国民の監察医（こくみんのかんさつい）

きりしまつかさ

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第0285話跳躍

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大湾村の名物は「跳蛙」だ。

村内の数十軒の飲食店のうち、半数が**跳蛙**と名を冠し、残りの半数も副業として提供している。

その理由は、かつてこの村が豊富なカエル産地だったからだ。

田畑で捕獲したカエルを様々な調理法で煮込んだ結果、ある老婆の手に新たな料理が生まれたのである。

その後、工場の増加により米田畑が全て占拠されると、老婆たちが鍋片手に外敵の牛蛙（※外来種）を労働者向けに調理するようになった。

辛味が強く濃厚な味わいは、体力労働者の胃袋を喜ばせた。

しかし現在、跳蛙を作っているのは大湾村出身者がほとんどいない。

彼らは地元民の家を借りて跳蛙の作り方を学び、遠来の労働者に提供しているのだ。

江遠と牧志洋が連絡した元屠夫の某氏は、今やそんな跳蛙店を経営している。

昼下がり。

江遠が入店し料理を注文すると、直ちに店主を呼び出しタバコを渡して言った。

「先日電話でお話した者です。

以前は屠夫だったと聞きましたが、今はやっていないんですね？」

「あー、相手側が商品を受け取ってくれなくなったから仕入れルートが断絶し、やめざるを得なかったんだよ」店主は高身長で、人を解体する力強さがにじんでいた。

江遠を見ながら尋ねた。

「貴方たちが冷凍庫の建設について質問しているのはなぜ？」

「豚肉加工場では内臓など一部の部位は売れない場合がある。

その場合は冷凍庫に入れる必要があるが、鮮物から凍結品に変えると損失が出る。

つまり、売り上げが好調すぎても不況でも困るんだよ」江遠は事前に調べた知識を活かして説明し、話題を元のテーマに戻す。

「やめれば生活への影響は大きいんじゃない？相手側が強硬に要求したのか？」

「あー、相手方は地元民だから我々にはどうしようもないんだよ。

以前も外地から来た加工場が閉鎖してたし、その場合も関係なかったさ」

「この地域ではもう豚肉加工場は存在しない」

「長陽市の大型豚肉加工場があるよ」彼は市外の大規模施設を指した。

「彼らは障害者を採用しているのか？軽度の障害を持つ人でも」

元屠夫で今は跳蛙店経営者の男がゆっくり首を横に振った。

「豚肉加工場の仕事は重労働だから、体格が弱いと続けられないよ」

「確かにね」江遠は同意した。

「しかし現代では企業も障害者雇用の目標があるはず。

誰一人として採用しないのは問題だ」

「だったら経営者の親戚を雇うんだろうさ。

どの家庭にも障害者証を持っている親族くらいはいるんだから」跳蛙店主は当たり前のように言った。

「そうだね」牧志洋が江遠を見ながら目で合図し、喜びの表情を見せた。

「障害者証があれば採用できるんだよ」

江遠は動かず、首を横に振った。

彼が障害手帳を持ち出すのは、単に情報を得やすくするためだった。

一般人は障害等級の基準を理解せず、軽微な身体的不具合があれば手帳を取得できると誤解している。

しかし江遠自身が法医学者であるため、障害等級の基準は明確に把握していた。

足首付きで手帳を申請する場合、最低でも4級肢体障害が必要であり、左右脚の差が5cm以上であることが必須条件となる。

彼が得た血痕から推測される殺人の足首付き度合いでは、その条件を満たさない可能性が高いと判断した。

江遠は数問質問し、タバコ1本吸い終わる頃、店主が後キッチンに戻った。

しばらくすると、脂ぎった油の音と共に「跳ね蛙」が運ばれてきた。

肉厚で辛味と塩気が効いたこの料理は、嗜好家にとっては味覚と食感が極めて調和した逸品だった。

さらに野菜類も油で炒められ、白菜や韮などの風味を引き立たせていた。

これにご飯を浸すと一皿で3～4人分の量になるほどで、やはり大湾村名物と言えるものだ。

江遠は少しだけ試食し、牧志洋が蛙肉・副菜・米飯全てを完食する様子を見ていた。

牧志洋は「傷ついた後から食べる量が増えた」と言い訳したが、江遠は肩を叩き「構わないよ。

食べたいだけ食べていいんだ」と慰めた。

現代社会では食欲の増加など些細なことではないと、彼は内心でそう思った。

江遠が「もう一皿追加するか？」

と尋ねると、「いや……別の店で頼む方が礼儀正しくないかな」と牧志洋が断った。

その後江遠が支払いを済ませ、別の飲食店へ移動し、彼に3品を注文した。

2時間後、江遠と牧志洋はリストに記載された5人の屠夫全員の聞き取りを終えた。

茶館に戻ると柳景輝らがほとんど戻っていたところだった。

柳景輝はノートに向かって熱心に書き続けている。

江遠が入室すると「何か見つかった？」

と尋ねた。

「特に問題ない。

彼らは跛行しておらず、妻たちも普通だ」と報告した。

柳景輝は頷いた。

監視対象の犯人が草原のウサギのように捕まえやすいわけではないのだ。

江遠が柳景輝の向かいに座ると、「でも屠夫と話す中で、彼らが地元の屠宰場が閉鎖した理由を知らないことに気づいた」と告げた。

柳景輝はペンを止めてノートをめくった。

「やはり？」

「その屠宰場は単なる廃業ではない。

未払い金があるし、回収すべき債権も放棄している。

通常なら支払えない分は諦めるが、本来回収可能なものを放置するのは不自然だ」と江遠が説明した。

柳景輝が何枚かの供述調書を手に取りながら言った。

「その殺人場はいつも繁盛していたみたいで、突然閉鎖して市場に空白を作った……でも事件発生から半年以上経ってから閉鎖したんだ。

その後再び来て機械を売却し、一部の債権を処理したが、これは不自然だ」

逃亡者は通常帰ってこない

多くの被疑者が自首する理由は、実際には追跡されているわけではないからだ。

特に命案未遂以下の事件の場合、大都市や伝統的な逃亡先である海南省に逃げた場合、現地ではその事件さえ知らないため逮捕の手が届かない。

しかし家を想い、不安で落ち着かなくなったなどという理由で多くの被疑者が自首を選ぶことがある。

帰ればすぐに捕まるからだ

特に事件発生直後は捜査のピークタイムだからね

殺人場の経営者があっさり閉鎖し、再び現れたことについて知らない者は別だが、リストに載せられると奇妙なことに思える

「追跡したか？」

江遠が柳景輝の詳細な説明を聞いて尋ねた。

彼はその手紙を見逃すことはないと確信していた

「ええ、既に現地調査チームを派遣しました。

その経営者は点横撇州へ向かったようです」

「周辺の人間にも注意が必要だ。

長陽市から大湾村までタクシーで行くのは裕福な人の行動パターンのように見える」

柳景輝がため息をついた。

「でも裕福な人はタクシー運転手を殺さないよ」

江遠は驚いて目を見開いた。

柳景輝の発言は差別的ではあるが、考えてみればその通りだ

タクシー運転手を殺した事件で犯人が裕福な人間であることはほとんどなく、統計データはないが、この種の事件に詳しい人々は捜査中に工場経営者を疑わない。

なぜなら工場経営者がタクシーを利用する理由も、短時間での対立から殺人のレベルまで到達するわけもないからだ

ましてやその人物が何らかの理由でタクシー運転手を殺害しようとしている場合でも、物理的に勝ち目はない。

逆に反撃される可能性の方が高い

ちなみに

タクシー運転手が人を殺す事件は、人を殺された事件よりさらに難易度が高い

「屠畜業者たちによるとその殺人場には十数人の従業員しかおらず、ほとんどが経営者の親族か、親族の親族、知り合いといった関係だ……元のメンバー全員を呼び出して尋ねてみるというのはどうかな？」

江遠は非常に…費用のかかる提案をした

それは非常に包括的で慎重な提案だった

柳景輝は普段この方法が好きではない。

表面的な現象から本質を探り、虚偽の表層を突き破って真実に迫るのが彼の好みだ。

しかし江遠のプランはより完璧で安全だった

「技術畑の人間……」柳景輝は首を横に振った。

「まあ長陽市には金があるからね」

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