明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0243話「葬儀社の真実」

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ふと目覚めると、カレンはベッドから起き上がった。

今日は珍しく暇だった。

洗顔後にまたベッドに座って本を読むのも悪くない──この貴重な怠惰を味わうのがいい。

神教の職務も葬儀社の仕事も勤務時間は問われないのに、逆に余計に忙しい気がする。

カレンが盥洗室から出ると、部屋のドアがノックされた。

「おやじ様、リチャードさんが来ています」

「うん」

カレンは着替えを済ませて部屋を開けると、アルフレッドが自分の顔を指さした。

「おやじ様、リチャードさんは前庭に座っています」

「わかった」

カレンは葬儀社の弔慰ホールである前庭へ向かう。

そこに小板凳に座っているリチャードを見た。

「カレン、カレン、カレンん~」

リチャードがカレンを見つけると、悲しげに立ち上がり近づいてくる。

幼い弟のように母親から叱られた後に兄に泣きつくような感じだ。

彼は確かに自分の従兄弟だった。

カレンは後ろに下がりながら尋ねた。

「お前は誰だ?」

「リチャードです」

「お前の顔、豚の頭みたいじゃないか」

「えっ……」

リチャードの顔は腫れぼったく猪首のように見えた。

カレンは以前は比喩と思っていたが、今日は事実だった。

「父に殴られたんだよ。

昨日帰宅したら母が作ったお菓子を父に持って行って『パパ、食べますか』と聞いたんだ。

その次にお前は何したと思う?」

「答えなくてもいいぞ、見ればわかるだろ」

「父の病状は悪化しているんだ。

カレン、昨日夜にどれだけ痛めつけられたと思ってる?彼が自分に一撃、おれに一撃、自分に拳を振るい、おれに拳を振るい、最後にベルトで交互に叩いたんだ」

「大丈夫だよ、死なない。

むしろこれは良い兆候なんだ。

お前のお父さんが外に向けて感情を発散させているからだ」

「良い兆候?」

「うん、お前が何度か殴られれば彼の病状は大きく改善するはずさ」

「これが新しい治療法なのか?」

「そうだね、ただ副作用として息子に酷い目に遭わせるのが問題だけど」

「もう限界だよ。

逃げようとしても追いかけてきて術で縛り付けるんだぜ」

「それこそ酷すぎるよ」

「そうさ」

「どうぞご覧あれ。

ここから北へ数キロ先の路地裏に、傷を負った黒社会が治療に訪れる診療所がある。

その医師はお前の傷に詳しい」

「薬膏は母が塗ってくれたけど、腫れは時間がかかるんだよ。

どうして今すぐ診察に行かせるの?お前は朝食を食べていないのかと聞くべきだろ」

「意図的に会話から外れるのも一種の婉曲な拒絶なんだ」

「カレン、俺たち兄弟じゃないか!」

この質問にカレンは否定できない。

リチャードが言う兄弟とは形容詞だったからこそ。

「よし、私もまだ朝食を食べていない。

キッチンへ来よう」

「どうして、自分でやるの?」

「うん。



カレンが理チャをキッチンに案内し、二人分の陽春麺を作った。

理チャはカレンが箸を持ち出すと興味津々に同じように取り、麺を巻いて口に入れた。

咀嚼しながら尋ねた。

「おいしいね。

大しょうゆがある?」

「ないよ。



「少し薄いかな。



「唐辛子の粉はあるわ。



「いいわ、少しずつ。



麺を食べながら理チャはカレンに昨晩の悲惨な出来事を話そうとしたが、カレンは術法のノートを取り出し、食べながら読み始めた。

「祖父は教えてくれたわ。

どんな術も集中しないと習えないのよ。

全神貫注で、一瞬たりとも雑念があってはいけないの」

「それはおじいちゃんからの教育ね」

「どうして違いがあるの?道理は同じじゃない?」

「才能は人それぞれよ」

「つまり私は愚か者なの?」

「私よりはマシだけど、あなたほどではないわ」

「そうね。

あなたが私のことを楽しんでいるのは明らかでしょう」

「おめでとう、ようやく気づいたわね」

「ふん、友達としての心遣いがないわよ」

「あなたの父親に殴られたのよ。

他人ならともかく、自分の父親だからって、剣を持って一緒に帰ってきてくれる必要はないわ」

「そうね。

でも彼は私の父だし、自分自身もかなり痛めつけられていたみたいだったわ」

「朝食後は何をするつもり?」

「あなたのお宅で客なのよ。

どうせ嫌がっているの?」

「プレゼントは?」

「えっと……早すぎたから店が開いていなかったのよ。

買わなかったわ」

「構わないわ、ポイントカードでもいいわね」

「カレン!どうしてそんなこと言うの!」

「まあまあ、私は図書室に行くわ。

あなたは庭で日向ぼっこをすれば?逆にしたっていいわ、あなたが図書室に行って、私が庭にいるから。

外に出しておくと人を驚かせるかもしれないもの」

「カレン、どうやって隊長が偽者だと気づいたの?」

「細かいところに注意していればよ」

「それだけ?」

「うん、それだけね」

「もっと真剣に考えてほしいわ」

カレンは立ち上がり、本棚に向かった。

最後には『父の諦め』というタイトルの本を手にした。

理チャも同じく本棚から『びっくり蛙』を取り出した。

カレンが図書室に出ようとしたとき、理チャが止めた。

「あーい、一緒よ!一緒に!図書室でいいわ。

私はあなたを邪魔しないわ」

「それにはマスクが必要よ」

「どうしてそんなに過剰なのカレン!私の父は私の身体に傷つけたのよ。

そしてあなたは私の心を傷つけてるのよ」

カレンは庭に行かず図書室で本を読み、理チャも満足そうに別の椅子に座った。

アルフレッドがお菓子と茶を持ってきた。

その後、カレンは読書モードに入り、理チャも同じく。

彼の性格は活発で明るいが、必要なら沈黙できるタイプだった。



この本を読むと、約四時間かかりました。

薄い本ですが、カレンはもうすぐ最後まで読み進めていました。

物語の主人公は山深いところで子供たちと共に隔絶した生活をしている父親です。

元々都市の全てに嫌悪感を持っていた父親は、子供たちを純粋なまま保つために山林で野生動物のような生活を選んだのです。

これは『ルビコン漂流記』のパロディーとも言えるでしょう。

山暮らしを続けるうちに父親はますます混乱と苦しみを感じ、成長する子供たちを見ながら内疚感が深まっていました。

彼が考える「純粋な生活」は子供たちにとって全く存在しないもので、彼らは都市の汚れさえ覚えていなかったからです。

結末では父親は子供たちを伐採作業場に連れて行き、保護を求めました。

そして自身は崖から身を投げ、死ぬ前に「お前たちは都会に戻っていけばいい。

いずれ分かるだろう、私がお前たちに与えた純粋さの意味が」と言いました。

この本を読んだ後、カレンは眉をひそめながらも作者の意図を理解できませんでした。

しかしジャングル生活の描写には深みがあり、没入感がありました。

父親というキャラクターについてどう評価すべきか考えるのも面倒で、リチャードが初めて訪れた家での昼食に取り掛かることにしました。

三菜一汁の昼食は少し味付けを濃くしてあり、リチャードは大喜びでした。

「私は貴方たちが和食好きだと思っていました」とカレンが笑いながら言いました。

「それは私の祖母が好んでいたからです。

彼女が好きなものはみんなも好きで見せかけなければなりません」

「つまり貴方の家族はおばあさんを恐れているのですか?」

「まあ、孫世代ほどはまだマシですが、特に祖父は大変でしょう」

「ふーん」

昼食が終わるとカレンはリチャードが帰ると思っていたのですが、彼は帰りたがらない様子でした。

本も読みかけで、次に夕食の話題を振りました。

「貴方のご家族にはここに来たことを連絡しましたか?」

「いいえ」

「それでは電話をかけてみましょう。

私は貴方の家族が心配していると確信しています。

特に前夜の出来事後です」

「それはないでしょう。

彼らは私が自殺するとは思いません。

でも電話をかけることにします」

カレンはオレンジを剥きながらドア際に寄りかかり、リチャードが電話をしている様子を見守っていました。

「はい、父です」という声にリチャードの表情が崩れました。

家では父親がほとんど電話を受けないため予想外のことでした。

「ここにいます」

「昼食を済ませました」

「分かりました、父」

リチャードが電話を切ると深呼吸してカレンに告げました。

「助けてください、父は私を帰らせようとしています。

貴方の休息を邪魔するなと」

「貴方のご父親は正しいのですよ」

「救ってください、カレン。

私は家に戻ったらまた殴られるでしょう」

「見て、お父さんが電話に出たんだから、昨日のあの殴りは効果があったんだろ?」

「えっと……その言い方で俺が迷うのかな?」

「帰ってこいよ。

お父さんは今貴方も必要なんだ」

リチャードがカレンに中指を立てると、カレンは構わずオレンジの皮を剥いて口に入れた。

理チャードが部屋から出ていくのを見送りながら、カレンは伸びをしてようやく休日を満喫できると判断した。

まずは昼寝でも取ろうとベッドルームに入った。

そこではプールがケビンに取り囲んでいた。

ケビンは隅に縮み、プールは威圧的に彼を見下していた。

カレンの入室でその光景が中断された。

ケビンが助けを求める目線を向けたが、昨晩まで月見を共にしたはずのカレンは無視してしまった。

「お前の表弟は帰ったのか?」

「ああ、帰ったよ。

私は湯船につかってから昼寝するつもりだ」

「じゃあここじゃなく別の場所で愚犬を拷問し続ける?」

「いいや、ここでやってくれ」

「それでお前が休息に支障が出る?」

「ただ横になってみようと思ってんだ。

眠れるかどうかは別問題さ」

カレンがバスルームに入ると、プールはドアから顔を出した。

「大屁股(たいぷんす)を呼び出してお前の背中を流してやろうか?」

「いいぜ、呼んでくれ」

「ふーん、夢想だよ」プールは舌を出すと、ケビンが部屋から逃げようとするのを見て叫んだ。

「愚犬!止まれ!どこへ行く!」

カレンはもともと湯船につかってからベッドに戻ろうと思っていたが、寝室でプールがケビンに取り囲む様子を見ていたので、邪魔にならないようにそのまま目を閉じてバスルームで寝てしまった。

浅い眠りながらも快適だった。

精力回復のためではなく、単純に睡眠そのものを楽しんでいたのだ。

気がついたら湯船につかってほぼ二時間経っていた。

カレンが目覚めると当然のことながら栓を閉めていたので温かい水が残っていた。

体を拭いて服を着て鏡前で立っていると、明らかに精力が充満しているのがわかった。

これだけはアランの館での生活を思い出す。

ある時期は毎日ゴルフをして湯船につかってから大きなベッドで寝るだけだったのだ。

午後にはユーニスと馬に乗ること以外、部屋から出ないこともできた。

食事や飲み物は全て従者に運ばれてきたのだから。

しかし本朝の昼間読んだ本にもあるように、汚いことが分からないなら清潔とは何なのか理解できないし、休養を本当に味わうためにはまず充実した忙しさが必要なのだ。

ベッドルームに戻るとヒリーがカレンの前に膝をついてプールの皿にデザートを並べていた。

後ろからヒリーの足音を感じたが彼女は振り返らずに首だけを動かして言った。

「ご主人様、お茶は?」

「いいや」

「それとも果物?ご主人様、どうぞ」

「いやだ」

プールが口を開いた。

「彼は大桃子(たいとうす)を噛みつけるつもりだよ」

ヒリーの顔は次々と赤く白くなっていく。

コーヒーを運ぶ手も震え始めた。



「初めて私の話を聞いたんだね、普通にしないでコーヒーこぼすなよ、このコーヒーはどれだけ高いと思ってるのか、うちのカレンが働いて家計を支えているのは知ってるか」

「はい、はい、私のせいです、私のせいです」シーリーは即座にプールに謝罪した。

カルンはベッドに寝そべった。

シーリーが落ち着きを取り戻し、普洱のための点心と果物を準備する間も膝まずいていた。

プールが一口コーヒーを飲み、一粒のブドウを食べた後、シーリーに向かって言った:

「彼は見てるんだよ、もっと高く上げろ、もっと高く」

シーリーは立ち上がるのも座り込むのも迷った。

カルンがベッドサイドテーブルに置かれた『秩序週報』を手に取りながら、「気にしないで。

この猫最近発情期なんだ」と言った。

「大丈夫です、お嬢様」シーリーは即座に笑顔で返し、午後のティータイムの準備が整った後、トレイを持って立ち上がり、ドアを開けて寝室を出た。

そして深呼吸した。

カルンが新聞をめくって「彼をいじめないで」とプールに言った。

「どうかしたのか?」

「彼女はただの人間だよ、心理的耐性も限界があるんだ」

「だったら給与を上げればいいんじゃない? 彼女の心理的耐力と給与は連動するはずだ」

「じゃああなたの昼食補助金から引くことにしよう」

「おや、そんなことしないで。

可愛い小猫ちゃんは一日にどれだけ食べるのかな」

「あなたが飼っているこの猫の食費は、家の中の全員の合計よりも遥かに高いんだよ。

あのコーヒー豆はポイントで買ったんだぜ。

ラジオ妖精さんが特別に私とバカ犬のために買ってきてくれたんだからね。

それに家のペットが栄養バランスよく食べているのは、この家族が豊かに暮らしている証拠だよね? そうだろうさ、バカ犬」

フライドポテトを食べていたケビンが顔を上げた:

「ワン!」

カルンは新聞を見ながら、予想外だったことに気づいた。

現在の『秩序週報』にはまだ二人の普通の人間に関する記事が連載されていた。

一人はマーラー市長ジョン・ロティーニで、彼はオープンカーに座り支持者たちに向かって手を振っている写真が掲載されていた。

もう一人はルード先生で、彼は紫髪者の権利運動を続けている最中で、拳を握り熱弁をふるっている写真だった。

カルンは『秩序週報』が彼ら二人についてずっと記事を書いていたことを思い出した。

神教の世界では普通の人間がこれだけ多くのページ数を占めるのはおかしいはずなのに、カルンはなぜ彼らに注目しているのかまだ理解できなかった。

もし新しい政治家を育てたり権利運動を推進するためなら、秩序神教の力で簡単にできるはずだ。

こんな迂回策は必要ないはずだった。

プールがティータイムを終えベッドに跳び上がるとカルンに向かって言った:

「カルン、時間の力を操れるなら何をする?」

「特にやりたいことはない」

「あなたの生活には後悔はないのか?」

「それほどではないけどディースは必要だよ」

「そうかもしれないね」

「あなたならどうする? 時間の力があれば」



「私はまだ決めかねています。

猫として長く暮らしたとはいえ、インメルレース家での生活も決して後悔ではない」

その時、寝室のドアがノックされた。

「おやじ様、隊長からの電話です」

カレンはベッドから起き上がり、書斎へ向かうと電話を取った。

「もしもし、隊長ですか? カレンです」

「あいつに一発やっつけたよ。

彼が無実だとは知っているさ。

ただ任務の伝達係でしかなく、その任務自体も知らないんだからな」

「お見事! 至って気分爽快だったろう」

「そうだ。

叩きのめした後はすっきりしたぜ。

でもね、あいつが教えてくれた良いニュースがあるんだ。

次回の任務が決まったぞ。

今回は前回よりずっと高額の報酬だ。

それに神教の上層部と会えるんだ。

護送する首席司祭様もその団体にいるからな。

ただ最後列くらいだ」

「どうして貴方たちのチームじゃなかったのか? そもそも指名すらされなかったのに、突然元々のチームが撤回されて貴方が代わりになったってことか? それ以前は全く期待していなかったんだろ? 動く必要もなかったんだろう?」

「運のせいだね」

「違うよ。

あの殴り返した副主任によれば、上層部に偉大な人物がいて、わざわざ貴方たちチームを推薦してくれたんだってさ。

しかも褒めちぎったらしい」

「……」カレン

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