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番外編
兄の寵愛弟の思惑122(エマニュエラ視点)
「始まりはそうでも、今は違うのですよね?」
気弱そうに聞こえるのを意識した様な声が、ダヴィデ様に問いかける。
優しそうで弱そうな声、男が守ってあげなければと勘違いする、私の大嫌いな声が問いかける。
私のものに話しかけることすら我慢できないというのに、私を庇うような声音が私の心をかき乱すけれど、その問いはまさに私の気持ちを表していた。
そうだ、仮に始まりは「そうするしかなかった」だったとしても、今は違うはず。
だって私は。
ボナクララより、私は賢い。
ボナクララより、ダンスも上手い。
ボナクララより、美しい所作で淑女の礼が出来る。
ボナクララより、刺繍が上手い。
ボナクララより、食事の作法も立ち居振る舞いも美しく完璧にこなせる。
ボナクララより、美しい髪、肌、爪先まで完璧だし、何より双子でも私の方が華があるし美しい。
そうよ、私はボナクララより、すべて秀でている!!
こんな私を選ばない筈がない、幼い頃の思いがなんだというの、大切なのは過去の思い出じゃなく今よ。
ダヴィデ様が選ぶのは私の筈、そうでなければおかしいわ。
「あの残忍な性格を愛する者がいるなら、見てみたいものだ」
なのに、ダヴィデ様は酷い事を言う。
吐き捨てる様に、私を嘲笑う様に。
「残忍」
「違うと庇うか? 母上の宮の使用人達はエマニュエラの酷い仕打ちに心が折れてしまった者が何人もいると聞く。サデウス家でもそうだったのだろう? ジョバンニ叔父上は言葉を濁していたが。居を移したばかりで母上の目がある王妃宮ですらあんな傲慢な態度でいるのだから。家ならもっと酷いだろうと想像がつく」
私の態度が傲慢? 私の仕打ちに使用人達の心が折れた? そんなの、悪いのは私ではないわ。
愚鈍な使用人達が悪いのよ、私の気持ちや行動を予想して先んじて動けない使用人達が悪い。
「エマニュエラは、お義母様が教えなければならないことをすべて身に着けたと聞いています。エマニュエラはとても優秀です。きっと王太子殿下に嫁いだら良い妃となり、貴族女性の見本となるでしょう」
「本心から言っているのか? ボナクララ」
「エマニュエラはやりすぎるところはあるかもしれません。でも、とても賢いですし、王太子妃は私の様な甘いだけの人間では務まりません」
そんなの当然よ、ボナクララに王太子妃なんて出来るわけがない。
他の誰でもそれは同じ、私でなければ王太子妃も王妃も務まらない。
「警戒してエマニュエラを無理に持ち上げ、自分を卑下しなくてもいい。私はボナクララを自分の妃に望むことはない。デルロイを幸せにしてくれるのはそなただけだからな。そなたがデルロイの婚約者なのは変わらない、それは私の思いとは別の話だからな」
「王太子殿下」
「すまなかった。少し動揺しているせいで余計なことを言い困らせてしまった」
余計なこと?
私を本心では望んでいないことが、余計なことだとでも言うの。
「愛することは出来ないが、エマニュエラが王太子妃に全く向いていないわけではない。私達は王太子と王太子妃としては上手くやっていけるだろう。残酷で冷酷な女性だが、優しいだけの女性では王の妻で居続けるのは難しい。だからその点ではエマニュエラは適性があるとも言える」
「……はい」
「だが気分に任せ、鞭打つ。それは王や王妃だろうとやっていいことではない。罪なき蝶の羽をむしり取り踏みにじるような真似を神は許さないだろうし、そんな者が上にいたのでは臣下たちの心が離れていく」
神が許さない? 私の行いを許すのは神なんかじゃない。
私を許すのは私だけだ。
愚鈍な使用人を鞭打つことの何が悪いと言うのか、私が傲慢? 私が冷酷? それなら私を婚約者に望んだくせにその裏でそうするしかなかったと言うダヴィデ様はなんなのだろう。
それは私への裏切りではないの? ボナクララにそれを打ち明けるなんて、最大の裏切りだわ。
「心の中でどれだけ荒々しいことを考えていても外に出さず、傲慢でなく残虐でもなく、賢さと厳しさと優しさを上手く使い分け賢妃となる。そうなれるのならいいが」
何を言っても、取り繕っているようにしか聞こえない。
愛することは出来ないと言いながら、賢妃になれなんて、馬鹿にしている。
私だって愛してなんかない、王妃になれるからダヴィデ様と婚約すると決めたのだから。
「エマニュエラがですか」
「私の希望だが、それが難しいのはわかっている。ずっと彼女が変わることを願っていたが、彼女の考え方や行動が酷くなっても良くなることは無かった。ほんの少しでも変わってくれるなら、と願っていたが」
変わる? 私が、何故変わらなくてはいけないの。
私に悪いところなんて無い、私の周囲にいる者達が私の気持ちを理解しないのが悪いのよ。
「エマニュエラは、自分の行いの愚かさに気が付いてくれるはずです。私に力はありませんが、デルロイ様と二人お支えいたします」
何を言っているの?
ボナクララが私の何を知っていると言うの、私の行いの愚かさ? 私にそんなものはないわ。
「そう…………………」
怒りのあまり、二人の声がよく聞こえなくなる。
怒りで体が震え、いつの間にか力一杯握りしめていた扇がミシリミシリときしみ始める。
「許さない、許さないわ」
ボナクララが許せない、私が愚かな行いをしているなんて、ボナクララごときに言われる筋合いはない。
私ではなくボナクララをダヴィデ様が望むのも、許せない。
「デルロイとボナクララが幸せであれば、私はそれで十分だ」
ダヴィデ様の望みがそれだというなら、私はその幸せを壊す。
ボナクララを殺し、ダヴィデ様の最愛のデルロイ様を私のものにする。
話し続ける二人を残し、私は計画を進めるため歩き始めた。
※※※※※※
涼しくなった途端体調崩しました。
急に涼しくなりすぎですよね、扇風機の風が寒いです。
気弱そうに聞こえるのを意識した様な声が、ダヴィデ様に問いかける。
優しそうで弱そうな声、男が守ってあげなければと勘違いする、私の大嫌いな声が問いかける。
私のものに話しかけることすら我慢できないというのに、私を庇うような声音が私の心をかき乱すけれど、その問いはまさに私の気持ちを表していた。
そうだ、仮に始まりは「そうするしかなかった」だったとしても、今は違うはず。
だって私は。
ボナクララより、私は賢い。
ボナクララより、ダンスも上手い。
ボナクララより、美しい所作で淑女の礼が出来る。
ボナクララより、刺繍が上手い。
ボナクララより、食事の作法も立ち居振る舞いも美しく完璧にこなせる。
ボナクララより、美しい髪、肌、爪先まで完璧だし、何より双子でも私の方が華があるし美しい。
そうよ、私はボナクララより、すべて秀でている!!
こんな私を選ばない筈がない、幼い頃の思いがなんだというの、大切なのは過去の思い出じゃなく今よ。
ダヴィデ様が選ぶのは私の筈、そうでなければおかしいわ。
「あの残忍な性格を愛する者がいるなら、見てみたいものだ」
なのに、ダヴィデ様は酷い事を言う。
吐き捨てる様に、私を嘲笑う様に。
「残忍」
「違うと庇うか? 母上の宮の使用人達はエマニュエラの酷い仕打ちに心が折れてしまった者が何人もいると聞く。サデウス家でもそうだったのだろう? ジョバンニ叔父上は言葉を濁していたが。居を移したばかりで母上の目がある王妃宮ですらあんな傲慢な態度でいるのだから。家ならもっと酷いだろうと想像がつく」
私の態度が傲慢? 私の仕打ちに使用人達の心が折れた? そんなの、悪いのは私ではないわ。
愚鈍な使用人達が悪いのよ、私の気持ちや行動を予想して先んじて動けない使用人達が悪い。
「エマニュエラは、お義母様が教えなければならないことをすべて身に着けたと聞いています。エマニュエラはとても優秀です。きっと王太子殿下に嫁いだら良い妃となり、貴族女性の見本となるでしょう」
「本心から言っているのか? ボナクララ」
「エマニュエラはやりすぎるところはあるかもしれません。でも、とても賢いですし、王太子妃は私の様な甘いだけの人間では務まりません」
そんなの当然よ、ボナクララに王太子妃なんて出来るわけがない。
他の誰でもそれは同じ、私でなければ王太子妃も王妃も務まらない。
「警戒してエマニュエラを無理に持ち上げ、自分を卑下しなくてもいい。私はボナクララを自分の妃に望むことはない。デルロイを幸せにしてくれるのはそなただけだからな。そなたがデルロイの婚約者なのは変わらない、それは私の思いとは別の話だからな」
「王太子殿下」
「すまなかった。少し動揺しているせいで余計なことを言い困らせてしまった」
余計なこと?
私を本心では望んでいないことが、余計なことだとでも言うの。
「愛することは出来ないが、エマニュエラが王太子妃に全く向いていないわけではない。私達は王太子と王太子妃としては上手くやっていけるだろう。残酷で冷酷な女性だが、優しいだけの女性では王の妻で居続けるのは難しい。だからその点ではエマニュエラは適性があるとも言える」
「……はい」
「だが気分に任せ、鞭打つ。それは王や王妃だろうとやっていいことではない。罪なき蝶の羽をむしり取り踏みにじるような真似を神は許さないだろうし、そんな者が上にいたのでは臣下たちの心が離れていく」
神が許さない? 私の行いを許すのは神なんかじゃない。
私を許すのは私だけだ。
愚鈍な使用人を鞭打つことの何が悪いと言うのか、私が傲慢? 私が冷酷? それなら私を婚約者に望んだくせにその裏でそうするしかなかったと言うダヴィデ様はなんなのだろう。
それは私への裏切りではないの? ボナクララにそれを打ち明けるなんて、最大の裏切りだわ。
「心の中でどれだけ荒々しいことを考えていても外に出さず、傲慢でなく残虐でもなく、賢さと厳しさと優しさを上手く使い分け賢妃となる。そうなれるのならいいが」
何を言っても、取り繕っているようにしか聞こえない。
愛することは出来ないと言いながら、賢妃になれなんて、馬鹿にしている。
私だって愛してなんかない、王妃になれるからダヴィデ様と婚約すると決めたのだから。
「エマニュエラがですか」
「私の希望だが、それが難しいのはわかっている。ずっと彼女が変わることを願っていたが、彼女の考え方や行動が酷くなっても良くなることは無かった。ほんの少しでも変わってくれるなら、と願っていたが」
変わる? 私が、何故変わらなくてはいけないの。
私に悪いところなんて無い、私の周囲にいる者達が私の気持ちを理解しないのが悪いのよ。
「エマニュエラは、自分の行いの愚かさに気が付いてくれるはずです。私に力はありませんが、デルロイ様と二人お支えいたします」
何を言っているの?
ボナクララが私の何を知っていると言うの、私の行いの愚かさ? 私にそんなものはないわ。
「そう…………………」
怒りのあまり、二人の声がよく聞こえなくなる。
怒りで体が震え、いつの間にか力一杯握りしめていた扇がミシリミシリときしみ始める。
「許さない、許さないわ」
ボナクララが許せない、私が愚かな行いをしているなんて、ボナクララごときに言われる筋合いはない。
私ではなくボナクララをダヴィデ様が望むのも、許せない。
「デルロイとボナクララが幸せであれば、私はそれで十分だ」
ダヴィデ様の望みがそれだというなら、私はその幸せを壊す。
ボナクララを殺し、ダヴィデ様の最愛のデルロイ様を私のものにする。
話し続ける二人を残し、私は計画を進めるため歩き始めた。
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涼しくなった途端体調崩しました。
急に涼しくなりすぎですよね、扇風機の風が寒いです。
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