【本編完結済】夫が亡くなって、私は義母になりました

木嶋うめ香

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番外編

兄の寵愛弟の思惑127

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「第二王子殿下、私達がまた護衛について本当によろしいのでしょうか」

 私が長い目覚めてから数日後、ロイとフランコは悲壮感漂う表情を見せながら私の前に跪いていた。

「どういうことだ? 私の護衛などもうしたくないということか?」

 二人が今まさに処刑台の前にでもいるような顔で私を見ているから、つい悪戯心が働き尋ねるととんでもないとばかりに二人は額を床に擦り付け始めるから内心慌ててしまう。
 表情には出さないが、悪戯が過ぎたと冷や汗を搔きながら「顔を上げなさい」と両手を差し伸べる。

「第二王子殿下」
「不甲斐ない私達にお怒りではないのですか」

 二人は顔を上げると私の手をそれぞれが両手で、宝玉でも包みこむように触れながら涙を浮かべ私を見つめる。
 何を言っても頑なに私の前で視線を伏せる配下もいるが、私は自分の護衛達にはそれを許していない。
 王子である私を敬いそうしているのはわかるが、自分に近しい者とは視線を合わせ会話したいからだ。

「怒りか、今回のことは私の油断が招いたことだからな。お前たちではなく自分への怒りと呆れはあるな」

 エマニュエラの精神魔法攻撃を、私は魔道具の性能を過信していたせいで受けてしまった。
 今回は自分が倒れるだけで済んだが、あの魔法のせいで周囲の者を傷つけていたらと思うとどれだけ後悔しても足りないと思う。
 実際エマニュエラが精神攻撃魔法で私に何をさせたかったのか、すでに自力で魔法攻撃にあらがって解除してしまった後では確認のしようがないし、そもそも自分で意識できていなかった魔法攻撃にどうやって対抗したのかすら私には分からない。
 神官によれば、私が身に着けていた魔道具が反応するくらい魔法攻撃を受けた症状が蓄積された結果ではないかと言っていたが、それならばなぜ魔法攻撃を仕掛けていたエマニュエラの前ではなく、エマニュエラと関係のない者しかいない学校内で倒れることになったのか、その理由がわからない。

「そんな、殿下」
「兄上から詳しく話は聞いていると思うが、魔法攻撃を仕掛けられた私自身が全く自覚していなかったのだから、お前たちにわかるはずがない」

 何せエマニュエラが私に魔法を使ったのは、本来使えるはずがない私の宮だ。
 エマニュエラは、闇の属性魔法が使えないように制御する魔法具を常に身に着けていたし、そもそも私の宮の中でも私室や誰かを招くことを想定している部屋には悪しき魔法や呪いが発動しないように聖具で守られている。
 だがエマニュエラの精神攻撃魔法はその中で発動した、しかも兄上の考え通りだとすれば、極々弱い魔法が何度も何度も繰り返し使われていたことになる。
 そんなことをされているとは知らず、呑気に過ごしていたのは私だ。
 これを護衛のせいになんて、出来るわけがない。

「ですが」
「父上も兄上も、今回の件でお前達を罰することはしないと言っておられるのだから、これ以上言うな」
「殿下」
「いい教訓となったと思い、二度起きることがないようにしなければな。私も反省している。何が悪かったのかといえば、私が油断しすぎていたことが一番悪いのだからな」

 本来であれば、こんな失敗たった一度でもしてはいけないものだ。
 精神魔法攻撃を受けてしまうなんて、あまりにも油断が過ぎることだし、守りも警戒も足りなかった。
 今は本当に弱いものでも発動しないように改良されたそうだが、それでも聖具も魔道具も過信してはいけないと兄上から言い使っているし、勿論油断をするつもりもない。
 そういった道具だけでなく、人への警戒ももっとしなければならない。

「油断、でございますか」
「エマニュエラの悪質さを分かっていたはずなのに、それでもそんなことはしないだろうと、心の何処かで油断していたんだ」

 ボナクララがエマニュエラに傷つけられた時、彼女はそれまでのエマニュエラの行いから自分を物理的に傷つけるとは思わなかったと言っていた。
 あの時、ボナクララは油断しすぎだと呆れたが、私も同じだ。
 まさか精神攻撃を仕掛けてくるなんて思わなかったのだ。
 闇の属性魔法は扱い方を間違えば重犯罪を犯すことになる、精神魔法攻撃はその最たるものだ。魔法を教わる時に禁忌の魔法だと教わり、シード神の教えにも背くものだとも教わる。
 この国の人間、特に王族はシード神の敬虔なる信者だ。
 その教えに背く者は、死後神の園に招かれない。永久に苦しみの中を漂うと言われ、魂には救いが与えられないと幼い頃から教え込まれて育つ。
 エマニュエラもそれは同じだし、ジョバンニ叔父上は、エマニュエラの母親の件と闇の属性の適性があるエマニュエラの将来を案じて、特に厳しくその教えを伝えていたと言っていた。
 それなのに躊躇いなくエマニュエラは私にその禁忌の魔法を使うとは思わなかったのだ。
 
※※※※※※※※※※※
パソコン購入しやっと設定が終わりました。
機械オンチなので、本当に大変でした。
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