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第0536話 飽食
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「ふ~、ふ~」秋は満腹で地面に這りながら破れた鉢の下の薪に息を吹きかけた。
「ぐぅぐぅ」と空腹を訴える自分の腹鳴りが聞こえたので、秋はズボンの紐を締め直した。
名前こそ「秋は満腹」だが、実際には両親や嫁ぎ先で一度も満足に食ったことがなかった。
しばらく薪を焚いていたが、火勢が弱まったため秋は焦りを感じた。
周囲を見回すと、すぐに近くの篝火から人骨を拾い、それを炎の中に放ち込んだ。
鉢下の火が再び勢いを得ると、ようやく秋は安堵した。
瓦片を開けてみると、沸騰する水の中で三つの卵石が揺れ動いていた。
錆びた短刀でそっと触れた瞬間、汚れた顔に喜色が浮かんだ。
瓦を再び閉じて薪を追加し、布切れの襁褓を抱きながらゆすり始めた。
「お子様よ、この卵石は煮崩れ寸前だ。
煮崩れたらそれを飲めば病気が治るだけでなく、神になるかもしれないぞ!!」秋はますます喜び声を上げ、襁褓の中の赤ちゃんを見つめていた。
その時、遠くから人間たちが騒ぎ始めた。
「私の卵石スープよ!!」秋の悲痛な叫びに合わせて、白い布巾を被った法教信者の群れが立ち上がり、「あの赤い道袍の奴め! 彼は当家の巫祝様を殺したんだ!!」と叫びながら殺意を込めた。
秋はその場で先ほどの感情を忘れ、短刀を襁褓に隠してふらりと立った。
身長が小さく体も細いため群衆の隙間を通れず、「どいてくれ!! 通せ!! 秋は満腹だよ!!」と叫んだが誰も反応しなかった。
しかし不意に人々が左右に分かれて道を開けた。
そこに現れたのは全身黒い触手で覆われ、赤い道袍を着て銅貨の面を被った人物だった。
その前に立つ短刀を見て秋は石渎爺様の守護を感じ取り、恐怖ではなく赤ちゃんを抱いたまま突進した。
「お前が巫祝様を殺したのか! お前が私の卵石スープを破壊したのか!!」と叫びながら錆びた刃で赤い道袍に刺し込んだ。
次の瞬間、天が暗くなり秋は意識を失った。
その直後「父よ!! 父!!」という声が聞こえ、李火旺は血みちりした現実から我に返った。
「今は集中せよ!周囲は全て敵だ!!」
全身ほとんど血で染まった李火旺が深呼吸をした。
彼は手中の剣を握りしめ、遠くで完全に殺意に狂った彭龙腾(ほうりゅうとう)を追いかけるように命じた。
「近くで回るな!前へ進むんだ!できるだけ前に」
しかし李火旺の命令は彭龙騰には無関係だった。
彼女は殺戮を続けたまま「もう一度言う!前へ進め!逆らうと虚化させたまま二度と出さないぞ!」
と叫んだ。
彭龍騰が突然足を止めた。
掌(ひら)の上に口を開けた人間の頭顔が、彼女の指で捏ねられ爛々と潰れた。
白い血が指の隙間に流れ落ちる。
抵抗するように見えたが李火旺の脅威には従わざるを得なかった。
「生きている肉身を持つからこそこの快感を味わえるんだ。
肉身を得たいなら今、李火旺に頼るしかない」彭龍騰は巨大な体で二人の男を抱え、血の渦となって法教信種(ほうしょうしんしゅ)の中に突き進んだ。
彭龙騰が前衛を切り裂くことで李火旺の周囲は楽になった。
しかし彼は笑えない。
先ほど見た死産児を抱えた女の姿が頭から離れなかった。
周囲を見回すと、骨ばりした体つきで腹がふっくらした信種たちが目に入った。
彼らの赤い外見は次第に本来の色に戻ってきた。
彭龍騰の一足で一人の内臓が地面に飛び出した。
その中身は土(おうしんど)だった。
観音土を食べ続けると長寿できないことを李火旺は知っていた。
彼はまだ太腿だけが残る人物を見た。
彼らも米や肉を摂取していた。
李火旺は信種たちが法教に加入すれば暴虐無道になることを知っていた。
彼らは現世の於(う)神に祈りながら、実際にはその神が彼らをこの状況に陥れたことに気付いていない。
「石渎(せきとく)爺様!お助けください!」
白髪の老人が棒を持って李火旺に向かって叫んだ。
李歳(りしょう)の銅貨剣は鞭のようにその首を引きちぎった。
人間の頭が地面に転がる中、李火旺はさらに前進した。
信種たちの顔を見ると、李火旺は亡き師匠丹陽子(たんようし)との類似点を感じた。
彼らも無知で欺瞞され、狂熱を抱いていた。
狂った目つきの人間の頭を見た瞬間、李火旺は悟った。
この世の苦難が彼らに何も残さなかったのだ。
理性さえ失い、於神への信仰だけが救いだった。
「彼らは悪くない……でも今や、彼らの血肉で道を作らねばならない」李火旺はそう思いながら進んだ。
「生きている屍(し)のように生きていても死ぬ方が楽かもしれない」
半身を土に埋めた金山(きんざん)が震えながら涙を流した「あ……」と初めて声を出した。
李火旺が目を開けると地面が陥没した。
二本の足が土の中に沈んだ。
周囲の人間たちの足元から三つの隆起が彼に迫り始めた。
李火旺は多くの信種の中に危険な人物が潜んでいることを悟った。
しかし自分がここまで速く逃げたにもかかわらず、彼らは追いついてきたのだ。
「ぐぅぐぅ」と空腹を訴える自分の腹鳴りが聞こえたので、秋はズボンの紐を締め直した。
名前こそ「秋は満腹」だが、実際には両親や嫁ぎ先で一度も満足に食ったことがなかった。
しばらく薪を焚いていたが、火勢が弱まったため秋は焦りを感じた。
周囲を見回すと、すぐに近くの篝火から人骨を拾い、それを炎の中に放ち込んだ。
鉢下の火が再び勢いを得ると、ようやく秋は安堵した。
瓦片を開けてみると、沸騰する水の中で三つの卵石が揺れ動いていた。
錆びた短刀でそっと触れた瞬間、汚れた顔に喜色が浮かんだ。
瓦を再び閉じて薪を追加し、布切れの襁褓を抱きながらゆすり始めた。
「お子様よ、この卵石は煮崩れ寸前だ。
煮崩れたらそれを飲めば病気が治るだけでなく、神になるかもしれないぞ!!」秋はますます喜び声を上げ、襁褓の中の赤ちゃんを見つめていた。
その時、遠くから人間たちが騒ぎ始めた。
「私の卵石スープよ!!」秋の悲痛な叫びに合わせて、白い布巾を被った法教信者の群れが立ち上がり、「あの赤い道袍の奴め! 彼は当家の巫祝様を殺したんだ!!」と叫びながら殺意を込めた。
秋はその場で先ほどの感情を忘れ、短刀を襁褓に隠してふらりと立った。
身長が小さく体も細いため群衆の隙間を通れず、「どいてくれ!! 通せ!! 秋は満腹だよ!!」と叫んだが誰も反応しなかった。
しかし不意に人々が左右に分かれて道を開けた。
そこに現れたのは全身黒い触手で覆われ、赤い道袍を着て銅貨の面を被った人物だった。
その前に立つ短刀を見て秋は石渎爺様の守護を感じ取り、恐怖ではなく赤ちゃんを抱いたまま突進した。
「お前が巫祝様を殺したのか! お前が私の卵石スープを破壊したのか!!」と叫びながら錆びた刃で赤い道袍に刺し込んだ。
次の瞬間、天が暗くなり秋は意識を失った。
その直後「父よ!! 父!!」という声が聞こえ、李火旺は血みちりした現実から我に返った。
「今は集中せよ!周囲は全て敵だ!!」
全身ほとんど血で染まった李火旺が深呼吸をした。
彼は手中の剣を握りしめ、遠くで完全に殺意に狂った彭龙腾(ほうりゅうとう)を追いかけるように命じた。
「近くで回るな!前へ進むんだ!できるだけ前に」
しかし李火旺の命令は彭龙騰には無関係だった。
彼女は殺戮を続けたまま「もう一度言う!前へ進め!逆らうと虚化させたまま二度と出さないぞ!」
と叫んだ。
彭龍騰が突然足を止めた。
掌(ひら)の上に口を開けた人間の頭顔が、彼女の指で捏ねられ爛々と潰れた。
白い血が指の隙間に流れ落ちる。
抵抗するように見えたが李火旺の脅威には従わざるを得なかった。
「生きている肉身を持つからこそこの快感を味わえるんだ。
肉身を得たいなら今、李火旺に頼るしかない」彭龍騰は巨大な体で二人の男を抱え、血の渦となって法教信種(ほうしょうしんしゅ)の中に突き進んだ。
彭龙騰が前衛を切り裂くことで李火旺の周囲は楽になった。
しかし彼は笑えない。
先ほど見た死産児を抱えた女の姿が頭から離れなかった。
周囲を見回すと、骨ばりした体つきで腹がふっくらした信種たちが目に入った。
彼らの赤い外見は次第に本来の色に戻ってきた。
彭龍騰の一足で一人の内臓が地面に飛び出した。
その中身は土(おうしんど)だった。
観音土を食べ続けると長寿できないことを李火旺は知っていた。
彼はまだ太腿だけが残る人物を見た。
彼らも米や肉を摂取していた。
李火旺は信種たちが法教に加入すれば暴虐無道になることを知っていた。
彼らは現世の於(う)神に祈りながら、実際にはその神が彼らをこの状況に陥れたことに気付いていない。
「石渎(せきとく)爺様!お助けください!」
白髪の老人が棒を持って李火旺に向かって叫んだ。
李歳(りしょう)の銅貨剣は鞭のようにその首を引きちぎった。
人間の頭が地面に転がる中、李火旺はさらに前進した。
信種たちの顔を見ると、李火旺は亡き師匠丹陽子(たんようし)との類似点を感じた。
彼らも無知で欺瞞され、狂熱を抱いていた。
狂った目つきの人間の頭を見た瞬間、李火旺は悟った。
この世の苦難が彼らに何も残さなかったのだ。
理性さえ失い、於神への信仰だけが救いだった。
「彼らは悪くない……でも今や、彼らの血肉で道を作らねばならない」李火旺はそう思いながら進んだ。
「生きている屍(し)のように生きていても死ぬ方が楽かもしれない」
半身を土に埋めた金山(きんざん)が震えながら涙を流した「あ……」と初めて声を出した。
李火旺が目を開けると地面が陥没した。
二本の足が土の中に沈んだ。
周囲の人間たちの足元から三つの隆起が彼に迫り始めた。
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しかし自分がここまで速く逃げたにもかかわらず、彼らは追いついてきたのだ。
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