国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0328話 告発

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「もし私が共犯者を告発したら、重大功労と認められるんですか?」

王克典が口を開いたその一言は驚きをもたらした。

孟成標の顔色が一瞬変わったが、すぐに笑みに変化した。

「お前はそれなりに知ってるのか? 重大功労の基準は高いんだよ」

「私が服役中に誰かが重大功労で減刑された話を聞いたことがある。

そうだろ?」

王克典が追及する。

孟成標が笑いながら答えた。

「無期以上の犯罪を告発できる場合に、初めて重大功労と認定されるんだ」

彼の言葉は完全ではなかったが、捜査官としての責任から詳細を説明する必要はないと考えた。

畢竟、これは授業でもないし、理解度を試すテストもないのだ。

王克典が少し躊躇した。

学歴は少ないが、警察が嘘をつくこともあると知っているのだ。

孟成標が王克典の表情を見つめると、ある推測が浮かんだ。

「私が上に報告するから、本当に重大な手掛りなら、重大功労と認定される可能性が高い。

正直に話せば、この事件で自分を潔白にするには、一生刑務所にいるしかない」

王克典の思考時間は短かった。

「11月2日、確かに誰かから鍵を開けるように呼ばれた」

「それ以降どうした?」

「開けたんだよ……帰り道テレビを見たら、その倉庫が焼けていたとニュースで流れていて、死体も発見されたと聞いた。

危ないな……と思った」

「どの倉庫だ?」

「科四路8178」王克典は正確に覚えていた。

「続けろ」

「そう思っていたところに、誰かが私の庭に金10万円と昆明行きの切符を投げてきやがった。

それで私は荷物を持って逃げ出したんだ」

王克典のこの回答で孟成標は黙り込んだ。

これは彼が想定していたシナリオとは全く異なっていた。

最初、孟成標も専科チームも単独犯を前提に考えていたのだ。

江遠のような個人で全てを完結させるタイプだった。

王克典が功労を主張したことで孟成標は共犯者を連想したが、彼の想像する共犯者は従来型のものだ。

一人が殺人放火、もう一人が開錠や監視・運転を担当するような。

しかし王克典が自分を完全に潔白にするという点は孟成標の予測外だった。

しかも彼が編み出した話には一定の論理と説得力があった。

この答えを見た瞬間、孟成標は王克典が殺人放火犯とは思えなくなった。

20年余りの刑事経験から、王克典の動作や雰囲気は中年の小悪党そのもので、彼を老練な強盗と呼ぶのは褒め言葉にも近い。

「誰が開錠させたんだ?」

孟成標には疑問点が山積みだったが、まずは犯人の正体を突き止めることに集中した。

捜査の目的はそこにあるのだ。

王克典が物語を作り出しているとしても、まずは結末から確認し、その後で真偽を見極めるのがプロのやり方だ。



「張項という名前ですね。

昔は『張さん』と呼ばれていたし、当時は『張さん』と呼んでたんだ」

王克典が答えた。

隣の警官が訊ねる。

「張項はどの漢字ですか?」

「開く張と、項目の項です」

孟成標も同じ質問を投げかける。

「本名ですか?」

王克典は頷いた。

「何をしている人ですか?」

「建元製薬の駐車場警備員です」

「警備員が仲間内での呼び方になるわけですね。

なぜそんなに親しいのかな?」

「以前も道を歩いてたんだよ。

あの建元製薬は複数の小駐車場があって、現金収受やQRコード決済の管理も彼らのチームで行っている。

通常の警備員とは違う仕事だからね」

孟成標が眉をひそめる。

「そんなに大きな会社なのに気づかなかったのか?」

「知らないふりをしてるさ。

あの警備隊は建元製薬に汚い仕事をさせられてるんだ。

月給以外にも駐車場の収益を分配するシステムがある。

彼らチームだけがその金を受け取ってる。

張さん、つまり張項は以前私に言ってたよ『いい時は月に二三万も手に入れた』と」

孟成標は質問しようとしたが、やめた。

「鍵を開けさせたのはなぜ?中には入らなかったのか?」

「彼は自分で用意した鍵を使えないと言っていた。

鍵穴をいじくり回していたんだよ」王克典は首を横に振った。

「私は『どうしてドアを叩かないの?』と訊いたが、彼は『揉み手はしないように』と言った」

「記録をつけろ」と孟成標が指示した。

王克典は答える。

「鍵を開けたんだよ。

十数分かかったし、中で音もしなかった。

開いたら張さんが出てきて帰っていった」

「切符は残ってる?」

王克典の答えは重要だった。

もし彼が真実を語っているなら、その日付の切符は隠されているはずだ。

現在でもその切符は重要な証拠物である。

なぜなら、もし王克典がその日に本当に切符を持っていたら、犯罪者として逃亡するべきだったからだ。

しかし、彼が自分で買った場合は捨てた可能性が高い。

逆に他人からの贈り物であれば、清白を証明するために残す必要があるだろう。

この話は8年前から編み出されたものではないはずだ。

王克典自身もその論理関係を整理できていなかったが、「切符は私の手元にある。

隠してあるんだ。

古い服のポケットに」

孟成標の表情が引き締まった。



王克典自身用の開錠道具さえ隠さず、意図的に巧妙に置かれた切符は最適な場所に保管されていた。

古着のポケットに古切符が存在するという状況は完璧だった。

失くすことも怪しまれることもない。

孟成標は王克典が虚偽を述べているとは思えなかった。

仮に虚偽なら複雑すぎるし、証拠と人証の両方を提示した点も検証可能だった。

江遠積案班の事務室では江遠の表情が次第に険しくなった。

「この状況から見れば張項には重大な嫌疑がある」と彼は指揮官としての役割に慣れてきた。

まず余温書に電話で状況を報告し、複数名の関係者を個別に指示して調査を開始した。

余温書がすぐに駆け寄り喜色を浮かべた。

彼の視点では命案積年の進展は極めて画期的だった。

かつてなら江遠への称賛を考える段階だが、今はまだ時期尚早。

なぜなら江遠は積案班の責任者として理論上は事件解決までが任務だからだ。

以前のように証拠固定と追跡を完了すれば終了するわけではない。

しかしこれこそが江遠の価値を再評価される要因だった。

刑事として一命案積年の解決に至れば、警備課ではベテラン警官と認められる存在となるのだ。

(本章完)

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