明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0194話「邪神の封印」

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カレンは、その噂がどうやって広まったのか非常に気になっていた。

しかしすぐに、カレンは気づいた。

この噂はおそらく隊長自身が流したのだろう。

彼は自分の小隊の知名度を上げることで、今後の高報酬任務での優位性を確保しようとしているのだ。

そんなことは隊長がやるようなことだ。

彼は時々冷淡で、ピアノ奏者のように自己中心的だったり、時に冗談を連発して飼い犬と小鳥の話を繰り返したりした。

また食欲も強く、任務中は利益最大化に必死になるが、同時に安価なプラスチック製指輪一箱分を無駄遣いするような矛盾した行動も見せた。

カレンは以前から隊長が精神分裂症の疑いがあると思っていた。

陶芸館地下で発見された肖像画こそがその証拠だった。

しかし宣伝効果は抜群で、自分の従弟・リチャードがニオの小隊に入りたがっているのだ。

小隊は1名の隊長と12名のメンバーだが、編外員は制限なし。

理チャールのような名家出身者を加入させることで、今後の発展に有利になる。

多くの面で保護されることも期待できる。

ただし、どのチームでも金銭的メリットがあれば公子様を受け入れるわけではない。

利益交換が成立するかどうかが鍵だ。

一方、リチャードは祖父への説得を続けている:

「グランドパ、もし私がその小隊に入っていたら、暗月島の姫殿下のお腹の中にはあなたの曾孫がいるかもしれない!」

カレンは呆気に取られた。

しかし無言のうちに、ある程度理にかなっていると感じた。

オフィーリアが妊娠していたなら、目の前の老人の孫である可能性もあったのだ。

「それは胡散臭い話だよ」祖父・ドロンは孫を諫めるようにカレンを見つめた。

「お前のお友達が笑うぞ」

「信じて聞いてくれよ。

カレン、もし機会があれば『秩序の鞭』小隊に入りたいか?」

カレンは照れくさそうに小さく笑いながら囁いた。

「そのチャンスさえあれば私は満足で、選ぶ余裕はないわ」

「お前が言うように、お前の友達は……」

ドロンは元々カレンの言葉でリチャードを戒めようとしていた。

彼が恵まれた環境にいるにもかかわらず感謝しないことを諫めるつもりだった。

しかしカレンが座り直す様子を見ると、なぜか胸が締め付けられるような気持ちになった。

リチャードは目を丸くしてカレンを見つめた。

この新しくできた友人は演技をしていると悟っていた。

彼が自分に対して見せるように無遠慮だったからだ。

「グランドパ、助けてください! グランドパ! あなたのお孫さんが『小犬』と呼ばれるなら、あなたの顔に光栄です」

「私の孫が犬呼ばわりなら、私は老犬になるじゃないか」

「いいえ、祖父よ、形容詞だ!形容詞です!」

リチャードはドロンの肩を掴んでいた。

「祖父よ、私は成長したいんだ。

責任ある男になりたいんだ」

カレンが茶杯を持ち上げ口に運ぶ。

その光景を見た瞬間、自分の祖父ディースもいつも彼の願いを叶えてくれると思い浮かんだ。

ドロンは黙り込んだままだった。

リチャードはさらに懇願を続けた。

カレンはドロンの表情に注意を向けた。

何かが決まったのかと疑問に思った。

その時、ベルが鳴った。

カレンが立ち上がりドアを開けるよう促すと、リチャードは感謝の笑みを浮かべながらも祖父への攻勢を続けた。

玄関でドアを開けた瞬間、外に立っていたのはニオだった。

「お前はグーマン家の孫だな?」

ニオが驚きを隠せない様子で尋ねた。

「リチャードと友人です」カレンは特に今日は初対面だと強調する必要もなかった。

「まあ偶然だ」

「ええ、偶然ですね」

ニオはすぐに中に入るのではなく、黒い紙を取り出した。

折り畳む様子は見せず、その紙が自らに折り込まれて鳩の形になった。

そしてニオの掌から飛び立った。

カレンはこの術法を自分も習いたいと思った。

「ヴァニーがチームリストをチェックしているんだ。

お前だけ足りない」

ニオはポケットから小さな箱を取り出し、その中には整然と並べられたプラスチック製の指輪が詰まっていた。

彼は一つ取り出して自分の指に嵌めた。

「本当にギリギリだったよ、隊長。

貴方のマスクは墓場に落ちていたんだ。

私は教務棟で貴方のオフィスにマスクを届けようとしていたところ、車を降りた直後に建物が崩壊したんだ」

ニオが落としたマスクは秩序の鞭小隊の黒いマスクだった。

陶芸館のものではなかった。

「そのマスクは使えなくなったからヴァニーに新しいものを注文させた。

銀色で、特殊素材を使った三枚セットだ。

貴方はヴァニーに取りに行くか、次回任務時に持ってもらうようにするといい」

ニオが顔を指して続けた。

「次からはそんな些細なことのためにわざわざ来なくていいんだよ。

マスクなんてどれだけ高価なものだろう?」

「はい、分かりました隊長。

でも教務棟の件、隊長、その原因は何か知っていますか?」

「私は関わっていないが聞いた話では、会議を装って内通者や叛教者を捕まえようとしたんだと。

しかし計画が漏れ、死なせた際に内部空間陣法が乱れたらしい。

貴方の同僚で副主任だった老人の仲間だそうだ。

叛教者は主任だった」

「内通者……」

ニオはカレンに近づき耳打ちした。

「信仰を重んじる場所ほど、その信仰に固い内通者が生まれやすいんだよ」

カレンがニオを見つめながら身体をそらすと、ニオは部屋に戻った。

その後もカレンは彼についていった。

「お待たせしました、大人」

トロンはニオを指差しながら言った。

「いい加減にしてくれよ、お前の隊長が来てるんだ」

「隊長?」

リチャードは振り返ってリビングルームのニオを見やった。

「あなた……あなたはニオ隊長様?」

「あたしです」

リチャードは手を何度も握り締めたり離したりしながら緊張していた。

トロンが口を開いた。

「この孫を、お前に預けといてくれ。

よろしく頼むわ」

「これは光栄でございます、また我が小隊の栄誉でもあります。

ただ我が小隊は現在定員満員のため、編制を付与することはできませぬ。

そのため彼は現段階では臨時職員として活動することになりますが、任務には同行いたします」

「構わんよ」トロンは編制のことなど眼中にない様子だった。

グーマン家だもの、どうせ些細なことだろう。

「ご安心を。

最近の任務で誰も死んでいないので、すぐに空き編制が出るでしょう」

ドロンの顔が固まったが、孫を見やるとその表情の方がさらに熱狂的だった。

ニオはリチャードに背を向け指輪を外し彼に渡した。

リチャードは両手で受け取った指輪をぎゅっと握り締めた。

隣のカレンはこの光景がどこか懐かしく、リチャードが指輪を強く折らないように祈っていた。

「新しい教育棟が完成したら、その時に手続きしていただけます」

「承知しました隊長様。

教育棟が再開したらすぐに行きます」

「うん」

ニオはトロンを見つめた。

「おやじさん、そろそろ帰るか?」

「あー、いいわよ。

お前の孫をもっと褒めちぎってあげて。

彼はお前様に憧れてるんだもの」

「用事があるの」ニオは直截に断った。

トロンが頷いた。

「じゃあ行ってらっしゃい」

ニオが退出し、カレンだけがリビングルームに残された。

リチャードは指輪を大事そうに持ちながらカレンの前まで行き尋ねた。

「カレン、先ほどのニオ隊長様の風格ってすごく憧れちゃうよね。

おじいさんが彼を留めさせようとしたのに、あっさり用事があると断ったのが凄く感動的だったわ」

「お祝いだよ」カレンは笑みを浮かべた。

私が保証するわ、隊長様がリチャードに『小鴨子の物語』を語ってくれる日にはもっと感動するでしょう

トロンが立ち上がった。

「おじいさん、帰られるんですか?」

「用事が済んだからどうせここにいるのも無駄。

おばあちゃん一人で家にいても大丈夫だから」

「明日はお婆ちゃんと会いに行きます」

「自分の仕事をしっかりやればいいわ。

任務中は隊長様の指示を守ってね、犬ぞりのチームにはウサギなんて入れないんだから」

「おじいさん、孫はウサギじゃないよ。

見ててください」

トロンがカレンを見やった。

彼の年頃の若者で黒いロングコートを着たこの青年はただ立っているだけで心地良い存在感があった。

「カレンか?」

「はい、お方様」

「リチャードの友達は多いけど、記憶にないくらい初めて家に連れ帰ってきたわ。

彼女が恋人でも家に連れてこなかったみたいよ

もしも相性がいいなら仲良くしてあげて。

何かあったらリチャードを通じて連絡して」



「おんちや、お方様」

カレンはその言葉が単なる形式用語であることを知っていた。

「グランドパップ、送ってあげますよ」リチャードがドロンを玄関まで案内する際、孫らしい過剰な丁寧さを見せていた。

リチャードが戻ってきた後、カレンは彼に告げた。

「もう時間だ。

私も帰るべきでしょう」

「慌てないで、もう少し座って。

来い、父の書斎へ案内するよ」

「そんな必要はないだろう?」

「そうすれば正式さが出るんだ」

リチャードがカレンの腕を掴み、強引に階段を上らせた。

カレンは二階の洗面所でシャワーを浴びただけで部屋には入っていなかった。

リチャードは二階の一室を開き、彼女を中に入れた。

「もっと自由に構えていいんだよ。

この書斎は祖父のものだったんだ。

祖父が祖母の体調を考慮してヨーク地方の温泉のある場所で療養しているからね。

名義上は父の書斎だけど、父はほとんど家に戻らないし、ここもあまり使わない」

カレンは本棚を見回した。

「気に入った本があれば持って帰っていいんだよ」リチャードは広く言った。

「いらないわ」

「チェスは好き?」

「嫌い」

「ポーカーは?」

「嫌い」

「ワインは?地下室に酒蔵があるぞ」

「嫌い」

「趣味がないと仲間外れになるんだよ。

人って、高慢になりすぎるとダメだよ。

君みたいに清潔なのはいいけど、たまにこう言うのを忘れないようにしないとね。

例えば私が新しい部隊に入ったら、君も『秩序の鞭』に入れてくれる?君は審判所で働いてるんだから、葬儀屋みたいなものだろ」

「そうよ」

「ふーん」リチャードは本棚に背中を預けた。

「私の最初の殺した人への葬式に行くぞ。

私が加入したらね。

その葬式には埋めるのは彼じゃないんだ。

君はそれを知ってる?埋まるのは私の未熟な過去だよ」

カレンは笑った。

彼らと過ごす際、チェスやポーカー、ワインを必要としなかった。

ただ『異常』で十分だった。

「安心して。

私が立場を得たら、君も『秩序の鞭』に入れてくれるわ。

君が審判所で働いてるってことは、葬儀屋みたいなものだろ」

「そうよ」

「ふーん」リチャードは無関心に笑った。

「私は自分が最初に殺した人への葬式に行くんだ。

私が加入したらね。

その葬式には埋めるのは彼じゃないんだ。

君はそれを知ってる?埋まるのは私の未熟な過去だよ」

カレンは彼の言葉を無視し、書斎の壁に掛けられた別の写真を見つめた。

そこには三人の若い男女が写っていた。

「自分」の母親とその弟妹だった。

「君はうちの家族写真にずっと興味があるみたいね」

「ええ、二人の述法官様の若かりし頃の姿を見るのは不思議な感じです」

「述法官って特別なものじゃないわ。

外見からは見えないけど、この世界では普通のことよ」

「所有するからこそ価値が生まれるんだよ」

「もしかしたらね。

実は、僕はこの大姑母さんについてずっと気になっていたんだ。

祖父や父が言うには彼女は死んでいるらしいけど、本当かどうか疑問に思ってる。

もしかしたら家を出て逃げ出したのかもしれないし、教会では遺体を収集するけど墓碑は立てるのが普通だから、僕は家族が彼女の供養をしているのを見たことがないんだ」

ここで、ある物語が浮かび上がる。

「自分」の母親が家を去り、その後行方不明になったこと。

そしてインメルレース家で「自分」の父親と結婚し、子供として生まれてきたこと。

でも普洱とは違うはずだ。

彼女の写真が家の中にあちこち飾られているように見せているから、家族との関係を断絶したわけではないんだろう。

普洱は百年以上も離れてから帰ってきたから特別扱いを受けたけど、もし数年後に帰ってきたら待遇は違ったはずだ

リチャードはまた紅茶を淹れ、カレンを書斎に引き込んで重大な話のようにお茶を飲ませ始めた

結局時間も遅くなってきたのでカレンが再び退出すると、リチャードは留めなかった。

車庫まで送り出した

「すみません、こんなに長く付き合ってもらって」

「いいえ、僕は楽しかったです」カレンが車に乗ると「ではまた会いましょう」

「次に会うときは僕の顔には黒いマスクをかぶっているでしょう。

その冷たい雰囲気に驚かないでくださいね」

変更してシルバーのマスクになった

カレンは笑ってエンジンを始動させ車庫から出た

リチャードが階段を上りながら額に手を当てて呟いた「この奇妙な親しみを感じるのはなぜだろうか」

帰り道、カレンは一瞬だけ柳通りに逸れた。

外側には警察のバリケードが張ってあったが、車は出られるけど入ることはできない

カレンは自分の身分証で調べるのも面倒だったので曲がり角を越えブルーブリッジ地区へ向かった

家に戻ったのは未明だった

毎日こんな時間に帰ってくるせいで生活リズムが崩れてしまっている。

車を停めたと同時にアルフレッドが出てきた

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「なぜまだ待っていたの?」

カレンは不思議そうに聞いた。

彼はアルフレッドに自分が遅くなると言ったが、その目的は違っていても結果は同じだった

残念ながらグレア先生とウィンダース先生とは、自分の実力を確認しつつ交流を深めようと思っていたのに、また後回しになった

「ご主人様、ホイフェン先生のメモにケビンの封印を解く部分をまとめておきましたのでご覧ください」

アルフレッドが黒いノートを差し出した。

挟み紙も添えられていた

「明日でもいいですか?」

「やはり今すぐ見ていただきたいです」

「分かりました、書斎へ行きましょう」

カレンがノートを受け取り書斎に入ったと同時にアルフレッドは電気をつけた

そのときケビンが書斎に飛び込んでくる。

机の前に座り舌を出しながら無邪気に笑っていた。

あの禿頭の犬顔、滑稽だった

「プエールは?」

カレンが座ると尋ねた「寝ている?」



普洱がケビンを連れて迎えに来てくれたのは、力が回復した後、大喜びで午後に火球を使ってボイラーを燃やし切った結果、疲労で昏睡していたからだ。

「ふふ。

」カルンは笑いながら首を横に振った。

その様子は自分が魔法を習始めた頃の自分とよく似ていた。

「ああそうか、アルフレッド。

『黒霧の行進』と『紙ウ鸦』という呪文を探してきてほしいんだ。

明日目覚めたら時間があれば学んでみよう。

難しくないといいね」

「おやじ様は冗談を言っているんですよ」

カルンがノートを開き、ブックマークに挟まれたページをめくり始めた。

ホーフェン氏が邪神封印の原理について詳細に説明していた部分から読み始める。

しばらく読んだ後、カルンは解法の手順に進むことにした。

約40ページ分の内容を一気に読み進めると、ようやく「封印層の解体詳細」の見出しが現れた。

ホーフェン氏はこの封印について正反面ともに詳細に説明していたが、その熱意と達成感が文字から滲み出ていた。

ほぼ百科事典のような本で、95%のページ数は作者自身がこの書籍を作成した動機や思考過程を綴っていた。

「封印層の解体詳細」

このページには必要な材料と補助品の準備について記載されていた。

最後の一文まで読み進むと、

「第一步:」

という項目があった。

その後に改行され、次の段落が続くようだった。

カルンはページをめくり返し、裏面の最初の行を見た。

「第二歩:自身の陣法に対する理解に基づき、陣図の構造図通りに完全な運転を行う……」

すると、どうやら「第一步」の内容が何処かに分断されていたようだ。

カルンはアルフレッドの方をちらりと見たが、彼も当然ながらその状況を知っていた。

机の上には切り紙用のナイフがあったので、カルンはそれを手に取り、粘着した二枚の紙を慎重に剥離した。

切開すると、最初のステップの内容が完全に現れた。

カルンは顔を上げて膝を這わせて自分を見守るケビンを見た。

金毛の目は細くなり、その愛らしい雰囲気と温かみを最大限に発散させ、ご褒美の肉ボールを待つように見えた。

普洱が一日中遊んでいるのを見て、ケビンも内心羨ましく思っていたのだ。

カルンは再び顔を下げ、最初のステップの内容を一読した。

確かに短い二行だけだったが、ホーフェン氏はその分量にふさわしい二枚紙を使っていた。

左側のページには「本当に解封印するつもりなのか??」

と書かれていた。

右側のページには「バカじゃないのか!!!」

という文字が躍っていた。



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