【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

木嶋うめ香

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番外編

兄の寵愛弟の思惑110

「デルロイが狙われたのか、闇属性の魔法は腕輪で使えぬようになっていたのではないのか?」
「エマニュエラの思考は今の私にも読めません。ですから意図的に魔道具の弱点を上手く欺いたのか、無意識の結果なのかも分からない。分かる事といえば第二王子殿下が優しすぎる方受け入れてしまったのだろうということ」

 声が、聞こえる。
 おじい様ともう一人は誰だろう? 聞いたことがあるのに、なぜか思い出せない。
 それよりも、これは夢なのだろうか。
 おじい様の声だけ聞こえる夢なのだろうか、以前私がおじい様にお会いした時はお姿が見えたから、それを考えればこれはやはり夢なのかもしれない。
 今私は真っ白い空間の中にいる。
 明るい光の中、眩しくて目が開けられない時の様に私は目を閉じているのに、ここが何もない真っ白な場所だと分かるのはなぜだろう。
 
「おじい、さま?」

 声が聞こえた方に顔を向け、瞼を開くけれど何も見えない。
 視線を向けた先は光に満ちていて、明るすぎて眩しくて目を細める。

「……エマニュエラは母親にそっくりだ。クロティルデが憎しみを心の奥底に沈め心を砕き、優しく思いやりがある子にと育てたのに。それでもあれの心は実の母親にそっくりに育ってしまった」
「子供の心は育った環境により善にも悪にもなるものだと私は思っていましたが、エマニュエラはそれに当て嵌まらなかった。あの者の母親がそうであった様に、エマニュエラの行いは自分勝手で傲慢。まさに実の母親そのもの。サデウス公爵夫人は、実の子のドナトスとボナクララよりも余程手を掛け心を傾けエマニュエラを育てていましたが、親の本心は子にはなかなか届かぬものサデウス公爵夫人がいくら努力しても上手くいくものではありません」

 エマニュエラのことを嘆くおじい様の声に、もう一人の声が同意を示す。
 エマニュエラの母親がどんな人だったのか、私は実際に会った事がないから分からない。
 ジョバンニ叔父上に聞いた彼女の行いから、利己的な人間だと思うだけでそれ以上のことは想像するしかないがエマニュエラが実の母親にそっくりなのだとしたら、自分のために何をしでかすか分からないということだ。

「クロティルデだけでなく、二人の兄のドナトスは妹達を分け隔てなく愛情を向けていた。貴族家であれほど親密な親子兄妹はいないだろう。ボナクララは優しく愛情深い娘に育ったというのに、なぜエマニュエラは……」
「愛情深いのは、この国の王族の血を受け継ぐ皆に言えることですが、時折歪んだ考えを持つ者は過去にもおりましたが、エマニュエラとその母親は何かの呪いでも受けているのではないかと思う程にその心根が歪んでおります。長く王家とこの国を見守っておりました私でも驚くほど」

 この国を見守って? この声は誰なのだろう。

「そうだな……ああ、いつまでも嘆いていてはいけないな。ここはそなたが本来いてはいけない場所なのだから、早く戻らねば。ただでさえ弱っているそなたが更に弱ってしまう。余が命を落としてから初めてそなたに会ったからつい無駄な話をしてしまった」
「守りの魔法陣から十分な魔力が得られぬせいで確かに私は弱っております。あの者も、さすがに国の守りに関する部分は手を出さなかったですが、私の力はあの日から弱り続けています。それに私だけでなく、守りの魔法陣と王妃が正しく紐づいていないせいで陛下の命が脅かされている」

 あの日、話しの流れを考えるとエマニュエラの母親が魔法陣を書き変えた日のことだろうか。
 父上のお体から常に魔法陣に魔力が流れ続け、そのせいで父上は魔力不足でお体が弱っている。

「そんな状態のそなたへの呼びかけに応えてもらえたこと感謝する」
「いいえ、お礼を言われることではありません。むしろ私がお詫びせねば、私に力がもっとあればもう陛下はシード神の園で安らかに過ごされていたでしょう」
「いいや、余があれを阻止出来なかったせいで、そなたや息子たちにいらぬ苦労を掛けているのだ。余ひとりのんびりとシード神の園に暮らすなど出来るわけがない。エマニュエラの行いを見ればさらにその思いは強くなるばかり、だから余は決めたのだ」
「決めたとは?」

 戸惑う声と同じく、私も戸惑いおじい様の声の続きを待つ。
 一体何を決めたと言うのだろう。

「余の魂は、まだこの地に留まれるだけの力が残っている。この力をそなたに託す」
「託す、そ、そんなことをされたら、魂は千々に裂けてしまいます。魂の形を保てなくなってしまったら、シード神の園に迎え入れて貰えなくなってしまいます!」
「良いのだ。命が尽きた時にそうすべきだった、国の行く末を案じるあまりこの地に留まっていたが、そうせずにエマニュエラが育つ前にそなたに力を託していれば……」

 おじい様は何を言って、魂の力を託す?
 それは一体誰に、守りの魔法陣はただの魔法陣ではないのか? この声の主は一体。

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