闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1062話 闘宗の頂点

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谷口の狭い通路は数丈の幅を持ち、その上部の崖に小医仙と欣藍が正座していた。

彼らの傍らには呆然とした表情を浮かべた地妖傀が控えていた。

欣藍は白い手で頬杖をつくと、谷間を見回す視線を投げていた。

数日間の待機中、谷内に異常な動きはなく、進展はどうなっているのか気になっていた。

「あー」とため息をついた欣藍が伸びをしようとしたその時、小医仙の閉じられていた目が突然開き、美しい顔に緊迫した表情が浮かんだ。

「どうしたの?」

と尋ねようとした瞬間だった。

小医仙は冷たい殺意を体から溢れさせながら立ち上がり、穏やかな声で言った。

「氷河谷の人たちだ。

来たわ」

その言葉に欣藍も顔色を変え、谷外を見やった。

遠くの影が白い光を放ちつつ迫ってくるのが見えた。

「お前は厄難毒女か?」

欣藍が谷外を見つめる間、どこからともなく老人の声が響き渡り、小医仙とその相手に届いた。

小医仙は答えず、冷たい目で蛇のような灰紫の斗気を体全体に纏わせた。

その光景は周囲の毒気にまで影響を与えるほどだった。

老人の声が消えた直後、谷口の空間がゆらりと震え、杖をついたくびょうな影が現れた。

その後ろには無数の白い影が整然と並び、その存在感は周囲の毒気すらも押し退けた。

小医仙の瞳孔が僅かに縮み、手を握り締めた。

「果たして斗宗頂点の強者だ。

氷河谷は本当に大金をかけたわ」

杖を持つ老人は落神涧で蕭炎たちを探す際に現れた天蛇長老だった。

彼は小医仙を見上げて笑みを浮かべ、「おや、我が谷の長老を殺した者を捕らえて極刑に処せようとしているのだ」と冷淡な声で言った。

その背後の欣藍は大量の氷河谷強者が現れたことに顔色を変え、特に老人を見つめた瞬間はさらに蒼白になった。

「彼は……氷河谷の天蛇長老?」

と驚きの声を上げた。



「天蛇の長老?」

小医仙が驚きを顔に浮かべた。

その瞬間、彼女もわずかに動揺した。

この人物の名前は、丹域に入ったばかりの自分でも耳にしたことがある。

噂によれば、この老人は実力だけでなく、氷河谷の『氷尊勁』を極限まで修練し、通常の斗宗すら十分の一にも及ばないという。

さらに彼が手掛ける相手は、その『氷尊勁』の凄まじさで生々しい氷像に変えられ、見る者を畏怖させる。

この凶名は中域でも相当なものだ。

小医仙は思わず、今度の氷河谷から現れた強者がこの老悪魔であることに驚いた。

「なぜ二人だけか? 以前見た青年と実力のある霊体もいるはずだが……」天蛇が拐子で地面を軽く叩きながら笑った。

「彼らも出てこい。

今日は、老夫は一人残らず斬るつもりだ。

谷主に説明できないからな」

「それができるかどうかはわかったものじゃないわ」小医仙が冷笑し、欣藍に向かって頰を向けた。

「谷の中へ行って、蕭炎たちを見張りなさい。

その言葉に、欣藍は一瞬ためらったが、自分が残れば小医仙の足手まどろみになることを悟ると、牙を剥いて谷の中に飛び込んだ。

「やはり谷の中か。

もしかして天毒蝎龍獣との戦いで負傷したのか?」

天蛇はその動きに動揺せず、今日この場で全員逃がさないつもりだった。

小医仙の眉がわずかに寄り、険しい表情になった。

「あの老悪魔が我々と天毒蝎龍獣が戦ったことを知っているとは……やはり何かしらの手がかりがあるようだ」

「蛇長老、この女は私たちに任せてください。

お休みなさい」天蛇の側で三名の白髪老人が小医仙を見やりながら礼を述べた。

「構わん。

この厄難毒体の娘も興味深いからな」天蛇が耳後ろの褐色の傷痕に触れた。

その傷は肉片が取り出されたような凹みがあり、見る者に寒気を覚えさせる。

その傷を撫でながら、天蛇の濁った目の中に冷気が湧き上がった。

「あの厄難毒体との戦いはいつだったか……記憶も薄れるほどだが、その男は忘れられない。

今日は、この代わりに新たな厄難毒体を見るのも悪くない」

その言葉に三人の白髪老人が顔を見合わせた。

彼らはかつてその厄難毒体の強者に惨敗したという傷跡を抱えていたため、口を開かなかった。

「谷の周囲を守りなさい。

誰一人逃がすな!」

拐子を持ちながら天蛇がゆっくりと前に進み、小医仙と地妖傀を見やった。

「今日はお前以外は全員死ぬ」

小医仙の顔が凍りつき、谷の中をちらりと見た。

手にした玉手が固く握られた。

谷内にはまだ何の動きもない。

天火尊者の**融合は未完了だった。

「できるだけ時間を稼ぐしかないわ……蕭炎には早く終わらせてくれないと」



小医仙は息を吸い込み、蓮の足どりで軽やかに動いた。

その一歩が地面に触れた瞬間、隣の地妖傀は引き寄せられるように「バキ!」

と地面を蹴り上げ、天蛇暴に向かって突進した。

小医仙も慌てて身を翻すと、掌から膨大な斗気を灰紫の巨蟒へと変換。

その巨蟒は空を切り裂き、天蛇に襲いかかった。

「あれが傀儡か?$!確かに不凡だが…」天蛇は笑みを浮かべ、枯れた手で空間を握りしめる。

すると地妖傀の前に実体化した壁が現れ、「バキ!」

と衝撃を受けた。

その反動で地妖傀は後退し、そのまま空中に投げ出された。

天蛇は掌を振ると、丈一メートルの寒気巨掌が小医仙へと突き出した。

巨掌は灰紫の巨蟒を掴み、「バキ!」

と砕き、エネルギー粒子となって散らばった。

「冷酷な氷尊勁か…」小医仙は顔を引き締め、濃厚な斗気を頭上に集める。

「バキ!」

と寒気巨掌が降り、灰紫の光雲を凍結させた。

その瞬間、細かい氷晶が現れ、巨掌は防御を粉砕した。

「プチッ!」

小医仙は体を突き飛ばされ、山壁に激突。

強烈な衝撃で岩肌に亀裂が走った。

たった一撃で斗宗の頂点が敗北するとは…

次の瞬間、銀色の影が無謀にも迫ってきた。

天蛇は鼻をひくと、腕に氷結した拳套を作り、「バキ!」

と地妖傀の拳を受け止めた。

その衝突は視界を奪うほど速く、氷片が四方八方に飛び散った。



氷晶が凍りついた拳から四方八方に飛び散り、天蛇は冷ややかな笑みを浮かべながら腕を突然蛇のように蠢かせた。

その動きは不気味なほどに歪んでおり、次の瞬間猛然と震わせた。

「蜂!」

湖水のような力がその蠕動する腕から爆発的に溢れ出し、その中に地妖傀の力を宿したことが見て取れた。

その奇妙な動き方は地妖傀を打倒させる力そのものを逆に反射させていた。

波紋のように広がる気力で地妖傀の胸元は半指分の拳跡を作り、もしその存在が生きていて痛みを感じたなら天蛇の一撃だけで命を奪われていたであろう。

しかし今や地妖傀は強打を受けたまま山壁に深く突き刺さるまで震え続け、「これくらいか」という言葉と共にその動きは止まった。

蛇の杖を虚空に軽くついて天蛇が小医仙を見やり、穏やかな笑みを浮かべながら言った。

「前の大災禍毒体と比べればずいぶん弱くなったね。

素直に氷河谷へ来たら生き延びられるかもしれないよ。

抵抗するなら……他の連中と同じ運命だ」

小医仙の顔が凍りつくように硬くなり、血を拭う手で印を変えると厄難毒体封印を開こうとしたその時、谷間からゆっくりと笑い声が響き渡った。

「氷河谷に帰るよりはこの落神淵の方がいいかもね。

お前の骨を埋めるのにちょうどいい場所だわ」

空を見上げた天蛇の笑みが消え、日光が陰りながら谷口から二人の影が現れた。

その一人は若い男で、もう一人は笑顔の老人だった。

「斗尊……?」

突然西側から呆然と混ざった驚きの声が響き、空気自体が凍りつくほどに沈黙が広がった。



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