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番外編
兄の寵愛弟の思惑124 (王太子視点)
「デルロイ、少し顔色が良くなったか?」
寝室の扉を開き中に入ると、香の匂いがした。
寝室に使うには少し清涼すぎる匂いの元は、神殿が調合した清めの香だ。
デルロイは闇属性の精神魔法攻撃を受けその後遺症で長く目覚めなかったから、少しでも心身を清らかに出来る様に香の力を借り場を清めている。
人が多く集まる王宮は陰鬱な気が溜まりやすく、陰鬱な気が溜まると瘴気となりそれが濃くなると魔素になるといわれている。王子や王女の宮に瘴気を浄化する魔道具は備え付けてあるし、国王、王妃、王太子の宮はさらに強力なものが置かれている。
デルロイが目覚めなくなってから、私の寝室により強固な神殿の聖具を置き大神殿の奥の様に清めた場を作りトニイに大量く回復の薬を作らせ、少しずつ口に含ませた。
さすがにデルロイが目覚めなくなったとはトニエには言えないから、熱を出し倒れたデルロイの体力を回復する為と嘘を吐いた。
父上の体の件でトニエとは王宮内で知り得たことを他言しないと魔法契約をしているが、それでも第二王子が精神魔法攻撃で倒れた上目覚めなくなったことまでは話せない。
父上の件だって、デルロイが安易に行ったことが理由で父上をトニエに診せたにすぎない。そのお陰で日薬草とトニエの作る困った副作用のない魔力回復薬を父上に使って頂けるようになったのだが、それでもこれ以上トニエを巻き込むのをデルロイは望まないだろう。
なにせ王子が精神魔法攻撃を受けたのだ、しかも相手が私の婚約者だというのだからこの国の醜聞以外のなにものでもない。そんなことまで他国からの留学生に過ぎないトニエに知られてしまったら、もう国に戻すことは出来なくなるだろう。
「兄上、お忙しいでしょうに会いに来て下さったのですか。嬉しいですが無理なさらないで下さい」
ベッドの上で枕を背もたれにして本を読んでいたデルロイは、私の顔を見るなり破顔して本を閉じた。
こういう笑い方をするのを見ると、幼いころを思い出す。
いつでもデルロイは、私を見ると笑顔で駆け寄って来たものだ。周囲にいる子守が慌てて追いかけて来くるが、幼いわりに足の速いデルロイは子守を置いて私に抱き着く。
あの愛らしい笑顔を、私はいつでも思い出せる。失わずに済んで良かったと、心から思う。
「兄上?」
「お前に使う時間だ、無理なんて言われたら悲しいぞ」
ぴくりとも動かず眠り続けるデルロイを見ている事しか出来ないのは辛かった、この笑顔を永遠に失うかもしれないと考えることすら怖かった。
「兄上、何かありましたか?」
「何も、少し書類仕事を多くしたから疲れただけだ。たまには思い切り剣を振りたいものだな」
占術師と会話して以降、父上と今後についての議論を幾度となく行った。
この国が守りの魔法陣の防御の壁に守られる様になって、数百年の時が経っている。
国境付近の守りに兵士達を常駐させていても、それでも誰の心にも守りの魔法陣があると思う。魔物と言うものは荒れた地に出現しやすくなる。
荒れた地はどこも魔素が濃く、そういう場所は魔物が生まれやすくなるためだ。
この国の周囲は、隣国との間に大きな森や川や山がある。そこも国土といえばそうなのだが、人が暮らせる環境ではなく魔物や盗賊が跋扈しているという。
守りの魔法陣が作る見えない壁は、魔物や悪しき心の者を国の中に入れないようにするから、その守りの先でそれらは旅に出た者を狙う。
守りの壁が脆くなったら、そこから魔物たちが国の中に入り込んでくるかもしれない。国の中にも魔物が出る土地はあるし迷宮もあるが、それでも国境の守りとは危険度が違い過ぎる。
今すぐその守りが崩れるわけではないが、本格的に守りが弱くなる前に対策していかなければならないのだ。
「剣、私はいつ頃自由に外に出られる様になりますか、目覚めてから三日も過ぎたと言うのにまだ許しが出ないのは大袈裟ではありませんか」
「そうだな、少なくとも立ち上がった時のふらつきが無くなってからだろうな」
体調を崩し数日ベッドの住人になっていてもこんなに体が弱ることはないだろう、そう神官や治癒師が困惑するほどデルロイの筋力は落ちていて、目覚めた直後は一人で立ち上がることすら出来なかった。
最初は食事も当然出来ず水分を取るのがやっとで、トニエの薬が効いているようだがまだ病人食の様なものを食べさせている。
「そうですか」
「なにかあるのか」
「ボナクララが心配で、せめて手紙を書くのを許して頂けませんか」
「ボナクララか、今日見舞いに来てこれをお前にと」
「見舞い! ボナクララはどんな様子でしたか。王宮から帰る途中狼藉者に馬車を襲われたのですから、王宮に来るのも怖かったのではありませんか」
自分の体よりボナクララが心配なのだろう、それが婚約者への愛故だと思うと私の心がズキズキと痛む。
寝室の扉を開き中に入ると、香の匂いがした。
寝室に使うには少し清涼すぎる匂いの元は、神殿が調合した清めの香だ。
デルロイは闇属性の精神魔法攻撃を受けその後遺症で長く目覚めなかったから、少しでも心身を清らかに出来る様に香の力を借り場を清めている。
人が多く集まる王宮は陰鬱な気が溜まりやすく、陰鬱な気が溜まると瘴気となりそれが濃くなると魔素になるといわれている。王子や王女の宮に瘴気を浄化する魔道具は備え付けてあるし、国王、王妃、王太子の宮はさらに強力なものが置かれている。
デルロイが目覚めなくなってから、私の寝室により強固な神殿の聖具を置き大神殿の奥の様に清めた場を作りトニイに大量く回復の薬を作らせ、少しずつ口に含ませた。
さすがにデルロイが目覚めなくなったとはトニエには言えないから、熱を出し倒れたデルロイの体力を回復する為と嘘を吐いた。
父上の体の件でトニエとは王宮内で知り得たことを他言しないと魔法契約をしているが、それでも第二王子が精神魔法攻撃で倒れた上目覚めなくなったことまでは話せない。
父上の件だって、デルロイが安易に行ったことが理由で父上をトニエに診せたにすぎない。そのお陰で日薬草とトニエの作る困った副作用のない魔力回復薬を父上に使って頂けるようになったのだが、それでもこれ以上トニエを巻き込むのをデルロイは望まないだろう。
なにせ王子が精神魔法攻撃を受けたのだ、しかも相手が私の婚約者だというのだからこの国の醜聞以外のなにものでもない。そんなことまで他国からの留学生に過ぎないトニエに知られてしまったら、もう国に戻すことは出来なくなるだろう。
「兄上、お忙しいでしょうに会いに来て下さったのですか。嬉しいですが無理なさらないで下さい」
ベッドの上で枕を背もたれにして本を読んでいたデルロイは、私の顔を見るなり破顔して本を閉じた。
こういう笑い方をするのを見ると、幼いころを思い出す。
いつでもデルロイは、私を見ると笑顔で駆け寄って来たものだ。周囲にいる子守が慌てて追いかけて来くるが、幼いわりに足の速いデルロイは子守を置いて私に抱き着く。
あの愛らしい笑顔を、私はいつでも思い出せる。失わずに済んで良かったと、心から思う。
「兄上?」
「お前に使う時間だ、無理なんて言われたら悲しいぞ」
ぴくりとも動かず眠り続けるデルロイを見ている事しか出来ないのは辛かった、この笑顔を永遠に失うかもしれないと考えることすら怖かった。
「兄上、何かありましたか?」
「何も、少し書類仕事を多くしたから疲れただけだ。たまには思い切り剣を振りたいものだな」
占術師と会話して以降、父上と今後についての議論を幾度となく行った。
この国が守りの魔法陣の防御の壁に守られる様になって、数百年の時が経っている。
国境付近の守りに兵士達を常駐させていても、それでも誰の心にも守りの魔法陣があると思う。魔物と言うものは荒れた地に出現しやすくなる。
荒れた地はどこも魔素が濃く、そういう場所は魔物が生まれやすくなるためだ。
この国の周囲は、隣国との間に大きな森や川や山がある。そこも国土といえばそうなのだが、人が暮らせる環境ではなく魔物や盗賊が跋扈しているという。
守りの魔法陣が作る見えない壁は、魔物や悪しき心の者を国の中に入れないようにするから、その守りの先でそれらは旅に出た者を狙う。
守りの壁が脆くなったら、そこから魔物たちが国の中に入り込んでくるかもしれない。国の中にも魔物が出る土地はあるし迷宮もあるが、それでも国境の守りとは危険度が違い過ぎる。
今すぐその守りが崩れるわけではないが、本格的に守りが弱くなる前に対策していかなければならないのだ。
「剣、私はいつ頃自由に外に出られる様になりますか、目覚めてから三日も過ぎたと言うのにまだ許しが出ないのは大袈裟ではありませんか」
「そうだな、少なくとも立ち上がった時のふらつきが無くなってからだろうな」
体調を崩し数日ベッドの住人になっていてもこんなに体が弱ることはないだろう、そう神官や治癒師が困惑するほどデルロイの筋力は落ちていて、目覚めた直後は一人で立ち上がることすら出来なかった。
最初は食事も当然出来ず水分を取るのがやっとで、トニエの薬が効いているようだがまだ病人食の様なものを食べさせている。
「そうですか」
「なにかあるのか」
「ボナクララが心配で、せめて手紙を書くのを許して頂けませんか」
「ボナクララか、今日見舞いに来てこれをお前にと」
「見舞い! ボナクララはどんな様子でしたか。王宮から帰る途中狼藉者に馬車を襲われたのですから、王宮に来るのも怖かったのではありませんか」
自分の体よりボナクララが心配なのだろう、それが婚約者への愛故だと思うと私の心がズキズキと痛む。
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