吸血鬼を刺殺した

きりしま つかさ

文字の大きさ
128 / 251
0100

第0128話 これが南華共和軍?!

しおりを挟む
希望島特殊市の勝利記念広場で、先週元は北沙都督に任命された。

時間は一週間前に戻る——

周元一行が希望号を乗せ、希望島外海へ向かっていた時、

強力な希望島海警局の軍艦に遮断された。

海警官隊の兵士たちは北沙村民と周元を分けて拘束した。

現在、周元は取り調べを受けている最中だ。

中校の言葉には北沙への軽蔑と侮蔑が滲んでいた。

中校の言う「正義」に耳を傾けた瞬間、

周元の胸中に無名の怒りが湧き上がった!

自分は希望島を人類最後の砦と信じていた——

自分は希望島を人類最後の希望として受け止めている——

孟博士が『希望』を託し、自分に希望島へ向かわせた——

みんなが自分に希望を託し、希望島から希望をもたらす者として期待していた——

そして、苦労して辿り着いた——

『希望』を希望島に運んだ——

それが全て間違いだったのか?

周元は一瞬で自身の信念そのものを疑い始めた——

人生全体までが疑わしくなった。

まだ上陸前とはいえ、中校の表情だけから、

南華共和軍とはどのような組織か想像できた——

また、北沙島を吞み込みたいという意図も読み取れた——

周元の怒りはさらに増した——

北沙会社はどうなる!?

村民たちに約束した全てがどうなる!

彼は中校の首根元を掴んで叫んだ:

「彼らをどうするつもりだ!?」

「どうする?」

中校は領巾を引っ張られても構わず、

舌を出しながら反問した。

「ハハ、それは君次第だな」

その言外の意味は明らかだった。

周元はやっと手を離した——

自分が偏屈になったことに気付いたかもしれない——

そうすれば彼らの罠に嵌る可能性もある——

希望島には自分が求める『希望』があるはず——

『希望』は人類に希望を与える者に託すべきだ——

だが、今はこの連中には渡せない!

周元はようやく冷静になった。

「どうやら悟りを開いたようだな、喜ばしいことだ」

「貴方の組織での地位は?」

「貴方が一人で北沙を占領できるはずもないだろう」

「貴方が北沙を占領する目的とは?」

周元は即座に答えなかった。

彼の胸中では冷やかに笑いが湧いていた——

やはり——

彼らは全く状況を理解していないのか!

大叔と阿梓の隠蔽工作が成功していたのか!

自分も確かに偏屈だった。

沈黙こそが武器だ。

中校はさらに多くの北沙村民を取り調べていた——

彼等は周元、大叔、そして一人の少女を指摘した——

大叔と少女は小物で何も知り得ない——

ただこの周元だけが——

また別の村民は周元を「陸地の反対側に最近名を馳せた——」

『拂晓神剣』だと主張していた——

馬鹿げた!『拂晓神剣』とは吸血鬼の軍団の中で吸血鬼騎士を斃えた強大な存在だ!

どうして彼らがそれを知っているのか!

北沙村民だけがそのような馬鹿根性を持っているのか!

周元は依然として黙っていた。

中校は怒り、今度は周元の領巾を引っ張って脅かした:

「早く言いなさい!」

「現実的な幻想は捨ててください」

「軍艦が北沙へ向かっていますよ」

「あはは、陸揚げまで時間かかりません」

「全員を捕まえろ。

誰も助けてくれないぞ」

「告白しろ」

周元:「……」

一方、12隻の大型軍艦からなる艦隊が南に進んでいた。

船には青地金海鷗の旗が掲げられていた——

それが南華共和軍海警の軍旗だった。

その中で特に巨大な軍艦があった。

長・幅・高さ全て他の軍艦より一回り大きいだけでなく、大砲の数も異なり、他船は双連装2基だが、こちらは三連装3基を備えていた。

さらに艦首に筒状の物体が取り付けられていた——大型武器のような形状だった。

これが艦隊の旗艦だ。

海警(かいえん)という名前は滑稽だが、

その規模と迫力を見れば笑えない。

現在、旗艦最上階の艦橋内では

「報告!司令官様!」

ヘッドホンマイクを手にした通信兵が艦橋内の将校に報告する。

彼は大帽を被り華麗な軍服を着ており、肩には星章、胸には彩条が並んでいた——これが艦隊の司令官だ。

「前方2海里で北沙海域へ侵入!」

「海警陸战队の上陸時間は1時間後です」

「よし、計画通りに進め——」司令官は簡単に返した

「はい!」

間もなく上陸作戦が開始されるはずだが、艦橋内には緊張感は一切ない。

むしろ任務完了を祝うような安堵の空気が漂っている。

司令官は艦橋のガラス越しに小島を見つめていた。

「おめでとうございます!司令官様!」

副官がすぐさま賛辞を述べた

しかし高級将校相手には単なる阿谀では不十分だった。

彼は分析的な理性を込めた賛美を口にした:

「北沙の首領が自滅した——」

「彼らの軍隊と船団も内輪揉みで全滅させた——」

「彼らは何も抵抗できなかった——」

「まさに奇跡のタイミングです!」

副官はここまで言い終わると、さらに喜びを強めた:

「司令官様がこの度新たな領土を開拓——」

「あの無能な海軍とは比べ物にならないほど——」

「きっと昇進間違いなしでしょう——」

「次の階級まで想像も出来ないくらい——」

「咳払い——」やはり司令官は表情を変えなかった。

彼は深く息を吐き、そのまま全ての阿谀を受け入れた。

しかし艦橋には司令官と副官以外にも多数の人員がいた——レーダー・通信・損管制御・作戦システム調整・機甲出撃指揮・ミサイル操作・砲術操作・対空迎撃管理・目標識別など、各部署の上司も潜入している可能性があった。

海軍以外は全て取りなしにしなければならないからだ。

司令官は完璧な返答をした——

まず東方へ礼拝し、続けた:

「大都督様のご加護のおかげで——」

「特殊市長様の指導のおかげで——」

「海警局長様の教育のおかげで——」

「機甲と武器科学学院の保護——」

「そして皆さんの努力——」

「これで今日の栄誉を成し遂げたのです!!」

司令官は通信兵に向き直り命令した。

「全艦に向けて発表するぞ!」

「了解です!」

通信兵が操作を開始すると、次の瞬間、12隻の軍艦全てに司令官のホログラム映像が表示された。

「同僚諸君、戦友諸君——」

「今日は記念すべき日だ——」

「我々海警部隊は共和軍のために新たな領土を開拓する!」

「皆さんが大功臣となるのだ!」

「ここで私は告げる——今日の艦隊要員以外——」

「全員が島上戦闘への応募資格を得た——」

「なぜなら島民が200年にわたり分立して暮らしていたから——」

「当然、抵抗する村々も存在するだろう——」司令官は悲しみに満ちた表情で続けた。

「抵抗掃討には1日間の時間が必要だ——」彼は略奪と破壊を許可する期限を設定した。

「最後に——勝利は皆さんのもの!!」

司令官が右手を高く掲げて叫んだ。

ホログラム映像はそこで終了した。

すると同時に12隻の軍艦から響き渡るような歓声が聞こえ、司令官の士気は一気に高まった。

満足そうな笑みを浮かべた司令官——

その正義感溢れる顔で略奪と破壊を許可する命令を下した——

想像もしなかったことだ——

同じ人間同士、住む場所が異なるだけで——

なぜこんなに差別されるのか?

吸血鬼との違いはどこにあるのか?

本質は同じではないか——

どうしてここまで急せき立てるのか?

これが南華共和軍の真実なのか——

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった

あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。 戦闘能力ゼロ、初期レベル1。 冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、 新人向けの雑用クエストしか回ってこない。 しかしそのスキルは、 ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する” という、とんでもない能力だった。 生き残るために始めた地味な探索が、 やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。 これは、 戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。 同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

処理中です...