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番外編
おまけ 兄の寵愛弟の思惑41 (護衛ロイ視点)
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「ロイ、第二王子殿下からのご指示を伝えるから、私と共に来て欲しい」
先程己の立場も理解出来ず第二王子殿下への無礼な振る舞いをしていたこの学校の生徒会長アルティエロ・ビンダールの愚行に内心苛々していた私は、レモ様の言葉に片眉を動かしただけで彼の後に続きマーニ先生の教官室の前を離れた。
護衛対象である第二王子殿下は、学校の剣術の担当教師で第二王子殿下の剣術の師でもあるマーニ先生の教官室で婚約者候補のボナクララ・サデウス様と共にマーニ先生と隣国からの留学生ロマーノ・トニエと歓談中だ。
第二王子殿下はマーニ先生に幼い頃から師事していて、とても信用されている。
マーニ先生は第二王子殿下だけでなく、王太子殿下の剣術の師でもあり元第一騎士団長で人柄もとても良い方だから、第二王子殿下だけでなく陛下も王太子殿下も彼をとても信頼しているらしい。
その信頼は、王太子殿下が「デルロイを学内で守れる様に」とマーニ先生をわざわざ剣術の先生として配するほどだ。
マーニ先生の剣術の腕は素晴らしい、武門で名高いマーニ伯爵家の当主だけのことはある腕前だし、第二王子殿下はマーニ先生を信頼しきっている。
先生の人柄は第二王子殿下の信頼に十二分に応えられるものだと分かっているが、第二王子殿下のきらきらとした瞳が尊敬の念でマーニ先生を見つめているのを見るのは、正直なんというか……羨まし過ぎる。
「ロイ?」
「失礼しました。少々憤りを感じていたもので」
マーニ先生の教官室の隣、教官補佐の部屋らしき場所に入るとレモ様は私の顔を見て首を傾げている。
マーニ先生が羨ましいと浅ましく思う心を吐露出来るわけがないので、尤もらしい言い訳を口にする。
「ああ、お前の気持ちは分かる。私も同じだ」
レモ様は、第二王子殿下の前では絶対にしないであろう険しい表情で頷くと、「あの男、万死に値する」と呟いたから私は驚きを表情に出さない様にしながら「その通りです」と頷いた。
私達が言っている男とは、先程私の敬愛するこの世の何よりも大切な存在であるデルロイ第二王子殿下に不敬を働いた、アルティエロ・ビンダールの事だ。
この学校の生徒会長であり、ビンダール伯爵家の嫡男でもある。優秀だと評判の男だが、私達第二王子殿下の護衛の評価は最低だった。
「第二王子殿下は慈悲深くていらっしゃるから、あの者の愚行もおおらかに対応されていた」
レモ様は悔しそうにそう言うが、あれはおおらかというのだろうかと私は納得できない。
あの愚かな男は先程美しく麗しい第二王子殿下のお手を取り、口づけようとしたのだ。
第二王子殿下はさりげなくそれを避けておられたが、殿下の許しなく手に触れようとしただけでも許しがたいというのにあの男は厚顔にも己の汚らしい唇を第二王子殿下のお手に触れようとしたのだ。
到底許せるものではない。
「偉大なる国王陛下と王妃殿下、そして王太子殿下に愛され守られ育った第二王子殿下は、とても寛容で慈悲深くいらっしゃるのですから、あの様な塵芥にも優しくされるのでしょう」
内心の憤りを外には出さず、私は第二王子殿下の素晴らしさだけを考える。
どんなに辛い事があろうとも大事王子殿下の微笑みを思い出すだけで、私の心は嵐から素晴らしい青空に変わる。
幼き頃から第二王子殿下をお守りしてきた私だ、いくらでも第二王子殿下の微笑みを思い出せる。
そう初めて殿下にお会いした時「ロイというのか、私の名デルロイのロイだな」と仰った、その瞬間から私の名は私の特別なものになった。
ロイと言う名は、デルロイ第二王子殿下の名の一部、そう思うだけで私の様な矮小な存在が生まれた意味があったのだと思えるのだ。
「そうだ。第二王子殿下はとても優しくていらっしゃる。不愉快に思われても、ご自身が我慢していれば良いと許してしまわれるのだ。だが、殿下は決断された」
「決断とは」
「第二王子殿下は今まで周囲と波風立てずに学生生活を過ごそうとお考えだった。王子の立場とはいえ、いずれは臣籍降下され公爵家を興される。王子としてのお立場より臣下となる身だからと。だがこれからは違う」
レモ様の言葉に、私はごくりと唾を飲み込んだ。
王子の立場、行く行くは王弟殿下として生きる道もあるというのに、第二王子殿下は常々「いずれ私は一貴族として、兄上の臣下として兄上の御代を支えるのだ」と仰っている。
他の国では兄弟で王位を争うことも多々あるというのに、この国の殿下達は王太子殿下こそが相応しいとばかりに長兄を尊敬し、代替わりした際には自分達が兄を支えるのだと考えているのだから、その考えの尊さに私は殿下をお守りする騎士になれて良かったと思うのだ。
先程己の立場も理解出来ず第二王子殿下への無礼な振る舞いをしていたこの学校の生徒会長アルティエロ・ビンダールの愚行に内心苛々していた私は、レモ様の言葉に片眉を動かしただけで彼の後に続きマーニ先生の教官室の前を離れた。
護衛対象である第二王子殿下は、学校の剣術の担当教師で第二王子殿下の剣術の師でもあるマーニ先生の教官室で婚約者候補のボナクララ・サデウス様と共にマーニ先生と隣国からの留学生ロマーノ・トニエと歓談中だ。
第二王子殿下はマーニ先生に幼い頃から師事していて、とても信用されている。
マーニ先生は第二王子殿下だけでなく、王太子殿下の剣術の師でもあり元第一騎士団長で人柄もとても良い方だから、第二王子殿下だけでなく陛下も王太子殿下も彼をとても信頼しているらしい。
その信頼は、王太子殿下が「デルロイを学内で守れる様に」とマーニ先生をわざわざ剣術の先生として配するほどだ。
マーニ先生の剣術の腕は素晴らしい、武門で名高いマーニ伯爵家の当主だけのことはある腕前だし、第二王子殿下はマーニ先生を信頼しきっている。
先生の人柄は第二王子殿下の信頼に十二分に応えられるものだと分かっているが、第二王子殿下のきらきらとした瞳が尊敬の念でマーニ先生を見つめているのを見るのは、正直なんというか……羨まし過ぎる。
「ロイ?」
「失礼しました。少々憤りを感じていたもので」
マーニ先生の教官室の隣、教官補佐の部屋らしき場所に入るとレモ様は私の顔を見て首を傾げている。
マーニ先生が羨ましいと浅ましく思う心を吐露出来るわけがないので、尤もらしい言い訳を口にする。
「ああ、お前の気持ちは分かる。私も同じだ」
レモ様は、第二王子殿下の前では絶対にしないであろう険しい表情で頷くと、「あの男、万死に値する」と呟いたから私は驚きを表情に出さない様にしながら「その通りです」と頷いた。
私達が言っている男とは、先程私の敬愛するこの世の何よりも大切な存在であるデルロイ第二王子殿下に不敬を働いた、アルティエロ・ビンダールの事だ。
この学校の生徒会長であり、ビンダール伯爵家の嫡男でもある。優秀だと評判の男だが、私達第二王子殿下の護衛の評価は最低だった。
「第二王子殿下は慈悲深くていらっしゃるから、あの者の愚行もおおらかに対応されていた」
レモ様は悔しそうにそう言うが、あれはおおらかというのだろうかと私は納得できない。
あの愚かな男は先程美しく麗しい第二王子殿下のお手を取り、口づけようとしたのだ。
第二王子殿下はさりげなくそれを避けておられたが、殿下の許しなく手に触れようとしただけでも許しがたいというのにあの男は厚顔にも己の汚らしい唇を第二王子殿下のお手に触れようとしたのだ。
到底許せるものではない。
「偉大なる国王陛下と王妃殿下、そして王太子殿下に愛され守られ育った第二王子殿下は、とても寛容で慈悲深くいらっしゃるのですから、あの様な塵芥にも優しくされるのでしょう」
内心の憤りを外には出さず、私は第二王子殿下の素晴らしさだけを考える。
どんなに辛い事があろうとも大事王子殿下の微笑みを思い出すだけで、私の心は嵐から素晴らしい青空に変わる。
幼き頃から第二王子殿下をお守りしてきた私だ、いくらでも第二王子殿下の微笑みを思い出せる。
そう初めて殿下にお会いした時「ロイというのか、私の名デルロイのロイだな」と仰った、その瞬間から私の名は私の特別なものになった。
ロイと言う名は、デルロイ第二王子殿下の名の一部、そう思うだけで私の様な矮小な存在が生まれた意味があったのだと思えるのだ。
「そうだ。第二王子殿下はとても優しくていらっしゃる。不愉快に思われても、ご自身が我慢していれば良いと許してしまわれるのだ。だが、殿下は決断された」
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「第二王子殿下は今まで周囲と波風立てずに学生生活を過ごそうとお考えだった。王子の立場とはいえ、いずれは臣籍降下され公爵家を興される。王子としてのお立場より臣下となる身だからと。だがこれからは違う」
レモ様の言葉に、私はごくりと唾を飲み込んだ。
王子の立場、行く行くは王弟殿下として生きる道もあるというのに、第二王子殿下は常々「いずれ私は一貴族として、兄上の臣下として兄上の御代を支えるのだ」と仰っている。
他の国では兄弟で王位を争うことも多々あるというのに、この国の殿下達は王太子殿下こそが相応しいとばかりに長兄を尊敬し、代替わりした際には自分達が兄を支えるのだと考えているのだから、その考えの尊さに私は殿下をお守りする騎士になれて良かったと思うのだ。
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