闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1454話 解決

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黒擎は目の前の痩せた影に極度の驚愕を浮かべ、その手が赤面した老者の天頂に触れているのを見ては瞬きも忘れるほど目尻が跳ね上がった。

「貴方は誰ですか?私は北龍島の火戦長老です」

老者は体全体が凍りつき、一ミリも動けない。

その手のひらから伝わる圧倒的な力に全身が粟立つ。

掌が震えるだけで頭蓋骨が粉砕されるという恐怖が背筋を冷たく貫く。

「一体何者だ?なぜ近づいてくる気配を感じなかったのか」

老者の目は次々と色を変え、困惑と恐れの入り乱れた表情で揺らいだ。

「手を離せ」蕭炎は淡々と視線を向けた。

その言葉に老者は頬が引きつり、眼を見開いて瞬きも忘れる。

舌打ちするように「三」と数え始めた途端、天頂の冷たい掌が離れ、彼は黒擎から離れて素早く後退した。

「この方、一体何者でいらっしゃいますか?これは我が太虚古龍一族の問題です。

三大龍島の龍王様が近づいていらっしやるため、お手を煩わせたくありません」

老者が去り際に声をかけたが、蕭炎は無視して黒擎を起こし丹薬を与えた。

「死なないよ」苦しげに笑う黒擎が老者を見つめる。

「最初から殺すべきだった。

半聖の強者を殺せば北龍島から肉片を切り取れるんだ。

こんな機会は滅多にない」

その言葉には強い不満が籠もっていた。

命を賭けて高位の敵を倒すという計算だ。

「火戦、どうした?」

半龍長老と燭離長老が激突している場所から声が響く。

彼は眉根を寄せながら攻撃を続けた。

傷を負っているため相手を完全に破壊できなかった。

「問題が発生しました」火戦の目は蕭炎に鋭い光を宿す。

「何かを感じる」

「ドン!」



「虚無の空間に手を出すなど、賢明な選択とは言えないだろう」

眉根が寄せられた半龍族の長老は、掌で燭離長老を押し退けた。

その視線は瞬時に蕭炎へと注がれ、鋭い眼光が彼の額に突き刺さる。

冷たい声色が響く。

「萧炎……?」

息を呑んだ燦々長老が、黒擎の隣に現れた人影を見やった。

驚愕の表情が瞬時に変化し、何かを悟ったように頬を引きつらせた。

その足取りで蕭炎の側へと近づき、低く囁いた。

「ここはお前には関係ない場所だ。

黒擎と共に去れ。

私が護るから……」

赤い顔の老者が眉根を寄せ、険しい表情で蕭炎を見据えた。

「最後の機会だぞ」

その瞬間、蕭炎の足が突然前に踏み出した。

次の刹那是無数の影が交錯し、彼の姿は光速で消える。

老者の目が驚愕に引き攣り、身を翻すと同時に、空間から冷たい声が響く。

「動けば死ぬ」

その言葉と共に、ゆっくりと影が現れた。

赤い顔の老者が震えながらも、牙を剥いて叫んだ。

「お前は……斗聖か?」

黒擎と燦々長老も呆然と見つめる中、蕭炎は天井に手を伸ばした。

指先がその額に触れた瞬間、血の穴が開き、気力が急速に失われる。

その後、彼は掌で何かを描いた。

「終わりだ」

黒擎が受け取った赤い顔の老者は、かつては畏怖すべき半聖だったはずなのに、今はただの死体のように動かない。

「……何この現実か?」

黒擎が呆然と呟く。

彼自身も八転斗尊の頂点に達した今、蕭炎がその間にどうやって斗聖へと到達したのか理解できなかった。

「gulp」

燦々長老が唾を飲み込む音が響いた。

全盛期でもこの強敵に対抗するには苦労したはずなのに、蕭炎の手で瞬時に終わらせたのだ。



「この男は一体どうやって修練したんだ?短い期間でここまで来たのか。

龍皇陛下の友人とは名にふさわしい、本当にすごい」

「撤退するぞ」

遠方では半龍族の長老もその光景に驚き呆れていたが、すぐに我を回し足元から寒気が込み声を上げた。

「この男は火戦を簡単に捕らえた。

明らかに斗聖級の実力だ。

あのレベルの強者は我々凡人では対処できない。

残しておけば火戦と同じ運命になる」

その長老の喝破が響いた瞬間、彼の身体は即座に後退りを開始した。

数回の移動で暗闇の果てに姿を消すと同時に、すぐに報告に行く必要があった。

いずれ島中の強者が現れればこの男を始末するだろう。

「蕭炎、彼らを逃がさないように。

草むしりをさせないぞ」その光景を見た燭離は驚きながら声をかけた。

彼はこの老人が突然撤退したとは予想していなかった。

蕭炎は笑みで頷いたが動くことはせず、その人々の逃走方向に目を向け続けた。

約二分間後、突如光の流れが現れ、次々と人影が飛び出してきた。

彼らは明らかに妖瞑たちだった。

そして彼ら手中には一人ずつ囚われている人物がいた。

先程逃げ出した半龍族長老もその中に含まれていた。

「ふっ、この老人は狡猾だね。

しかし中級半聖の実力では波紋など起こせないわ」妖瞑は手に持った昏倒した半龍族長老を蛮々と蕭炎に投げつけながら笑った。

蕭炎がその長老を受け取り封印し、黒擎に渡すと燭離を見つめて言った。

「この方は九幽地冥蟒族の妖瞑族長……」

「九幽地冥蟒族?」

聞き入れた燭離は顔色を変えて妖瞑を警戒するように見詰めた。

「聞いた話では三大龍島が我々東龍島と組むよう誘いに来たらしい」

「ふふ、その長老はご心配なく。

あの約束は私が無能な兄貴がしたのよ。

今は私が族長として一族を率いているわ」妖瞑は笑みながら言った。

「現在私は蕭炎君の招きで来ている。

東龍島様がお引き受けなら、我が九幽地冥蟒族も少し手伝えるでしょう」

「えっ」

その言葉に燭離長老も驚き目を向けた。

そして蕭炎を見やると、後者は笑みを浮かべ頷いた。

現在の東龍島が最も必要なのは、この程度の援軍だ。

「東龍島の状況はいかがですか?」

蕭炎が尋ねる。

燭離長老はため息をつき首を横に振った。

「ひどいよ。

三大龍島は龍皇陛下が真に頂点に達する前に抹殺するつもりで全軍を動かしている。

現在東龍島は大混乱中、龍皇陛下も三大龍王の連合に囲まれて……」

蕭炎の顔にも重苦しさが浮かんだ。

東龍島の状況は彼の想像以上に深刻だった。

「行こう、東龍島へ向かうぞ」

深く息を吐きながら、蕭炎は袖の中の拳を握りしめた。

三大龍王がどれほど強かろうと、紫研の立場を見過ごすことはできない……

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