国民の監察医（こくみんのかんさつい）

0400

第0465話 相思相愛

深い闇が覆う夜。

本来は暗闇に沈む小寺だが、あちこちで灯りが点滅している。

捜索班の警官、現場検証と証拠固定を担当する警官、連絡役として走り回る警官たち……空から見れば、手電の光は銃撃線のように伸びており、どこか殺伐とした雰囲気が漂っている。

住持を含む8人が個別に監禁されている。

韓大隊長と柳景輝は一致して、彼らを山下へ送ることを拒んだ。

まず、夜間の山路移動には危険が伴うからだ。

いくら慣れたルートとはいえ、段差もないので問題ないが、逃走する可能性がある限り夜間移送は適切でない。

次に、彼らをここで突発的に尋問したいという欲求があった。

今回の事件に関わる寺の関係者たちは明らかにそれぞれ事情があり、何かしら知っているはずだ。

山下へ連行すれば長い移動中に落ち着きを取り戻し、その後で尋問しても情報を引き出すのは困難だろう。

とにかく山上には警官が十分いるので、韓大隊長は数部屋を確保し、ベテランの巡査たちに先手で尋問させた。

彼は完全な解明を求めているわけではない。

実際、この三人のプラスチック仏師と金某人の愛憎関係だけでも一夜中語り尽くせるかもしれない。

しかし、少なくとも一つの方向性が見えてきた。

被害者は金国庆であれば死体の所在問題は解決する。

韓大隊長は黄強民に連絡して何らかの補足情報を得られるかどうか分からないが、彼にとっては確実な手がかりがあれば必ず掴むつもりだ。

未明。

韓大隊長が張芬を直接尋問した。

55歳の張芬は化粧していないと顔色が黄白く、憔悴しているように見えた。

額に手を当ててため息をつくと、「こんな時間なのに……普段この時間にはもう寝ているはずなのに、今は頭がボーッとしている」と言った。

「あなたのフェイスブックを見たわね。

毎晩深夜1時や2時に『眠れない』と投稿しているのに、なぜ今日は眠れていないの？」

韓大隊長はベテラン刑事らしく、江遠や柳景輝、黄強民と比べて少々鈍いように見えるが、それは比較によるものだ。

曲安県の街でさえも彼は嫌われ者の存在だった。

張芬は眉をひそめて、「私は眠れないのは裁判中のことだけよ」と反論した。

「あなたと金国庆の関係について話してほしいわ」

韓大隊長は譲歩するつもりなどさらさらない。

張芬は頬を染めながら、「私と金国庆……私たちの関係は……」

韓大隊長がその様子を見て、何かに気付いたように刺激した。

「第三者が介入しているという噂があるわ」

「誰が？」

張芬の声が鋭くなった。

韓大隊長は笑みを浮かべ、「それは言えないわ。

でも実際にはどうなの？」

「私と金国庆は意投情合……」張芬は牙を剥き、「あの騒蹄子たちが嫉妬しているだけよ」

前期の不適応期を経て、張芬を含む仏師たちは次々に口を開いていった。



ふう　　他の質問項目に変われば、張芬たちが協力しても体は本当に眠気に襲われるだろう。

しかし韓大隊長が尋ねたのは「錢国庆と赤ちゃんたちの愛憎関係」についてで、住職たちにとっては非常に詳しく興味深い話題だった。

江遠は数部屋をうろうろし、聞こえてくる内容は村の茶話会に逆戻りしたようだった。

夜更かしが続く深夜の茶話会で、子供が参加できないような。

ジェーン・オライアン（※**）育ちの女性たちが60歳になっても愛について語り続ける。

もちろん伴うのは奪い合い、対立、甘美と苦渋だ。

参加者たちは熱心に話し、住職たちでさえも彼らの恋愛話を滔々と語れた。

「王子しか恋愛できないから」という理由で、錢国庆の富商という身分が繰り返し話題になった。

江遠はしばらく聞いて退屈になり、そのまま寝ることにした。

彼の任務は成功していたし、頭蓋骨再形成術を継続しなくても良いなら悪いことではなかった。

畢竟事件解決さえすればいいのだ。

翌日。

江遠はいつものように早く起きた。

山里の環境はこうなんだよ、明け方になると窓外で鳥が鳴き出す——都会の鳥は少ないからたまに聞こえる声も懐かしく自然だ。

山里の鳥は多い。

一斉にさえずり始めると子供たちが集まって叫ぶように騒がしく、誰も眠れなくなるほどだった。

山里的空气は澄んでいた。

睡眠時間が短くても頭は冴えていた。

江遠はゆっくりと服を着替え、外に出た。

鼻先には濃厚な肉の匂いが漂っていた。

「李姐……早くから肉を煮始めてるんだね？」

江遠が李姐の傍に立つ警官を見て気づき、韓大隊長が警戒していることを悟った。

李姐は江遠の視線に気付いても構わず笑って言った。

「この豚バラは毎日煮直す必要があるんだよ。

それに朝食を食べるだろう？」

「当然だよ」江遠は即座に頷いた。

寺には食事の提供はない。

以前は住職たちが自分で作っていた。

住職の主な役割はお賽銭を集めること、調理と掃除で、人数が多い場合は清掃もする。

少なくとも小規模な寺なら住職も仕事が途切れない。

李姐とは異なり、住職たちは素食料理を作り、韓大隊長を含め誰も1日中それを続けるのは嫌だった。

「餃子？7個でいいかな？」

李姐が話しながらパンを焼き始めた。

「2つにしよう」江遠は喜んで同意し、「スープはあるか？」

「贅沢ね。

豚の胃袋のスープ飲む？自分で煮込んだんだよ」

江遠はうんうん頷いた。

「ニンジンとネギを多めに入れて、油は入れないで。

スープだけならいい。

小鉢に注いでくれていいかな？スプーンも用意してくれれば」

李姐がその通りに作ってから、「最初はお前にお茶碗のスープを送るつもりだったけど、今は7.5個だよ」と言った。



「できるわ」江遠は痛快に財布を出した。

猪肚スープの椀を持ちながら隣席のテーブルに座り、肉まんを食べつつスープをすすった。

熱々の新鮮な豚臓スープには胡椒の辛味が効き、肉まんと相性抜群だった。

朝の時間帯としては非常に快適な体感だ。

隣で待機していた警官も思わず唾を飲み込んだ。

「お椀ください」李姐は猪肚スープを一椀分けてくれた。

「いいわ」その警官がスマホを取り出すと、李姐が止めた。

「スープはいらないの。

彼は要求しすぎてる」

「払うべきよ」ここで金銭を渡した後、再びスープをすすり始めた。

すると柳景輝や韓大佐らも次々に目覚めた。

江遠は満足して立ち尽くしていたが、彼らの表情を見ると不快そうだったためそのまま待機した。

韓大佐はその様子を見て、食べ物を一切口にせず江遠を脇へ引っ張り「江遠、頭蓋骨の鑑定は続けないと」と言った。

江遠が尋ねる「どうしたの？」

「銭国慶が見つかったわ。

生きていて、実家で」

韓大佐は首を振って続ける。

「農民だったわ。

昔から果樹を植えてたの。

安価なツアーに申し込んで、この地の住職と知り合ったのよ。

一来二往で関係を持ち始めたの」

江遠は特に驚かず「そうならもっと現実的だわね。

60歳の越省の富商が山南省の小寺に数ヶ月滞在して、老婆たちと恋愛するなんて……」

「銭国慶には嫌疑があるのかしら？」

江遠がつい尋ねた。

韓大佐は軽く首を横に振った。

「彼には不在証明があるわ。

毎年半年働く必要があって、それ以外の時間は遊びに来るのよ」

寺での支出は少なくても富商なら一銭も出さないわけにはいかない。

江遠はゆっくり頷いた。

これでまた元に戻ったわけだ。

柳景輝の方を見つめるように「推測は……」

そういうものよ、前向きにも後ろ向きにも可能性があるのよ

技術的な突破や証明があれば確実に進むけど……

「帰ってパソコン叩くわ」江遠は案件の詳細を一切聞かなかった。

この程度の事件なら治安拘留くらいで終わるだろう。

殺人犯が捕まったら死刑執行したいわ