明ンク街13番地

きりしま つかさ

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第0249話「カレン、神となる?」

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成功した!

カルンが麦畑に横たわる少年ピックを見つめながら口を開いた。

「秩序の法則を守れ」

「はい、主人」

次の瞬間、カルンは目を開け、疲れの色は一切なく異様な輝きを放っていた。

彼がずっと実践で確かめてきたのは、秩序と秩序神との関係だ。

自分自身がその道を歩んだ後、今回は別の対象で再び挑戦したのだ。

つまり秩序とは秩序であり、秩序神はただ秩序神という存在なのだ。

この道は誰にでも開かれているが、秩序神が早くから独占していた。

しかし今は自分が参加できるようになった。

自分が導いたピックと、秩序信者の大海を比べれば微々たるものだが、これが始まりだ。

最も難しいのは零から一歩目を踏み出すことだったが、その壁は突破した。

カルンが追い求めている風景、彼が見たい景色であり、ディスが託した希望そのものだった。

カルンは確信していた。

いずれ帰宅し、旅の収穫と悟りを家で料理しながらディスを起こし、祖孫ふたりで食事をしながらこの道での出来事を語る日が来るだろう。

ピックも目を開けた。

彼はカルンを見つめながら胸に手を当てた。

「秩序を賛美せよ、主人を賛美せよ」

カルンも胸に手を当てて言った。

「偉大なる秩序神を賛美する」

これは洗脳とは異なる。

カルンがピックの認識を変えたのではない。

彼はそもそも秩序を信奉していたし、ピックにとって秩序とは秩序神そのものだった。

区別する概念すらなかったのだ。

しかし今はその概念を持ち始めた。

硬い例えならカルンが秩序神教団に新たな派閥を作り、信仰は同じだが教義に新しい解釈と説明を加えたことになる。

ディンコムは何か違和感を感じていたが具体的には言い表せなかった。

アルフレッドは肘でディンコムの腕を軽く叩いた。

「ここから差が開いていくんだ」

その言葉を聞いた瞬間、ディンコムの心に巨大な危機感が湧き上がった。

皮肉にも以前自分が『頭が悪い』と思っていたピックが自分より遥かに先を行く姿を想像したのだ。

「神啓を終えたばかりだ。

アルフレッドはこの段階で試せる術法を準備するから、分からないことがあれば彼に聞くといい」

「はい、主人」

ピックは立ち上がり、アルフレッドに礼を述べた。

再び丁科ムを見つめるとき、彼の顔には変わらず厚かましい笑みがあった。

「次はお前だ、ディンコム」

「うん……」とディンコムが頷いた。

ピックが神啓した後、その気質が明らかに変わったことを感じていたのだ。

最後に家を出る前に、ピックは再びカルンを見つめた。

「あの、主人……」

「アルフレッド、来月からピックの給料を五倍にする」

**(ここに補完が必要な部分)**

フ  ピックの基本給は月額一〇〇順序券で、これは秩序神教が支払っていた。

カルンが葬儀社の社長になった後、ピックとディコンムは毎月三〇〇順序券のボーナスを得られるようになった。

さらに深夜勤務時の特別手当も付く。

五〇〇+三〇〇+一〇〇=九〇〇順序券だ。

最下位判官の手当は月額一〇〇〇順序券程度だった。

「よろしくお願いします、ご主人様」

「ありがとうございます、ご主人様、がんばります!」

「わかった」

ピックとディコンムが出て行った後、プールが尋ねた。

「成功した?」

「はい、成功しました」

「つまり、現在のピックは厳密に言えば誰の信者ですか?」

「秩序の信者です」

「でも、秩序神ではなくてですね?」

「ええ」

「本当に……すごいことだわ」プールが目を丸くした。

「ワン!」

カルンがアルフレッドを見やると、彼は翻訳した。

「ただ『ワン』と鳴いただけです」

「ふふふ」

カルンが微笑んで首を横に振り、椅子から立ち上がった。

ついでに額に手を当てた。

プールがカルンを見て尋ねた。

「疲れた?」

「少しは」

「じゃあ次からはピックみたいなのは選びませんよ。

一つ成功すればそれでいいんです。

これからはもっと高級な人材を探しましょう」

「それは無理です。

神の啓示前の周囲の人間しか効果が出ないからです。

知らない人々には、私と秩序神の前で必ず秩序神を選ぶでしょう」

プールが言った。

「これってコストパフォーマンスが悪いわね。

難しくてどうするの? あーそれじゃ孤児院を建てて小さい頃から育てるしかないのかな?」

アルフレッドが口を開いた。

「もしかしたら、これが宣教の代償なのかもしれません。

新しい教会が最初に直面するのはこういう問題です。

基礎規模ができてからは順調になるし、雪だるまのように広がります。

ご主人様はご安心ください。

ご主人様の思想を広めるのは私の務めです。

条件が整えば孤児院を開設することもできます」

プールがアルフレッドを見やると、「ラジオ妖精よ、君は単純すぎない? あなたが宣教したいと言ったって、それだけではできないんだわ」

アルフレッドが微笑んで言った。

「我々は秩序を信仰しているんです」

「あーそうね。

それでいいわね。

カレンはたまに顔を見せればいいのよ。

あーもう本当に面倒くさいわ、家族信頼体系の方が簡単だわ。

ただ子供を産み続けるだけだから」

「ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!」

ケビンが珍しく連続して「ワン」を叫んだ。

アルフレッドとプールの顔に驚愕の表情が浮かんだ。

翻訳を待っていたカルンは注意を向け、「ただ『ワン』ですよ?」

と尋ねた。



アルフレッドが口を開いた。

「ケンの考えは、諸神の再来という噂は流布しているものの、その再臨が可能かどうかは未確定だ。

もし再臨するとしても長い年月を要するかもしれない。

その前提で言えば、状況は単純化できる。

つまり貴方が大祭司に昇進し、功績と実績で秩序神教における地位と影響力を確立し、自身を『秩序の神』との存在と結びつけることだ。

教会が神話を改変する際にやるように、自身を『秩序の神子』、『人間化した秩序の神』、『秩序の神の代言人』として定義する。

そうすれば、今後神啓段階を迎える神官たちが大量に貴方のもとに集まるだろう。

百年、二百年経て老朽化した者たちがいなくなったとき、実質的に秩序神教は……入れ替わっていることになる」

「ケン」の提案を聞いたカルンも唇を噛みしめた。

なぜなら彼も震撼していたからだ。

おそらくこれが邪神の視点と規模感なのだろう。

自分たちが『孤児院』から始めようとしている頃、邪神は頂点から下からの「血統更新」を考えていたのだ。

貴方が秩序の神の家を盗むように。

もし本当にその通りなら、数百年後諸神が目覚め秩序の神が帰還したとき、当時の秩序神教を見たとき彼はどう思うだろうか?

「ワン!ワン!」

ポールが訳す。

「愚かな犬、この計画が成功すれば『秩序の神』は本当に『秩序の神』でいられるのか?」

「ワン!ワン!」

アルフレッドが訳す。

「光の神の失踪により光の神教が滅びたように、神々の存在は教会の存続に影響を与える。

しかしその影響は相互である。

教会の存在も必然的に神の基盤を左右する」

ポールは机に座りカルンを見上げ、「そうすると『真の秩序の神』は偽物になり、貴方は……」

「貴方が『真の秩序の神』になる」

ケンが続けた。

「ワン!ワン!ワン!」

カルンはポールとアルフレッドの翻訳を止めるために手を上げ、「ケンが先ほど言ったように、その時になって秩序の神に『邪神である』という判定を与えることは可能なのか?」

「はい、貴方様」

ケンは尻尾を振り回し狂喜状態だった。

なぜならこの構想が自身を『秩序によって判定された邪神』とするからだ。

カルンはテーブルの上に残った氷の入った水を口に含んだ。

「ふん」

カルンは笑いながら手を振って言った。

「まだ昼寝時間ではないのに、もう夢想しているのか。

ふん」

「ふん」

「ふんニャー」

「ワン」

一同が笑った。

カルンの顔は平静を取り戻し、「でも問題は、この夢のような計画を進めることで貴方と秩序の神に何の違いがあるかだ」

ケンは犬頭を掻きながら苦しげな表情を見せた。

ポールは口を開いた。

「その質問には答えられない……」

アルフレッドは畏敬の表情を浮かべた。

「それこそが主人と神々の違いです。

私は主人が神々とは異なる道を歩むことを確信しています。

あの曲に感じさせるようなものです」

「どの曲ですか?」

ポールが尋ねる。

「私の征服したその曲、今でも歌詞は理解できませんが、その内面と力を感じることができます」

「お疲れ様です。

まずは湯船に入って休んでください。

昼食の時間には起こさないでください。

あとはアルフレッドに電話を注意してもらいましょう。

任務はいつ始まるかもしれません」

「はい、主人」

カルンが洗面所に入り、湯船に浸かった。

精神と肉体の痛みが湯船の中で徐々に緩和されていく。

彼はその疲れを消化しようとしていた。

気がつけば二時間近く経過し、カルンは十分だと思った頃、湯船から上がり、拭いてからパジャマに着替えベッドに入った。

ポールが寝室に入るとまず洗面所に行って戻ってきてカルンに言った。

「あの、ドーラとドリンを呼び出して主人の湯船に入ってもらいたいんですが」

カルンが湯船に入る際には体内の光属性の力が自然と発散し湯船の温度を調整する。

光の力はネガティブな力の影響を解消する最良の方法だが、量が多すぎると「抹殺」となる。

お風呂の場合はちょうど良いのでドーラとドリンに適している。

「今ですか?」

カルンが眉をひそめる。

「うん、前回もやった時は効果が良かったんです。

新薬剤を塗布するのもあって長時間持続します。

病根はまだ治せませんが体質改善にはなります。

冷めたら光の力が失われてしまいます」

「分かりました」

ポールがベッドサイドテーブルに飛び乗りベルを鳴らすとすぐにシーリーが部屋に入りドアを開けて尋ねた。

「主人、何かご用ですか?」

ポールが叫んだ。

「ドーラとドリンを呼び出して湯船に入ってもらいたいの」

「主人の寝室の洗面所ですね?」

「はい、早く来てください。

待ってないわよ」

「分かりました」

主寝室のベッドにポールがカルンの胸の上に這い寄り言った。

「本当は毎日二人で主人と一つの布団に入るのがベストですよ」

カルンがポールの頭を軽く叩いた。

「痛いわ!私は嫌わないけどあなたが喜ぶならいいわよ!」

「貴族たちも体内に蓄積した力があれば、光を信仰する人々は湯船に温めを入れることなど贅沢なことではないのです」

シーリーが指示を受けドーラとドリンはすぐに身支度をして洗面所に向かった。

タオルや洗顔料だけでなく拭き取り用の雑巾も持ってきた。

これはカルンの湯船に入る初めてではなかった。

汚された経験をしたからこそ、他人が使ったお風呂に羞恥を感じることなどできなくなっていた。

カルンが美しくて礼儀正しかったからではなく、苦しみを味わったからこそ無駄な気持ちは捨て去ることができたのだ。

拭き取り用の雑巾は湯船から上がった後カルンの洗面所を清掃するためだった。



デイサン先生はその様子を見て眉をひそめた。

彼女が知っている限りでは、双子の姉妹ふたりがその男と一緒にお風呂に入ることに見えるのだ。

この家で教えるようになってからしばらく経っていたが、カルンとはあまり接点がなかったものの、ここは葬儀屋であることを考えれば、あの若い男が最上位の地位にあることは一目瞭然だった。

しかしもし本当にその通りなら、あまりにも滑稽だ。

「先生、先にいきます」

「先生、お休みなさい」

ドーラが姉妹ふたりの衣装ケースを持って、ドリンが拭き掃除用具を持ち、カルンの部屋へ向かっていった。

レック夫人は笑顔で近づいてきた。

デイサン先生の表情を見てすぐに誤解を悟り、慌てて説明した。

「ドーラとドリンは薬湯が必要です。

カルン様は薬浴の作り方が上手なんです」

「ああ、そうだったんですね」デイサン先生は即座に頷いた。

「カルン様の人柄は絶対に疑いようがありませんよ」

「ここではみんなカルン様を尊敬していますね。

ドーラとドリンも」

「はい、彼がなければ私は今どうなっていたか分かりません」

「カルン様にはお嫁さんですか?」

「先生、遅すぎました。

カルン様は婚約済みです」

「夫人、誤解しました」

「はい、はい、私の口ごもです。

私は昼食の準備に行きますので、ゆっくりしてください」

「分かりました」

レック夫人がキッチンへ向かう背中を見ながら、デイサン先生は目を瞬いた。

夫人が先ほど言った言葉を反芻していた——彼女がなければどうなっていたか。

その夫とは? あなたのご主人様はまだ生きていらっしやいますでしょう?

その言葉は、ご主人様が存命中の妻が言うようなものではない。

むしろ……。

カーランはベッドに寝そべり、ドーラとドリンがノックをした際にはプールが「入って」と声をかけた。

ドーラとドリンは普洱の会話に慣れていた。

父親は審判官だし、自分たちも汚染の苦しみを経験しているし、視野は広い。

さらに普洱が薬品を作ったり新しい薬を調合したりしてくれたこともあり、質問する際には病状や状況について尋ねる必要があった。

ベッドに座り新聞を手にしていたカーランはそれを置き、彼女たちに頷いた。

ドーラとドリンが同時にカーランに礼を述べ、声を合わせて言った。

「ありがとうございます、カルン様」

「どういたしまして」

二人の少女は洗面所に入りドアを閉めた。

姉のドーラはドアをロックするかどうか迷ったが、それはカルン様への不敬になるからと判断したのだ。

二人は荷物を下ろし服を脱ぎ、一緒に風呂に入った。

その瞬間から顔に安堵の表情が浮かんだ。

カーランは自分の主寝室の洗面所で二人の少女が入浴していることに気がついても、特に何も思わずにはいなかった。

二人とも清潔だったし、自分が下劣な考えを持てばそれこそ低俗だと思ったからだ。

普洱はカーランの胸に這いつくばり、「私はドアを開けてあげませんよ。

あなたが嫌いなのは痩せた子で、ふっくらしたのが好きだと知っています。

ほんとにお気に入りなんですね」と囁いた。



プウルはカルンが普洱茶を好むことを知っている。

おそらく自らを長老と見なすのにふさわしくない長老たちがこの手のジョークを好むのだ。

「そうだよ、私はちょっと太めのが好きだ。

例えば先日見た白いベッドに寝ていた」

「ユーニスか?彼女の部屋のベッドは白いはずだ」

「フードを被りブーツを履き脚が露になっていて頬がふとるような……」

「うん……」プウルが急に顔を上げ爪でカルンの口を塞ぐ。

「くそ、くそ!天も罰もない!私は太っていない!私はふとらしくない!」

カルンは優しくプウルの手を押しのけた。

「どうやら猫として過ごしすぎたようだ。

以前の自分を忘れてしまったようだ」

「まだ!まだ!」

その時アルフレードが部屋のドアを叩いた。

「おやじ、電話です。

任務通知。

二時間後にヴァニーさんが葬儀屋前で迎えに来ます」

「わかった」

カルンはベッドから起き上がった。

「暗月島へ行くんだ」

プウルはオフィーリア様の話題を避けつつカルンを見た。

「遠出するなら安全に気をつけろ」

「分かってる」

「この間家に帰りたいと思ったらアルフレードにエートンまで送ってもらうといい」

「いいや、ここで待つだけだ」

プウルは自分が言いすぎたと気づき急いで付け加えた。

「とにかく私は私のパペットの身体を待っている。

買い物に行かないと!」

「お楽しみに」

「そうだ、そのことだけは絶対忘れないように!必ずやるんだぞ!」

「くっ」

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