【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

木嶋うめ香

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番外編

兄の寵愛弟の思惑115

「ボナクララ、あの子に魔法陣の書き換えを教えると言うことは……」
「エマニュエラとボナクララの母親が違うということも、魔法陣を書き換えて王妃をエマニュエラにして紐づけているということも教えねばならぬでしょう。そして、書き換えの内容をボナクララが見て、次の王妃としてボナクララ自身が書き換えることになります」

 皇女の話に思わず声が出そうになる。
 ボナクララが次の王妃? それはつまり、兄上の妻になるということだ。

「なぜボナクララを次の王妃に? それも閲覧制限の一つなのか?」
「いいえ、そうではありません。今回エマニュエラとボナクララは同日に婚約します。つまり二人とも魔法陣の間に入る権利を得ます。その場合王子妃になるボナクララよりも王太子妃になるエマニュエラの方が先に魔法陣の間に入り儀式を行うことになります。そうなるとエマニュエラが正式に魔法陣に紐づいてしまうでしょう。魔法陣の書き換えにどんな罠が隠れているか分からない今、正式に魔法陣に王妃と紐づいたエマニュエラの後ボナクララが魔法陣を書き換えても上手くいくとは思えません」
「つまり、魔法陣の間にボナクララが先に入るために王太子の婚約者としなければならないというのだな」
「ええ、そうです。でも、ボナクララが上手く書き換えを行えるか分からないのに、それに掛けるのはかなり危険な橋を渡ることになるでしょう。ボナクララの魔力量はエマニュエラと比べると少ないですし、エマニュエラの母親と比べたら半分程度まで落ちますから」

 二人の会話を聞いていて、息が苦しくなる。
 胸をぎゅっと締め付けられたような、息苦しさだ。

「書き換えることすら難しいというのか」
「まずしなければならないのは、隠されている魔法陣の書き換え部分の閲覧制限を解除することです。これはボナクララが魔法陣に触れれば私が彼女に乗り移り操作できる筈です。それからエマニュエラからボナクララへ王妃の紐づけを変更し、意味なく国境の守りを脆くし修復するのを止める。この二点ですが、ボナクララの魔力量では王妃の紐づけの変更までは出来ないかもしれません。魔法陣の書き換えには多くの魔力を消費しますから」
「皇女がボナクララに乗り移り操作できるのであれば、魔力も皇女のものが使えるのではないのか」
「そう出来ればいいのですが、ボナクララに乗り移っても私の魔力は魔法陣の魔石の中にありますし、そもそも私も光の属性は持っていませんから、私の魔力はボナクララの役に立たないのです」

 皇女は光の属性ではないのか、守りの魔法というのは光の属性魔法だから皇女は光の属性なのだと誤解していた。

「私はすべての属性の魔法を使えますが、属性は火です。その者が持つ属性というのは本人の魔力そのものですから火の属性の私の魔力では駄目なのです。ボナクララは魔力量こそ少ないですが、王家の血を強く継いでいますし光の属性の魔力を持っています。足りないのは魔力量だけですが、そこが問題です、失敗すれば守りの魔法陣は永遠に力を失ってしまうでしょう」
「それでは打つ手はないということか」
「元々の魔力量が足りないのですから、優先順位を付けるしかございません」
 
 優先順位、それは一体どういうことだろう。
 皇女が何を考えているか分からない。

「陛下はシード神の園へ向かうことを諦め、私に魂と魔力を託すと仰いました」
「余の魂と魔力、それが使えるのならいくらでも」
「それでは、エマニュエラを王妃として紐づけます。その後でボナクララが魔法陣に触れた時書き換えをボナクララの意識がない状態で行います。私がボナクララに乗り移れば、彼女の意識は一時失われるでしょう。そこで王妃の紐づけ以外を正常に戻します」
「魔法陣を壊さずにそれが出来るのだな?」
「はい、婚約式の前に陛下の魔力と魂を使い魔法陣の書き換えの準備を致します」
「準備、何をするつもりだ」

 息が苦しい、皇女が何を考えているのか予想が付かない。
 ボナクララに何をさせるつもりだ。

「エマニュエラの後、誰も王妃として魔法陣に紐づけ出来ない様にするのが一点。もう一点は、魔法陣が勝手に魔力を奪えないようにします」
「それで国の守りはどうなる」
「今は……今暫くは問題は出ないでしょう。でも徐々に徐々に守りの壁は力を失い始めます。まずこれから先国土が広がっても守りの範囲を変えることは出来なくなります。今守りを脆くし修復するのを繰り返していますが、これを止めるには範囲を変更する機能を止める必要があるからです」

 皇女の説明におじい様が息を飲む気配がした。
 私は自分の鼓動の激しさに胸を抑えながら、いつの間にか二人の姿が見えていると気が付いた。
 私は何もない場所に立っていて、おじい様と皇女を見ていた。
 姿が見えるというのは、少し違う。
 二人は光だった、人型の背の高い男性と小柄な女性が向かい合って立っている。
 それが見えた。

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