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番外編
兄の寵愛弟の思惑111
「余だけでなく王妃も、他の王族達も甘かったのだ。余の祖先の王たちは誰も簒奪者にその地位を奪われることがなく、この国を治めてきた。そんなこと他の国ではありえない。だがこの国では当然のことだった、余達はそれに慣れ過ぎていた。そして守りの魔法陣がもたらしてくれる平和にも慣れて甘えすぎていた」
王子である私は王家の歴史を幼い頃に学んでいる。
帝国の属国でしかなかったこの国は、皇女が嫁いできてしばらく後に帝国からの独立を宣言し、帝国はその後滅んだ。
帝国だったところは現在モロウールリ国と名を変えている。モロウールリ国はトニエの母国でもある。
王家の歴史書に載っている系図を遡って見ると、おじい様が仰るとおり見事としか言いようがない程殆どの代で第一王子だった者が王太子となり王になっている。
例外は二名だが、それはどちらも男子が生まれなかったため、第一王女が女王陛下となっていて、女王陛下の夫は前王陛下の王弟の息子が王配になっている。
不思議なことに第一王子は病死や事故死などをしていることは一度もない、その下の王子、王女は幼い頃に病等で儚くなっていることは度々あるのに、どの代も第一王子は健やかに育ち王になっている。
そしてどの代も子供が多い。男子が生まれなかった代も、子供が一人しかいなかったわけではない。確か四人の王女がいたと思う。私も兄弟は多いし、父上もおじい様もそうだ。
子供が多いのに、血が近い者達で結婚を繰り返している。いとこやはとこが相手とはいえ血の近さは親子や兄弟と変わらないのかもしれない。
それでも私達は、余程の事が無い限り親族と結婚している。血の濃さが王族の繋がりの濃さだとでも言うかの様に近い血の者同士でそうしていて、血の繋がりが全くない者と結婚している者の方が少ないくらいだ。
トニエがこの国の歴史書を読み、とても驚いていた。
あまりにも平和過ぎるが、この歴史は本当なのかと。
でも、本当の話だ。おじい様が仰る通り、簒奪者もなく兄弟同士の殺し合いも大きな争いもなかった。
呑気過ぎるとトニエは呆れているが、誰かが兄上の立場を密かに狙っているなんて考えたこともなかった。エマニュエラの出生の秘密を知らなければ、本当に私は呑気な王子のままだっただろう。
「貴族達にはそれなりに警戒をしていたというのに、今思えば余の中で王族達を疑う心が不思議なほどなかった。それは自分勝手で残虐な思考を持っていると分かっていたエマニュエラの母親も同じだった。だからあの者が守りの魔法陣を自分の都合よく使おうなんて考えるとも思わなかったのかもしれない」
おじい様の後悔を含んだ声にハッとする。それは私も同じだと気が付いたからだ。
エマニュエラがどうしようもない自分勝手な人間だと知っていて、他人を平気で傷つけると分かっていて、それでも私は彼女の魔の手が自分に及ぶとは本心から思ってはいなかった。
だからエマニュエラが何度も私の宮を訪ねて来ても、訪問を断る方が後々面倒だと受け入れていた。
「彼女とエマニュエラが異質だったのです。この国の王族は、王家の直系に血が近ければ近いほどその血に惹かれる。王とその伴侶と子を慕い、守りたいと動く。害そうなど思わない、自分の利より愛しい者のために動く。それなのにあの二人にはそれが無かったのですから」
「……そうだ、そう信じていた。疑いもしなかった。王たる余を誰もが尊び敬っていたが、それも当然だと。今なら分かる、それはただの妄信だったと。人が人である以上、自分より他人を大切にするなど奇跡の様なものだというのに余はそれが当たり前に続くと信じていた」
茫然と、おじい様は独り言のように呟く。
おじい様は妄信と仰ったが、それは私の中にもある。父上や兄上を王族の誰かが害そうとするなんて、私には想像も出来ない。勿論、常に警戒することは必要だと教えられてきたし身に付いてもいると思うけれど、それでも他の貴族達に対する感情と王族への感情は違うのだ。
どうしても警戒は緩むし、信じてしまう。
これはおかしいのだろうか、何かおかしいのだろうか。
王子である私は王家の歴史を幼い頃に学んでいる。
帝国の属国でしかなかったこの国は、皇女が嫁いできてしばらく後に帝国からの独立を宣言し、帝国はその後滅んだ。
帝国だったところは現在モロウールリ国と名を変えている。モロウールリ国はトニエの母国でもある。
王家の歴史書に載っている系図を遡って見ると、おじい様が仰るとおり見事としか言いようがない程殆どの代で第一王子だった者が王太子となり王になっている。
例外は二名だが、それはどちらも男子が生まれなかったため、第一王女が女王陛下となっていて、女王陛下の夫は前王陛下の王弟の息子が王配になっている。
不思議なことに第一王子は病死や事故死などをしていることは一度もない、その下の王子、王女は幼い頃に病等で儚くなっていることは度々あるのに、どの代も第一王子は健やかに育ち王になっている。
そしてどの代も子供が多い。男子が生まれなかった代も、子供が一人しかいなかったわけではない。確か四人の王女がいたと思う。私も兄弟は多いし、父上もおじい様もそうだ。
子供が多いのに、血が近い者達で結婚を繰り返している。いとこやはとこが相手とはいえ血の近さは親子や兄弟と変わらないのかもしれない。
それでも私達は、余程の事が無い限り親族と結婚している。血の濃さが王族の繋がりの濃さだとでも言うかの様に近い血の者同士でそうしていて、血の繋がりが全くない者と結婚している者の方が少ないくらいだ。
トニエがこの国の歴史書を読み、とても驚いていた。
あまりにも平和過ぎるが、この歴史は本当なのかと。
でも、本当の話だ。おじい様が仰る通り、簒奪者もなく兄弟同士の殺し合いも大きな争いもなかった。
呑気過ぎるとトニエは呆れているが、誰かが兄上の立場を密かに狙っているなんて考えたこともなかった。エマニュエラの出生の秘密を知らなければ、本当に私は呑気な王子のままだっただろう。
「貴族達にはそれなりに警戒をしていたというのに、今思えば余の中で王族達を疑う心が不思議なほどなかった。それは自分勝手で残虐な思考を持っていると分かっていたエマニュエラの母親も同じだった。だからあの者が守りの魔法陣を自分の都合よく使おうなんて考えるとも思わなかったのかもしれない」
おじい様の後悔を含んだ声にハッとする。それは私も同じだと気が付いたからだ。
エマニュエラがどうしようもない自分勝手な人間だと知っていて、他人を平気で傷つけると分かっていて、それでも私は彼女の魔の手が自分に及ぶとは本心から思ってはいなかった。
だからエマニュエラが何度も私の宮を訪ねて来ても、訪問を断る方が後々面倒だと受け入れていた。
「彼女とエマニュエラが異質だったのです。この国の王族は、王家の直系に血が近ければ近いほどその血に惹かれる。王とその伴侶と子を慕い、守りたいと動く。害そうなど思わない、自分の利より愛しい者のために動く。それなのにあの二人にはそれが無かったのですから」
「……そうだ、そう信じていた。疑いもしなかった。王たる余を誰もが尊び敬っていたが、それも当然だと。今なら分かる、それはただの妄信だったと。人が人である以上、自分より他人を大切にするなど奇跡の様なものだというのに余はそれが当たり前に続くと信じていた」
茫然と、おじい様は独り言のように呟く。
おじい様は妄信と仰ったが、それは私の中にもある。父上や兄上を王族の誰かが害そうとするなんて、私には想像も出来ない。勿論、常に警戒することは必要だと教えられてきたし身に付いてもいると思うけれど、それでも他の貴族達に対する感情と王族への感情は違うのだ。
どうしても警戒は緩むし、信じてしまう。
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