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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑38 (デルロイ視点)
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意識が中途半端に覚醒している中、心地良い温もりに頬を緩めると、傍にあった何かが揺れた。
揺れた? 一人で寝ていてありえない状況に慌てて瞼を開くと、よく知った顔が私を見つめていた。
「あに、うえ?」
あれ? これはどういう? 私の混乱を感じたのだろう。兄上がくくっと喉を鳴らし笑う。
「目覚めたかデルロイ」
「兄上、おはようございます?」
まだ混乱している私に「昨日はデルロイが望んで一緒に休んだのだ。忘れてしまったか?」と兄上が教えてくれた。
「あっ、そうでした。私がお願いしたというのに忘れていて申し訳ありません。兄上お時間はまだございますか」
話をしたくて、一緒にとお願いしたのは確かに私の方だが、なぜ兄上に抱きしめられているのか理解出来ない。
その態勢のまま顔だけ窓の方に向けると、光の加減から明け方くらいだろうかと予想する。
「まだお前が起きるには早すぎる時間だ。共に朝食をと思って待っていた」
「兄上のお邪魔でないのなら喜んで」
忙しい兄上の邪魔を、私が昨日からしている自覚は勿論ある。
兄上は最近執務室に昼、夜の食事を運ばせていると聞いていた。それだけ忙しいのだと言うのに昨日の夜も今朝も私の傍にいる。それは魔力切れを起こした私を心配しているからだ。
日頃は兄上の過干渉に困っているくせに、兄上に迷惑しか掛けていないのが情けない。
「どうした」
「忙しい兄上に心配を掛けてしまい、情けなくて消え入りたく……兄上?」
考えが足りなかったのだ、初めての試みを一人で行った考え無し。その結果魔力切れを起こしたのだから……と反省していると、兄上に「消え入りたいなどと二度と言ってはならぬ」と怒られてしまった。
「兄上」
「私はデルロイが大切だ。だから心配するし悲しむのだ。デルロイが消えたら私は存在する意味を無くしてしまう。だからそんな不吉なことを言うな」
兄上は本気で怒っているようだった。
私は安易に、反省しているし自分の行いが恥ずかしいという意味で、そう身の置きどころがないと、そういう意味で言ったに過ぎないのに。
兄上は本気で私が消えるとでも思っているかのようだ。
「消えたりしません」
「当たり前だ」
兄上の心配を笑えはしない、私は昨日シード神の園、その近くまで行っていたのだから人の命などある時突然消えてもおかしくはない。
「私は兄上の弟です。ずっと兄上の近くにおります。ボナクララと共に」
「当たり前だ」
兄上がボナクララを好いていようと、兄上はもう自分の妻をエマニュエラに決めているのだろう。
国王の妃は、妻は、王として国を治め重責を担う男の唯一の安らぎだというのに、兄上は最も適さない女エマニュエラをその相手に選んだのだ。国の為に。
貴族なら政略結婚は当たり前だが、それでもあそこまで酷い相手を自ら選ぶ者はいないだろう。
兄上は自分の幸いを捨てようとしている、その決断を私は弟として見守り兄上の心の支えとして傍に居続ける。
「兄上は私の尊敬する兄上です、ずっとずっと兄上のお側にいるのが私の幸せです」
鬱陶しと思う時もある、でも兄上は私の大切で尊敬する兄だ。
エマニュエラを妻に迎えた後、兄上の心労はいかばかりか分からないが、兄上のすぐ近くに居続け兄上の心を守り続ける。
「デルロイ、ありがとう。お前が私の弟で良かった」
「私も兄上が私の兄上で良かったです」
素直にそう言えば、兄上は口角を小さく上げただけの微笑みを浮かべ私を見た後で私から手を離しベッドから出て行ってしまった。
※※※※※※
「デルロイ様、どうかなさいまして?」
「いいや、少し疲れただけだ」
昼休み、マーニ先生の部屋でソファーに座りトニエを待つ間、先程出会った男を思い出していた。
害はいまのところ、精神的な負担のみだがどうにも私はあの者が苦手なのかもしれない。精神的な疲れが出てしまっていたのだろう、ボナクララに心配されてしまった。
「疲れ、それは先程の事でしょうか」
ちらりとボナクララは扉近くに控えているレモに視線を向けた後で、私に問いて来た。
「疲れをボナクララに気が付かれるなんて、私はまだまだだね」
はっきりと肯定せずにボナクララに笑いかけると、ボナクララは何も言わず飾りの少ない小さな扇を広げて自分の口元を隠してしまう。
これは貴族女性が良くする、相手の話を肯定も否定もしないという意味の仕草だ。
「……いきすぎていらっしゃる気が致します。ブレガ様やトルトゥ様はデルロイ様への尊敬の念がその行動に見えますがあの方から感じるのはそれとは違う気が致しますの」
ボナクララは行動で示すのを止め、自分の意見を口にした。
「違う……か、レモはどう思う?」
護衛は部屋の外の扉前を守っているから、今部屋にいるのは私とボナクララとレモの三人だけだ。
マーニ先生もトニエもまだ来ていないし、マーニ先生の助手は先生を呼んでくると部屋を出てしまった。
「私はあの者は殿下の御身に近付けては良い結果にならないと感じています。何と申し上げれば良いか分かりませんが、見ていて寒気がいたします」
レモは大袈裟に自分の両腕で自分を抱きしめ震えている演技をしてみせた。
それほどあの者の先程の行いに気分を害しているのだろうが、それが自分だけではなかったと知り私は内心ホッとしていたのだ。
揺れた? 一人で寝ていてありえない状況に慌てて瞼を開くと、よく知った顔が私を見つめていた。
「あに、うえ?」
あれ? これはどういう? 私の混乱を感じたのだろう。兄上がくくっと喉を鳴らし笑う。
「目覚めたかデルロイ」
「兄上、おはようございます?」
まだ混乱している私に「昨日はデルロイが望んで一緒に休んだのだ。忘れてしまったか?」と兄上が教えてくれた。
「あっ、そうでした。私がお願いしたというのに忘れていて申し訳ありません。兄上お時間はまだございますか」
話をしたくて、一緒にとお願いしたのは確かに私の方だが、なぜ兄上に抱きしめられているのか理解出来ない。
その態勢のまま顔だけ窓の方に向けると、光の加減から明け方くらいだろうかと予想する。
「まだお前が起きるには早すぎる時間だ。共に朝食をと思って待っていた」
「兄上のお邪魔でないのなら喜んで」
忙しい兄上の邪魔を、私が昨日からしている自覚は勿論ある。
兄上は最近執務室に昼、夜の食事を運ばせていると聞いていた。それだけ忙しいのだと言うのに昨日の夜も今朝も私の傍にいる。それは魔力切れを起こした私を心配しているからだ。
日頃は兄上の過干渉に困っているくせに、兄上に迷惑しか掛けていないのが情けない。
「どうした」
「忙しい兄上に心配を掛けてしまい、情けなくて消え入りたく……兄上?」
考えが足りなかったのだ、初めての試みを一人で行った考え無し。その結果魔力切れを起こしたのだから……と反省していると、兄上に「消え入りたいなどと二度と言ってはならぬ」と怒られてしまった。
「兄上」
「私はデルロイが大切だ。だから心配するし悲しむのだ。デルロイが消えたら私は存在する意味を無くしてしまう。だからそんな不吉なことを言うな」
兄上は本気で怒っているようだった。
私は安易に、反省しているし自分の行いが恥ずかしいという意味で、そう身の置きどころがないと、そういう意味で言ったに過ぎないのに。
兄上は本気で私が消えるとでも思っているかのようだ。
「消えたりしません」
「当たり前だ」
兄上の心配を笑えはしない、私は昨日シード神の園、その近くまで行っていたのだから人の命などある時突然消えてもおかしくはない。
「私は兄上の弟です。ずっと兄上の近くにおります。ボナクララと共に」
「当たり前だ」
兄上がボナクララを好いていようと、兄上はもう自分の妻をエマニュエラに決めているのだろう。
国王の妃は、妻は、王として国を治め重責を担う男の唯一の安らぎだというのに、兄上は最も適さない女エマニュエラをその相手に選んだのだ。国の為に。
貴族なら政略結婚は当たり前だが、それでもあそこまで酷い相手を自ら選ぶ者はいないだろう。
兄上は自分の幸いを捨てようとしている、その決断を私は弟として見守り兄上の心の支えとして傍に居続ける。
「兄上は私の尊敬する兄上です、ずっとずっと兄上のお側にいるのが私の幸せです」
鬱陶しと思う時もある、でも兄上は私の大切で尊敬する兄だ。
エマニュエラを妻に迎えた後、兄上の心労はいかばかりか分からないが、兄上のすぐ近くに居続け兄上の心を守り続ける。
「デルロイ、ありがとう。お前が私の弟で良かった」
「私も兄上が私の兄上で良かったです」
素直にそう言えば、兄上は口角を小さく上げただけの微笑みを浮かべ私を見た後で私から手を離しベッドから出て行ってしまった。
※※※※※※
「デルロイ様、どうかなさいまして?」
「いいや、少し疲れただけだ」
昼休み、マーニ先生の部屋でソファーに座りトニエを待つ間、先程出会った男を思い出していた。
害はいまのところ、精神的な負担のみだがどうにも私はあの者が苦手なのかもしれない。精神的な疲れが出てしまっていたのだろう、ボナクララに心配されてしまった。
「疲れ、それは先程の事でしょうか」
ちらりとボナクララは扉近くに控えているレモに視線を向けた後で、私に問いて来た。
「疲れをボナクララに気が付かれるなんて、私はまだまだだね」
はっきりと肯定せずにボナクララに笑いかけると、ボナクララは何も言わず飾りの少ない小さな扇を広げて自分の口元を隠してしまう。
これは貴族女性が良くする、相手の話を肯定も否定もしないという意味の仕草だ。
「……いきすぎていらっしゃる気が致します。ブレガ様やトルトゥ様はデルロイ様への尊敬の念がその行動に見えますがあの方から感じるのはそれとは違う気が致しますの」
ボナクララは行動で示すのを止め、自分の意見を口にした。
「違う……か、レモはどう思う?」
護衛は部屋の外の扉前を守っているから、今部屋にいるのは私とボナクララとレモの三人だけだ。
マーニ先生もトニエもまだ来ていないし、マーニ先生の助手は先生を呼んでくると部屋を出てしまった。
「私はあの者は殿下の御身に近付けては良い結果にならないと感じています。何と申し上げれば良いか分かりませんが、見ていて寒気がいたします」
レモは大袈裟に自分の両腕で自分を抱きしめ震えている演技をしてみせた。
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