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番外編
ほのぼの日常編1 再婚を祝う人々7(ダニエラ視点)
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「鎖で吊るすとして、滑車で巻き上げるには……今の魔法陣をそのまま使ってもう一つ……」
天井を見上げながら、なおも呟いているディーンは少し不気味ですが、背後から聞こえてくる「あれ大丈夫かディーン誰の前にいるか忘れてないか?」とか「どうするんだ呆れられてるかもしれないぞ」という声の方も気になってしまいます。
「ディーン、上手く行きそうか」
どうしたらいいのかしらと戸惑っている私をよそに、お兄様は全く動じずにディーンに聞いています。
お兄様はディーンと付き合いが長いようですから、こういう光景も見慣れているのかもしれません。
「はい、ニール兄上」
お兄様の問いかけに答えたディーンの言葉に、私はギョッとして目を見開きました。
兄上? え、兄上ぇっ!!
驚いたのは私だけでなく、背後もウーゴ叔父様も同様の様です。
確かにディーンは私の夫になるのですからお兄様は義理の兄になりますが、ピーターの時は「ニール様」としか呼んでいなかった筈です。
それがまさか、ディーンが兄上と呼ぶなんて。
しかも、なんだかお互い嬉しそうに見えます。
「そうか。ならばダニエラの相手をしてやれ、おまえが考え込んでいるから拗ねているぞ」
拗ねてはいませんが、驚いています。
お兄様、ディーンの兄上呼びに何も仰らないけれどいつからこの呼び方をする様になったのでしょう。
「え、ダニエラ、あの、も、申し訳……」
「お兄様、人聞きの悪い事を仰らないで下さいませ。この程度で拗ねたりしませんわ。それより驚いたわディーン」
お兄様の一言で不安そうにしているディーンの気をそらせなければなりません。
私は拗ねてはいません、この程度で拗ねていたらピーターの妻を五年も出来ません。
「驚く? あの」
「驚いたし、とても興味深いわ。私魔法のことを全然分からないけれど、ディーンは何か考えついたのでしょう?」
両手を胸の前で組み、ディーンを見上げます。
前世で言うところの、あざと可愛いを意識して表情を作ります。
私はどちらかと言えば、ツリ目のキツイ顔立ちをしていますから可愛いとは言えませんが、思い込むのは自由だと思います。
「よ、良かった。呆れてないぞ」
「大丈夫だ。奇跡だ!」
普通なら結婚間近の相手を前にいきなりぶつぶつ呟き始めたとしたら、相手は不機嫌になるでしょう。
お兄様はそう思って言ったのでしょうが、これがディーンの通常ならそれを否定したりしません。
「怒っていませんか? 呆れていませんか」
「呆れていないわ。自分の仕事に熱心なのは素晴らしいと思うもの。それに鎖で吊るしてとか滑車と言っていたから井戸の話から何か思いついたのでしょう」
「は、はい。ダニエラが素晴らしい話をして下さったお陰で良い仕組みを思いつきました。今は天井と床に魔法陣を設置していまして……それで…………ですから…………」
どうしたらいいのでしょう、ディーンの説明が専門的過ぎて全く頭の中に入ってきません。
私はそれなりに理解力があるつもりでしたが、勘違いしていたのでしょうか。
「ヤバいぞ、誰かディーンを止めろ」
「止められないって、団長だって笑ってるし」
「でも、流石にあれは駄目だろ」
背後の心配の声が段々大きくなっていますが、ディーンには聞こえていないようです。
それどころか、ますますディーンは早口に私が全く理解出来ない話を続けています。
前世の友人にもこういうタイプの子がいました。
普段は口数が少ないのですが、推しの話題になるととても饒舌になってそれがとても楽しそうなのです。
それを思い出してみると、今のディーンはとても楽しそうです。
侯爵家では、こんな表情のディーンを見たことはありませんでした。
ディーンは本当に魔法が好きなのでしょう。
好きな事に夢中になるのは良いことですし、楽しそうに話しているディーンは何だか可愛いと思います。
「可愛い」
ポロリと言葉がこぼれ落ちてしまいました。
「……ですから、えっ」
「ダニエラ?」
「え、今の可愛いって言ったか? あのディーンを?」
「違うだろ、でも、え? あれに呆れずに可愛い?」
戸惑う声に恥ずかしくなりますが、口に出してしまったものは仕方ありません。
「年上のあなたに言って良い言葉ではないけれど、ディーンがとても楽しそうに話しているのだもの。何だか微笑ましい気持ちになってしまったの」
「あ、あの?」
「でも私魔法に詳しくないから、ディーンが話してくれたことを理解出来なくて悲しいわ」
ディーンを可愛いと思ったのは本当ですが、正直な気持ちを言えば、疲れてきたのでそろそろ座りたいのです。
今日は陛下とお会いする為、昼用の外出着の中でも豪華なドレスを着ていますからドレスの重みで疲れやすいのです。
どうしたらディーンの気持ちを沈ませる事無く、切り上げられるでしょうか。
「申し訳ありません。興味のない話を長々と」
しゅんとしてしまったディーンの瞳から、光が消えかかっています。
これはまさか、私に嫌われたと思っているのではないでしょうか。
「ううん、そうじゃないの。私が無知なのが悪いのよ、だから今度ゆっくり教えてくれたら嬉しいわ」
「教える?」
「ええ、専門的な言葉が沢山あるでしょう? だから分からない事をディーンに教わりながら時間を気にせずに話を聞きたいわ。だって魔法のお話興味深いもの」
「私の話を聞いて下さるのですか?」
「勿論よ。お話ししている時のディーンはとても楽しそうで可愛……あ、また言ってしまったわ。ごめんなさい」
今、可愛いと言ったのはわざとです。
「良いんです。ありがとうございます。今度は分かりやすく話せるようにします」
今度、今度があるんですね。
私理解できるでしょうか、でも頑張れば何とか。
今は頑張って笑っておきましょう。
「楽しみにしているわ」
取り敢えず、これで大丈夫よね。
ディーンの瞳に光が戻ってきたのを確認し、内心胸を撫で下ろしていた私に、それは甘いとばかりにディーンは追い打ちを掛けて来たのでした。
「ダニエラに魔法陣の話が出来るのは嬉しいです。あぁ、蜘蛛たちにも是非会って欲しいです。もし良ければ今日会いに行ってみませんか」
神様、私大丈夫でしょうか。
乙女ゲームが始まる前に、死んでしまうのではないでしょうか。
いつかは蜘蛛に会わなくてはならないと覚悟は決めていたものの、いきなり今日は酷すぎます。
あまりの展開に、さすがに気力が尽きかけていました。
※※※※※※※※※
ディーンの今の状態は、お散歩に連れて行って貰えると分かってはしゃいでいるワンちゃん。
飼い主に宝物を見せたくてウズウズ中。
天井を見上げながら、なおも呟いているディーンは少し不気味ですが、背後から聞こえてくる「あれ大丈夫かディーン誰の前にいるか忘れてないか?」とか「どうするんだ呆れられてるかもしれないぞ」という声の方も気になってしまいます。
「ディーン、上手く行きそうか」
どうしたらいいのかしらと戸惑っている私をよそに、お兄様は全く動じずにディーンに聞いています。
お兄様はディーンと付き合いが長いようですから、こういう光景も見慣れているのかもしれません。
「はい、ニール兄上」
お兄様の問いかけに答えたディーンの言葉に、私はギョッとして目を見開きました。
兄上? え、兄上ぇっ!!
驚いたのは私だけでなく、背後もウーゴ叔父様も同様の様です。
確かにディーンは私の夫になるのですからお兄様は義理の兄になりますが、ピーターの時は「ニール様」としか呼んでいなかった筈です。
それがまさか、ディーンが兄上と呼ぶなんて。
しかも、なんだかお互い嬉しそうに見えます。
「そうか。ならばダニエラの相手をしてやれ、おまえが考え込んでいるから拗ねているぞ」
拗ねてはいませんが、驚いています。
お兄様、ディーンの兄上呼びに何も仰らないけれどいつからこの呼び方をする様になったのでしょう。
「え、ダニエラ、あの、も、申し訳……」
「お兄様、人聞きの悪い事を仰らないで下さいませ。この程度で拗ねたりしませんわ。それより驚いたわディーン」
お兄様の一言で不安そうにしているディーンの気をそらせなければなりません。
私は拗ねてはいません、この程度で拗ねていたらピーターの妻を五年も出来ません。
「驚く? あの」
「驚いたし、とても興味深いわ。私魔法のことを全然分からないけれど、ディーンは何か考えついたのでしょう?」
両手を胸の前で組み、ディーンを見上げます。
前世で言うところの、あざと可愛いを意識して表情を作ります。
私はどちらかと言えば、ツリ目のキツイ顔立ちをしていますから可愛いとは言えませんが、思い込むのは自由だと思います。
「よ、良かった。呆れてないぞ」
「大丈夫だ。奇跡だ!」
普通なら結婚間近の相手を前にいきなりぶつぶつ呟き始めたとしたら、相手は不機嫌になるでしょう。
お兄様はそう思って言ったのでしょうが、これがディーンの通常ならそれを否定したりしません。
「怒っていませんか? 呆れていませんか」
「呆れていないわ。自分の仕事に熱心なのは素晴らしいと思うもの。それに鎖で吊るしてとか滑車と言っていたから井戸の話から何か思いついたのでしょう」
「は、はい。ダニエラが素晴らしい話をして下さったお陰で良い仕組みを思いつきました。今は天井と床に魔法陣を設置していまして……それで…………ですから…………」
どうしたらいいのでしょう、ディーンの説明が専門的過ぎて全く頭の中に入ってきません。
私はそれなりに理解力があるつもりでしたが、勘違いしていたのでしょうか。
「ヤバいぞ、誰かディーンを止めろ」
「止められないって、団長だって笑ってるし」
「でも、流石にあれは駄目だろ」
背後の心配の声が段々大きくなっていますが、ディーンには聞こえていないようです。
それどころか、ますますディーンは早口に私が全く理解出来ない話を続けています。
前世の友人にもこういうタイプの子がいました。
普段は口数が少ないのですが、推しの話題になるととても饒舌になってそれがとても楽しそうなのです。
それを思い出してみると、今のディーンはとても楽しそうです。
侯爵家では、こんな表情のディーンを見たことはありませんでした。
ディーンは本当に魔法が好きなのでしょう。
好きな事に夢中になるのは良いことですし、楽しそうに話しているディーンは何だか可愛いと思います。
「可愛い」
ポロリと言葉がこぼれ落ちてしまいました。
「……ですから、えっ」
「ダニエラ?」
「え、今の可愛いって言ったか? あのディーンを?」
「違うだろ、でも、え? あれに呆れずに可愛い?」
戸惑う声に恥ずかしくなりますが、口に出してしまったものは仕方ありません。
「年上のあなたに言って良い言葉ではないけれど、ディーンがとても楽しそうに話しているのだもの。何だか微笑ましい気持ちになってしまったの」
「あ、あの?」
「でも私魔法に詳しくないから、ディーンが話してくれたことを理解出来なくて悲しいわ」
ディーンを可愛いと思ったのは本当ですが、正直な気持ちを言えば、疲れてきたのでそろそろ座りたいのです。
今日は陛下とお会いする為、昼用の外出着の中でも豪華なドレスを着ていますからドレスの重みで疲れやすいのです。
どうしたらディーンの気持ちを沈ませる事無く、切り上げられるでしょうか。
「申し訳ありません。興味のない話を長々と」
しゅんとしてしまったディーンの瞳から、光が消えかかっています。
これはまさか、私に嫌われたと思っているのではないでしょうか。
「ううん、そうじゃないの。私が無知なのが悪いのよ、だから今度ゆっくり教えてくれたら嬉しいわ」
「教える?」
「ええ、専門的な言葉が沢山あるでしょう? だから分からない事をディーンに教わりながら時間を気にせずに話を聞きたいわ。だって魔法のお話興味深いもの」
「私の話を聞いて下さるのですか?」
「勿論よ。お話ししている時のディーンはとても楽しそうで可愛……あ、また言ってしまったわ。ごめんなさい」
今、可愛いと言ったのはわざとです。
「良いんです。ありがとうございます。今度は分かりやすく話せるようにします」
今度、今度があるんですね。
私理解できるでしょうか、でも頑張れば何とか。
今は頑張って笑っておきましょう。
「楽しみにしているわ」
取り敢えず、これで大丈夫よね。
ディーンの瞳に光が戻ってきたのを確認し、内心胸を撫で下ろしていた私に、それは甘いとばかりにディーンは追い打ちを掛けて来たのでした。
「ダニエラに魔法陣の話が出来るのは嬉しいです。あぁ、蜘蛛たちにも是非会って欲しいです。もし良ければ今日会いに行ってみませんか」
神様、私大丈夫でしょうか。
乙女ゲームが始まる前に、死んでしまうのではないでしょうか。
いつかは蜘蛛に会わなくてはならないと覚悟は決めていたものの、いきなり今日は酷すぎます。
あまりの展開に、さすがに気力が尽きかけていました。
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ディーンの今の状態は、お散歩に連れて行って貰えると分かってはしゃいでいるワンちゃん。
飼い主に宝物を見せたくてウズウズ中。
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