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人を信じた神の話
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『愚かな神の話をしよう』
とても恐ろしい外見の魔神の腕の中に囲われているというのに、恐怖も嫌悪感も感じることはありませんでした。
私を抱きしめたまま、魔神は感情のこもっていない声で語り始めました。
『昔善き神がいた。短き命を懸命に生きる人や動物を愛しく思い、慈しむ。そんな神がいた』
魔神の話は長い長いものでした。
善き神は、長い年月を一人で過ごしながら自分の子とも言える人や動物を愛していました。
善き神は特に人を愛していました。
いつの間にか人は言葉を話し、文字を使い相手と意思疎通する力を得て、生きる為の糧として食べていた物を、美味しくなるように工夫していく。
美しい物を喜び、花を植え育てる。
生きる上で無くても問題ないというのに、音楽を楽しみ絵や彫刻を楽しむ。
手触りの布を織り服を作り、時には美しく手の込んだ模様が入った布を織り着飾る。
ただの色がついた石ころを研磨し、宝石として楽しむ。
ただの動物の一種でしかなかった人は、善き神が長く眺めている間にそうして変化していったのです。
善き神にとって想像もしていなかったことの一つに、信仰がありました。
何故か人は善き神の存在をいつの間にか信じ、善き神の像を作り、絵を描き神殿という場所に供えると善き神を崇め奉り、祈りを捧げるようになりました。
沢山の人が祈りを捧げる内に、善き神の力は強くなり、力が強くなればなる程、いつの間にか人形作っていた国というものが栄え出し、国が栄え人々の暮らしが豊かになると人々はもっともっと善き神を信じ祈るようになりなっていきました。
善き神は自分でも気が付かぬ内に、いつの間にか人々の国を守る存在になっていたのです。
けれど、良いことは長くは続きません。
ある時、虫が大量に生まれ育ち作物を食い荒らし始めました。
食料になる大切な作物を虫に奪われた人々は弱り、その不幸と悲しみを神への怒りに変えました。
幸せへの感謝の心はどこにもなく、強くなっていた善き神の力もだんだんと弱くなっていきました。
そうすると、善き神の守りも弱くなり、それに引きずられる様に人々の国も力を失って行きました。
愛しい人を救おうとしたくても、神の憎むばかりで崇めることをせず守りを信じる者がいない地には善き神の力は届きません。
善き神は自身の力不足を嘆きながら、死にかける人々を悲しく眺める事しか出来ないのです。
沢山の人々が命を落とし、飢えに苦しみ、それが元で疫病が流行り始めても善き神は何もできなかったのです。
善き神自身、姿を保っていられない程に弱り消えかけながら人に何かしたいと、その姿を眺めるのを止められずにいました。
もう善き神が消える、それが目前に迫ったある日、善き神の元に一つの願いが届きました。
自分の命も大切なものもすべて差し出すから、この国を助けて欲しい。
その強い願いは善き神のちからになり、神は願いの主の前に姿を現したのです。
願いの主はこの国の王でした。
王は自分の命と引き換えに国を救って欲しいと、善き神に願いました。
対価など不要、祈りと信じる心さえあれば善き神は力を使えましたが、願いの主がその願いと共に命を差し出すというので、それで契約が成ってしまいました。
善き神は力を使い、国の土を肥えさせ、木々を育て作物を実らせました。
人々の病を治し、死にかけの人をも癒やしました。
そうして国を救い、豊かにしてから願いの主の前に戻ると、王は己の命を差し出そうと剣を手に取ったのです。
けれど、その手を止めた者がいました。
王の妻は、この国には王が必要でこの王こそが良き国を作るのだと、切々と訴えました。
そうして、王の替わりに自分の命を差し出すと言い始めたのです。
自分は神の妻となり生涯仕えるから、王を助け王家の血筋が耐えぬよう守り、そして国を守って欲しい。
そう願ったのです。
強い願いは契約を上書きし、神への願いの対価は王妃自身となりました。
仕方なく神は王妃の良人になり、この国を守ると誓いました。
けれど、現実は物語のようにめでたしめでたしでは終わらなかったのです。
とても恐ろしい外見の魔神の腕の中に囲われているというのに、恐怖も嫌悪感も感じることはありませんでした。
私を抱きしめたまま、魔神は感情のこもっていない声で語り始めました。
『昔善き神がいた。短き命を懸命に生きる人や動物を愛しく思い、慈しむ。そんな神がいた』
魔神の話は長い長いものでした。
善き神は、長い年月を一人で過ごしながら自分の子とも言える人や動物を愛していました。
善き神は特に人を愛していました。
いつの間にか人は言葉を話し、文字を使い相手と意思疎通する力を得て、生きる為の糧として食べていた物を、美味しくなるように工夫していく。
美しい物を喜び、花を植え育てる。
生きる上で無くても問題ないというのに、音楽を楽しみ絵や彫刻を楽しむ。
手触りの布を織り服を作り、時には美しく手の込んだ模様が入った布を織り着飾る。
ただの色がついた石ころを研磨し、宝石として楽しむ。
ただの動物の一種でしかなかった人は、善き神が長く眺めている間にそうして変化していったのです。
善き神にとって想像もしていなかったことの一つに、信仰がありました。
何故か人は善き神の存在をいつの間にか信じ、善き神の像を作り、絵を描き神殿という場所に供えると善き神を崇め奉り、祈りを捧げるようになりました。
沢山の人が祈りを捧げる内に、善き神の力は強くなり、力が強くなればなる程、いつの間にか人形作っていた国というものが栄え出し、国が栄え人々の暮らしが豊かになると人々はもっともっと善き神を信じ祈るようになりなっていきました。
善き神は自分でも気が付かぬ内に、いつの間にか人々の国を守る存在になっていたのです。
けれど、良いことは長くは続きません。
ある時、虫が大量に生まれ育ち作物を食い荒らし始めました。
食料になる大切な作物を虫に奪われた人々は弱り、その不幸と悲しみを神への怒りに変えました。
幸せへの感謝の心はどこにもなく、強くなっていた善き神の力もだんだんと弱くなっていきました。
そうすると、善き神の守りも弱くなり、それに引きずられる様に人々の国も力を失って行きました。
愛しい人を救おうとしたくても、神の憎むばかりで崇めることをせず守りを信じる者がいない地には善き神の力は届きません。
善き神は自身の力不足を嘆きながら、死にかける人々を悲しく眺める事しか出来ないのです。
沢山の人々が命を落とし、飢えに苦しみ、それが元で疫病が流行り始めても善き神は何もできなかったのです。
善き神自身、姿を保っていられない程に弱り消えかけながら人に何かしたいと、その姿を眺めるのを止められずにいました。
もう善き神が消える、それが目前に迫ったある日、善き神の元に一つの願いが届きました。
自分の命も大切なものもすべて差し出すから、この国を助けて欲しい。
その強い願いは善き神のちからになり、神は願いの主の前に姿を現したのです。
願いの主はこの国の王でした。
王は自分の命と引き換えに国を救って欲しいと、善き神に願いました。
対価など不要、祈りと信じる心さえあれば善き神は力を使えましたが、願いの主がその願いと共に命を差し出すというので、それで契約が成ってしまいました。
善き神は力を使い、国の土を肥えさせ、木々を育て作物を実らせました。
人々の病を治し、死にかけの人をも癒やしました。
そうして国を救い、豊かにしてから願いの主の前に戻ると、王は己の命を差し出そうと剣を手に取ったのです。
けれど、その手を止めた者がいました。
王の妻は、この国には王が必要でこの王こそが良き国を作るのだと、切々と訴えました。
そうして、王の替わりに自分の命を差し出すと言い始めたのです。
自分は神の妻となり生涯仕えるから、王を助け王家の血筋が耐えぬよう守り、そして国を守って欲しい。
そう願ったのです。
強い願いは契約を上書きし、神への願いの対価は王妃自身となりました。
仕方なく神は王妃の良人になり、この国を守ると誓いました。
けれど、現実は物語のようにめでたしめでたしでは終わらなかったのです。
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