吸血鬼を刺殺した

きりしま つかさ

文字の大きさ
40 / 251
0000

第0040話 中年になっても名前もない配役者、可哀想だよ!

しおりを挟む
中年に至るも未だ名無き番人であることを嘆かわしいと云う。

男女が別れたとき、人類の少年は吸血鬼の貴族の娘に血を要求した。

その少女は迷うことなく与えた。

「これは普通の吸血鬼の血液ではない」

「貴族の吸血鬼の精髄だ」

「これにより人間は真の吸血鬼となり、しかも高位のものとなる」

「ただし代償として女貴族の力が急激に低下し、少なくとも数年間衰弱するだろう」

「高位の吸血鬼の精髄——」

「混血種の能力を開く鍵なのだ!!!」

 アヅキは叫んだ。

涙をこらえようとする。

涙が彼女の目尻で蠢く。

彼女はそのくらい頑固だった:

「その後、少年はその精髄を使い混血種の反乱組織を築いた——」

「それが我々——」

「しかしピエール・レドゥが裏切った後、彼女に関する情報は聞かなくなった」

「あの男が……」

「なぜやれ! 卑怯者め!」

 アヅキは歯噛みする。

「肩に預けてくれないか?」

小ル:「…………」

周元:「よし」

大叔は囁くように云う:「なぜわらわではないのだ」

次の瞬間、ふわりと柔らかな体が周元の肩に依りついた。

暗い涙をこぼす。

普段剛烈なアヅキにも脆い一面があったとは知らず——

周元は震える肩を撫でて慰め言葉をかける:

「大丈夫だよ」

「彼女を救い出すんだ——吸血鬼であろうと」

「ありがとう、周さん」

「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「イザベラ・カスティリャ女伯爵」

「オウ——すごい大名家系ね!」

小ルは感心するが実際には何の役職か知らない。

「帝国の伯爵は百名未満だ」

「男爵や騎士を統轄する地方行政官である」 大叔はまた知識を披露した。

「するとあの死んだ騎士カビンは彼女の手下かもしれない?」

大叔は自分の鋭さに自負を持つ。

「勝手なことを云うな——」 周元は呆れたように云う。

大叔は状況を見誤る人物だ。

「その領地は南方ではないわ」 アヅキが涙を拭いながら補足する。

イザベラこそ彼女にとって隊長との唯一の繋がりだった——

彼女は決して悪人ではなかった!

むしろ吸血鬼の中の善者だ!

恋愛のためか、人類への共感のためか——

イザベラは度々反乱事業を陰で支援していた——

直接隊長に会うことはできずいつもアヅキを通じて連絡してきた——

だからこそ彼女を救わねばならない!

周元がピエール・レドゥの実験日記を開き読み始める:

「母体となる吸血鬼の回復能力は非常に強い——」

「心臓を隔離封印して休眠させる必要がある」

「その場合——」

「逆手に取る——」

……

イザベラが現れた。

タオルで身を包み、金色の波浪のような髪が肩に垂れ、高貴でありながら優雅に——

浴室から出てきたような美しさだった。

長く囚われていたにもかかわらず暴れる様子もなく——

依然としてその気品は変わらなかった。

温かみのある宝石のように——

彼女にとっては長い生涯のうちの一瞬かもしれない——

数日間など些細なことだ。



彼女が一週間ぶりに視線を巡らせた先で、まず目にしたのはアヅキの姿だった。

胸が高鳴りながら呼びかけた。

「アヅキちゃん、おはようございます!」

イザベラの声はいつものように優しく温かかった。

アヅキは我慢できず叫んだ。

「ベラ姉ねえーっ!」

と抱きついた。

二人が抱き合っている間も、周元は無視され続けた。

彼は涙目になりながら抗議した。

「おはようございます、小洛ちゃん」

イザベラが指差す先で、アヅキが説明を始める。

「この方は週元さん。

ブリードル卿を倒し貴方を救った英雄です」

他の功績については触れず、彼女は礼儀正しく頭を下げた。

「週桑、お礼申し上げます」

次に小洛の紹介が問題になった。

アヅキは困惑して考えた。

『黒猫の飼い主』『戦力としての存在』『心のケアをする人』どれも適切でない。

彼女はため息をついた。

「咳、私の妹です」

イザベラが微笑みながら小洛に声をかけた。

「おはようございます、イザベラ姉ねえ」

周元の部下である大叔は不満顔だった。

「あーっ! おれもいるんだよ! おれも!」

彼は頬を赤らめながら自己主張した。

アヅキが冷ややかに付け足す。

「週桑の部下、銃撃戦しかできない無能な大叔です」

イザベラは優しく微笑んだ。

「英雄には仲間が必要ですからね」

大叔は憤慨しながら抗議する。

「貴方こそ酷い! おれも頑張ったんだよ!」

アヅキが視線を落とす中、彼女は告げた。

「ベラ姉ねえ、隊長は……」

「隊長は……戦死しました」

イザベラはため息をついた。

アヅキは驚いて尋ねる。

「貴方は悲しむべきでは?」

イザベラは穏やかに答えた。

「彼が選んだ道だから、愛も邪魔できないのよ」

「その運命は避けられない」

「私は反乱軍が必ず負けるとは言わないわ。

吸血鬼の寿命千年と人間百年を比べれば……」

「貴方の覚悟は変わらないわね」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...