国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0466話

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第四百六十六章

その日、住職と信者たちは警察たちと共に山を下り始めた。

途中、住職の表情は常に沈んでいたが、山を下る直前には自分の名字を口ずさみながら「千口王八程、千口王八程……」と繰り返していた。

「誰かを罵っているのか?」

牧志洋(まきし・よう)が不思議そうに尋ねた。

住職は「私は」と前置きして続けた。

「表面上では自分自身を罵っている。

ネットで動画が撮られても、ただ『性格が変わった』としか映らないだろう」

「実際には?」

「私は『王八!』と念仏のように唱えているのだ」住職は念珠を高速回転させながら言った。

「王八!全てが王八………………」

牧志洋が住職の鋭い頭に目をやると「程さんならまだマシだよ……」と言いかけて止まった。

住職は哲学的に続けた。

「生まれた材質には価値がある。

よく考えて、文字を分解してみれば必ず何か面白い発見があるはずだ。

多くの本を読めば分かるように、中国語の罵倒表現は非常に豊富なのだ」

牧志洋は感心しきりで「本当に読書は役に立つね」と言いかけた。

「その通りさ」住職は嘆息しながら言った。

「もし金施主・金国慶(きん・こくけい)がもっと本を読んでいたら、こんな大騒動にはならなかっただろう。

因果の関係だ」

牧志洋が興味津々に聞くと「どういうことか説明してほしい」と頼んだ。

住職は「金施主が大学を出ていれば、その年齢で幹部クラスになっていたはずだ。

そうすれば定年まであと10年しか残っていない。

それからも時間があればどこかへ出歩くこともないだろう。

彼の仕事はオフィスワークだから、老いてからは精力的に活動する余裕もないはずさ……」

牧志洋が住職より10歳若いのに「やはり出家人の方が見方が違うね」と本音を漏らした。

住職はうなずきながら「我々のような家にいない人間は恋愛や結婚でも慎重になるべきだ」と教えた。

「そうだよ」牧志洋も賛同して意見を述べた。

刑務所の部屋。

韓大隊長(かん・たいたいょう)が入室し、水を二杯飲んだ後、何人かに指示した。

「君たち三人は住職と信者から詳細な供述調書を作成せよ」

先日山を登ってきた警官たちは「我々が昨日作った調書で十分じゃないのか?」

と言った。

韓大隊長は不機嫌そうに「これは殺人事件だ。

風俗店の件とは違うんだ。

必要な質問は全てやっているか?前後関係も含めてこの案件は、あの寺の騒動と無関係ではあるまい」

警察たちは暗黙裡にため息をついたが、何も言い返せなかった。

殺人事件は解決するのに手間暇かかるし、捜査自体も大変だ。

また誰もが知っているように、今やらない供述調書を作成すれば、後で相手の証言が変わった時に反論できないからだ。

警察に嘘をつくのは馬鹿げたことだが、例外として『全てが嘘』という人間はいる。

彼らは減刑されないし、捜査員の負担だけ増えるだけだ。

もっとも面倒なのは証人が胡乱(ごろん)と話す場合で、現在の信者たちのように「あれこれと無駄に口をさわぐ」のが一番厄介だった。



誰もが彼らの話を真実だとは思わないが、その中でどの部分が真実で、どの部分が虚偽なのかを区別する術はなく、あるいはそもそも彼ら自身が話しているうちに忘れてしまっているのかもしれない。

警察署に残された刑事たちは問題の深刻さに気づいていないのか、笑顔でこう言い放つ。

「まあ急がないから、ゆっくり取り調べを進めればいいや」

通常の取り調べとはこういうものだ。

勤務時間通りに始まり、誰もが焦らず、休憩したり水を飲んだりしながら会話のように進む。

特に重要な証人ではない場合、カメラを構えても突破口を探す必要もなく、ただ普通に会話をすればいいだけだ。

メインの作業は終了後に報告書を作成することだった。

しかし今日の状況は明らかに異なっていた。

会話の内容が変わったのだ。

以前は警察たちが笑顔で人生を語る場面だったが、今は運命が人々と対話をしていた。

60代の老婦人の慈しみと歪んだ表情を見ながら、彼女たちの苦悩や罵声を聞く若い警官たちはすぐに耐え切れなくなっていた。

後半は警察が人間を探すのではなく、逆に人間が警察を探すようになっていた。

話す、話す……一日が終わるまで。

次の日には警察署の宿泊施設に滞在している人々が、警察たちを催促する必要もなく自発的に訪れてきて、会話を続けた。

江遠は勤務時間中に韓大隊長の表情を見て、黄局長がいた頃よりもさらに酷い状態だと感じた。

少なくとも黄局長がいた時は韓大隊長は明らかに痛みを抱えていた——噛み付かれたような失血による疲労感だった。

しかし数日間の取り調べを終えた今は、韓大隊長はどこかから来る不快な痛みで全身を包まれたように見えた。

江遠はそれ以上気にせず、朝から警察署に来て自分の部屋で頭蓋骨修復作業を始めた。

昼食時は外に出ずに家から持ってきた醤油煮込み肉や佛跳牆(ふとてんしょう)、焼肉、炒飯などを電子レンジで温めて食べるだけだった。

オフィスには電子レンジがあるので、時間を設定してチンすれば十分な一餐ができた。

例えば佛跳牆のような見た目は淡白でも、少し多めにスープを添えてご飯をかけておけば立派な昼食になった。

夜遅くに腹が減れば、オフィスで鍋料理や焼肉を作って食べた。

曲安県の外食産業は発展しておらず、少数の店舗だけが華麗士(かりしだ)のような類似品を提供しており、配達サービスも未整備だった。

江遠は仕方なく一人の配達員の微信アカウントを残し、毎日食事や水を頼むようになった。

その配達員が江遠の日常を知り尽くした後には、彼は警察補佐官になることを考え始めたようだ。

数日後のある日、程主幹らが次々と小廟に戻ってきた。

江遠が作業している頭蓋骨は形態を成し始めていた。

「図面をいくつか出せ」江遠はノートに直接図を描き、曲安県警の専属刑事鑑識課長を呼び出して選ばせた。

頭蓋骨修復術は一種の芸術と呼ばれるが、そのデメリットとして再現される顔には多少のズレがある。



簡単に言えば、頭蓋骨の復元プロセスは極めて精密ではない。

通常は一定の範囲内で選択肢を選び進めるものだ。

理論上、各段階で大きな差異が生じれば最終的な容姿も大きく異なるだろう。

しかし人間の目や脳自体が精密さから生まれるものではない。

ある程度の類似性があれば鑑識眼を持つ人々は判別可能だ。

特に親しい人物ほどその能力が高い。

顔認証分析やコンピュータ解析では多少困難だが、画家による肖像画と比べれば頭蓋骨復元術が得られる写真の方が正確度が高い。

国内の多くの警察署には画家も頭蓋骨復元師も配置されていない。

唯一芸術に近い刑事カメラマンは速成訓練で育てられたものだ。

曲安県の彼もその例外ではない。

一気に6枚を選んだのは量産主義的な発想からだろう。

自信心が全く感じられない選択だった。

「これくらいでいいかな。

顔を白くするか黄みを入れるかどう?」

刑事カメラマンは死体写真撮影の常として法医への傾向がある。

「肌色の判断は難しいので多様性を持たせる方が良い」江遠が暗に首を横に振り、彼の選択に失望して自ら24枚を選んだ。

その結果30枚の類似画像が完成した。

理論上は30人の別々の人物だが実際には兄弟のように見えた。

システムにデータを投入するとすぐに候補者リストが表示された。

曲安県の顔認証システムは指紋と同様の方式で20名ずつ提示する。

しかし人間の顔認識能力は指紋より遥かに高い。

訓練を受けた指紋専門家でも自動解析が出す候補を一つずつ確認しなければならないが、一般人なら即座に判断できる。

これが頭蓋骨復元術の利点だ。

出力されるのは人間の顔だから誰もが比較可能で、素人の刑事でも十分な能力を持つ。

数十枚の写真は瞬時に処理され、数人が同時に一つの画像に注目した。

「この人物だ」柳景輝が指差し「その情報を調べろ」

画面には鼻梁が高い芸術的風貌の老人が映り、住所情報を見れば越省南明人だった。

地名だけで全員が興奮を隠せない。

韓大隊長がマウス操作しパスワード入力後、赤い「行方不明」の表示が現れた。



「これでほぼ特定できた、韓大隊長がページをじっくり見つめたあと言った『この人はシステム内にDNAや指紋は残していないが子供のDNAは残っている……連絡する!』」

牧志洋はぼんやりと見ていた。

忙しくなった後、柳景輝に小声で訊ねた「柳課長、死んだのはまったく関係ない人?」

「関係ないかどうかは調べてみないと分からない。

ただ……」柳景輝が鼻を鳴らして言った「銭国慶は越省の人間だ、この人も越省の人間だ。

まったく関係ないと言っているなら私は信じられない」

「それじゃあ……愛憎の情仇か?」

牧志洋が苦しげに眉をひそめた。

彼はまだ恋人もいないのに、寺の赤ちゃんたちまで愛憎で殺し合うのか。

みんなの進み具合ってどうなってるんだよ

柳景輝は答えずに「動機は分からないけど……君はどう思う?」

独立した小寺の赤ちゃん同士が殺し合うシナリオがうまく回らなかった柳景輝には別の期待があった

牧志洋が首を振り「お互いため息で寝返りつけてるんだから、誰が殺すかなんて分からないよ」

江遠は注意して言った「死体の場所も結構変わってる。

道路奥深くって知っている人は少ないはずだけど……」

「それならどうだ?」

韓大隊長がすぐさま追及した

「もし何かを隠すためなら、周辺を徹底的に捜索するはずだ。

現場は道路から近いけど、少し歩いていけばいい殺人場所だった……」江遠は四寧山で育ったせいでそういうものに詳しかったらしい

牧志洋が目を見開いた「それだけの年齢じゃないよ」

柳景輝が鼻を鳴らして「おやじたちのことだから!『四日間も連続取調べを受けた』と話す内容は詳細で深いんだから……」

「黙ってろ、画面浮かんできた!」

牧志洋が苦々しく言った

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