闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1019話 虫洞争奪

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黄天城に近づくと、二人の前に荘厳な城壁が厳粛さを帯びて現れた。

その高々とした門の下では人々が行き交い賑わい、喧騒が大気中に広がり空高くまで届いていた。

二人は静かに街中を進み、広い通りと両側に連なる途方も知れぬ店舗群を見渡しながら歩く。

特にその通りでは黒々とした人頭の波が騒音と共に膨大な声波を形成し、たちまち空高くまで届いていた。

「この黄天城の人気は本当にすごいね。

おそらく黒角域でもっとも賑わう街と比べても劣らないんじゃないか?」

その荘厳な街並みと活気に目を奪われた蕭炎が舌を鳴らして感心したように言った。

「ここは中州の中域、大陸の中心点だよ。

黒角域は確かに強くてもこれとは比べ物にならないさ」林炎はニヤリと笑いながら道順を確認し、柳家のある方向へ急ぎ足で進んだ。

以前この街に住んでいた経験から黄天城の地理にも詳しくなっていた。

蕭炎が後ろについてきて、長い通りをいくつか通り抜けた後、角を曲がると二人の視界には広大な荘園が現れた。

その荘園の周囲は武器を持った警備員で固められ、厳粛な目つきが周辺を見回していた。

その堅固な守りを見て蕭炎は驚いて言った。

「こんな真昼間にこれだけの警備が必要なのか?」

林炎も一瞬硬直し、すぐに眉をひそめて低い声で言った。

「何かおかしい気がする。

以前柳家ではこんなことはなかったはずだ。

ちょっと待って」そう言いながら彼は通りにいた慌ただしく歩く男を呼び止めた。

「君は外から来たのか?今柳家と程家が空間虫洞の管理権を争っているんだ。

両方とも多くの人を城中心の広場に集めてるらしい。

全員が見物に駆けつけてるみたいだ」

その話を聞いた林炎は眉根をさらに寄せ、男に向かって頭を下げた後、蕭炎の隣へ来て囁いた。

「おかしいな。

一年前から空間虫洞の管理権は柳家が持ってるはずだったのに、どうしてまた争いがあるんだ?」

「城中心に行ってみれば分かるさ」先ほどの男の話を聞いた蕭炎が笑って言った。

林炎は頷き、ニヤリと笑みを浮かべて言った。

「柳擎という責任者も苦労しているんだろうな。

来ようぜ、こういう争いは滅多にないんだから」

そう言いながら彼は向き直り、城中心へ向けて早足で進んだ。

蕭炎は笑顔のままその背を追った。

黄天城の中心部には広大な青石の広場があり、中央には巨大な黒い空間虫洞がゆっくりと回転していた。

その周囲から驚異的な空間の揺らぎが四方八方に広がり、人々の視線を集め続けていた。



広場周辺は密に人で埋め尽くされ、うなり立てる声は魔音のように耳を痛めさせた。

無数の好奇心溢れる視線が中央部へと向けられていた。

そこには二つの勢力が対峙していた。

「程耀、今年の空間虫洞は我が柳家が管理するものだ。

貴様のこの行動は一体どういうつもりか」

左側の集団を率いる巨漢は頬骨の高い顔立ちで不気味な存在感を放ちながらも、その目には鋭い光があった。

この顔立ちは柳擎以外にない。

かつての鋭気は失われ、代わりに重厚さが滲み出していた。

柳家の族長として求められるのは血気盛んな若者ではなく、冷静沈着な人物だ。

柳擎の背後には白髪二老が悠然と立っていた。

その周囲からは圧倒的な威厳が漂い、誰もが彼らを軽視できなかった。

その傍らに赤い衣装をまとった美しい女性がいた。

桃色の顔立ちで誘惑的な魅力を放ち、男性たちの視線を集めている。

この顔は柳菲だ。

かつて内院で蕭炎と些かの摩擦があった人物だが、数年の歳月が経過し、彼女は成熟した水蜜桃のようにさらに魅力的に成長していた。

「ふん、柳擎、貴様はまだ若輩者だ。

長老に対して不敬な態度とはいかんな」

対面集団を率いる中年男は険しい目つきで柳擎を見据え、皮肉たっぷりに笑った。

その時突然、広場から蒼白い声が響いた。

「これは焚炎谷梅の最新命令だ」

人々の視線が一斉に赤い斑点を浮かべた老人へと向けられた。

彼は背中を丸めて立っていた。

焚炎谷の赤火長老である。

「焚炎谷の赤火長老ですか!」

柳擎らも驚きの声を上げ、礼儀正しく挨拶した。

「ではこの最新命令とはどのようなものでしょうか。

従来の規則では空間虫洞管理権の引き継ぎ時期ではないはずですが」

「谷主様が下された命令だ。

高級錬薬師を焚炎谷に呼び寄せ、その老体で一粒の丹薬を作りたいというのだ。

しかし適材を見つけることができず、この命令が出た。

もし誰かが高級錬薬師を見つけたら、その家族に管理権を与える。

ただし期限は一年間だ」

赤火長老は淡々と説明した。



「程家に六品丹塔認証の錬金術師を発見したとのことで、貴柳家も同様の人物を見つけられれば、その方と私が婪炎谷へ参上するなら、この空間門は貴方に譲り、期限も一年から三年に延長できる」

赤火長老が程家の方向を指し示す。

そこには紫の錬金術師袍を纏った老いた男が胸を張って立っていた。

「六品錬金術師か?」

柳擎の顔色が変わった。

確かに柳家にも錬金術師はいるが最上位は五品で、六品という存在は聞いたことがない。

その程度の人物なら焚炎谷でも待遇をもらえるはずだ。

なぜこの中堅どころのような家族に来よう?

「柳家の幾日か時間を頂戴していただけませんか?必ず探します」

柳擎が顔を引き攣らせた。

赤火長老は首を横に振った。

「これは谷主様の命令です。

誰も遅延できません。

貴家だけでなく、老夫でさえその人物を確保できるとは限りません。

今日中に六品錬金術師を呼べないなら程家に譲ります」

柳擎が苦々しい表情になった。

拳を握りしめながら「この老いた野郎は程家から賄賂を受け取ったに違いない」と柳菲が銀歯を嚙み締めた。

「黙れ!」

柳擎が顔を引きつらせた。

後ろの柳フィーがため息と共に足を鳴らした。

「どうしたものか……」

柳擎が二人の老者を見やった。

「この数日間、焚炎谷が高級錬金術師を探しているという噂は聞いたことがあるが……」

「私も同感だ。

程家に知らせられたのは事実だろう。

その六品錬金術師は晋入六品を長く続けた上位の人物らしい。

天黄城でそれ以上の人物を探すのは難しい」

柳擎の拳がギシリと鳴った。

空間門は柳家の財源だ。

この権限を失えば人材確保や勢力拡大に支障が出る。

「ふん、柳の甥さん。

もう諦めろよ。

管理権を渡せば、私が気に入ればたまには湯水でも分け合うかもしれない」

程耀と呼ばれる中年男が笑みを浮かべた。

柳擎は顔色を変えながらも抗議できなかった。



**柳擎の顔色が一瞬で蒼白くなり、しかし今や柳家当主としての自制心が勝った。

**

「程耀、今回はお前も手酷いな……」

その言葉を吐き出すと同時に、柳擎は深く息を吸い込み、意図的に感情を抑えた声で告げた。

「林炎?」

突然現れた人物に驚いた柳擎が名を呼ぶと、林炎は鼻を鳴らして笑った。

「おや、これだけの騒ぎになっても構わねえのかよ。

でもまあ、六品薬師じゃなくて助けてくれないのは仕方ねえさ」

その言葉と共に、空を見上げた林炎が新たな人物に呼びかけた。

「どうせずっと見張り立てるつもりだろ? そろそろ降りてこいよ」

柳フィーら一同も驚きの声を上げる中、空から軽やかに降り立ったのは、若々しい男だった。

その姿を見た瞬間、柳擎は全身が凍り付いた。

「踏空歩く……斗宗強者?」

しかし次の瞬間、懐かしい笑い声が響き渡る。

「柳擎、久しぶりだな。

元気で過ごしていたのか?」



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