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第0117話「しっかり働く」
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ちょうようし市。
全国から警察が次々と集まってくる。
四名の生きたまま捕まった強盗団員、半死半生のリーダーも含め、全員がちょうようしに移送された。
こちらの方が条件が良く、取り調べと治療も十分に行われた。
柳景輝は複数人の供述に基づき、専門捜査班を三つの臨時特捜班に再編成した。
重大事件対応班、盗猟対策班、経済犯罪対策班の三つで、最も人員が不足するのは最後の経済犯罪対策班だった。
十数年にわたる盗猟により、五人組はごりょうさん産出をほぼ独占し、異常なまでの産業チェーンを形成していた。
最初に想像した通りではなく、五人組が殺戮モードに入ったのは、複数の盗猟団間での競争によるものだった。
禁猟期初めは協力しあっていた盗猟団も、獲物や領地、金銭、さらには狩り方など様々な理由で摩擦を起こし続けた結果、闇の森モデルで獲物を見つけたら撃つという状態に陥った。
ごりょうさん周辺の盗猟組織は、老胡率いる五人組だけが残っていた。
産業チェーンに関わる人々はさらに増え、皮毛製品や骨格製品の加工・販売を手伝い、次第に肉も売り出し、野生動物料理店を開き、偽りの祭祀活動を行うようになっていた。
密輸、薬物取引、アート交易など、利益が見込めれば何でも関与するようになった。
十数年の発展により、違法ビジネスをしていた一部は合法化され、彼らを調べるためにはより多くの作業が必要だった。
経済犯罪対策班が拡大再拡大される一方で、重大事件対応班の刑事たちは次々と証拠物を持ち帰ってきた。
骨片数枚、衣服類、死者が持ち歩いていた道具や品物(ライター・防虫スプレー・胃腸薬など)があった。
五人組はこれらの有用な資材を安全屋や交通の便の良い場所に隠し、短距離盗猟時には余分なものを置いておき、長距離移動時に補給する習慣を持っていた。
これほど長期的な計画が可能だったのは、彼らの盗猟活動が順調すぎたためで、だんだんと自制心を失い始めた。
取り調べで殺人事件が11件、死者26名に増えたとき、中央省庁も驚き、監査官を派遣した。
各地で案件を監査する立場の柳景輝は初めて監査される側になった。
江遠はちょうようし警察署の法医検死部屋に入り、重大事件対策班が回収してきた証拠物を一件一件確認した。
骨は13枚で、椎骨・大腿骨・指骨・足趾骨があり、分布が不均一だったため捜査に役立たなかったが、6名の遭難者の身元を特定するのに利用できた。
6名の山岳愛好家たちだ。
日用品類はほぼ全員が登山者らしく残していた。
山で採药したり近隣住民も含めごりょうさん周辺に住む人々は、五人組の資材を触れないし、彼らのルートを通る頻度も減っていた。
最も重要なのは、地元の人々が持つ装備や消耗品は質が低く、一部の長期保存に耐えない食品以外は五人組の好みから外れていた。
一方で驴友们(※)は打火机(※)がpp(※)、ランプがpr(※)、カップがsnp(※)といった特殊仕様を好む傾向があった。
山登りを嫌う五人组だが、驴友たちの所有品には洗浄後も使用するほど興味を持っていた。
彼らの荷物だけを見れば、五人が無遠慮で凶暴な存在であることが明白だった。
江遠が長陽市刑務所法医室に到着した時、証拠品は既に清掃済みで検査報告書も完成していた。
被害者の関連物証は少なかったものの一部は残存しており、これらが数年間使用されていたことから加害者が軽視していたと推測された。
「死体がない限り、これらの証拠は間接的です。
相手が『拾った』と言えば即座に否定できません」
「彼らは遺体さえ適切に処理していない」
葉天河法医が書類を書きながら続けた。
「より隠蔽するなら豚を飼うのも手ですが、それでは破绽が増えます」
江遠の背筋が震えた。
豚は普通だが骨を砕く習性があるため完全な消滅を可能にする。
その非人間的な完璧さに違和感を感じる。
五人組ほど完璧ではないものの隠蔽度は十分だった。
連続殺人犯は実践で磨かれたものだ、時間と環境が選別する存在である。
江遠と葉法医が骨の検査を終えた後も疲れが残った。
新人法医としての彼にとってこの職業は重荷に感じられた。
生者の屍骸を見た時の心理的不快感はあるものの、死体の骨格には逆に安堵を感じていた。
「犯人を捕まえ、死者を安息させる」という意義が彼を支えていた。
彼らに帰郷する道を開くのだ。
午後、警備室に年配のご夫婦が訪れた。
皺だらけの顔は70代といった感じで麻布の喪服を着て互いに手を添えながら「子よ、帰りなさい」と叫んでいた。
その声は枯れ葉のように震えていた。
「これは李三秋の両親です。
子を持たない悲しみが彼らを迷信に駆り立てます。
以前も警察局で騒いでいました。
『犯人がいないなら我が子は生まれ変わる』と」
江遠はその姿を見ると胸が締め付けられた。
自分が死んだら父がこんな風に叫ぶのかと思うと、より一層業務に没頭する必要があった。
丁寧に解剖を続けた。
生者としての使命は犯人を捕まえることだ。
死者の魂を安息させるためには、彼らが帰るべき場所へ送り届けることが最善なのである。
全国から警察が次々と集まってくる。
四名の生きたまま捕まった強盗団員、半死半生のリーダーも含め、全員がちょうようしに移送された。
こちらの方が条件が良く、取り調べと治療も十分に行われた。
柳景輝は複数人の供述に基づき、専門捜査班を三つの臨時特捜班に再編成した。
重大事件対応班、盗猟対策班、経済犯罪対策班の三つで、最も人員が不足するのは最後の経済犯罪対策班だった。
十数年にわたる盗猟により、五人組はごりょうさん産出をほぼ独占し、異常なまでの産業チェーンを形成していた。
最初に想像した通りではなく、五人組が殺戮モードに入ったのは、複数の盗猟団間での競争によるものだった。
禁猟期初めは協力しあっていた盗猟団も、獲物や領地、金銭、さらには狩り方など様々な理由で摩擦を起こし続けた結果、闇の森モデルで獲物を見つけたら撃つという状態に陥った。
ごりょうさん周辺の盗猟組織は、老胡率いる五人組だけが残っていた。
産業チェーンに関わる人々はさらに増え、皮毛製品や骨格製品の加工・販売を手伝い、次第に肉も売り出し、野生動物料理店を開き、偽りの祭祀活動を行うようになっていた。
密輸、薬物取引、アート交易など、利益が見込めれば何でも関与するようになった。
十数年の発展により、違法ビジネスをしていた一部は合法化され、彼らを調べるためにはより多くの作業が必要だった。
経済犯罪対策班が拡大再拡大される一方で、重大事件対応班の刑事たちは次々と証拠物を持ち帰ってきた。
骨片数枚、衣服類、死者が持ち歩いていた道具や品物(ライター・防虫スプレー・胃腸薬など)があった。
五人組はこれらの有用な資材を安全屋や交通の便の良い場所に隠し、短距離盗猟時には余分なものを置いておき、長距離移動時に補給する習慣を持っていた。
これほど長期的な計画が可能だったのは、彼らの盗猟活動が順調すぎたためで、だんだんと自制心を失い始めた。
取り調べで殺人事件が11件、死者26名に増えたとき、中央省庁も驚き、監査官を派遣した。
各地で案件を監査する立場の柳景輝は初めて監査される側になった。
江遠はちょうようし警察署の法医検死部屋に入り、重大事件対策班が回収してきた証拠物を一件一件確認した。
骨は13枚で、椎骨・大腿骨・指骨・足趾骨があり、分布が不均一だったため捜査に役立たなかったが、6名の遭難者の身元を特定するのに利用できた。
6名の山岳愛好家たちだ。
日用品類はほぼ全員が登山者らしく残していた。
山で採药したり近隣住民も含めごりょうさん周辺に住む人々は、五人組の資材を触れないし、彼らのルートを通る頻度も減っていた。
最も重要なのは、地元の人々が持つ装備や消耗品は質が低く、一部の長期保存に耐えない食品以外は五人組の好みから外れていた。
一方で驴友们(※)は打火机(※)がpp(※)、ランプがpr(※)、カップがsnp(※)といった特殊仕様を好む傾向があった。
山登りを嫌う五人组だが、驴友たちの所有品には洗浄後も使用するほど興味を持っていた。
彼らの荷物だけを見れば、五人が無遠慮で凶暴な存在であることが明白だった。
江遠が長陽市刑務所法医室に到着した時、証拠品は既に清掃済みで検査報告書も完成していた。
被害者の関連物証は少なかったものの一部は残存しており、これらが数年間使用されていたことから加害者が軽視していたと推測された。
「死体がない限り、これらの証拠は間接的です。
相手が『拾った』と言えば即座に否定できません」
「彼らは遺体さえ適切に処理していない」
葉天河法医が書類を書きながら続けた。
「より隠蔽するなら豚を飼うのも手ですが、それでは破绽が増えます」
江遠の背筋が震えた。
豚は普通だが骨を砕く習性があるため完全な消滅を可能にする。
その非人間的な完璧さに違和感を感じる。
五人組ほど完璧ではないものの隠蔽度は十分だった。
連続殺人犯は実践で磨かれたものだ、時間と環境が選別する存在である。
江遠と葉法医が骨の検査を終えた後も疲れが残った。
新人法医としての彼にとってこの職業は重荷に感じられた。
生者の屍骸を見た時の心理的不快感はあるものの、死体の骨格には逆に安堵を感じていた。
「犯人を捕まえ、死者を安息させる」という意義が彼を支えていた。
彼らに帰郷する道を開くのだ。
午後、警備室に年配のご夫婦が訪れた。
皺だらけの顔は70代といった感じで麻布の喪服を着て互いに手を添えながら「子よ、帰りなさい」と叫んでいた。
その声は枯れ葉のように震えていた。
「これは李三秋の両親です。
子を持たない悲しみが彼らを迷信に駆り立てます。
以前も警察局で騒いでいました。
『犯人がいないなら我が子は生まれ変わる』と」
江遠はその姿を見ると胸が締め付けられた。
自分が死んだら父がこんな風に叫ぶのかと思うと、より一層業務に没頭する必要があった。
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生者としての使命は犯人を捕まえることだ。
死者の魂を安息させるためには、彼らが帰るべき場所へ送り届けることが最善なのである。
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