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第0248話「ディースの最後の笑い」
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「愚かな犬、秩序の神にどれだけ働いてきたのか?」
「ワン、ワン。
」
アルフレッドは翻訳した。
「ラネダルは秩序の神と取引をし、彼が何かする度に報酬を得る関係だ。
」
プ洱が尋ねた。
「貴方なら秩序の神の要求を拒否することはあるか?」
「ワン。
」
「通常はしないだろう。
」
プ洱が目を瞬かせ、「貴方が秩序の神の飼い犬と何ら変わらないじゃないか」と言い放った。
「……」ケビン。
沈黙したのはケビンだけではなかった。
場にいる全員、そしてプ洱自身もその言葉を口に出した直後、無意識にカレンの方を見やっていた。
寝室は突然静まり返った。
しかしカレンが先制で切り出した。
「あの時代、秩序の神の前では誰でも犬のようなものだ」
ケビンが即座に頷き、膝に乗せた頭を押しつけると、カレンはその禿頭を撫でた。
プ洱もすぐに話題を変え、「怪しからん封印されていたのも無理ないわ。
白手套の連中は皆良い結末を迎えないものよ。
使い捨てだからね」
ケビンが「フン」と鼻を鳴らしただけで反論しなかった。
「では、神葬墓園の具体的な場所はどこにあるのか?」
カレンが驚きを示す。
「貴方本当にその場所に行くつもりなのか? そこは非常に危険だ。
光の神様も三度訪れたし、秩序の神様は封印して放逐したんだよ」
カレンは首を横に振った。
「地図自体にも大きな価値がある」
「そうだねえ、貴方の隊長が相手を騙すようにね。
正確な場所があればより上手く騙せるでしょう」
「ワン、ワン。
」
「ラネダルは秩序の神に配置を施し、最終的に墓園は逆流の虚空中に封じられたが、彼には座標があった」
「逆流の座標?」
「ワン、ワン。
」
「ラネダルは当時意図的に残した伏線で、墓園にいくつか手段を残していた。
現在の座標を感知するためだ」
プ洱が鼻を膨らませ、「飼い犬ながらも伏線を張るなんて、貴方が死ぬまで生き延びられるわけがないわ」と言い放った。
「……」ケビン。
カレンが口を開いた。
「ではその座標は現在感知できるのか?」
「ワン……」
「二重の封印を解かなければ配置できない」
「ハハッ。
待ってろよ、待ってろよ! 飼い犬の伏線がここにあるんだからね!」
「ワン。
」
「その座標は彼の気配だけに反応するもので他人には代行不可能だ」
「分かりました。
貴方の言う通り信じます。
ただ二重の封印を解くのは私の力量では難しく、実力だけでなく陣法の理解も必要だからね。
時期が来たらやろうよ。
現時点での墓園の位置は重要じゃないんだから」
ケビンがカレンを見上げてにっこりと笑った。
その無邪気な表情はカレンを信じていることを伝えようとしていた。
「ワン。
」
「彼の息子がそこに行けば目覚める……」アルフレッドが翻訳を中断し、ケビンを見つめた。
「貴方は越境したわ」
ケビンは即座に頭を下げ、吠えることをやめた。
「カレン、あの神葬墓園で何が起こったのか知ってるか?」
「ワン!ワン!ワン!」
「知らないわね。
外周の配置だけ見てたけど、深く入ってないの。
でも外周すらも墓園奥の方から咆哮を聞いたわ」
「ワン!ワン!」
「秩序神の本体は見たことないわ。
いつも意志で取引してたみたい」
プールが笑った。
「少なくとも今はカレンと会えるようになったんだね」
カレンはケビンの記憶窓に映っていたことを思い出した。
ラネダルが海神を殺す時、上には秩序王座が現れて抑止していたけど、秩序神そのものは見えなかった。
だからケビンは嘘ついてないわ
それもまた別の事実を証明してる。
自分が浄化の際に引き出した光と秩序の気配に、当時の犬は白沫を吐いたんだから。
つまり全盛期でもあっても、光神と秩序神の前ではどうしようもなく卑しい存在だったんだ
神にも階級があるわね
でもまあ、島一つで生まれた平凡な少年が「神」の域にまで上り詰めたラネダルは天の寵児だよ
カレンはこの話題を終わらせることにした。
そもそも神話を語るような出来事は彼らにはあまりにも遠いし、目の前の間接体験者があっても今は触れ合わない方がいい
「アルフレッド、棺桶の方はどうなった?」
「老サマンの棺はエレン荘園に運ばれていて、エレン荘園の人たちは演劇ホールと棺を模造する作業を始めているわ。
アンデルセン氏が保証してくれてるから完全に密着して進めるとのこと。
二つ目の棺桶ができたら私はエレン荘園へ行き、次の手順を始める」
「それは急がない方がいいよ。
レカル伯爵は自我封じ込め中だから私がいる前で目覚めさせた方がいい。
君が行くと何か不便があるかもしれない」
本当の理由はレカル伯爵が復活した瞬間から生きてる時間が長くなればなるほど霊性力を失うからだ
「お主は考慮が行き届いてるわね。
暗月島から帰ってきたら私達でエレン荘園へ行くことになるでしょう。
その頃には十一口の棺桶と演劇ホールの結界が完全に準備されているはずよ」
プールはため息をついた。
「これは恋人に会いに行って、正室を慰めるようなものね」
「アルフレッド、荷造りをして。
そして贈り物も用意して。
もし機会があれば秩序神教の人たちだけじゃなくて暗月島の連中だけ前でベルナへ花を捧げたいわ。
ポール・エレン家の末裔としてね」
「ニャー!!!」
……
朝、カレンは食事を済ませて図書室に向かった。
前の所有者から受け継いだ蔵書は多いが、数そのものが凄まじいわけではなく、面白い本が多いのが特徴だった
庭を通る時、デサンがドーラとドリンを連れて花壇の前で絵を描いているところを見た。
カレンは特に止まるつもりではなかった。
自分が家にいる特殊な立場だから、少しでも長く滞留すると二人の少女と家庭教師が近づいてきて挨拶するから
フロントホールから駆け寄ってきたディンコムがカルンを止めた。
「社長、ピック、彼は……」
「ピックはどうしたんだ?」
「神示の前触れらしい」
パヴァローロ葬儀社の二名の神官補は資質が平凡で、それなりに優れた者ならこの判所に配属されるはずがない。
これはパヴァローロ氏への不敬ではなく事実だった。
進路を考えて若い者は常に最下位判官の直属部下として働くことになり、昇進する余地もなかった。
さらにパヴァローロ氏は家庭の事情で自分の二人の仲間を指導する余裕もなく、彼らが今でも神官補であるのはそのためだ。
しかしカルンが葬儀社のトップになったことで状況は変わった。
カルンはディンコムとフロントホールへ向かい、ピックがコーラを持ちながら自分だけゆっくり円を描いていた。
「ピッ……」
カルンはディンコムの呼びかけを遮り、自分で近づいた。
ピックはカルンを見つめ笑みを浮かべた。
手に持っているのはコーラだが酔ったように見えた:
「社長……おはようございます……」
「私の書斎へ来て」
「私が書斎に行けば行くが、私は面子など要らないんだよ」
ピックは片手でコーラを振りながら笑い声を上げた。
カルンの眉がわずかに寄った。
他の神示前の人間がこんな酔っ払い状態になるのか?
自分は階段に座ってから突然神示が始まったが、その経験は他人には当てはまらないと知っていた。
カルンの顔が曇った:
「私の書斎へ来い。
今すぐ」
「行くなら行くさ、どうしてそんなに厳しいんだよ、私は怖いんだぜ」
「酔っている」状態でも普段からカルンへの畏れは明確だった。
ピックはコーラのボトルを震わせながらカルンの書斎へ向かい、ディンコムが近づくとすぐに支えに行った。
アルフレッドもやってきてピックを見つめ、何かが起こったことを直感し、戴珊先生に二人の少女たちを部屋に戻すよう促した。
戴珊は理由を尋ねずにすぐドーラとドリンを絵具を片付けて部屋へ戻らせた。
「お嬢様、書斎でいいんですか?」
アルフレッドが訊いた。
「うん」
「準備が必要ですか?」
「いいや、ただの神示だ」
カルンが書斎に入るとピックは椅子に座り、コーラを口に運んで一気に飲み干し、袖で口を拭きながらため息をついて叫んだ:
「私の人生ってこんなにも苦しいんだよ!」
カルンは机の後ろに腰を下ろし、アルフレッドが氷水を運んできた。
ディンコムが書斎を出ようとしたときカルンが彼を見やるとアルフレッドはディンコムを引き止め、一緒に「観察」するように促した。
するとドアが開きプールがケビンを乗せて入ってきた。
神示など見物に値しないはずだが、カルンの前での神示には明らかに興味があった。
カルンはカップを手に取り水を飲んだ。
椅子に座ったピックは酔いの余韻でふらふらと体を揺すっていたが、やがて静かになり、眠りにつくように沈黙した。
始まりだ。
カレンは椅子に背もたれに凭れ、腕組みをしてピックを見つめていた。
三分ほど経った頃、ピックの身体がぴたりと固まった。
その瞬間、彼の気配が完全に消えた。
同時にカレンは顔を上げ、書斎の天井を見やった。
そこには誰かが自分を観察していると感じた。
それがピックだと直感した。
神啓の時、ほんの一瞬だけ「観察」がある。
それは神が世界を再認識し、観察する力を与える時間だ。
カレンはピックの前に座りながら、同時に彼の上司でもある。
だからピックの観察対象は自分自身だった。
その感覚は突然現れ、また突然消えた。
通常、この「観察時間」が長いほど、その後の成長も大きく、その人の資質も高いとされる。
カレンは当時、その時間が非常に長かったためベッドマンに驚かせたことがある。
しかしピックの場合はあまりにも短い。
これで終わりなのか?
カレンは反射的に手を伸ばしたが、どう助ければいいのか分からないし、神啓の段階で外力を使うという話を聞いたこともなかった。
だがピックは自分の仲間であり、いずれも自分に従う部下になるはずだ。
仲間ならできるだけ助けてやるのも当然のことだった。
カレンの足元から黒い鎖が現れ、書机を這い上がり、斜め前方へと伸びた。
空中で二つに分かれた一本は虚ろに絡み合い、もう一本は椅子に座ったピックの身体を包んだ。
終了寸前だった「観察」時間が止まった。
まるで上から落ちるドアがカレンによって無理やり支えられたようだ。
カレン自身も鎖を維持するのに苦労していたが、まだ耐えられる程度ではあった。
ディクムはその光景に驚きの目を見開いた。
神啓がこんな形になるとは知らなかったのだ。
隣でアルフレッドが囁く。
「貴方のような才能を持つ者が当主の下で働けるのは一生の幸運です。
それを大切にしなさい」
「はい、分かりました」ディクムは即座に頷いた。
「あなたはピックより頭が良いでしょうが、彼の方が早く神啓しました。
時にはちょっとした優秀さが災いになることもあるのですよ」
「アルフレッド様、どうすればいいでしょうか?」
「信仰を築け」
「秩序の神への……」
「運命を変えるのは、運命を変えようとしているもの、既に変えたものではなく、遠くにある秩序の神ではない」
「……」
ピクが書机の向こう側に座るカルンを見やった。
「誤解しないように。
信仰を改めさせようとは言っているのではない。
むしろ、彼とその確信をより明確に見せ、固めるようにと言っているのだ」
「はい、分かりました」
「本当に理解していることを願っている」
ポウルとケビンもこの情景について会話していたが、彼らのやり取りは簡潔すぎる:
「ニャー」
「ワン」
「ニャー」
「ワン」
鈍痛感が増すにつれ、カルンも既に長時間支えていたので、解放してもいい頃合いだと判断した。
鎖を緩めるよう指示すると、
一瞬の間、カルンだけが感知できる「ピク」が身体に戻されたが、もう一本の鎖はピクの体に引き続き縛り付けられていた。
カルンが受け取った意識との共鳴を感じ取り、前へ進むだけで何らかのものを視認できることを悟ると、躊躇なく行動を選んだ。
外側ではカルンは椅子に座っているが、彼の視界には農場の上空に自分が存在していることが映っていた。
下方の畑で少年が麦畑に寝そべり、無邪気に笑みを浮かべている。
これが幼少期のピクだ。
首には黒い雷模様のアクセサリーが嵌められたネックレスが垂れ下がっている。
安物のプラスチック製で聖器とは程遠く、貧相な存在だった。
カルンはそのピクが自分を凝視していることに気づいた。
あるいは、自分の背後に向けて見ているのかもしれない。
カルンが振り返ると、空に輝く太陽の上部が黒く沈んでいた。
これは論理的に矛盾する光景だが、抽象的で不合理な描写だった。
多くの信者が頂上の太陽を崇拝する存在として神様と結びつけるからこそ成立するようなものだ。
未知でありながらも懐かしい声がカルンの脳裡に響く。
「秩序は私が定めたもの、そしてあなたはそれを守るべきだ」
これはカルンが最初に受け取った神示だった。
当時は否定したが、神様からの啓示はその人物の未来を測る簡易テストのようなもので、ある意味では初期評価と呼べるものだった。
ピクへの神示はカルンが先に奪い取り、『秩序の規範に従え』という内容だった。
カルンの「制定者」という言葉と対照的に、ピクは「遵守者」であることが明確に分かっていた。
神様は個人的な好みではなく機械的に信徒の全ての願いを返す存在だ。
感情を持たない無機質な存在として機能する。
カルンが俯きながら下方で寝そべるピクを見下ろし、尋ねた。
「あなたは私について知っているか?」
ピクが答えた。
「至高無上の秩序の神、私の信仰!」
「あなたは私について知っているか?」
「全てを洞察する秩序の神、秩序の支配者!」
カレンはアルフレッドと自分たちが以前に共に考えた計画が失敗するのを悟っていた。
彼はその過程で多くのことを成し遂げることができたものの、最後の一環に真っ直ぐ参加することはできなかった。
その一環の認知が失敗すれば、自分がこれまで行ってきたすべてのことは、単なる皮クの将来発展資質向上への援助に過ぎないことに気づかざるを得なかった。
しかしカレンはその一環の成功要因を理解し、成功率を高めるためには、ある人間が浄化される前にずっと彼に影響を与え続け、指導し、神僕から神啓へと段階的に導くことが最善だと悟った。
そうすれば成功率は劇的に向上する。
根本的にはこれは競争である。
秩序の規則は常に存在し、無数の信者がその道を進むように誘っている。
秩序の神は神啓過程で「欺瞞」を行っていたが、カレンの神啓プロセスではその欺瞞から外れ、彼が現在試みているのは同じ分岐点で目の前の人物を自分の側に引きつけることだった。
つまりカレンは秩序の神と競争しているのである。
皮クはカレンが最初に導こうとした人物だが、結果的には失敗する運命だった。
しかしカレンは最後の試みを決意した。
彼は口を開いた:
「あなたは私について知っているか?
来月から給料を五倍にするぞ!」
「偉大な秩序の……偉大なボス様!」
「ワン、ワン。
」
アルフレッドは翻訳した。
「ラネダルは秩序の神と取引をし、彼が何かする度に報酬を得る関係だ。
」
プ洱が尋ねた。
「貴方なら秩序の神の要求を拒否することはあるか?」
「ワン。
」
「通常はしないだろう。
」
プ洱が目を瞬かせ、「貴方が秩序の神の飼い犬と何ら変わらないじゃないか」と言い放った。
「……」ケビン。
沈黙したのはケビンだけではなかった。
場にいる全員、そしてプ洱自身もその言葉を口に出した直後、無意識にカレンの方を見やっていた。
寝室は突然静まり返った。
しかしカレンが先制で切り出した。
「あの時代、秩序の神の前では誰でも犬のようなものだ」
ケビンが即座に頷き、膝に乗せた頭を押しつけると、カレンはその禿頭を撫でた。
プ洱もすぐに話題を変え、「怪しからん封印されていたのも無理ないわ。
白手套の連中は皆良い結末を迎えないものよ。
使い捨てだからね」
ケビンが「フン」と鼻を鳴らしただけで反論しなかった。
「では、神葬墓園の具体的な場所はどこにあるのか?」
カレンが驚きを示す。
「貴方本当にその場所に行くつもりなのか? そこは非常に危険だ。
光の神様も三度訪れたし、秩序の神様は封印して放逐したんだよ」
カレンは首を横に振った。
「地図自体にも大きな価値がある」
「そうだねえ、貴方の隊長が相手を騙すようにね。
正確な場所があればより上手く騙せるでしょう」
「ワン、ワン。
」
「ラネダルは秩序の神に配置を施し、最終的に墓園は逆流の虚空中に封じられたが、彼には座標があった」
「逆流の座標?」
「ワン、ワン。
」
「ラネダルは当時意図的に残した伏線で、墓園にいくつか手段を残していた。
現在の座標を感知するためだ」
プ洱が鼻を膨らませ、「飼い犬ながらも伏線を張るなんて、貴方が死ぬまで生き延びられるわけがないわ」と言い放った。
「……」ケビン。
カレンが口を開いた。
「ではその座標は現在感知できるのか?」
「ワン……」
「二重の封印を解かなければ配置できない」
「ハハッ。
待ってろよ、待ってろよ! 飼い犬の伏線がここにあるんだからね!」
「ワン。
」
「その座標は彼の気配だけに反応するもので他人には代行不可能だ」
「分かりました。
貴方の言う通り信じます。
ただ二重の封印を解くのは私の力量では難しく、実力だけでなく陣法の理解も必要だからね。
時期が来たらやろうよ。
現時点での墓園の位置は重要じゃないんだから」
ケビンがカレンを見上げてにっこりと笑った。
その無邪気な表情はカレンを信じていることを伝えようとしていた。
「ワン。
」
「彼の息子がそこに行けば目覚める……」アルフレッドが翻訳を中断し、ケビンを見つめた。
「貴方は越境したわ」
ケビンは即座に頭を下げ、吠えることをやめた。
「カレン、あの神葬墓園で何が起こったのか知ってるか?」
「ワン!ワン!ワン!」
「知らないわね。
外周の配置だけ見てたけど、深く入ってないの。
でも外周すらも墓園奥の方から咆哮を聞いたわ」
「ワン!ワン!」
「秩序神の本体は見たことないわ。
いつも意志で取引してたみたい」
プールが笑った。
「少なくとも今はカレンと会えるようになったんだね」
カレンはケビンの記憶窓に映っていたことを思い出した。
ラネダルが海神を殺す時、上には秩序王座が現れて抑止していたけど、秩序神そのものは見えなかった。
だからケビンは嘘ついてないわ
それもまた別の事実を証明してる。
自分が浄化の際に引き出した光と秩序の気配に、当時の犬は白沫を吐いたんだから。
つまり全盛期でもあっても、光神と秩序神の前ではどうしようもなく卑しい存在だったんだ
神にも階級があるわね
でもまあ、島一つで生まれた平凡な少年が「神」の域にまで上り詰めたラネダルは天の寵児だよ
カレンはこの話題を終わらせることにした。
そもそも神話を語るような出来事は彼らにはあまりにも遠いし、目の前の間接体験者があっても今は触れ合わない方がいい
「アルフレッド、棺桶の方はどうなった?」
「老サマンの棺はエレン荘園に運ばれていて、エレン荘園の人たちは演劇ホールと棺を模造する作業を始めているわ。
アンデルセン氏が保証してくれてるから完全に密着して進めるとのこと。
二つ目の棺桶ができたら私はエレン荘園へ行き、次の手順を始める」
「それは急がない方がいいよ。
レカル伯爵は自我封じ込め中だから私がいる前で目覚めさせた方がいい。
君が行くと何か不便があるかもしれない」
本当の理由はレカル伯爵が復活した瞬間から生きてる時間が長くなればなるほど霊性力を失うからだ
「お主は考慮が行き届いてるわね。
暗月島から帰ってきたら私達でエレン荘園へ行くことになるでしょう。
その頃には十一口の棺桶と演劇ホールの結界が完全に準備されているはずよ」
プールはため息をついた。
「これは恋人に会いに行って、正室を慰めるようなものね」
「アルフレッド、荷造りをして。
そして贈り物も用意して。
もし機会があれば秩序神教の人たちだけじゃなくて暗月島の連中だけ前でベルナへ花を捧げたいわ。
ポール・エレン家の末裔としてね」
「ニャー!!!」
……
朝、カレンは食事を済ませて図書室に向かった。
前の所有者から受け継いだ蔵書は多いが、数そのものが凄まじいわけではなく、面白い本が多いのが特徴だった
庭を通る時、デサンがドーラとドリンを連れて花壇の前で絵を描いているところを見た。
カレンは特に止まるつもりではなかった。
自分が家にいる特殊な立場だから、少しでも長く滞留すると二人の少女と家庭教師が近づいてきて挨拶するから
フロントホールから駆け寄ってきたディンコムがカルンを止めた。
「社長、ピック、彼は……」
「ピックはどうしたんだ?」
「神示の前触れらしい」
パヴァローロ葬儀社の二名の神官補は資質が平凡で、それなりに優れた者ならこの判所に配属されるはずがない。
これはパヴァローロ氏への不敬ではなく事実だった。
進路を考えて若い者は常に最下位判官の直属部下として働くことになり、昇進する余地もなかった。
さらにパヴァローロ氏は家庭の事情で自分の二人の仲間を指導する余裕もなく、彼らが今でも神官補であるのはそのためだ。
しかしカルンが葬儀社のトップになったことで状況は変わった。
カルンはディンコムとフロントホールへ向かい、ピックがコーラを持ちながら自分だけゆっくり円を描いていた。
「ピッ……」
カルンはディンコムの呼びかけを遮り、自分で近づいた。
ピックはカルンを見つめ笑みを浮かべた。
手に持っているのはコーラだが酔ったように見えた:
「社長……おはようございます……」
「私の書斎へ来て」
「私が書斎に行けば行くが、私は面子など要らないんだよ」
ピックは片手でコーラを振りながら笑い声を上げた。
カルンの眉がわずかに寄った。
他の神示前の人間がこんな酔っ払い状態になるのか?
自分は階段に座ってから突然神示が始まったが、その経験は他人には当てはまらないと知っていた。
カルンの顔が曇った:
「私の書斎へ来い。
今すぐ」
「行くなら行くさ、どうしてそんなに厳しいんだよ、私は怖いんだぜ」
「酔っている」状態でも普段からカルンへの畏れは明確だった。
ピックはコーラのボトルを震わせながらカルンの書斎へ向かい、ディンコムが近づくとすぐに支えに行った。
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「うん」
「準備が必要ですか?」
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ディンコムが書斎を出ようとしたときカルンが彼を見やるとアルフレッドはディンコムを引き止め、一緒に「観察」するように促した。
するとドアが開きプールがケビンを乗せて入ってきた。
神示など見物に値しないはずだが、カルンの前での神示には明らかに興味があった。
カルンはカップを手に取り水を飲んだ。
椅子に座ったピックは酔いの余韻でふらふらと体を揺すっていたが、やがて静かになり、眠りにつくように沈黙した。
始まりだ。
カレンは椅子に背もたれに凭れ、腕組みをしてピックを見つめていた。
三分ほど経った頃、ピックの身体がぴたりと固まった。
その瞬間、彼の気配が完全に消えた。
同時にカレンは顔を上げ、書斎の天井を見やった。
そこには誰かが自分を観察していると感じた。
それがピックだと直感した。
神啓の時、ほんの一瞬だけ「観察」がある。
それは神が世界を再認識し、観察する力を与える時間だ。
カレンはピックの前に座りながら、同時に彼の上司でもある。
だからピックの観察対象は自分自身だった。
その感覚は突然現れ、また突然消えた。
通常、この「観察時間」が長いほど、その後の成長も大きく、その人の資質も高いとされる。
カレンは当時、その時間が非常に長かったためベッドマンに驚かせたことがある。
しかしピックの場合はあまりにも短い。
これで終わりなのか?
カレンは反射的に手を伸ばしたが、どう助ければいいのか分からないし、神啓の段階で外力を使うという話を聞いたこともなかった。
だがピックは自分の仲間であり、いずれも自分に従う部下になるはずだ。
仲間ならできるだけ助けてやるのも当然のことだった。
カレンの足元から黒い鎖が現れ、書机を這い上がり、斜め前方へと伸びた。
空中で二つに分かれた一本は虚ろに絡み合い、もう一本は椅子に座ったピックの身体を包んだ。
終了寸前だった「観察」時間が止まった。
まるで上から落ちるドアがカレンによって無理やり支えられたようだ。
カレン自身も鎖を維持するのに苦労していたが、まだ耐えられる程度ではあった。
ディクムはその光景に驚きの目を見開いた。
神啓がこんな形になるとは知らなかったのだ。
隣でアルフレッドが囁く。
「貴方のような才能を持つ者が当主の下で働けるのは一生の幸運です。
それを大切にしなさい」
「はい、分かりました」ディクムは即座に頷いた。
「あなたはピックより頭が良いでしょうが、彼の方が早く神啓しました。
時にはちょっとした優秀さが災いになることもあるのですよ」
「アルフレッド様、どうすればいいでしょうか?」
「信仰を築け」
「秩序の神への……」
「運命を変えるのは、運命を変えようとしているもの、既に変えたものではなく、遠くにある秩序の神ではない」
「……」
ピクが書机の向こう側に座るカルンを見やった。
「誤解しないように。
信仰を改めさせようとは言っているのではない。
むしろ、彼とその確信をより明確に見せ、固めるようにと言っているのだ」
「はい、分かりました」
「本当に理解していることを願っている」
ポウルとケビンもこの情景について会話していたが、彼らのやり取りは簡潔すぎる:
「ニャー」
「ワン」
「ニャー」
「ワン」
鈍痛感が増すにつれ、カルンも既に長時間支えていたので、解放してもいい頃合いだと判断した。
鎖を緩めるよう指示すると、
一瞬の間、カルンだけが感知できる「ピク」が身体に戻されたが、もう一本の鎖はピクの体に引き続き縛り付けられていた。
カルンが受け取った意識との共鳴を感じ取り、前へ進むだけで何らかのものを視認できることを悟ると、躊躇なく行動を選んだ。
外側ではカルンは椅子に座っているが、彼の視界には農場の上空に自分が存在していることが映っていた。
下方の畑で少年が麦畑に寝そべり、無邪気に笑みを浮かべている。
これが幼少期のピクだ。
首には黒い雷模様のアクセサリーが嵌められたネックレスが垂れ下がっている。
安物のプラスチック製で聖器とは程遠く、貧相な存在だった。
カルンはそのピクが自分を凝視していることに気づいた。
あるいは、自分の背後に向けて見ているのかもしれない。
カルンが振り返ると、空に輝く太陽の上部が黒く沈んでいた。
これは論理的に矛盾する光景だが、抽象的で不合理な描写だった。
多くの信者が頂上の太陽を崇拝する存在として神様と結びつけるからこそ成立するようなものだ。
未知でありながらも懐かしい声がカルンの脳裡に響く。
「秩序は私が定めたもの、そしてあなたはそれを守るべきだ」
これはカルンが最初に受け取った神示だった。
当時は否定したが、神様からの啓示はその人物の未来を測る簡易テストのようなもので、ある意味では初期評価と呼べるものだった。
ピクへの神示はカルンが先に奪い取り、『秩序の規範に従え』という内容だった。
カルンの「制定者」という言葉と対照的に、ピクは「遵守者」であることが明確に分かっていた。
神様は個人的な好みではなく機械的に信徒の全ての願いを返す存在だ。
感情を持たない無機質な存在として機能する。
カルンが俯きながら下方で寝そべるピクを見下ろし、尋ねた。
「あなたは私について知っているか?」
ピクが答えた。
「至高無上の秩序の神、私の信仰!」
「あなたは私について知っているか?」
「全てを洞察する秩序の神、秩序の支配者!」
カレンはアルフレッドと自分たちが以前に共に考えた計画が失敗するのを悟っていた。
彼はその過程で多くのことを成し遂げることができたものの、最後の一環に真っ直ぐ参加することはできなかった。
その一環の認知が失敗すれば、自分がこれまで行ってきたすべてのことは、単なる皮クの将来発展資質向上への援助に過ぎないことに気づかざるを得なかった。
しかしカレンはその一環の成功要因を理解し、成功率を高めるためには、ある人間が浄化される前にずっと彼に影響を与え続け、指導し、神僕から神啓へと段階的に導くことが最善だと悟った。
そうすれば成功率は劇的に向上する。
根本的にはこれは競争である。
秩序の規則は常に存在し、無数の信者がその道を進むように誘っている。
秩序の神は神啓過程で「欺瞞」を行っていたが、カレンの神啓プロセスではその欺瞞から外れ、彼が現在試みているのは同じ分岐点で目の前の人物を自分の側に引きつけることだった。
つまりカレンは秩序の神と競争しているのである。
皮クはカレンが最初に導こうとした人物だが、結果的には失敗する運命だった。
しかしカレンは最後の試みを決意した。
彼は口を開いた:
「あなたは私について知っているか?
来月から給料を五倍にするぞ!」
「偉大な秩序の……偉大なボス様!」
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「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
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