明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0010話「黒いノート」

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車に乗った時、助手席には特別な客人が二人乗っていた。

帰ってきた時には、助手席に灰皿が二つあった。

葬儀は簡素でさえも乱暴だったが、火葬から戻る際には空を雨が覆い、ジェフとモーソン氏の別れを演出してくれた。

カルンは灰皿を見ながら「地下室にある灰皿は漬物用に使えるか?」

と冗談めかして言った。

実際、新鮮な灰は熱いので、家で使う灰皿に移し替えるまで待つ必要があった。

ジェフの灰は福利施設墓地へ行く手続きが必要だったが、モーソン氏の子供たちはそれを引き受けなかった。

普通の墓地でも費用は高額なので、インメレーズ家と仲介して「福利」を手に入れる方が安上がりだった。

結局、ジェフはモーソン氏の葬儀に寄り添った形で、モーソン氏はジェフの福利施設に寄り添う形になる。

二人の灰皿が隣接する墓穴に入るなら、寂しい時は頭蓋骨で壁を叩き合うのも悪くない。

カルンは老ダシーが言った「灰皿のコスト」を思い出し、運転中のメ森叔父に尋ねた。

「叔父さん、うちの棺桶の利益率は?」

「普通サイズなら二倍の利益。

特注や専用デザインなら三倍まである。

政府勤務の人たちは控えめで内向的な棺桶を選ぶし、貴族で資産家の人は一族伝統に合わせて豪華な棺桶をオーダーする。

暴発家はとにかく金彩が好きだ。

あとは棺桶の選択書があるよ。

二百種類以上のデザインがあって、興味があれば見せてやる。

価格は仕入れ価格の五倍で、顧客には『割引』と説明するんだ」

メ森叔父も話題を振ってきた。

「うちの利益率は修ス火葬社の灰皿よりは低いけど、彼らが灰皿を何倍にもして売るのも現実的じゃない。

例えば、うちの最安棺桶でも一万ルピーだ。

一方、彼らは毎日遺体を焼くのに比べて、我々は三件の火葬で同じ利益が出るんだ。

モーソン氏のようなケースは例外だけどね」

「叔父様、規模拡大を考えておられますか?」

カレンが尋ねた。

メーゼンは首を横に振り、「投資失敗したんだよ。

レバレッジを使ったけど、レバレッジって知ってる?」

「知っています」

「そうか……とにかく申し訳ないが、わらわの愚かな叔父様のお陰で、お祖父様の金、つまり君が相続するはずだったその遺産は大きく減ってしまったんだよ」

停めてから、

メーゼンが付け加えた。

「わらわに怒らないように」

レブルラン王国では長男が家業を継ぐのが慣習で、次男は外に出る。

そのため、長孫のカレンこそが葬儀屋の未来の当主となるべきだ。

メーゼンはせいぜい金銭面や株式に少しだけ関わる程度で、実権はない。

「叔父様には怒りません」

カレンの記憶では、この叔父様に対する良い印象がずっとあった。

約半月間の接点を通じて、メーゼンは確かに「怠惰」「口先だけ」そして「金銭欲」といった欠点はあるものの、それらは普通の人間に見られるものだ。

重要なのは、彼が生活や家族、金銭への姿勢を正しく持っていることだった。

かつて大都市で金融投資に携わっていたメーゼンが今は霊柩車の運転手をしているという現実も、彼が再起を目指す理由として十分だった。

カレンが近二万ルーブルの「相談料」を公金に充てるかどうか尋ねたとき、即座に拒否した点からも、わいろを求める人物ではないことが見て取れた。

現在、職場で配当を受けられるのはメーゼンと叔母様、お祖父様とウィニー姑母だけだ。

この二万ルーブルが公金となった場合、来月には彼と叔母様がその半分を分け合うことになる。

実際のところ、この収益はほとんどコストがかからなかった——ただし、老ダーシーに千ルーブル渡した点以外は唾で済んだようなものだ。

「そうだな、カレン。

次回こそ、次の仕事があれば君が顧客と交渉してみてくれ。

その結果を見てみよう。

もし効果的なら、家族の一員として会社に勤め、配当を得られるようになる」

「はい、叔父様」

ディースのために働く——いや、インメレーズのために働く——ことは名誉だ。

「それから、君が先ほど言った拡大については、今は必要ないと思う。

銀行から融資を受けても規模でチェーン葬儀屋と競争できるわけがないんだ。

だからわらわの考えは、サービス品質を向上させつつ新たな収益源を探ることだ。

例えば君のような」

「では祖父様がその仕事に就かれるのはどうですか?」

カレンが尋ねた。

祖父様は神父だった。

メーゼンは軽く肩をすくめ、「ハイ、誰も神様には真実を語らないさ」

すると、

前方の水たまりで車輪が一瞬沈み込み、大きな衝撃があった。

車体は無事だが、骨灰壺同士がぶつかり「バキ」と音を立てた。

幸い破損はなかった。

メーゼンが振り返りながら言った。

「わらわの死後は葬儀を開かないつもりだ。

棺桶も骨灰BOXもミーナとレンテに準備させない」



「えっ? おじさん、そんなにオープンなのかな?」

「世の中のことは見聞きするうちに、特別なことでもないって悟っちゃうんだよ。

俺が死んだときには、ミナとレントが少しでも孝養を尽くしてくれればそれでいいさ。

骨灰は市場で売ってる黒いビニール袋に入れてもらっても文句はないぜ」

「じゃあ骨灰はどうするの?」

カレンが訊ねた

「簡単だよ。

大きい鉢に土を入れて、その上に何か植えておくんだ。

家にいるときは水やりして、留守中は俺が見張り役を務めればいいさ」

すると

帰路で小鳥の寝息で意識を失っていたローネンが揺れで目覚めた。

その会話を聞いて不思議そうに訊ねた

「メーセンさん、カレン様、そんな深刻な話題ですか?」

「ローネンよ、お前の葬儀はどうするつもりだい?」

メーセンは運転手の腕を動かしながら片手でライターを回し、気楽に訊ねた

「へへ、死ぬ前に最後の1ルピーも使い切る計画さ」

「家族のこと?」

カレンが訊ねた

「明日仕事帰りに看護院のあの看護婦さんに会いに行く。

もし彼女と一緒にならなかったら、俺はもう家族も子供もいないんだぜ」

「じゃあお葬式はどうする?」

「お葬式?」

ローネンが腹を叩いた「簡単さ。

ローカ医科大学は社会から遺体提供を受け入れてるって聞いたぜ。

その時に呼ばれるのは……『大体先生』だろ?」

カレンが言った「大体先生ね」

「そうそう、やっぱりカレン様は詳しいわね へへ、俺は死ぬ前に契約書にサインして、大体先生になるんださ」

メーセンが灰皿を叩きながら笑った「ローネンって奴、俺の目には急に格好良くなったぜ」

「あの、あの……」ローネンが頭をかいた「俺は小さい頃から勉強が苦手で、教科書の知識なんて入らないもんだ。

早く学校を辞めて働いてしまった。

でもローカ医科大学に入れるのは成績のいい奴らだぜ。

だから俺みたいなバカな生徒がそこら辺に横たわってると、そいつらは俺の隣で頭を下げて『大体先生』と呼ばんでくれるんだぜ。

それだけでも最高の快楽さ」

「ははは」メーセンが笑い出した

カレンも我慢できず笑ったが注意して言った「ローネン、ダイエットしないとだよ」

「ダイエット?」

ローネンが驚いた「大体先生になるのに体型の要求があるのか?」

「そんなことないさ。

でも知ってるか?お前の腹を切開にしたら脂肪が山積もるんだぜ。

その時そいつらは『天ああ、俺の大体先生って死んだ太ったやつだ』と我慢して切開しながら小声で罵りながら……」

ローネンが背筋を伸ばした「そんなことあるのか!」

すると

ローネンはお葬式のことを深く考え込むようになった。

メーセンは興味を持って訊ねた「カレン、どうしてそれを知ってるんだい?」



「マリーおばさんから聞いたんだ、あなたもご存知のはずだ、たまに死状がひどい遺体を処理するとき、食卓でつい口走ってしまうことがあるって」

メ森は深くうなずきながら言った。

「そうさ、最近はますます荒れ狂ってるわ」

息をつくと

灰皿を軽く叩いたあと

「すべて私のせいだ」

……

家に帰ったのは夜九時だった。

骨灰壺を地下室に置いたら、今日の仕事は終わった。

夜食としてポテトサラダ、ベーコン、野菜サラダが残っていた。

カレンが手を洗いながらやってきたとき、その夕餉を見て正直がっかりした。

特に今日は外に出たあと遅く帰ってきたのでいつもより腹ペコだったのに、期待していた豪華な食事とは程遠かったからだ。

だが

次回からは自分で作るわ

「愛するの、ハリケンタイを用意してあげたわ」

「はりけんたい」が聞こえた瞬間、メ森おじいさんは即座に腕を開き笑顔になり、マリーおばさんとカレンの前で何回もキスした。

「この幸福な夕食、私はそしてそれを作ってくれたあなたを愛してるわ」

二日前、車の中でマリーおばさんに言ったように、彼女が作ったパイはメ森おじいさんの唯一無二の至宝だった。

もう一つの至宝はトイレで食べる「ハリケンタイ」だった。

カレンは目を見開いた。

急に悪い予感がした。

「バチッ!」

缶の中からガスが出たので、蓋を開けると一瞬の沈黙が訪れた。

腐った肉のような臭いが部屋中に広がり

カレンの胃が収縮し喉まで上昇してきた。

しかし必死に耐えた。

その臭いとは比べ物にならないほど、チーズ豆腐は天然の芳香剤だ。

メ森おじいさんがフォークで一かけ取り口に入れたとき、満足そうに咀嚼しながら笑顔を見せた。

そして

カレンに確認すらせず

ポテトサラダの上に置いた。

「食べなさいカレン、この家ではあなたと私はハリケンタイの最忠実な信者よ」

カレンは息を止めてメ森おじいさんを見つめた。

彼がもう一かけ取り口に入れたあと叫んだ。

「さあ、信仰に従って!」

そう言いながらまたもや満足そうに咀嚼した。

カレンの顔にはためらいが浮かんだが

誰がこの「カレン」がそんなものを好むと言ったのかと

かつてはチーズ豆腐をよく食べたという記憶から、おそらく同じようなものだろうと推測した。

勇気を出してフォークで一かけ取り口に入れたとき

バァッ!

カレンの目が瞬きもせずに開いた。

飲み込むこともなく皿に手を伸ばしタオルを顔に当てながらトイレへ駆け込んだ。

吐くと同時にテーブルから離れる。

座っていたメ森おじいさんと立っていたマリーおばさんは驚いていた。

「どうしたの?」

マリーおばさんが訊ねた。

「帰る前に車が風で濡れていたのかもしれない?風邪を引いたのかな?」

メ森おじいさんが推測した。

「それなら薬を持ってこよう」

……

吐き終わると



カレンはため息をつきながら息を吐いた。

振り返ると、洗面所のドアに普洱が立っていた。

その猫は自分を見つめていて、口角の角度からカレンは自分が笑われていると直感した。

「お前は俺を笑っているのか?」

普洱は表情を変えず、しっぽを振った。

するとマリー姑さんの声が外から聞こえた。

「カレン、風邪ひいたんじゃない?薬を持ってきたわよ」

「はい、姑さん。

あとで出てきます」

「じゃあ夜食……」

いや、そのくそった夜食!

カレンはテーブルに戻りたくなかったし、今は二階にも戻りたくない!二階全体がハリッサ缶詰の臭いで満ちていたはずだ。

「レントさんの部屋にスナックがあるから、少しずつ食べよう。

お腹もあまり空いてないから多くは食べられない」

「えぇ……じゃあ自分で気をつけて、明日起きなよ」

マリー姑さんは出て行ったが、カレンは姑さんが堂弟レントを罵倒している声を遠くで聞いた気がした。

「レント!お前の歯が壊れているのにスナックを隠すなんて許せないわ!もしあなたの歯を捨てたいなら今すぐ口を裂いてやるわ!」

洗面所の中、カレンは小姑に申し訳ないと感じながら、ゆっくりと湯船につかった。

シャワーを浴び終わるとタオルで髪を拭きつつ自分の部屋に戻った。

机の上には牛乳・パン・水・薬が並んでいた。

レントは床に座り、元々スプリングベッド下にあった箱を整理していた。

カレンの足音を聞いた途端、彼は振り返って悲しげな目で見上げた。

「お兄ちゃん、ママが隠したキャンディーとチョコレートを全部取り上げちゃった」

レントの顔には恨みはないし、カレンへの不満もなかった。

ただ諦めたような表情だった。

「早く気付いていればよかったわね。

毎晩一粒だけ食べていたのに……もっと全部食べ尽くせばよかったのに」

「ふん」

カレンはポケットから1000ルーブルを出し、子供が持つには多すぎる額だと思いながらも、結局3枚だけ取り出してレントに渡した。

「これで買って食べて。

使い切ったらまたもらうよ」

レントは受け取ろうとしなかった。

むしろ首を横に振って言った。

「お兄ちゃんのお金を使うのはダメよ」

「弟がお兄ちゃんのお金を使うのが当たり前じゃない?」

「ダメよ!ママは『お兄ちゃんを面倒見るから』と言っていたわ……」レントはすぐに言い直した。

「でも私はちゃんと零細収入があるの!」

家には4人の子供がいた。

原則として全員同じ額の零細収入が支給されるのは公金だが、叔母と姑さんが預かっているため実際には手元に残るのは少なかった。

逆にお兄ちゃんカレンは両親がいないから「預かる」のが不憫で、毎月全額渡されていた。

それが6000ルーブルを貯め込める理由だった。

「歯磨きは毎日しっかりやるし、糖分は控え目にすれば大丈夫よ」

カレンは三百ルーブルをレントのベッドに置いた。

そのベッドには本やノートが散らかっていた。

おそらく叔母さんの「捜査」で引き出されたものだろう。

以前は床下に隠されていたはずだ。

その中で一冊のノートがあった。

表紙に白いバラが描かれているが、意図的に赤ペンで赤く塗りつぶされていた。

カレンは手早くそれを開いた。

最初のページには三人の絵が描かれていた。

左右に大人、中央に子供。

抽象的な筆致だが、父親と母親、そして子供であることは明らかだった。

中央の子供は男児だと判別できる。

なぜなら右側の母親のように長い髪を描いて女性らしさを強調していないからだ。

「よく画けたね」とカレンがレントに言った。

「兄さん、これは私のノートじゃない」

「そうか?」

この部屋にあるものでレントのものではないなら、残るは……「カレン」のものだ。

カレンは一瞬考えた。

彼は「カレン」の記憶を継承しているが、その本の紙質からある程度年数が経っていることが読み取れた。

もし元のカレン本人でさえ忘れているようなことなら、当然彼も覚えていないはずだ。

「レント、歯磨きして寝る時間だ!」

階段から叔母さんの声が響いた。

幸いインメレス家は一軒家だった。

アパート住まいならこのくらいの声量で苦情が出るところだ。

「すぐ行くよおばさん」

レントが部屋を出て行った。

カレンはレントのベッドに座り、そのノートをめくると、次のページも同じ構図だった。

夫婦と子供という三者構成。

三ページ目も同様だ。

カレンは少々興味を失っていたが、四ページを開いた瞬間眉をひそめた。

四ページの絵は全て黒く塗りつぶされ、中央に丸い空白が残されていた。

児童画の専門家から見れば、この構図は創作した子供が極度の不安感を持っていることを示していた。

黒色は一種の保護色として機能する。

その構図からは、幼少期に暗闇で被布を体全体に巻きつけながら隙間から外を見るようなイメージや、呼吸をするために僅かだけ開けた隙間といった比喩が連想される。

しかしこの絵の感じ方はそれよりも深刻だった。

カレンはページをめくると、続く数ページも同様の構図で、丸い空白の位置が上下左右に変化していた。

あるページを開いた瞬間、彼の手が止まった。

その絵には横に男と女が描かれていた。

前のページと同じ画風から判断して「父親」と「母親」だ。

横たわっているのは、一人は立っている人物との対比で、おそらく寝ている状態だろう。

彼らの腹部付近から黒い塊が伸びており、周囲も黒く塗りつぶされていた。

カレンは唾を飲み込んだ。

これは傷口……そして床に流れ出た血痕ではないかと感じた。

立っている人物はこれまで登場したことのない大人の姿で、手には何か物を持っていた。

カレンはノートを目の前に近づけ、その物を仔細に観察した。

子供が描いたものなので、正確な形状までは分からないが……。

「剣だよ。

でもこれって短すぎるんじゃない?」

突然、彼の頭の中に浮かんだのは、ある日病院から帰った時、祖父の腕の焦げ皮を清掃する際に目にした黒い箱の中の……その剣の柄だった!

「ディス!」

「はい」

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