫衣の老人の顔色が険しくなり、「貴様の弟子と言えば蕭炎か?もし私が正しく推測しているなら、彼もこの中州にいるはずだ。
よし、本尊はその到来を待つことにする。
ただしそれ以前に、魂殿の追跡から生きて逃げ切れるかどうか……」
言葉が終わると同時に、紫衣の老人の周囲の空間が歪み始め、彼の姿は不気味にもうっすらと消えていった。
その場所を見つめる薬老の拳がぎゅっと握りしめられ、「ふん」と低い笑いを漏らした。
その後、ゆっくりと目を閉じたまま……。
二人の会話が終わった後、この巨大な黒い大殿は再び静寂に包まれた。
天日山頂では激しい雨幕が次第に収まり、温かい陽光が山々全体を照らし始めた。
雨後の空気は清々しくて心地よかった。
空の上の人影が長らく動かなかった後、ようやく小さく震え、閉じていた双眸を開いた。
漆黒の瞳孔に殺意が溢れ出す。
「先生、待っていてください」
深呼吸で胸中を駆け回る殺意を抑えながら、蕭炎は拳をゆっくりと開いていった。
今回紫衣の老人から見た初めての真の斗尊級強者。
その圧倒的な威圧感は確かに恐ろしかったが、今の蕭炎はかつての新進気鋭の斗皇とは比べ物にならないほど成長していた。
あの時の連面も見ずに威圧で心を震わせた体験と比べれば、雲泥の差だった。
この度の闇殿侵入は大きな収穫があったが、最も蕭炎を安堵させたのはやはり藥老の安全だった。
外見的には状態が良くないとはいえ生死に瀕しているわけではない。
しかし蕭炎もまた、一刻の猶予なく早急な行動が必要だと悟っていた。
藥老がここまで耐え抜いてきたことは奇跡的であり、数年を経れば何があるか分からないという危機感があったのだ。
「この場の仕事が終わったら風雷閣へ向かう。
必ず風尊者を見つけ出し、彼の協力なしには藥老を救出できない」
決意を固めた蕭炎は胸中でため息をついた。
体内に生まれ変わったような変化が起きていた。
経絡は以前よりも十数倍も拡張され、さらにその外側に薄い斗気の結晶層が形成されており微弱ながらも輝きを放っていた。
拳を握りしめると無駄な動きもなく一撃を繰り出した。
周囲の空間が歪み低く不快な爆発音が響き渡る。
その単純で質素な一撃はかつての八極崩よりも遥かに強大だった。
斗宗と斗皇とは全く異なる次元だ。
「現在の一星斗宗に位置しているはずだ。
天山血潭の効果だろう。
多くの者が一星に到達するまでに数年から十数年を要するが、今回はその過程を跳ね越えた」
一見微々たる進歩にも見えるが斗宗同士では各段階間に相当な隔たりがある。
普通の修練で一星を突破するには数年から十数年かかるのが常識だ。
自身の幸運に感謝しつつ蕭炎は火山口の石亭を見やった。
金谷二人の姿がすぐ目に留まった。
彼は虚空を踏みながらゆっくりと降り、石亭の中に着地した。
「ふん、蕭炎さんおめでとうございます。
斗宗に昇級されたのですね」
金谷も笑顔で応じた呼び方は無意識に変わっていた。
現在の蕭炎は彼らと同じ階層にあり、かつての強敵だったが今は互角とは言えない。
彼は蕭炎には秘めた力があることを知りつつも、直接対決では勝ち目がないと確信していた。
どこを歩いても実力が待遇を決定する。
以前は斗皇でありながら多くの斗宗から同等視されなかった蕭炎だが、今や正式に斗宗の仲間となったことで金谷二人の態度にも変化があった。
話す際の礼儀正しさが増していた。
「まあ運が良かったと言えばそうだが、金谷先輩が提供してくれた修練場所がなければ、蕭炎は突破するのも難しいことだったかもしれない」
萧炎二人に礼を返しながら笑みを浮かべる。
この言葉も虚偽ではない。
天山血潭がなければ、彼が一気に斗皇級へと昇華するのは、少なくとも半年近くかかるだろう。
金石もまた笑みを浮かべた。
「それぞれの事情に応じたものだ。
老夫はそのような感謝の言葉には相応しくない。
だが血潭の底で二ヶ月余りも過ごしたというのは予想外だった。
あの場所では、老夫自身が二ヶ月以上耐えられるとは思っていなかった」
「血潭の底で二ヶ月間修練していたのか」蕭炎は驚きを顔に浮かべた。
周囲を見回すと、ナラン・ヤンランらの姿はどこにもない。
「鳳清児たちも既に去った。
この天目山では今や貴方だけが残っている。
そうだ、貴方の友人だが、ここにしばらく滞在した後も去って行った。
彼女が去る際に見せた焦りのような表情から察するに、何か重要な用事があったのだろう」
金谷は笑いながら言った。
「ナラン・ヤンランも? その話だと驚きだ」蕭炎は不思議そうに聞き返した。
すぐに頷いた。
「まあ云韻の行方を知っているからこそよかった。
時間が取れれば花宗へ行って様子を見よう」
金石は一瞬迷ったが、突然切り出した。
「萧炎小友、貴方が斗皇級に成功したという話だが……」
その欲求不満な表情を見て、蕭炎は彼の意図を理解した。
すぐに笑みを浮かべた。
「金石先輩ご安心ください。
蕭炎は恩恵を受け取っても任務を放棄するような人物ではありません。
貴方体中の天山火毒は私が受け取ります」
その言葉に金石と金谷が安堵の息を吐いた。
金石は噬金鼠族の頂点に立つ存在であり、彼ら一族がこの天目山を支配しているのも、彼と金谷の威圧力によるものだった。
もし金石がここで亡くなったなら、その一族にとっても重大な損失となる。
「こちらは天山火毒を除去するための薬材リストです。
私は準備していませんので、お二人にご用意いただければ幸いです」
蕭炎は納戒から白紙を取り出し、そこに文字を書きつけた。
それを金石に渡すと、金谷が受け取り光で確認した。
「問題ない。
この天目山脈は薬材の宝庫だ。
我々噬金鼠族も長年蓄えているので、これらの希少な薬材でも午後には貴方に届けられるでしょう」
煉薬師の常識として、彼らが丹薬を調合する際は材料は自分で準備し、煉薬師はそれを加工するだけだ。
金谷と金石はその点も理解していた。
白紙を受け取った金谷は速やかに山腰へと駆け上がり、必要な薬材を揃えるための準備に入った。
彼が姿を消した後、蕭炎は笑みを浮かべた。
「萧炎小友、貴方が私の体中の火毒を除去してくれれば、我々噬金鼠族は貴方を生涯の友としたい。
我々は遠古の名門とは比べ物にならないが、魔兽数界では薄々有名だ。
また一族員が多いこともあって情報網も広く、百万生などという呼び方もされる」
金石は視線を金谷から蕭炎に戻し、笑いながら言った。
「その話だが……」萧炎は唇を舐めながらゆっくりと切り出した。
「金石先輩、古族という名前を聞いたことは?」
「古族?」
単なる二字の響きにさえも、その言葉が持つ重みを感じた。
「秦天、不安を感じているのか?」
その言葉に反応した紫衣の老人は顔色を冷たくし、「薬塵、貴様は自分の身を守れ。
もしこの大殿の主が貴様の錬薬術を見込んでいなかったら、今頃は死んでいたはずだ」と低い声で言い放った。
鎖に繋がれた薬老の首がわずかに動くと、鎖の音を立てながら目を開き、「おれは貴様のような臆病者とは違うぞ」と冷ややかな笑みを浮かべた。
「時流に順じれば賢者だ。
抵抗するなど愚かな真似だ。
貴様の錬薬術なら、この大陸で匹敵できるのは丹塔の数名の老耄のみだろう。
魂殿に入れば貴様より高位になるはずだ。
なぜこんな苦しみを味わっているのか?」
薬老は鼻先を歪めて笑ったが、返答する気はさらさらない。
「魂殿の実力は貴様も最もよく知っているはずだ。
貴様のような驕り高ぶる人物がここまで隠れていたのもそのためだろう。
この大殿はただ一箇所の分院に過ぎないが、貴様の弟子がここまで来られるなどと本気で思っているのか?」
紫衣の老人が嗤った瞬間、薬老の目元に笑みが浮かんだ。
「今さら言葉遊びをするのは無駄だ。
いずれ結果が出るさ」と穏やかな声で言い放ち、その瞳孔は今までより一層鋭く輝きを増した。
紫衣の老人の顔色が険しくなり、「貴様の弟子と言えば蕭炎か?もし私が正しく推測しているなら、彼もこの中州にいるはずだ。
よし、本尊はその到来を待つことにする。
ただしそれ以前に、魂殿の追跡から生きて逃げ切れるかどうか……」
言葉が終わると同時に、紫衣の老人の周囲の空間が歪み始め、彼の姿は不気味にもうっすらと消えていった。
その場所を見つめる薬老の拳がぎゅっと握りしめられ、「ふん」と低い笑いを漏らした。
その後、ゆっくりと目を閉じたまま……。
二人の会話が終わった後、この巨大な黒い大殿は再び静寂に包まれた。
天日山頂では激しい雨幕が次第に収まり、温かい陽光が山々全体を照らし始めた。
雨後の空気は清々しくて心地よかった。
空の上の人影が長らく動かなかった後、ようやく小さく震え、閉じていた双眸を開いた。
漆黒の瞳孔に殺意が溢れ出す。
「先生、待っていてください」
深呼吸で胸中を駆け回る殺意を抑えながら、蕭炎は拳をゆっくりと開いていった。
今回紫衣の老人から見た初めての真の斗尊級強者。
その圧倒的な威圧感は確かに恐ろしかったが、今の蕭炎はかつての新進気鋭の斗皇とは比べ物にならないほど成長していた。
あの時の連面も見ずに威圧で心を震わせた体験と比べれば、雲泥の差だった。
この度の闇殿侵入は大きな収穫があったが、最も蕭炎を安堵させたのはやはり藥老の安全だった。
外見的には状態が良くないとはいえ生死に瀕しているわけではない。
しかし蕭炎もまた、一刻の猶予なく早急な行動が必要だと悟っていた。
藥老がここまで耐え抜いてきたことは奇跡的であり、数年を経れば何があるか分からないという危機感があったのだ。
「この場の仕事が終わったら風雷閣へ向かう。
必ず風尊者を見つけ出し、彼の協力なしには藥老を救出できない」
決意を固めた蕭炎は胸中でため息をついた。
体内に生まれ変わったような変化が起きていた。
経絡は以前よりも十数倍も拡張され、さらにその外側に薄い斗気の結晶層が形成されており微弱ながらも輝きを放っていた。
拳を握りしめると無駄な動きもなく一撃を繰り出した。
周囲の空間が歪み低く不快な爆発音が響き渡る。
その単純で質素な一撃はかつての八極崩よりも遥かに強大だった。
斗宗と斗皇とは全く異なる次元だ。
「現在の一星斗宗に位置しているはずだ。
天山血潭の効果だろう。
多くの者が一星に到達するまでに数年から十数年を要するが、今回はその過程を跳ね越えた」
一見微々たる進歩にも見えるが斗宗同士では各段階間に相当な隔たりがある。
普通の修練で一星を突破するには数年から十数年かかるのが常識だ。
自身の幸運に感謝しつつ蕭炎は火山口の石亭を見やった。
金谷二人の姿がすぐ目に留まった。
彼は虚空を踏みながらゆっくりと降り、石亭の中に着地した。
「ふん、蕭炎さんおめでとうございます。
斗宗に昇級されたのですね」
金谷も笑顔で応じた呼び方は無意識に変わっていた。
現在の蕭炎は彼らと同じ階層にあり、かつての強敵だったが今は互角とは言えない。
彼は蕭炎には秘めた力があることを知りつつも、直接対決では勝ち目がないと確信していた。
どこを歩いても実力が待遇を決定する。
以前は斗皇でありながら多くの斗宗から同等視されなかった蕭炎だが、今や正式に斗宗の仲間となったことで金谷二人の態度にも変化があった。
話す際の礼儀正しさが増していた。
「まあ運が良かったと言えばそうだが、金谷先輩が提供してくれた修練場所がなければ、蕭炎は突破するのも難しいことだったかもしれない」
萧炎二人に礼を返しながら笑みを浮かべる。
この言葉も虚偽ではない。
天山血潭がなければ、彼が一気に斗皇級へと昇華するのは、少なくとも半年近くかかるだろう。
金石もまた笑みを浮かべた。
「それぞれの事情に応じたものだ。
老夫はそのような感謝の言葉には相応しくない。
だが血潭の底で二ヶ月余りも過ごしたというのは予想外だった。
あの場所では、老夫自身が二ヶ月以上耐えられるとは思っていなかった」
「血潭の底で二ヶ月間修練していたのか」蕭炎は驚きを顔に浮かべた。
周囲を見回すと、ナラン・ヤンランらの姿はどこにもない。
「鳳清児たちも既に去った。
この天目山では今や貴方だけが残っている。
そうだ、貴方の友人だが、ここにしばらく滞在した後も去って行った。
彼女が去る際に見せた焦りのような表情から察するに、何か重要な用事があったのだろう」
金谷は笑いながら言った。
「ナラン・ヤンランも? その話だと驚きだ」蕭炎は不思議そうに聞き返した。
すぐに頷いた。
「まあ云韻の行方を知っているからこそよかった。
時間が取れれば花宗へ行って様子を見よう」
金石は一瞬迷ったが、突然切り出した。
「萧炎小友、貴方が斗皇級に成功したという話だが……」
その欲求不満な表情を見て、蕭炎は彼の意図を理解した。
すぐに笑みを浮かべた。
「金石先輩ご安心ください。
蕭炎は恩恵を受け取っても任務を放棄するような人物ではありません。
貴方体中の天山火毒は私が受け取ります」
その言葉に金石と金谷が安堵の息を吐いた。
金石は噬金鼠族の頂点に立つ存在であり、彼ら一族がこの天目山を支配しているのも、彼と金谷の威圧力によるものだった。
もし金石がここで亡くなったなら、その一族にとっても重大な損失となる。
「こちらは天山火毒を除去するための薬材リストです。
私は準備していませんので、お二人にご用意いただければ幸いです」
蕭炎は納戒から白紙を取り出し、そこに文字を書きつけた。
それを金石に渡すと、金谷が受け取り光で確認した。
「問題ない。
この天目山脈は薬材の宝庫だ。
我々噬金鼠族も長年蓄えているので、これらの希少な薬材でも午後には貴方に届けられるでしょう」
煉薬師の常識として、彼らが丹薬を調合する際は材料は自分で準備し、煉薬師はそれを加工するだけだ。
金谷と金石はその点も理解していた。
白紙を受け取った金谷は速やかに山腰へと駆け上がり、必要な薬材を揃えるための準備に入った。
彼が姿を消した後、蕭炎は笑みを浮かべた。
「萧炎小友、貴方が私の体中の火毒を除去してくれれば、我々噬金鼠族は貴方を生涯の友としたい。
我々は遠古の名門とは比べ物にならないが、魔兽数界では薄々有名だ。
また一族員が多いこともあって情報網も広く、百万生などという呼び方もされる」
金石は視線を金谷から蕭炎に戻し、笑いながら言った。
「その話だが……」萧炎は唇を舐めながらゆっくりと切り出した。
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