国民の監察医（こくみんのかんさつい）

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第0078話「紫外線反射」

服従するか否か、最年少の若者は取り出され、彼のSNSを確認すると、同じように物を特定できた。

「認めないなら、君が販売しているものを盗難と転売罪で数倍に処罰する。

出所後も髪があるなら連絡してこい」と魏振国は脅した。

若者は負けず劣らず言い返す。

「そんな理屈通じねーよ……そもそも君が俺だけをやることか」

「じゃあ誰か指名しろ」魏振国が唇を動かすと、目の前のルイヴィトンの中年男を見つめる若者が一瞬怯んだ。

魏振国は笑いながらロビン・ノードを呼び寄せ、「この奴の物を嗅ぎ出せば重罪で処罰する」と指示した。

彼はこの男を突破口にしていたのだ。

場にいる者たちが誰か口を開けば、他の者はより重い判決を受けた。

この理屈は魏振国だけでなく、他の容疑者も理解していたが、黙り込んで言葉が出せない。

黒い作戦服の大壮（ロビン・ノード）が「ワン」と声を上げ、本格的に物を探し始めた。

李莉が大壮を連れて厳粛に品を選び出すと、若者の表情はますます硬直していく。

魏振国はふんぞり返って感嘆する。

「夜市で見かける転売業者とは随分変わったね。

直接SNSで販売してて記録も残ってるんだから、あとで決済履歴を調べれば金額がすぐに分かる」

他の中年たちは農家レストランの経営者たちだったが、今は青筋立てながら困惑した表情だ。

「今の若い者はどうなっているんだろう……盗みさえ気軽にやるのか？SNSに犯罪物を載せても一生つかまらないと思ってるのか？」

魏振国は彼らの顔を見て笑った。

「意外だろ？君たちが隠すつもりでも、彼は堂々とSNSで販売してるんだ。

俺は確信するよ、スマホを調べれば自白した会話を見つけられるかもしれない。

もしかしたら君にも」

これはルイヴィトンの中年男に向けた発言だった。

「俺とは全く知り合いじゃない」と中年男が苦しげに答えると、「新しい形態だ、チャット履歴だけで十分さ」魏振国はスマホを示した。

確かに彼らの取引は微信で確認されていた。

中年男は顔を引きつらせた。

「俺と彼とはあまり知り合いじゃないが、今回の取引は微信で合意した」

反対策の準備はしていたものの、この若者だけでは何年も牢獄に送られる可能性があった。

魏振国は突然娘の言葉を思い出し、笑みがこぼれた。

「最近若い者は職場を浄化するんだって。

そうだね、SNSで君たちの汚い真実を掃除してやる」

目の前の若者たちは困惑した表情で彼を見つめた。

……

出かける時は整然と並んでいたが、帰りは散らかり放題だった。



計7名の容疑者を運ぶ車両は全て後席に2人、中央に手錠をした犯人が挟まれる標準的な構図だった。

専用囚車など存在せず、ベテラン警官たちは「やせこけた容疑者は自分たちの車に乗せる」という選別術で快適さを得ていた。

若手の牧志洋のような新人はその対象外だ。

ベテラン刑事が優先的に回した後、残された肥満体型の容疑者を強制乗車させた車両では窓を開け放ち、視線を空虚に向けながら「心ここに安らぐ」という状態になるのが定番だった。

江遠は農家レストランでより長く時間を過ごした。

彼が最初に行ったのは現場の清掃作業だ。

この場所が長期的に犯罪物資の隠匿地として使われていたとすれば、訪れた人物の中に犯人関係者が含まれる可能性が高いと考えたからだった。

採取した指紋は即座に一致しないかもしれないが問題ない。

彼らが他地域で犯罪を起こすか、あるいは再び不注意を犯せば、この場所に残された指紋が露見するだろうと江遠は確信していた。

長年の指紋鑑定経験から「人間同士の相互扶助」のような崇高な感覚が生まれてくる。

しかし実際には他人の指紋を収集しデータベースに保存しても即時マッチングできるケースは稀だ。

逆にマッチングした指紋のほとんどは既存データからのものだった。

高度な技術を持つ鑑定官たちは地域限定の指紋鑑定で終わらず、他の地域の指紋も調べるようになる。

結局「他人のために働く」という意識が支配するようになるのだ。

王鍾と厳革を含む複数の現場検証員は江遠と共に指紋採取に協力した。

彼らは類似事件で現場処理を軽視することが多かったが、それは能力や技術的な限界によるものだった。

多少丁寧にしても粗雑でも大きな差はないからだ。

しかし江遠の場合は真に高いレベルの技術を持っていた。

単なる60点の専門家なら日常業務で精一杯で、積極性もそれほど高くない。

70点のプロでも精度制限があるため小規模事件での大量比対は行わない。

江遠のような80点以上の達人だけが「一目見て可能かどうか判断できる」という段階に到達し、そのレベルでは小案件への多大な時間と精力を投入しても価値があるのだ。

王鍾や厳革はその詳細まで考えない。

彼らには江遠が出来るという事実だけで十分だった。

全員が指紋採取に没頭している中、江遠の動きが周囲に影響を与えていた。

例えば王鍾のような痕跡鑑定官が従来通り「銀粉塗布→磁気粉塗布→テープ採取」という手順で進めていると、突然「パリッ」というテープを引き剥がす音がした瞬間江遠はその場に駆け寄った。

「金属製の収納盤ですか？フィルムを貼り付けた状態ですね。

ただテープで採取するのは難しいですよ」

「でも多少残る程度なら大丈夫です」現地検証員が恥ずかしそうに答えた。

彼は技術畑から転身した半端者だったため、自分の普通さを自覚しつつもどう特別な方法があるのか分からないのだった。

江遠は技術面のみに焦点を当てた。

「まずは紫外線照射してみましょう」

「紫外線で反射できるんですか？」

現地検証員が驚きを隠せない声で尋ねた。

「フィルムの素材次第です。

適切な波長を選べば可能です」江遠は説明した。

彼の指先から微細な操作が始まった瞬間、周囲の技術者たちも無意識に息を詰めて見守っていた。