国民の監察医(こくみんのかんさつい)

きりしま つかさ

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第0785話 整備

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死体の馬建鑫は三四日かけて処理された。

捜査は完了したものの、事件解決までにはまだ長い道のりだった。

整理すべき証拠や提出すべき報告書は一つも欠かせない。

江遠が好むのは、表面上は終了作業だが実質的に七〇%以上の労力を要するような業務を避けられる点だ。

崔啓山は疲れ切った体でベッドに横たわりながら、朝から狩りに出かけた江遠が午後に十数人の小悪党を連れて帰ってきてさらに自身の負担を増やしている様子を見て、諫言すべきかと考え始めた。

その考えが浮かんだ直後、蕭思が慌てて崔啓山の部屋をノックした。

「良い知らせです」

「何だよ?」

崔啓山は起き上がった。

「江遠が賭博場を強制捜査して、十数人の薬物使用者を連れてきたらしい。

みんなで奪い合いですよ!」

崔啓山は即座に反応した。

「無料のものだよ、早く取りに行かないと」

北京の警察にとって薬物使用者を逮捕するのは比較的容易だが、その「容易さ」もまた室内侵入窃盗より楽とは限らない。

彼らは都市と農村の境界部や橋下など社会的排除が進んだ場所に住み、多くの場合携帯電話を持たない人々だ。

たまに目撃されることがあっても警察が捜査を開始すると見つからないケースが多い。

京局の警察にとって薬物使用者はブラックバスのような存在で、池塘(ちょうとう)に現れたら完全に駆除するのは難しいし大きな魚を捕獲するのも容易ではない。

しかし放っておくと他の魚が被害を受けるので放置できないのだ。

庭には既に数人の大隊長が到着していた。

皆上着を羽織り手をポケットに入れ喜々として集まっている様子は、砂糖を受け取るかのように見えた。

「うちの部隊はちょうど三名不足だ。

今月は厳しいと思っていた」

「犬を飼うように一気に増やせないよ。

うちも三名必要で二名ならいいが残りは自分で確保するしかない」

「そんなに競争しない方がいいんじゃない? あなた方は半年前から良い機会を得ていたんだし、今はまだ不足しているだけだ。

我々は五名が必要なのに本当に手に入らない……」

数人が賑やかに議論を続けていると陶鹿が現れ、犯人の分配を主導する。

崔啓山はその光景を見て意図的に不満そうに言った。

「江遠が連れてきた小規模犯罪者たちを皆さんが欲しがらないのは分かる。

全て我々の仕事だからこそ良いものが見つかったらすぐに集まってくるんだ。

こんなものか? 一体何なんだよ」

蕭思は笑いながら答えた。

「群れで食う鳥だよ」

崔啓山が蕭思を見詰めた。

「馬鹿なことを言うんじゃない」

「いつも口の利き手のやつだね。

縫って埋めたいほどだ」七大队の大隊長は蕭思を見る目つきが捨て子のように見えた。

蕭思は逆らわしい笑みを浮かべた。

「主君に耳に入るように忠告できるからこそですよ。

老彭さんなら聞き入れないでしょう、昏君のような」

「四大大隊に行ったらお前は老彭と呼ぶのか?」

七大队の大隊長が口を開いた。

蕭思は頷いた。

「昏君は民衆の信頼を失うので諡号(しきしょう)も良いものにならない」

笑い声の中、牧志洋が鼻高々にホールに入ってきた。

手には一束のプリント用紙を持っていた。



吸毒者全員が取り調べセンターに送られ、ホールを歩き回る資格は皆無だ。

彼らの詳細な経歴など誰も気にしない。

「普通の警官にとって、『吸毒者』という言葉で全てが説明される。

彼らの心情や苦悩、人生の背景などは芸術家たちが考えるようなものだ。

たぶん彼ら自身も『吸毒者』としか言いようがない」

祖業を踏み越える決断をする人々は必ずしも主流社会から尊重されることはない。

主流社会自体も善行ではなく利益に応じて報いるだけだからだ。

陶鹿の配分により、各部署が吸毒者のリストを受け取った。

次に各大隊が新規配属された吸毒者を調べる。

新たな事件や別の案件を発見できるかどうかは各自の腕次第だった。

全員が異常に積極的だった。

最近正広局に重大な事件がないからこそ、このような小さな目標に注目する余裕があったのだ。

命案未解決時には誰もそんなことには手を出さない。

陶鹿がまだそこにいる間に劉文凱は近づき「陶支さん、江遠順が吸毒者側へ回りました。

今後さらに多くの吸毒者や覚醒剤取締りが必要になるかもしれません。

どうか薬物対策本部と連絡して関連機材の準備を」と申し出た。

通常なら即座に断るような要求だが、劉文凱が江遠という名前で言い出したため、陶鹿は少し重い口調で尋ねた「どのような機材が必要ですか?」

実際劉文凱は薬物対策の経験者だった。

彼は即座に答えた「携帯型X線検出器、微量物質分析装置、捜査犬です」

陶鹿が眉をひそめて尋ねた「どれくらいの大規模なものか?」

「備えがあるに越したことはない。

必要な時に申請できるように」と劉文凱は答えた。

陶鹿が考え込むと「機材はあるものの、我々刑事部隊の準備は十分とは言えない」

その中でも捜査犬は特に貴重だ。

携帯型X線検出器は一台十数万円で複数台必要となる。

微量物質分析装置は空港でもよく見かけるものだが、警察用と爆破物用では仕様が異なる。

全ての機材に共通するのは高価であることだ。

捜査犬は金銭では買えないほど可愛らしい存在である。



微量物証検出装置はより高価で、理論的にはそれ以上のものも必要だ。

だがこれらの機器は本当に便利で、携帯型X線スキャナーのように疑わしい車を一台ずつチェックできる。

犬よりもずっと安定した働きをしてくれる。

一方、犬の利点も際立っている。

実際には最も効率的な麻薬捜査ツールだ。

大型トラックの中身を一隻の捜査犬が5分程度で調べ上げられる。

さらに人間の匂いまで嗅ぎ分けられるという点ではX線スキャナーに敵わない。

「どうしても足りないなら、寧台から送ってこられるよ。

基本装備くらいなら寧台も少しずつ持っている」

黄強民が自然と近づいてきた。

陶鹿は「装備程度のことだよ」と返す。

彼女は黄強民の装備を借りる気がなかった。

その出所が怪しいからだ。

ただ警犬については躊躇する。

「捜査犬の場合は警犬隊の協力が必要で、すぐには来られない」

捜査犬は勤務時間に制限がある。

できるだけ残業しないようにするのが原則だ。

「寧台にも捜査犬中隊はあるよ」黄強民が胸を叩いた。

「寧台県の捜査犬部隊は仕事の量が極端に少ない。

正広局で働かせてもらうのも、借りて働くこととでも言える」

陶鹿が同意し、気遣って言った。

「麻薬事件は特殊なケースだ。

江遠も安全に注意してほしい。

実は県警にも未解決案件がたくさんある……」

「休みを取ってからゆっくりやろうよ。

みんなの体調調整が必要だ」江遠が率直に答えた。

陶鹿が苦笑しながら頷いた。

「大壮を送りたいなら、こちらの捜査犬の仕事環境と訓練状況も見てほしい」

江遠は久々に会う大壮を思い浮かべて気分が明るくなった。

父親にメッセージを送りながら話し始めた。

犬と人間では違うものだ。

人は新しい土地の風土料理を試したいが、犬は慣れ親しんだ匂いを好む。

寧台で最高の食材といえば、江家牧場産が最上級だった。



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