【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香

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魔神の意図は

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『お前は兄と両親、どちらも義理でしかない彼ら、王によって実の親との縁を無かった事にされ彼らを実の親と兄にされた。だがお前は彼らに愛されていると思い込んでいる』

 思い込んでいる。
 魔神はにやにやと笑いながら、まるでそれが偽りの様に言い放ちました。

『愛されていました。いいえ、きっと今も愛されています』
『可愛い実の娘が、お前が死んだことにより不幸な王太子妃になると知っても彼らは実の娘と同じくお前を愛すると思うのか』

 私が死んだことにより、スィートピーが不幸になる。
 公にはされていませんが王家に嫁いだ女性は、魔神に気に入られたら死ぬまで魔神の妻に、そうでなければ命を絶たれ屍のまま王宮を彷徨う惨めな存在になります。
 それを知るのは極一部とはいえ、お父様は魔神がその気になればその不幸の詳細をすべて知らされるでしょう。
 そうなった時、お父様はまだ私を愛して下さるでしょうか。
 スィートピーが私を妬み自らシオン殿下に近づいたのが原因だとしても、お父様はそれを彼女が悪いのだと考えて下さるでしょうか。

『お前を生き返らす前に、お前の今の両親と兄にスィートピーの不幸を見せる。それでも彼らはお前を愛し続けてくれると信じられるか』
『それは』

 それは分かりません。
 でも、もしもお兄様が私を愛してくれなくてもそばにいられるのなら、私はそれでも幸せだと思います。

『お前が本当に愛されていたなら、兄はお前の夫になり王になる。両親も元の王と王妃として世界に認識され、あの愚かな妹と王子は貴族の夫婦として暮らす。魔神はその尊い愛の姿を見られるなら過去王とした契約を破棄しお前と新たな契約を結ぼう』

 私が愛されていたなら、私と新たな契約を?

『契約とは』
『お前は生きている間兄と夫婦になり幸せに暮らし、死してから魔神の妻になる。お前の魂は苦しんでいても、そうでなくても魔神を喜ばせるに十分。お前が兄を愛する姿は十分に魔神を楽しませてくれた』

 私の何が魔神を楽しませているのか分かりませんが、確かに嬉しそうな顔で魔神は提案してくるのです。

『お前の魂が永遠に魔神の妻になると約束するなら、この国を今まで以上に豊かな幸せな国にすると約束する。他の者を妻にすることもしない』
『私があなたの妻になれば』

 お兄様と夫婦になり幸せに暮らした後、死んでから魔神の妻になる。
 それはお兄様への裏切りではないのでしょうか。

『彼らが私を愛していなかった場合は』
『お前の望みは何も叶えない。お前は生き返らないし兄の記憶も思いもそのままだ。彼は苦しむだろう、お前を目の前で死なせたのだから、その思いを封じ込め忘れないようにしよう』

 それではお兄様は不幸な一生を過ごすことになります。
 私を本当の意味で思わなかった、愛さなかった。それだけで不幸な一生を過ごすのです。

『賭けをしなければ、お兄様の私への思いが消えた状態で王になれますか。お兄様は不幸にはなりませんか』
『愛されている自信が無いのか』
『いいえ、お兄様もお父様達も私を愛してくれているとしんじています。スィートピーへ向ける愛とは違うものかもしれませんが、それでも私は愛され大切にされて来た思い出があります。彼らの心を疑うことはありません』

 私は愛されてきました。
 お父様、お母様、お兄様に愛されて、大切に守られて来ました。
 その心を疑うことはありません。

『なら、賭けをしてもいいのではないか、愛されていると信じているのであれば賭けはお前の勝ちだ』
『それでは私は、お兄様を裏切りながら生きることになります。命が尽きた後魔神の妻になると決まっているのにお兄様の妻として生きるなど。こんな不誠実な話はあっていいはずがありません』

 私は苦しい思いをしたとしてもお兄様が私を忘れ幸せになるならともかく、お兄様の側で私は幸せになれるのにその一方でもう一人夫がいるような状態になるのです。
 これを裏切りの行いと言わず何と言うのでしょう。

『お前が死んで魔神の妻になり兄がお前を忘れ生きるのを望むのに、生きている間の自分の幸せの為に魔神の妻になるのは拒むのか』
『はい、私が望むのは兄の幸せです。ですがその為に私が裏切るのは違うと思うのです』
『その為に自分が苦しむ方がいいと、これはこれは素晴らしい自己犠牲の精神だ。だがそれこそがお前なのだろう』

 私の勝手とも言える言い分を、魔神は怒らずに聞いてそれどころか優しく私を抱きしめたのです。
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