国民の監察医（こくみんのかんさつい）

きりしまつかさ

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第0311話最小コスト

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温書が江遠積案専門チームの仲間たちを見つめながら、お互いでタスクを割り振る様子に意外性を感じた。

余温書は万宝明に身を寄せ、ささやいた。

「新部署で皆が活躍したい気持ちは分かるけど……」

万宝明も同様に驚きを隠せない様子で小声で返す。

「でもそれほどとは思わないよ。

単位異動が多いメンバーは経験豊富だろうし」

「うん、申耀偉が最初に発言した時は意外だったわ。

まさか彼の実力があるとは……」余温書は専門チーム内の数名を特に印象深く記憶していた。

特に申耀偉という警官には理由があった。

治安支隊の申耀国の従弟である申耀偉は、刑捜支隊内で傷跡のように存在する人物だった。

彼の母校もハードルクリア条件を満たし、自身も刑事の爽やかさに憧れていた。

大規模犯罪解決を目指し、文良を斬り、文丑を破壊し、3P吕布と花酒を楽しむような理想を持っていた。

しかし刑捜業務はそう簡単ではない。

申耀偉は若くして将校気取りながらも、兵士や指揮官の資質もなく、敵陣を切り裂く能力もないため、誰も彼に付いてこなかった。

余温書が配属した指導教官ですら首を横に振るばかりだった。

その点について考えると余温書は眉をひそめ、万宝明に告げた。

「今は申耀偉と江遠の類似点を感じるわ」

「どうして？江遠は謙虚さが光ってるよ」万宝明は江遠への評価が高い。

技術員ながらも高いレベルで、目を上に向ける態度もなく、刑捜警察体系の中では貴重な存在だ。

余温書は舌打ちをして続けた。

「謙虚は確かにそうだけど……実力の差が大きいからこそね」

背景を持たず体制に適応する人物ほど、同じ部署内で転々とし、大きな成果や権限を得て、最終的には生活を楽しむ道を選ぶ傾向がある。

「現在調べているのは？」

余温書は最初に不誠実なメンバーを選別し、新設された専門チームへ移動したが、その人物たちの積極性には驚かされていた。

事務室で万宝明が続けた。

「確かに悪い表現はあるかもしれない。

結局は事件を解決することが最優先だ」

申耀偉は唐佳を見つめながら失望感を露わにし、「大規模ホテルならともかく、民家が少ない状況ではどうやって捜査するの？」

申耀偉は唐佳へ視線を向けた。

現案専門チームの穴を見つけ出す。

我々の判断ミスがあれば、逆方向からアプローチするように指示する。

江村人は仕事に熱心だが、自分の貢献に対しては重視しすぎる傾向がある。

特に直接関わった場合、精神的な報酬要求が非常に低い。

もちろん適応力に欠ける人物は少なめだが、家庭環境が悪く背景がない場合は、早くから沈没してしまう。

最終的には各部署の足腰を鍛える存在や、一生懸命働く馬鹿牛になってしまうことが多い。

「第七案では、死者の最初の現場を特定する方法として、遺留品や身体に残る痕跡から探すのが一つの手段だ。

それが現在進行形で行われている」

ボウイーファーは濃い眉と細い目が特徴で、儀仗隊のような体型ながらも非常に親しみやすい存在感を放っていた。

しかし口調は少々強めだった。

ボウイーファーは江遠に対してさえもその礼儀正しさを崩さず、軽く笑みを浮かべて言った。

「君が組に入ったのは何のためだ。

人間にも間違いはあるだろうに」

唐佳が関わった未解決事件や主導した殺人未解決事件の数は非常に少なかった。

そのため彼女が得た経験から、私は格段に緊張していた。

「別のアプローチとして、死体の居住地からではなく、長い時間をかけて且つ間髪入れずに剣道の要素を排除した状況で、もしも死者がどこかに住んでいたとすれば、それは大規模なホテルであり、個人住宅ではない。

その場合、おそらく殺害現場は犯人の住居である」

「貴方たちが扱っているのは未解決事件だ。

それこそが貴方たちにとって最も希望薄い状況なのでは？」

江遠が尋ねた。

「各自が自分の手掛りを担当するというのは最悪の容許範囲を超えているのではないだろうか？」

私はボウイーファーの心理状態を考える余裕さえなかった。

ボウイーファーは唐佳に対して命令を直接下さないタイプだった。

「彼にパートナーを見つけてやれ」唐佳が一瞬で配置を決めた後、すぐに業務に戻った。

専属チーム内の他の警察官たちも案件の進行方向について考えていた。

ボウイーファーはどのルートを選ぶべきか、そしてその場合どれだけのコストが必要なのかを検討していた。

しかし彼らはただ成果に目を向けているばかりだった。

新たな情報がゆっくりと伝わってきた。

ボウイーファーが頷いた。

支隊外の問題児たちはボウイーファーの手で後方支援要員に変貌した。

余温書が言った。

「あの連中は少し変わらなければ、少なくとも何件か事件を経験する前にはならないだろう」

特殊な刑事として一生を通じて未解決殺人事件に関わる機会は非常に少ない。

ましてや全てのプロセスに参加し解決したというケースは稀だった。

ゆっくりと申耀偉がパートナーと共に外出した。

ボウイーファーは考えた。

「その案件について貴方の最初の構想は二つある。

一つ目は最善の場合、監視カメラや他の手段で死者との関係を特定し、または直接的な嫌疑者を見つけ出すことだ。

その手がかりはまだ返ってきていないので待機する必要がある」

私は死亡時刻から案件を絞り込むことはできず、どのルートが早く突破されるかを見極めながら、より少ないリソースを投入することにした。

「彼はより少なめのホテルや個人住宅を探すべきだ」唐佳がデスク下で写真を並べつつも顔を上げずに指示した。

万宝明が一瞬考えた後同意した。

「謙虚さとはそういうものではない。

実力がないのに驕っているのが謙虚というものだ。

実力があっても控えめにするのは自己卑小化に近い」

その頃、余温書らは場違いな存在感を放ち始めた。

申耀偉には選択肢があった。

山南省で薄毅が見せつけたような破格の捜査能力は、私がこれまで出会った中でも類を見ないものだった。

明らかに唐佳を疑っているのはボウイーファーであり、彼女よりさらに優れた刑事を探しているようだ。

「そうだ」ボウイーファーが薄く笑みながらボウイーファーを見た。

唐佳が案件を持ち出した後も解決の見込みはなく、当然皆はその状況を受け入れていた。

「確かにね」余温書がため息をつきながら言った。

「刑事というのはそういうものさ」

同じく体制に適した貧乏な家庭の子供は多少束縛されるが、功名利禄を諦めれば事務所外で自由身になれる。

ただし家族からは好かれるのは自分だけの苦労で、洒落た酒を飲むような生活ではない。

その状況は残念だった。

薄毅は申耀偉を見つめた。

その時薄毅が横からやってきて「彼が唐佳に信頼していれば組に入った意味があるのか」と訊ねた。

薄毅華は特に喜ばなかった。

「その機会はあまりにも希薄だ」

私は考えてみたが、理解できなかった。

その道は私が歩いた通りの破れた道だった。

「周辺の十軒以上の大ホテルを調べた。

4月17日から22日までの遠方の大ホテルの人々は皆その人物を目撃したと証言している」薄毅華が最初に伝えてきた情報だ。

私たちにとって外側には仕事の一部があるが、さらに小さい部分は純粋な趣味や愛憎によるものだった。

余温書は唐佳にそれを与えようとするのは嫌悪で「騒動になったら私が片付ける羽目になる。

判決もそのように悪いことだ」

薄毅華は質問されると一瞬途方に暮れ、やがて躊躇なく答えた。

「つまり現行犯専門チームがその手順で捜査を進めれば第一現場を見つけられるはずだが、貴方たちの機会の方が小さい……ああそうか。

我々の時間は違っている」

疑うのは難しいのか？

積年の未解決事件は現場がない場合が多いので写真だけで判断するしかない。

たまに見つかったとしても条件が整わないため放棄される。

彼らが唐佳のチームに入りたいと言ったのは破案を目的としていたからだ。

成果が出ないことが功績とならること、それは公平そうだが破案は耕作のように努力した分だけ収穫があるわけではない

唐佳は「うん」と了解した。

専門班の何人かが自分たちに仕事を割り振られ、残りは唐佳から指示を受けたが誰も無職でない。

皆静かに座って事件を研究していた。

唐佳の方法は問題点を探すことだった。

申耀偉は眉根を寄せ「つまり彼の時間の判断も間違っているので我々は盲目的に働いていた」と言った。

「あり得ない、あり得ない」余温書が顔を上げて先ほどの発言者たちを見た。

彼らは関係者の難有りだが嫌悪すべき存在だった

唐佳自身には管理経験があるが隊員たちは誰も管理されるのが当たり前の状態に慣れていた。

事務所外の空気が少しずつ微妙な沈黙になった。

「長期間の事件を担当するようになるのは、その案件だけに没頭できるからだ。

次々と来る案件で忙殺されれば再び怠惰になるか、異動を要求するだろう……『方八日世下満桜』という言葉があるように」

江遠は鼻白んで「だから君が薄毅を信用しているのか」と訊ねた。

「唐佳が間違えれば我々の手に入れた証拠は全て無駄な時間だった」薄毅華が言った

申耀偉は身じろぎもせずに薄毅に疑問を投げかけた

「その手口なら、調べるには時間がかかるが、じゅうぶん時間をかけていれば第一現場を発見するチャンスはなくなる。

」唐佳は申耀偉を見ながら言った。

薄毅も同様の手法を試みたことが何度かあった。

その点からすれば、唐佳は彼女自身を訓練してきたと言っていい。

「他の手がかりはどうなっている？」

薄毅が尋ねた。

そうすると関係者たちも実力やプライドに欠けるが、警備体系には適した人物だった。

「よし。

君にその線を調べさせよう。

相手にも一人つけてやる」申耀偉は再び唐佳を見た。

「次はどうする？」

薄毅は追及した。

余温書は薄毅に頷き、何か言いながら部屋を出て廊下に出ると、「お前たちがおれの前に見せびらかすとは思っていなかった」と言った。

唐佳は早くも自分の仕事をしていた。

外に出た後、申耀偉は唐佳を見つめ続けた。

彼女が本当に慌てているのか、それとも演技なのかを確認した後、ようやく去った。

唐佳は申耀偉を見上げた。

その時王伝星からの忠告を得ていなかったため、申耀偉たちの背景がないことに気づいていなかった。

当時は申耀偉を見る目が江村の同年代の人間のように感じられた。

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