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番外編
おまけ 愛のかたち10 (陛下視点)
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「陛下、王妃様はまだ目を覚まされません」
「そうか」
王妃の宮に入るとすぐ女官長が出迎え報告して来た。
王妃の宮は突然起きた出来事に動揺している様だった。
それは当然だ、宮の主が突然倒れたのだから。
余がデルロイと共に宮に足を踏み入れた途端、侍女やメイド達の動揺が手に取る様に伝わって来た。
だが王妃を心配している様子は見られない。
表面上は穏やかで優しき妃と名高いが、配下達には良い主では無かったのは予想できる。
王妃は陰湿で傲慢を絵に描いた様な女だ。
「陛下」
「デルロイ、妃はなぜ急に……」
王妃の寝室に向かいながら、少し前を歩く女官長に聞こえる様に言葉を吐く。
余と共に王妃の宮に来たデルロイは、これから悪行を行う余を気遣う様にそっと余の腕に触れ視線を合わせる。
余を気遣うその視線に、心の奥が熱くなる。
誰よりも優しい弟が余を気遣い側にいるだけで、余はこの上ない喜びを感じるのだ。
「病気ではないのですか」
「分からぬ。王妃は病の気配も無かった。あれは元々丈夫で病の床についたことすらないというのに」
苛立った様に話す余の前を歩く女官長は、内心の動揺を悟られぬようにしていながら失敗している様だ。
王妃は日頃女官を側に置かず実家から連れてきている侍女を側に置いているから、女官長は王子妃との打ち合わせの場にはいなかった筈だが、王妃の宮で起きた騒動の叱責を恐れているのだろう。
「女官長、王子妃はどうしている」
「は、はい。第一王子妃殿下はご自分の宮にお戻りになりました」
「宮に戻ったのですか? 普通であれば陛下がいらっしゃるのを待つのでは」
「……」
デルロイの問いかけに、女官長は一瞬躊躇う様子を見せた後視線を伏せた。
「まさか王子妃は話を広めてはおらぬだろうな。どんな様子だった」
「私は隣の部屋に控えておりましたが、女性の叫び声で部屋に駆けつけると、廊下にて錯乱した様子の第一王子妃殿下が叫び声をあげていらっしゃいました」
「なんと」
「その声にメイド達が集まりましたので、この宮の使用人達は皆知っているかと」
女官長の言い難そうな報告に、余は自然と眉間に皺が寄る。
「今頃は王子妃の宮の使用人達にも話は広まっておるだろうな」
第一王子の妻であるシビーユ王子妃は、北の国からこの国に嫁いで来た。
北の国は同盟国ではあるもののそんな絆は簡単に反故に出来ると互いに考えている程度の繋がりだ。
ある意味シビーユは貢物としてこの国に来たようなものだ。西の国モロウールリ国とは異なり北の国は小さく国の力も弱い。この国の庇護がなければ国民は飢えて死にかねない程に力がない国だ。
だがシビーユは傲慢を絵に描いた様な女性だった。
派手な衣服や宝飾品を好み、自分に似合うのは最上品だとばかりに威張り散らす。
確かに見栄えする顔をしているが、デルロイの妻ボナクララや愛娘ダニエラと比べたら話にもならない容姿でしかなかった。そして頭の出来も良く無い。
「女官長、部屋に治癒師はおるか」
「いえ薬を用意する為離れております」
侍従は今影を指示し王子妃宮に向かっている。
余はこれから王妃に毒を与え、治癒師に再度王妃を調べさせる。
侍従が部屋を出た後で、執務室に隠してあった毒を仕掛けの指輪に仕込み指にはめてきた。その毒は北の国でのみ作られている毒だ。
「女官長、治癒師に話を聞きたい呼んできてくれ。余は王妃の様子を見たい。他の者はさがっていよ」
「畏まりました」
寝室に入りつつ女官長に指示すると、部屋の中で控えていた女官と王妃の侍女を連れて部屋を出て行った。
「王妃」
天蓋から下げられた薄布を開きベッドに横たわる王妃に声を掛けても、返事は無い。
「本当に意識がないのだな。一体何があったのか」
毒では無いのは確かなのだろう。
でも理由が分からない。土気色の顔で目を閉じている王妃は息をしているのかどうかも分からない程だ。
「王妃、そなたは満足か。好き勝手生きて自分の邪魔になるものは平気で害した、その一生は満足なものだったか」
頬に手を添えてもヒヤリとした温度しか感じない。
命が尽きたと言われても疑いようがない程の冷たい頬をしている。
「デルロイ、ボナクララと王妃は姉妹だというのに、王妃の心は邪悪だった。傲慢で我儘などうしようもない女だった」
思えば王妃の印象は最初から悪かった。
余とデルロイの婚約者になるかもしれない従兄妹として王子宮を初めて訪ねて来たボナクララと王妃エマニュエラは、印象的な姉妹だった。
二人の母親はエマニュエラはしっかりしていて、ボナクララは少しおっとりしていると話したが、余の目にはエマニュエラは醜悪だとしか映らなかった。
顔立ちはどちらも愛らしかった。
余達の従兄妹なのだ、顔立ちは似ているところもある。だが、春の日だまりの様に笑うボナクララの隣に立つエマニュエラは微笑んでいるのに何を企んでいるのかと疑いたくなる程、陰湿な目をしていた。
「守りの魔法の腕は素晴らしかったしそれ以外も優秀だった。だから妃にするには適していると思った。だが同時に目を離してはいけない人間だとも思った」
ボナクララを余は一目で気に入った。
デルロイをこの世の誰よりも愛していたが、その愛とは違う気持ちでボナクララに惹かれた。
デルロイとボナクララが側にいれば、きっと余は王になり重責を担う様になってもやっていける。
婚約者を選ぶ権利は余にあった。
ボナクララが良い。そう告げようとして余は気が付いてしまったのだ、デルロイとボナクララは互いに惹かれあっていると。
そしてエマニュエラもデルロイに惹かれていると。
「優秀でもその心根は陰湿で傲慢で、ボナクララを憎んでいると分かっていた」
デルロイは余の側にいる事以外、自分から何も望まない子供だった。
そのデルロイが唯一望んだボナクララを害すかもしれない存在、余はデルロイとボナクララの為未来の王妃としてエマニュエラを選んだ。
エマニュエラがデルロイをその毒牙にかけないよう、ボナクララを害さないよう、余が見張ると決めたのだ。
「そうか」
王妃の宮に入るとすぐ女官長が出迎え報告して来た。
王妃の宮は突然起きた出来事に動揺している様だった。
それは当然だ、宮の主が突然倒れたのだから。
余がデルロイと共に宮に足を踏み入れた途端、侍女やメイド達の動揺が手に取る様に伝わって来た。
だが王妃を心配している様子は見られない。
表面上は穏やかで優しき妃と名高いが、配下達には良い主では無かったのは予想できる。
王妃は陰湿で傲慢を絵に描いた様な女だ。
「陛下」
「デルロイ、妃はなぜ急に……」
王妃の寝室に向かいながら、少し前を歩く女官長に聞こえる様に言葉を吐く。
余と共に王妃の宮に来たデルロイは、これから悪行を行う余を気遣う様にそっと余の腕に触れ視線を合わせる。
余を気遣うその視線に、心の奥が熱くなる。
誰よりも優しい弟が余を気遣い側にいるだけで、余はこの上ない喜びを感じるのだ。
「病気ではないのですか」
「分からぬ。王妃は病の気配も無かった。あれは元々丈夫で病の床についたことすらないというのに」
苛立った様に話す余の前を歩く女官長は、内心の動揺を悟られぬようにしていながら失敗している様だ。
王妃は日頃女官を側に置かず実家から連れてきている侍女を側に置いているから、女官長は王子妃との打ち合わせの場にはいなかった筈だが、王妃の宮で起きた騒動の叱責を恐れているのだろう。
「女官長、王子妃はどうしている」
「は、はい。第一王子妃殿下はご自分の宮にお戻りになりました」
「宮に戻ったのですか? 普通であれば陛下がいらっしゃるのを待つのでは」
「……」
デルロイの問いかけに、女官長は一瞬躊躇う様子を見せた後視線を伏せた。
「まさか王子妃は話を広めてはおらぬだろうな。どんな様子だった」
「私は隣の部屋に控えておりましたが、女性の叫び声で部屋に駆けつけると、廊下にて錯乱した様子の第一王子妃殿下が叫び声をあげていらっしゃいました」
「なんと」
「その声にメイド達が集まりましたので、この宮の使用人達は皆知っているかと」
女官長の言い難そうな報告に、余は自然と眉間に皺が寄る。
「今頃は王子妃の宮の使用人達にも話は広まっておるだろうな」
第一王子の妻であるシビーユ王子妃は、北の国からこの国に嫁いで来た。
北の国は同盟国ではあるもののそんな絆は簡単に反故に出来ると互いに考えている程度の繋がりだ。
ある意味シビーユは貢物としてこの国に来たようなものだ。西の国モロウールリ国とは異なり北の国は小さく国の力も弱い。この国の庇護がなければ国民は飢えて死にかねない程に力がない国だ。
だがシビーユは傲慢を絵に描いた様な女性だった。
派手な衣服や宝飾品を好み、自分に似合うのは最上品だとばかりに威張り散らす。
確かに見栄えする顔をしているが、デルロイの妻ボナクララや愛娘ダニエラと比べたら話にもならない容姿でしかなかった。そして頭の出来も良く無い。
「女官長、部屋に治癒師はおるか」
「いえ薬を用意する為離れております」
侍従は今影を指示し王子妃宮に向かっている。
余はこれから王妃に毒を与え、治癒師に再度王妃を調べさせる。
侍従が部屋を出た後で、執務室に隠してあった毒を仕掛けの指輪に仕込み指にはめてきた。その毒は北の国でのみ作られている毒だ。
「女官長、治癒師に話を聞きたい呼んできてくれ。余は王妃の様子を見たい。他の者はさがっていよ」
「畏まりました」
寝室に入りつつ女官長に指示すると、部屋の中で控えていた女官と王妃の侍女を連れて部屋を出て行った。
「王妃」
天蓋から下げられた薄布を開きベッドに横たわる王妃に声を掛けても、返事は無い。
「本当に意識がないのだな。一体何があったのか」
毒では無いのは確かなのだろう。
でも理由が分からない。土気色の顔で目を閉じている王妃は息をしているのかどうかも分からない程だ。
「王妃、そなたは満足か。好き勝手生きて自分の邪魔になるものは平気で害した、その一生は満足なものだったか」
頬に手を添えてもヒヤリとした温度しか感じない。
命が尽きたと言われても疑いようがない程の冷たい頬をしている。
「デルロイ、ボナクララと王妃は姉妹だというのに、王妃の心は邪悪だった。傲慢で我儘などうしようもない女だった」
思えば王妃の印象は最初から悪かった。
余とデルロイの婚約者になるかもしれない従兄妹として王子宮を初めて訪ねて来たボナクララと王妃エマニュエラは、印象的な姉妹だった。
二人の母親はエマニュエラはしっかりしていて、ボナクララは少しおっとりしていると話したが、余の目にはエマニュエラは醜悪だとしか映らなかった。
顔立ちはどちらも愛らしかった。
余達の従兄妹なのだ、顔立ちは似ているところもある。だが、春の日だまりの様に笑うボナクララの隣に立つエマニュエラは微笑んでいるのに何を企んでいるのかと疑いたくなる程、陰湿な目をしていた。
「守りの魔法の腕は素晴らしかったしそれ以外も優秀だった。だから妃にするには適していると思った。だが同時に目を離してはいけない人間だとも思った」
ボナクララを余は一目で気に入った。
デルロイをこの世の誰よりも愛していたが、その愛とは違う気持ちでボナクララに惹かれた。
デルロイとボナクララが側にいれば、きっと余は王になり重責を担う様になってもやっていける。
婚約者を選ぶ権利は余にあった。
ボナクララが良い。そう告げようとして余は気が付いてしまったのだ、デルロイとボナクララは互いに惹かれあっていると。
そしてエマニュエラもデルロイに惹かれていると。
「優秀でもその心根は陰湿で傲慢で、ボナクララを憎んでいると分かっていた」
デルロイは余の側にいる事以外、自分から何も望まない子供だった。
そのデルロイが唯一望んだボナクララを害すかもしれない存在、余はデルロイとボナクララの為未来の王妃としてエマニュエラを選んだ。
エマニュエラがデルロイをその毒牙にかけないよう、ボナクララを害さないよう、余が見張ると決めたのだ。
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